XenServerは、パケット送信元のMACアドレスに基づいてトラフィックを複数のNICに分散します。
管理トラフィックの場合、送信元のMACアドレスは1つなので、アクティブ/アクティブモードでは1 つのNICのみが使⽤され、トラフィックは分散されません。以下の2つの要素に基づいてトラフィッ クが分散されます。
• トラフィックを送信する側と受信する側の仮想マシンおよびVIF
• 送信されるデータの量(キロバイト)
XenServerでは、各NICで送受信されるデータの量がキロバイト単位で評価されます。⼀⽅のNICで 送信されるデータ量が他⽅のNICの量を超えると、XenServerによってVIFとNICの関連付けがリバ ランスされます。1つのVIFのトラフィック負荷が複数のNICに分割されることはありません。
アクティブ/アクティブモードのNICボンディングでは、複数の仮想マシンからのトラフィックが分 散されますが、単⼀仮想マシンに対して2つのNICによるスループットを提供することはできませ ん。VIFは、ボンディングを構成する2つのNICを同時に使⽤することはありません。XenServerでト ラフィックのリバランスが定期的に⾏われる間、ボンディング内の特定のNICにVIFが固定的に割り 当てられることはありません。
アクティブ/アクティブモードは、「SLB(Source Level Balancing)」と呼ばれることもありま す。XenServerでは、ボンディングされたNIC間の負荷がSLBにより分散されます。SLBはオープン ソースのALB(Adaptive Load Balancing)モードに由来し、その機能を再利⽤してNIC間で負荷を 動的にリバランスします。
このとき、各スレーブ(インターフェイス)に流れるバイト数は、定期的に追跡されます。新しい送 信元のMACアドレスを含んだパケットが送信されると、負荷の低い⽅のスレーブインターフェイス に割り当てられます。トラフィックのリバランスは、⼀定の間隔で⾏われます。
各MACアドレスは対応する負荷を持ち、XenServerは仮想マシンが送受信するデータ量に応じてそ の負荷全体をほかのNICにリバランスします。アクティブ/アクティブモードでは、1つの仮想マシン からのすべてのトラフィックを単⼀NICで送信できます。
注︓
アクティブ/アクティブモードのボンディングでは、802.3ad(LACP)または EtherChannel⽤のスイッチサポートが不要です。
4.3.5.2. アクティブ/パッシブボンディング
アクティブ/パッシブモードのボンディングでは、1つのNICだけがトラフィックに使⽤されます。そ のNICに障害が発⽣した場合は、他⽅のNICにフェイルオーバーされます。1つのNICがアクティブに なってトラフィックを送信し、そのNICに障害が発⽣した場合にのみパッシブなNICがアクティブに なります。
アクティブ/パッシブモードのNICボンディングは、LinuxブリッジおよびvSwitchネットワークス タック環境で使⽤できます。ネットワークスタックとしてLinuxブリッジを使⽤する場合、ボンディ ングを構成できるNICは2つまでです。ネットワークスタックとしてvSwitchを使⽤する場合は、最
⼤で4つのNICを使⽤してボンディングを作成できます。ただし、アクティブ/パッシブモードでは、
ボンディングを構成するNICのうちアクティブになるのは1つのみで、すべての種類のトラフィック で負荷分散は提供されません。
次の図では、2つのNICでアクティブ/パッシブモードのボンディングを構成しています。
この図は、2つのNICで構成されるアクティブ/パッシブモードのボンディングを⽰
しています。NIC 1がアクティブで、フェイルオーバー⽤のNIC 2が別のスイッチ に接続されています。NIC 1に障害が発⽣したときのみ、NIC 2が使⽤されます。
XenServerのNICボンディングではデフォルトでアクティブ/アクティブモードが作成されるた め、CLIでアクティブ/パッシブモードのボンディングを作成する場合はパラメータを明⽰的に指定す る必要があります。ただし、管理トラフィックやストレージトラフィック⽤のネットワークに必ずア クティブ/パッシブモードを使⽤しなければならないわけではありません。
耐障害性を考慮すると、アクティブ/パッシブモードが適切である場合があります。アクティブ/パッ シブモードでは、トラフィックに使⽤されるNICが頻繁には変更されません。同様に、このモードで は2つのスイッチを使⽤して冗⻑性を向上できますが、スタック構成は必要はありません(管理ス イッチに障害が発⽣した場合にスタック構成のスイッチは単⼀障害点になってしまいます)。
アクティブ/パッシブモードのボンディングでは、802.3ad(LACP)またはEtherChannel⽤のス イッチサポートが不要です。
トラフィックの負荷分散が不要な場合、または⼀⽅のNICにのみトラフィックを送信したい場合は、
アクティブ/パッシブモードのボンディングを使⽤します。
重要︓
VIFを作成した後やリソースプールが実務環境で動作している場合は、NICボン ディングの作成や変更を慎重に⾏う必要があります。
4.3.5.3. LACPボンディング
LACP(Link Aggregation Control Protocol)ボンディングでは、複数のポートをグループ化して単
⼀の論理チャネルとして使⽤します。LACPボンディングでは、フェイルオーバーが提供されます。
また、より多くの帯域幅を使⽤できるようになります。
ほかのボンディングモードとは異なり、LACPボンディングを使⽤するには送信側および受信側での 設定が必要です。つまり、ホストとスイッチの両⽅でボンディングを作成して、各ボンディングに LAG(Link Aggregation Group)を作成します。詳しくは、項4.3.5.4.1. 「LACPボンディングのス
イッチ構成」を参照してください。LACPボンディングを使⽤するには、ネットワークスタックとし
てvSwitchを設定する必要があります。また、IEEE 802.3ad標準をサポートするスイッチを使⽤す る必要があります。次の表は、アクティブ/アクティブSLBボンディングとLACPボンディングの⽐較を⽰しています。
⻑所 注意事項
アクティブ/アクティブSLBボ
ンディング
• XenServerのハードウェア互換性⼀覧に記載されてい るすべてのスイッチで使⽤
できます。
• スタック構成をサポートし ないスイッチを使⽤できま す。
• 4つのNICでボンディングを 構成できます。
• 適切な負荷分散のために は、1つのVIFにつき1つ以上 のNICが必要です。
• ストレージトラフィックや 管理トラフィックを複数の NICに分散させることはでき ません。
• 負荷分散が提供されるの は、複数のMACアドレスが 割り当てられている場合の みです。
LACPボンディング
• すべての種類のトラフィッ クですべてのNICが同時にア クティブになります。• 送信元のMACアドレスに依 存せずにトラフィックが分 散されるため、すべての種 類のトラフィックで負荷分 散が提供されます。
• IEEE 802.3ad標準をサポー トするスイッチを使⽤する 必要があります。
• スイッチ側での設定が必要 です。
• vSwitchでの使⽤のみがサ ポートされています。
• 単⼀スイッチまたはスタッ ク構成のスイッチが必要で す。
トラフィックの分散
XenServerのLACPボンディングでは2種類の「ハッシュ」(ハッシュとは、NICおよびスイッチがト ラフィックを分散する⽅式です)がサポートされています。1つは送信元および送信先のIPアドレス とポート番号に基づいてトラフィックを分散するもので、もう1つは送信元のMACアドレスに基づい てトラフィックを分散.するものです。
ハッシュの種類およびトラフィックの形式によっては、アクティブ/アクティブモードのボンディン グよりも効率的にトラフィックを分散できます。
注︓
管理者は、ホストおよびスイッチ上で送信トラフィックと受信トラフィックを個別 に設定します。ただし、これらの設定はホストとスイッチで異なっていても構いま せん。