中国の大学の実力と国際競争力についての研究
3. 中国の研究型大学群の実力と国際競争力 3.1 著しく向上する中国の研究型大学群の科学
研究の国際影響力
1998年12月24日、教育部は『21世紀に向けた教 育振興行動計画』を発表したが、その中の一つの 重要な政策は、重点を決めて一部の高等教育機関 を支援し、世界の先進的レベルを具えた一流大学 を設立するというものであった。1999年1月13日、
国務院はこの計画に指示を添えて関係各部門に転 送し、「985プロジェクト」が正式にスタートした。
「985プロジェクト」の重点的支援の下で、「985 プロジェクト」大学の科学研究における産出状況
は絶えず向上し、発表する国際論文の数と被引用 回数は急速に増加し、一部の大学の国際論文年度 産出数はすでに世界の大学のトップ10に入ってい る。「985プロジェクト」大学では世界の上位1%
に入る学科の数が絶えず増加し、学術成果の国際 的アピール度と影響力が著しく上昇している。
国際定期刊行物に発表した論文の数は大学の学 術的活躍度の具体的な表れである。2007年の世界 各国の大学のSCI、SSCI論文総数ランキングによ れば、わが国の大学のうち、浙江大学、清華大学、
北京大学、上海交通大学、中国科学技術大学はす でに世界の上位100校に入っている。(表5参照)
中国の大学の実力と国際競争力についての研究
劉 念才
表5.2007年度論文総数ランキングで世界の上位100校に入っている中国の大学
大学名 2007 年度 SCI/SSCI 論文 ランキング
浙江大学 3630 32
清華大学 3280 41
北京大学 3000 47
上海交通大学 2960 49
中国科学技術大学 2160 v99
データ出典:科学ネット(Web…of…Science)、文献タイプはArticle。
アメリカの「基本科学指標」(ESI)データベー スは、論文被引用回数が各分野の世界の上位1%
に入っている各機関の学科を収録している。図1 は2001年以降の、「985プロジェクト」大学のESI データベース収録の世界の上位1%に入った学科 数の増加趨勢を示したものである。2001年、「985
プロジェクト」大学では40学科がESIデータベー スに収録されたにすぎなかったが、2008年には、
収録学科数は4倍近くに増え、すでに34大学の140 学科が収録されており、主に工学、化学、材料科 学、物理学、臨床医学などの学科に集中している。
図1.「985プロジェクト」大学のESIデータベースの上位1%に入っている学科数の増加趨勢 データ出典:「基礎科学指標」(ESI)データベース。
そのうち、被引用総回数の統計により世界のベ スト100に入っているのは、10大学の26学科――
北京大学の数学、物理学、化学、地質学、材料科学、
清華大学の数学、化学、計算機、工学、材料科学、
南開大学の化学、吉林大学の材料科学、ハルビン 工業大学の材料科学、復旦大学の数学、化学、材 料科学、上海交通大学の工学、材料科学、南京大 学の化学、材料科学、浙江大学の化学、材料科学、
農学、中国科学技術大学の物理学、化学、材料科 学である。また発表論文数の統計では、「985プロ ジェクト」大学のうちすでに11大学の18学科が該
当分野の世界の上位20大学に入っており、それら は北京大学の物理学、化学、清華大学の物理学、
化学、計算機、工学、材料科学、南開大学の化学、
吉林大学の化学、ハルビン工業大学の材料科学、
上海交通大学の工学、材料科学、南京大学の化学、
浙江大学の化学、材料科学、中南大学の材料科学、
西安交通大学の材料科学、中国科学技術大学の物 理学である。これらの学科は力強い発展の勢いと すばらしい潜在力を示しており、すでに一流の学 科にインパクトを与える実力を有している。
谷 賢林龔 放劉 宝存張 彦通張 暁鵬李 越畢 家駒張 東海李 立国馬 陸亭王 兵 3.2 中国の研究型大学群とアメリカ、イギリス、
オーストラリア等国々の研究型大学群の科 学研究における国際影響力の差は絶えず縮 小している
表6は5年間の時間窓で切り取った、わが国の
「985プロジェクト」大学とアメリカ大学協会、
イギリス・ラッセルグループ、オーストラリア Go8等研究型大学群の1校当たりSCI、SSCI論文 数、1校当たり被引用回数、1編当たり被引用回数 の比較である。1998 〜 2002年の間の、「985プロ ジェクト」大学の1校当たり論文産出数は2100編 で、アメリカ大学協会の1校当たり論文数の6分 の1、イギリス・ラッセルグループ、オーストラ リアGo8の1校当たり論文数の約4分の1であった。
2004 〜 2008年の間の、「985プロジェクト」大学 の1校当たり論文産出数は6100編に上り、すでに アメリカ大学協会の3分の1余り、イギリス、オー ストラリアの研究型大学群の2分の1以上という水 準に達している。「985プロジェクト」大学とアメ
リカ、イギリス、オーストラリアの研究型大学群 の論文産出数の差は著しく縮小しており、論文の 1校当たり被引用回数と1編当たり被引用回数から 見ると、「985プロジェクト」大学は論文の影響力 も著しく改善している。2004 〜 2008年の1校当た り被引用回数は1998 〜 2002年の約6倍であり、1 編当たり被引用回数は2倍に増え、アメリカ、イ ギリス、オーストラリアの研究型大学群との差も 著しく縮小している。
表7は1998年度と2007年度の「985プロジェクト」
大学とアメリカ大学協会、イギリス・ラッセルグ ループ、オーストラリアGo8等研究型大学群の1校 当たり論文数を対比したものである。
10年間で、39の「985プロジェクト」大学の1校 当たり論文産出数は6倍に増えた。1998年度、「985 プロジェクト」大学の1校当たり論文数はアメリ カ大学協会の10分の1、イギリス・ラッセルグルー プの7分の1であったが、2007年には、差はすでに 著しく縮小した。
表6.「985プロジェクト」大学と世界の有名な研究型大学群の5年間の時間窓で切り取った論文産出の比較
研究型大学群
1998-2002 2004-2008
1 校当たり論
文数(編) 1 校当たり被
引用回数 1 編当たり被
引用回数 1 校当たり論
文数(編) 1 校当たり被
引用回数 1 編当たり被 引用回数
「985 プロジェクト」大学 2100 3200 1.5 6100 18300 3.0
アメリカ AAU 大学 12700 94000 7.4 15900 141600 8.9
イギリス Rg 大学 9200 55300 6.0 11600 87900 7.6
オーストラリア Go8 大学 7800 34900 4.5 11400 66300 5.8
データ出典:「基礎科学指標」(ESI)データベース
表7.「985プロジェクト」大学と世界の有名な研究型大学群の典型的年度における1校当たり論文数の比較
研究型大学群 1998 年 2007 年 増加幅(倍)
「985 プロジェクト」大学 240 1,200 5.0
アメリカ AAU 大学 2,350 2,800 1.2
イギリス Rg 大学 1,700 2,200 1.3
オーストラリア Go8 大学 1,450 2,200 1.5
データ出典:科学ネット(Web…of…Science)、文献タイプはArticle。
中国の大学の実力と国際競争力についての研究
劉 念才
4.中国、ドイツ、日本の一流大学の実力と国際 競争力の比較
4.1 中国、ドイツ、日本の一流大学の科学研究 における産出数の変化趨勢
1998 〜 2007年の間に、ドイツと日本の7大学が 発表した論文数はそれぞれ8000編と16000編前後 に安定し、年度間の変動幅は比較的小さく、はっ きりした増加または減少の動きは見られなかっ た。一方、同時期に中国の7大学が発表した論文 数は比較的大きな増加傾向を維持し、年平均増加 率は13.4%であった。年間増加率が最も高かった のは2001年で、18%に達した。また2002年以降は
ドイツの7つの一流大学を抜き、日本との差も徐々 に縮小している。(図2参照)
各グループの大学が発表した論文の具体的数量 から見ると、1998年のドイツの7大学の論文数は 7125編、日本は15059編で、それぞれ中国の7大学 の2倍と5倍であった。2007年には中国の7大学は 14377編に達し、ドイツは7789編、日本は16492編 であった。中国の7大学の発表論文数は、ドイツ の7大学の約半分だったのが、約2倍にまで増加し、
日本の7大学との差も、日本の約5分の1だったの が、わずかに15%ほど少ないというところまで縮 小した。
図2.中国、ドイツ、日本のTop7大学の発表論文数の変化趨勢 データ出典:科学ネット(Web…of…Science)、文献タイプはArticleとReview。
4.2 中国、ドイツ、日本の一流大学の科学研究 における産出の影響力の変化趨勢
科学研究における産出の影響力の変化趨勢につ いての分析は、三つの方面に立脚点を置いてい る。その一つは論文の平均インパクトファクター の変化趨勢、二つ目は、インパクトファクターが 最も高い25%の定期刊行物(Top25%)と最も低 い25%の定期刊行物(Bottom25%)に発表した論 文の比率とその変化趨勢、三つ目は『Science』、
『Nature』(S&Nと略称)など、世界の公認する トップクラスの学術刊行物への論文発表の変化趨 勢である。
1998 〜 2007年の間に、中国の7大学が発表した SCIE論文の平均インパクトファクターは全体と して徐々に上昇する動きを示し、2002年までは0.7 前後を維持していたが、最近の5年間は上昇の動 きがかなりはっきりし、2007年には最高に達し、
0.91となった。ドイツと日本の7大学が発表した論 文の平均インパクトファクターは基本的に1以上 で、年度間の変化趨勢も明らかではない。3グルー プの大学の論文の対応年度における平均インパク トファクターから見ると、ドイツが最も高く、日 本がこれに次ぎ、中国が最も低い。(図3参照)
谷 賢林龔 放劉 宝存張 彦通張 暁鵬李 越畢 家駒張 東海李 立国馬 陸亭王 兵
中国の7大学がインパクトファクターの最も 高い25%の定期刊行物に発表した論文の比率は、
1998年の21.9%から2007年の33.4%へと持続的に 上昇した。うち2002年までは基本的に22%前後を 維持し、最近の5年間は上昇の動きが顕著であっ た。ドイツの7大学が当該クラスの定期刊行物に 発表した論文の比率は2002年を境として、それ以 前は40%以下であったが、それ以後は40%以上を 維持しており、持続的な上昇または低下の動きは ない。このうち1998年は38.3%だったが、2007年 には43.3%まで上昇した。日本の7大学が当該クラ
スの定期刊行物に発表した論文の比率は、10年来 ずっと35%〜 40%の間にあって、小幅な変動状態 を示しており、持続的な上昇または低下の動きは 見られない。同一年度のデータを対比してみると、
3組の一流大学が当該クラスの定期刊行物に発表 した論文の比率は、ドイツが最も高く、日本がこ れに次ぎ、中国が最も低い。増加趨勢から見れ ば、中国は上昇幅が最も大きく、11.5ポイント増 となっており、ドイツがこれに次ぎ、5ポイント増、
日本は上昇幅が最も小さく、2.6ポイント増となっ ている。(図4参照)
図3.中国、ドイツ、日本のTop7大学の論文の平均インパクトファクターの変化趨勢 データ出典:科学ネット(Web…of…Science)、文献タイプはArticleとReview。
図4.中国、ドイツ、日本のTop7大学がTop25%の定期刊行物に発表した論文の比率の変化趨勢 データ出典:科学ネット(Web…of…Science)、文献タイプはArticleとReview。
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