8. 自動車
8.1 特定エネルギー消費機器の最新状況の整理
8.1.1 パワーウェイトレシオと燃費との関係性に関する分析
自動車のエネルギー消費効率である燃費と関係の深い物理量、機能等の指標としては、自 動車の種類、燃料の種類、車両重量が挙げられ、現行基準においてはこれらに応じて区分が 設定されている。本調査では、上記以外の指標の一つとしてパワーウェイトレシオに注目し、
燃費との関係について分析を行った。
(1) パワーウェイトレシオの市場価値
パワーウェイトレシオとは、自動車の空車重量をエンジンの最高出力(馬力)で除したも のであり、単位はkg/PSで表される。一般にパワーウェイトレシオは自動車の加速性能の指 標として用いられる物理量であり、重量が軽いほど、またエンジン出力が大きいほどパワー ウェイトレシオは小さな値となる。このため、パワーウェイトレシオが小さい車種は加速性 能が良いと言える。また出力は、仕事率、つまり車両に働く駆動力と走行速度の積、あるい はトルクと回転数の積であるため、同トルクであれば回転数が大きいほど加速性能が良い 車種であると言える。
なお、自動車の加速性能は、交通渋滞を緩和し円滑な交通流を確保するために不可欠な性 能であり、また、将来的に自動運転技術によってより円滑な交通流を実現する上で必要な性 能でもある。
パワーウェイトレシオ= 空車重量 [kg]
最高出力(馬力)[PS]
(2) パワーウェイトレシオと燃費の関係性に係る理論的検証
1) 燃費の測定方法
自動車の燃費は、シャシダイナモメータ装置を用いて試験車を規定の走行モードで走行 させた際の燃焼消費量を測定し、燃料 1 リットルあたりの走行距離に換算することにより 算出されている。シャシダイナモメータ装置では、テストコース走行によって測定された空 気抵抗および転がり抵抗の値、車両重量に応じて規定される等価慣性質量を設定して、試験 車の駆動輪に加える負荷が与えられている。
図 8-1 燃費の測定方法
出所)日本自動車輸送技術協会ウェブサイト「技術解説-中・軽量車の燃費試験法と燃費基準」
(http://www.ataj.or.jp/technology/ldv_nenpi_kisei.html)
2) 燃費の理論式
燃費は、原動機・駆動系の効率と比例関係にあり、また駆動力と反比例の関係にある。
図 8-2 燃費の理論式
<車両特性と燃費との関係>
走行に必要となる駆動力は、駆動輪に加わる負荷(空気抵抗、転がり抵抗、慣性抵抗)と して表されるが、このうち、転がり抵抗、慣性抵抗は、車両重量と比例の関係にある。
図 8-3 駆動力と燃費の測定方法
出所)交通安全環境研究所 水嶋教文,工藤希,新国哲也,大野寛之「自動車の燃費計算を反映した交通 流シミュレーションによる超小型車の最高速度に関する研究」(第46回 土木計画学研究発表 会・講演集、2012年)を参考に作成
<エンジン特性と燃費との関係>
上述のとおり、エンジン特性のうち燃費と関係を有するものはエンジン効率であり、エン ジン最大出力については燃費との直接的な関係を有さない。
他方で、エンジンの加速性能の指標として用いられるエンジン最大出力は、一般的にはエ ンジン効率と反比例の関係にある(図 8-4参照)。
走行距離 [km/h]
燃費 [km/l]
燃料消費量 [l/h]
燃料消費量 [l/h]
仕事量[kWh/h]
(駆動力[N]×走行距離[km/h])
燃料発熱量 [kWh/l]
=
= ÷ 原動機・駆動系効率[%] ÷
=
駆動力 [N]
原動機・駆動系 効率[%]
燃料発熱量
[kWh/l] ×
速度[km/h]
原動機 駆動系
駆動力 燃料
空気抵抗 転がり抵抗
慣性抵抗
⚫ 単位時間あたり走行距離[km/h](=速度)
⚫ 単位時間あたりの走行に必要な仕事量[kWh/h]=駆動力[N]×走行距離[km/h]=(空気抵抗[N]+転がり抵抗[ N]+慣性抵抗[N])×速度[km/h]
駆動力 転がり抵抗
空気抵抗 慣性抵抗
駆動系 原動機 燃料
⚫ 空気抵抗[N]:空気抵抗係数[Nm-2(km/h)-2]×車両前面投影面積[m2]×(走行速度[km/h])2
⚫ 転がり抵抗[N]=転がり抵抗係数×車両総重量[kg]×重力加速度[m/s2]
⚫ 慣性抵抗[N]=(車両総重量[kg]+慣性相当重量[kg])×加速度[m/s2]
図 8-4 エンジンの加速性能と燃費の関係
出所)「第2回 高熱効率・低燃費エンジン群 説明会」(トヨタ自動車株式会社、2015年4月)
<パワーウェイトレシオと燃費との関係>
以上より、燃費を単純化して捉えると、燃費は車両重量と反比例の関係にあり、また燃費 はエンジン最大出力と反比例の関係にあるものと推察される。
パワーウェイトレシオはエンジン最大出力あたり車両重量として定義されるため、上記 のとおり燃費を単純化して捉えた場合、燃費はパワーウェイトレシオとは比例、また車両重 量とは反比例の関係にあるものと推察される。
燃費[km/l]=f(1⁄車両重量, 1⁄エンジン最大出力)
=f(1⁄車両重量,パワーウェイトレシオ 車両重量⁄ )
(3) パワーウェイトレシオと燃費の関係性に関する統計的分析
1) 分析対象
インターネット価格比較サイトである価格ドットコムの掲載情報に基づき、販売年度が 2016年度から2018年度のうち、現在販売中の型式数が最も多い2017年度販売の型式1,418 件を分析対象とし、同サイトに掲載されている燃費、空車重量、最高出力のデータを用いた。
メーカー毎、重量階級毎の分析対象型式数を下図に示す。
図 8-5 メーカー別型式数
図 8-6 重量階級別型式数
2) 燃費に対する各種分析
パワーウェイトレシオと燃費との関係および、パワーウェイトレシオの構成要素である 最高出力、空車重量のそれぞれと燃費との関係を確認した。
パワーウェイトレシオと燃費との間には正の相関があるが、パワーウェイトレシオが 10
~15kg/PS程度の範囲では燃費のばらつきが大きく、一次近似における決定係数は0.44程度 である(図 8-7)。
最高出力と燃費との関係を見ると、最高出力が大きいほど燃費は悪くなり、燃費は10km/l 程度へと漸近する傾向にある(図 8-8)。空車重量と燃費との関係を見ると、同様に、空車
29 46 110
67 70 59 72 130
211 171
122 123
79 87 42
0 50 100 150 200 250
重量階級別n数
図 8-7 パワーウェイトレシオと燃費の関係
図 8-8 最高出力と燃費の関係
図 8-9 空車重量と燃費の関係
y = 1.0779x + 6.2242 R² = 0.4397
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
0 5 10 15 20 25 30 35 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
PWR - 燃費
y = -0.0375x + 24.494 R² = 0.4771
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
0 100 200 300 400 500 600 700
燃費[km/l]
最高出力[PS]
最高出力 - 燃費
y = -0.0113x + 34.789 R² = 0.505
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
0.0 500.0 1000.0 1500.0 2000.0 2500.0 3000.0
燃費[km/l]
空車重量[kg]
重量 - 燃費
参考として、燃費に対する各物理量の影響度やフィッティングを確認するため、パワー ウェイトレシオおよび現行基準における区分要素である空車重量を説明変数として、次式 に基づき、燃費の重回帰分析を実施した。
重回帰分析においては説明変数同士の多重共線性について留意が必要であるが、空車重 量とパワーウェイトレシオには強い相関がみられない(相関係数R=0.52)ことから、多 重共線性はないものと仮定して分析を行った。
分析結果を表 8-1に示す。重決定係数は0.62であることから、上式にフィッティングし ていると考えられる。重量の方がパワーウェイトレシオよりt値の絶対値は大きく、燃費 への影響度は大きいが、いずれもある程度の影響度合いを持っていると言える。
表 8-1 燃費に対する重回帰分析の各種統計値
また、参考として、燃費の逆数[l/km]の指標に対して、同様の分析を行った結果を示す。
重回帰分析にける重決定係数は0.63となり、燃費を目的関数とした場合と比較して、フィ ッティングに大きな差はない。
図 8-10 最高出力と燃費の逆数の関係
y = 0.0001x + 0.0376 R² = 0.6018
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18
0 100 200 300 400 500 600 700
燃費の逆数[l/km]
最高出力[PS]
最高出力 - 燃費の逆数
図 8-11 空車重量の逆数と燃費の逆数の関係
図 8-12 パワーウェイトレシオと燃費の逆数の関係
表 8-2 燃費の逆数に対する重回帰分析の各種統計値
3) 重量区分ごとのパワーウェイトレシオと燃費の関係
パワーウェイトレシオに係るより詳細な分析として、燃費基準の区分である重量区分別 に、パワーウェイトレシオと燃費との関係を確認した(図 8-13)。一次近似式の傾きが急 であるほど、パワーウェイトレシオに対する燃費性能が良い区分という見方ができ、決定係 数が高いほど一次近似は妥当であると言える。両統計値を図 8-14に示す。なお、区分毎の 燃費とパワーウェイトレシオの平均値は図 8-15のとおりである。
y = -0.0037x + 0.104 R² = 0.4245
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18
0 5 10 15 20 25 30 35 40
燃費の逆数[l/km]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
PWR - 燃費の逆数
最軽量区分では、パワーウェイトレシオと燃費は負の相関を持つが、決定係数は0.20程 度と低い。その他の区分では、パワーウェイトレシオと燃費は概ね正の相関を持つが、決定 係数が 0.4 を下回る区分が過半を占めており、必ずしもパワーウェイトレシオと燃費との 一次近似における相関は強くない。
注意)各グラフ中における黒線は、現行基準における燃費基準値を示す。
図 8-13 パワーウェイトレシオと燃費の関係(重量区分別)
y = -3.3757x + 79.076 R² = 0.1955
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
601kg以上741kg未満
y = 0.2103x + 24.29 R² = 0.0063 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
741kg以上856kg未満
y = 0.0474x + 23.546 R² = 0.0016 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
856kg以上971kg未満
y = 0.3156x + 17.14 R² = 0.1152 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
971kg以上1081kg未満
y = 2.1626x - 1.1719 R² = 0.5511 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,081kg以上1,196kg未満
y = 1.3336x + 5.6562 R² = 0.3204 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,196kg以上1,311kg未満
y = 0.8365x + 10.768 R² = 0.3514 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,311kg以上1,421kg未満
y = 1.4861x + 4.2075 R² = 0.6468
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,421kg以上1,531kg未満
y = 0.8669x + 8.5871 R² = 0.4007
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,531kg以上1,651kg未満
y = 0.5637x + 9.2399 R² = 0.2353
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,651kg以上1,761kg未満
y = 0.7448x + 7.6812 R² = 0.3138
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,761kg以上1,871kg未満
y = 0.2385x + 10.043 R² = 0.1183 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,871kg以上1,991kg未満
y = 0.1042x + 10.688 R² = 0.0189
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
1,991kg以上2,101kg未満
y = 0.6728x + 6.7029 R² = 0.5161
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
2,101kg以上2,271kg未満
y = 0.6597x + 5.7779 R² = 0.3123 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40
燃費[km/l]
パワーウェイトレイシオ[kg/PS]
2,271kg以上