中国国家重点実験室及び重点研究基地の建設の歩みと今後の動向
PROFILE
李 立国 (Li Liguo)
中国人民大学高等教育研究室副主任、中国人民大学公共管理学院教育研究所准教授。北京師範大 学教育学学士、修士、博士
1970年10月生まれ。主な研究分野は高等教育の理論と歴史。「清華大学教育研究」、「中国高等教育」、「高等教育研究」
等の学術定期刊行物に30編余りの論文を発表、共著に「西洋教育思想史」、「外国教育思想通史」(第2巻)、「大学戦略 管理序説」、「大学協会組織研究」等がある。国家社会科学基金(教育類)、国家自然科学基金、教育部人文社会科学基金、
北京市教育科学計画等多くの研究課題を引き受け、その責任者である。
弁法」、「国家重点実験室評価規則(試行)」、「国 家重点実験室管理情報統計年報」をそれぞれ制定 した。また、「開放、連合、流動」の運営管理メ カニズムを打ち出した。
1991年、中国は世界銀行と「重点学問分野発展 プロジェクト与信協定」(期間5年)を結び、世銀 から8,633万米ドルの融資を受けることになり、75 の国家重点実験室の建設を認可した(プロジェク ト立ち上げは1987年)。世銀の融資で建設された 国家重点実験室の多くは国民経済・社会の発展要 請に密接に関係するエンジニアリング分野に設け られている。これらの実験室の完成は、中国の国 家重点実験室の枠組みが基本的に整ったことを示 すものである。
1998年、国務院は「国家計画委員会が担当して いる国家重点実験室の業務及び関連経費の割り振 りを科学技術部に帰属させる」ことを明確にした。
科学技術部は国家重点実験室に対する管理を強化 するため、その学問分野の配置及び発展計画につ いて十分な調査研究を行うとともに、新たな時期 における中国の基礎研究発展の必要性及び国民経 済・社会の発展要請、国の安全保障と結び付け、
国家重点実験室全体の発展に関する提案と意見を 出した。
国家重点実験室の建設と運営を一段と強化・充 実させ、影響力と競争力を持つ国際的な一流実験 室を育成し、中国の国情に適う実験室体系を徐々 に築き上げるため、科学技術部は2002年に新たな
「国家重点実験室建設・管理暫定弁法」を公布し た。この暫定規則は国家重点実験室の主な目的と 位置付けを一段と明確にし、管理と建設の申請に 関する手順を規範化したものである。2003年、「国 家重点実験室改革・発展の道筋」、「国家重点実験 室建設・管理暫定弁法」、「原初革新能力の一層の 向上に関する意見」、「科学技術評価作業の改善に 関する決定」に基づき、科学的に分析し、且つ関 現在、中国は国家実験室、国家重点実験室、教
育部人文社会科学重点研究基地等から成る研究実 験基地体系を既に一応作り上げ、基礎研究の主要 な学問分野と国民経済・社会発展の重点分野を基 本的にカバーしている。これらの基地は中国の自 然科学と人文社会科学の発展をサポートしリード する重要な役割を果たした。
一、国家重点実験室
1984年、中国の基礎研究力が全般に弱く、研究 陣が分散し、国の基礎研究への資金投入を大幅に 増やすのが難しいという当時の実情に基づき、基 礎研究のレベルを引き上げ、自国の基礎研究の発 展に適した新しい体制を探究するため、旧国家計 画委員会のリーダーシップの下、旧国家科学技術 委員会、旧国家教育委員会、中国科学院等が国家 重点実験室建設計画を共同で手配・実施した。
(一)国家重点実験室の建設と発展の歩み 1984年、国家重点実験室建設計画が政府の支援 を受けることになった。中国の科学研究活動の 基礎と国の要求に基づき、大学及び研究所の優位 な学問分野と研究チームを拠り所として、政府は 6,100万元を投資し、まず10の国家重点実験室の建 設を認可した。同時に、1,660万米ドルの外貨枠 を割り当てることを決め、国外の先進的機器の購 入に充てた。1984年〜 1993年は政府の投資で国 家重点実験室を建設する主要な時期の1つであり、
また、国家重点実験室が急速に発展する重要な段 階でもあった。この期間中、国は計約9億元の経 費を出し、81の国家重点実験室を建設し、国家教 育委員会、中国科学院、農業部、衛生部等の関連 大学と研究所に重点的に配置した。
国家重点実験室建設計画の実施初期に、比較的 厳格な建設・管理手順が定められた。この段階に おいて、旧国家計画委員会は国家重点実験室業務 会議を2度招集し、「国家重点実験室建設試行管理
李 立国
係部門と各国家重点実験室から幅広く意見を求め ることを踏まえ、評価規則についても大幅な手直 しを行い、新たな「国家重点実験室評価規則」を 公布した。その主な目的は「科学技術革新を奨励 し、実験室が重要な成果を上げるよう導き、大き な影響力を持つ国家重点実験室を育成する」こと である。この評価規則は定量評価を廃止し、代表 的な成果に対する評価を際立たせ、実験室が精力 を集中して原初革新の研究に取り組み、シンボ リックな成果を出すよう導くものである。評価指 標が一段と簡素化され、実験室に対する全体の評 価に力を入れた。
国家重点実験室の導きと影響の下で、各部門と 地方は多くの部門重点実験室(約500)と省(市・
自治区)重点実験室(約300)を相次いで設立した。
国家重点実験室を主とし、部門と省(市・自治区)
の重点実験室を補助とする実験室体系が一応出来 上がった。また、中央官庁と各一級行政区による 実験室の共同建設が進められた。数年後、省(一 級行政区)と部(中央官庁)の共同建設による国 家重点実験室育成基地(『省・部共同建設実験室』
と略)はその基本的配置が整った。2007年、江蘇 省食品品質安全等8つの重点実験室が省・部共同 建設実験室として新たに認可・建設され、これに より、省・部共同建設実験室の認可・建設総数は 47に達した。そのうち、山東省作物生物学実験室、
四川省地質災害防止・地質環境保護実験室等4つ の実験室が国家重点実験室建設計画の論証にパス し、国家重点実験室に仲間入りした。
国家実験室の建設が急ピッチで進んだ。国家実 験室は国家重点実験室とその他関連実験室を基礎
に、総合力の高い研究型大学と科学研究院・所を 拠り所として設立された、規模が比較的大きく、
人材が集まり、管理方式が全く新しい学際的な科 学研究機関である。科学技術部は、国家実験室の 主要任務は1.国の発展と密接に関わる基礎的、戦 略的な、先見性のある科学技術革新活動を展開す る、2.国際的な一流実験室の育成を目標とし、国 の近代化と社会発展の要請を指針として、基礎研 究、ハイテク研究、社会的公益の研究を積極的に 繰り広げる、3.国の重要な科学研究課題を主に引 き受け、独創性と自主知的財産権を持つ重大な科 学研究成果を生み出し、経済建設、社会の発展、
国の安全保障を技術面でサポートし、関連業界の 技術進歩に大きく貢献をすることである、と明確 に指摘した。
科学技術部は2000年から国家実験室の試行作業 に取り掛かった。近年、その作業は飛躍的進展が 得られ、国家実験室特別経費を計上し、オープン な運営、自主的なテーマ選択研究、研究機器設備 の更新という3つの側面から安定した支援を与え た。2007年の国家実験室の特別経費は14億元、立 ち上げ経費は2億元となった。6つの試験的な国家 実験室と2006年末に新たに認可された10の国家実 験室の設立準備作業は順調に進んでいる。国家実 験室は全く新しい管理体制と運営メカニズムを採 用し、理事会と管理委員会の制度を実行し、実験 室主任は世界から公募した。実験室の最適な整理 統合・再編と機器設備のオープンな共有に力を注 ぎ、研究スタッフの合理的な流動を促し、実験室 の強者連合を奨励し、その好ましい競争を維持し ている。
表1 国家重点実験室の学問分野の分布 単位:室
所属分野 化学科学 数理科学 地球科学 生命科学 情報科学 材料科学 エンジニアリング科学
数 21 10 29 51 26 21 31
図1 2006年の国家重点実験室の学問分野分布割合図
谷 賢林龔 放劉 宝存劉 念才張 彦通張 暁鵬李 越畢 家駒張 東海馬 陸亭王 兵
(二)国家重点実験室の現状 1.国家重点実験室の全体配置
2006年末現在、運営中の国家重点実験室の数は 197、国家実験室(設立準備)は6で、そのうち8 つの国家重点実験室が国家実験室の設立準備に参 画している。本論文は189の国家重点実験室と6つ の国家実験室(準備)について統計をとった。実 験室の学問分野の分布は化学科学21、数理科学 10、地球科学29、生命科学51、情報科学26、材料 科学21、エンジニアリング31となる。6つの国家 実験室(準備)は学問分野の区分がまだ行われて いない。
管轄部門の分布。2006年に国家海洋局、陜西省、
河北省でそれぞれ1つの実験室が新設され、これ により、国家重点実験室と国家実験室(準備)の 主管部門は15となった。教育部と中国科学院が主 管する国家重点実験室の割合が最も多く、それぞ れ52.3%と32.3%になる。
地域分布。実験室は全国の22の省、自治区、直 轄市に分布している。そのうち北京が最も多く、
2006年の国家重点実験室の数は計63で、全体の 32.3%を占める。次が上海の27で、13.8%を占める。
また、湖北省が14、江蘇省が12、陜西省が11とな り、これは中国の基礎研究力の分布を基本的に示 すものである。
表2 国家重点実験室の管轄部門の分布 単位:室 主管部門 教育部 国防科学技術
工業委員会 農業部 衛生部 国家人口・
計画出産委員会 中国
科学院 中国
地震局 中国
気象局
数 102 4 5 6 1 63 1 1
主管部門 国家
海洋局 総後勤部
衛生部 河北省 陜西省 上海市 四川省 陜西省 体制転換の
研究機関
数 1 4 1 1 2 1 1 1
注:連合実験室の統計は第一主管部門に従う。
図2 2006年の国家重点実験室の管轄部門分布割合図 表3 国家重点実験室の地域分布………単位:室
所在地域 数 所在地域 数
北京市 63 安徽省 2
山西省 2 湖北省 14
黒竜江省 2 四川省 7
浙江省 8 陜西省 11
山東省 2 河北省 1
広東省 6 吉林省 8
雲南省 1 江蘇省 12
重慶市 2 福建省 3
天津市 4 湖南省 4
遼寧省 9 貴州省 2
上海市 27 甘粛省 5 図3 2006年の国家重点実験室の地域分布
中国国家重点実験室及び重点研究基地の建設の歩みと今後の動向
李 立国