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中国における医薬品ネット販売の現状

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非処方箋薬は保険適用ができるものとできないものがあるが,現在中国では,保険適用外の医薬品のみがイ ンターネット販売されている.

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医薬品ネット販売停滞時期(2005-2010 年)

2005年に国家食品医薬品監督管理総局によって実施された「インターネット薬品取引サービス審査許可暫 定施行規定」では,「インターネット上の医薬品取引資格証」と「インターネット上の医薬品サービス資格 証明書」,以上2つの証明書を持っている企業のみが,医薬品のネット販売を行うことができるという要件 が規定された.

張大志[5]は非処方薬のみの販売が許可されているネット販売では,取扱商品数が実店舗よりも少なくなる ことから,医薬品ネット販売における管理コストが高くなり,利益が低下することを明らかにしている.こ のことからも,2つの証明書を取得することは非常に高い要求であり,医薬品ネット販売の発展を妨げると 主張した.医薬品ネット販売停滞時期においては,インターネット上で医薬品を販売することは伝統的な実 体店の販売方式よりも高コストであった.

医薬品ネット販売発展時期(2011-2014 年)

医薬品ネット販売が浸透すると,様々な指摘や議論が発生した.①正規のウェブサイトの数が少なく,違 法医薬品ネット販売の業者数が多いこと [6],②消費者のネット上での支払いに対する不信感,③医薬品ネッ ト販売と実店舗との価格の不一致などによる,医薬品ネット販売発展の不利要素の出現 [7],④中国における 医薬品ネット販売の利用可能地域が北京,上海などの都市部に限られること [8],⑤ウェブサイト構築に規範 が無く,医薬品物流のシステムが不十分であり,消費者に対する対応ができないこと[9] [10] が挙げられる.

2014年頃,医薬品ネット販売数の増加速度は停滞し[11],また,医薬品ネット販売は企業間の競争段階に 入った.Baidu,Jingdong,Tmallなどの中国の大手Eコマース企業は「医薬品O2O業務」[注7]に取り組み,

医薬品ネット販売と実店舗の幅広い協力を展開し,主に三つの経営方式を形成した(表 5-1).医薬品Eコ マース事業者はコンピューターやスマートフォンのアプリケーションを重視し始め,消費者はアプリケーシ ョンを通じて注文してから商品の到着を待つだけである.

医薬品ネット販売安定時期(2015 年以降)

国家がEコマース,インターネット,ビッグデータの発展を支援している中,中国の医薬品ネット販売店

数は徐々に増加した.2016年2月時点で,中国の医薬品ネット販売サイト数は388社に上り,医薬品ネット 販売取引サービスに関連する企業数(医薬品ネット販売サイト数を含む)は619社まで増加した[12].

医薬品ネット販売の数が増加するにつれて販売額も増加し,中国政府の医薬品ネット販売関連部門によ る,医薬品ネット販売への監督も厳しくなった.同時に,消費者は生活品質の向上に伴って,医薬品ネット 販売に対する知識・興味も深まった.健康に対する関心も高まり,医薬品ネット販売も発展した.

各大手企業は相次いで医薬品Eコマース業務に取り組み,インターネット取引資格を取得する企業数も大 幅に増加した.

医薬品ネット販売の発展速度は,関係する法律の改善速度よりも速いために,医薬品ネット販売に対する 監督は遅れている.

中国の医薬品ネット販売の良質な発展を推進するために,様々な指摘が以下のようにされている.陳徳宝 [13]は「中国は健全な法律法規を制定し,政府監督機能を十分に発揮し,専門的な第三者による物流体系を 構築すべき」,付非ら [14]は「インターネットで医薬品を購入する際の指導,特に高齢者に対し,特定の薬 物は用法用量が厳格であるため,医師の直接的な購入指導が必要であり,そのようなサービスを提供するこ と」,牛西ら [15]は「ウェブサイトの安定性を強化し,偽造品を減らし,消費者に対し損害リスクを低下

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し,安心をもたらさなければならない」と指摘・提案している.2015年頃に資格を取った医薬品販売企業は 価格ではなく,運営能力,消費者データ,システム改善などに着目し,競争力の向上に注力している.

2015年以降,医薬品ネット販売に対して以下の法律が導入された.①ウェブサイトは医薬品小売企業とし てチェーン店舗でなければならない,②ウェブサイトは勤務する薬剤師の人数が二人以上必要,③非処方薬 だけウェブサイト上で販売できる,④「インターネット医薬品情報サービス資格証」(互連網薬品信息服務 資格証)を取得しなければならない,⑤ウェブサイトのトップページで「インターネット医薬品情報サービ ス資格証」をわかりやすい位置に表記しなければならない.

表 5-1 三つの経営方式

BtoB 医薬品企業と他の企業がインターネットを通じて医薬品取 引を行う.医薬品生産企業は,専用ウェブサイトを通じて 他の企業に医薬品を提供する.

BtoC 医薬品企業はインターネットを通じて個人消費者に医薬品 を販売する.消費者は医薬品販売ウェブサイトを閲覧して 注文し,オンラインで支払い,配送を待つ.

第三者

プラットフォーム

医薬品販売店舗と消費者以外に,第三者が提供する専門的 なサービス.医薬品販売店舗は第三者プラットフォームを 通じて医薬品情報を提示し,消費者は個人のニーズに基づ き医薬品を購入する.

出所:各種資料を基に筆者作成[注7]

既存の問題点

これまでの法律の導入はある程度機能しているが,法律の継続的な改善を行わなければならない.法律の 導入は医薬品ネット販売の秩序をある程度保つ効果があるが,中国の医薬品ネット販売に関して多くの問題 が残る.

既存の問題点を表 5-2にまとめる.消費者の要求を満たしながらこれらの問題を改善する必要がある.

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表 5-2 医薬品ネット販売 既存の問題点

名義の虚偽記 載

名義を偽りウェブサイトの開設主体は「国家研究所」,「中国研究所」,

「北京大学」など研究機構,医療機構と名乗り,北京や上海医療機構の 名義で消費者を騙す

衛生部,国家食品医薬品監督管理局,世界衛生組織,医学センター,

医学会などの政府部門や組織機構の名義を使用 誤解の恐れの

ある記載

ウェブサイト上で「国家食品医薬品監督管理局政府ウェブサイト」の リンクを追加し,誤解を招く

医薬品経営資 格の不所持

国家食品医薬品監督管理局のデータによると,インターネットで医薬 品販売のウェブサイト企業数は 619 社.医薬品系の資格を持たない不法ウ ェブサイトの乱立

薬剤師の不足

資格を保有する薬剤師が不足. 2016 年 3 月 11 日時点で,全国における資 格を保有する薬剤師数は 281,797 人.資格を保有する薬剤師数は今も実 店舗の需要が多いため,医薬品ネット販売店舗で不足している.実店舗 と医薬品ネット販売店舗を掛け持ちで行う薬剤師が多い

出所:[8] [4]より筆者作成

アンケート調査 方法

中国の医薬品ネット販売を利用したことがある消費者に対して,医薬品ネット販売に関するアンケート調 査を行った.現在の医薬品ネット販売に対する意識(既存の問題点に対する意識を含む)とニーズについて 調査を行った.アンケートの設問項目を表3に示す.期間は2019年9月25日から10月2日,対象は中国在 住の消費者685名に対して15問のアンケートをオンラインで行った.オンラインアンケートは中国の多くの 研究機関でも利用される「Wen Juan Xing」[注9]を利用し調査を行った.分析は単純集計およびクロス集計を 用いて,年齢,性別等による意識の違いや共通点について考察を行った.各項目間における統計的差異を検 証するため,カイ二乗検定を使用し,有意水準1% で実施し,統計的優位がある結果のみ掲載する.検定用 のソフトウェアとしてR言語(バージョン3.4.3)を使用した.なお,アンケート回答者の個人情報は,Wen

Juan Xingの規約によりアンケート作成者には知る術がなく,回答情報は研究目的以外に利用できない.

結果

回答者の属性を表 5-4に示す.回答者の性別,年齢,学歴,収入である.性別について男性は307人,女 性は378人であった.年齢について20代は169人,30代は178人,40代は176人,50代は162人であった.

学歴は高校卒が71人,専門卒が240人,大学卒が333人,大学院卒が41人であった.月収は2,320元未満が 80人,2,320元以上5,348元未満が290人,5,348元以上8,000元未満が234人,8,000元以上17,000元未満が62 人,17,000元以上は19人であった.

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表 5-3 アンケートにおける設問項

項番 設問 選択肢 次設問への誘導

男性 Q2へ

女性 Q2へ

20歳-29歳 Q3へ

30歳-39歳 Q3へ

40歳-49歳 Q3へ

50歳-59歳 Q3へ

高校卒 Q4へ

専門卒 Q4へ

大学卒 Q4へ

大学院卒 Q4へ

2320元以下 Q5へ

2320元-5348元以下 Q5へ 5348元-8600元以下 Q5へ 8600元-17000元以下 Q5へ

17000元以上 Q5へ

ある Q6へ

ない 終了

A.全く安心感がない Q7へ B.あまり安心感がない Q7へ C.どちらともいえない Q7へ D.とても安心感がある Q7へ E.極めて安心感がある Q7へ

A.15分以内 Q8へ

B.15分以上-20分以内 Q8へ C.20分以上-30分以内 Q8へ

D.30分以上 Q8へ

A.広告 B.医者の指導

C.友人等からのおすすめ D.自分で医薬品の情報を探 す

E.実店舗の店員・薬剤師お すすめ

Q1 性別

Q2 年齢

Q3 学歴

Q7

自宅の最寄りの医薬品を買 える店舗(薬局・ドラッグ ストアなど)は徒歩何分か

医薬品をどのように選ぶか

。以下から最も当てはまる と思う項目を選択

Q4 収入

Q5 インターネット上で医薬品 を購入したことがあるか

Q6 インターネット上で医薬品 を購入することについて

Q8へ

それぞれの選択肢に対し,以下 の5段階で評価

A.全くそう思わない B.あまりそう思わない C.どちらともいえない D.ややそう思う E.非常にそう思う

Q9へ

93 インターネット上での医薬

品購入に関して、最も当て はまる選択肢

A.サイトは安心感があるか B.医薬品の品質は安心感が あるか

C.物流の安心感があるか D.薬剤師の指導

E.個人情報保護

インターネットで医薬品を 買う利点に関して、最も当 てはまる選択肢

A.時間や移動の手間が省け る

B.医薬品を検索でき見つけ ることが簡単

C.価格を複数の通販サイト で比較できる

D.人に見られずに買い物が できる

E.その他

A.できない Q12へ

B.詳しいやり方がわからない Q12へ

C.できる Q12へ

A.第三者プラットフォーム Q13へ B.薬局のオンライン店舗 Q13へ C.医薬品メーカーのオンライン

店舗 Q13へ

D.以上全て Q13へ

物流システムにおける着目 している点について、最も 当てはまる選択肢

A.速さ B.安全性 C.価格 D.サービス E.以上全て F.その他

A.信頼している 終了

B.どちらともいえない 終了

C.信頼していない Q15へ

A.名義の虚偽記載 B.誤解の恐れのある記載 C.医薬品経営資格の不所持 D.薬剤師の不足

E.その他

終了 Q14へ Q13

Q14

Q15

それぞれの選択肢に対し,以下 の5段階で評価

A.全く重要でない B.あまり重要でない C.どちらともいえない D.やや重要である E.非常に重要である

インターネットで医薬品を 買うことに対し信頼してい るか

信頼していない理由は Q11

Q12

Q11へ Q10

Q10へ Q9

以下の場所で、最も医薬品 を買いたい場所はどこか サイトのインターネット医 薬品医薬品経営資格がある/

ないサイトは判断できるか

それぞれの選択肢に対し,以下 の5段階で評価

A.全くそう思わない B.あまりそう思わない C.どちらともいえない D.ややそう思う E.非常にそう思う

それぞれの選択肢に対し,以下 の5段階で評価

A.全くそう思わない B.あまりそう思わない C.どちらともいえない D.ややそう思う E.非常にそう思う