広義に地形図を数値情報(座標をもったベクトル情報)で表現している地理 情報全般をディジタルマッピングデータという。地形図の数値化の歴史はアメ リカにおいて1950年代から発達したが、わが国においては昭和50年代から発 達し始めた。当初は地形図をコンピュータで描画させるための手段として位置 付けられていたが、後にGIS での利用を配慮した仕組みとして公共測量作業規 程に定められるにいたっている。ディジタルマッピングの標準仕様案はまず、
昭和63年に作成され、以降改良を重ねて現在にいたっている。
特に官公庁が計画する公共測量に伴う地形図作成仕様にはディジタルマッピ ングの標準仕様案が採用され、この10数年の間に、日本全国に多くのデータ が既に蓄積されている。また、公共測量ではない民間企業が作成する地理情報 も多数存在している。これら既存の地理情報を有効活用できるよう、あるいは 既存の地理情報を地理情報標準に整合させ、広く利用の途を拡大させることも 地理情報標準の大きな役割である。
9.1.1. ディジタルマッピングデータの範囲
本論で対象とするディジタルマッピングデータは、国土交通省公共測量作業 規程に準拠して作成されたデータを指す。これ以外については別途評価方法を 検討する必要がある。
9.1.2. 間接評価の方法
ディジタルマッピングデータを間接的に評価することは、即ちこのデータの 系譜情報を評価することに他ならない。本来メタデータが整備されているなら ば、これから情報を得て評価することが順当ではあるが、メタデータが整備さ れている例はまだ僅かである。よって、既存のディジタルマッピングデータを 間接的に評価するには、以下5手法が考えられる。なお、本論は国土交通省公 共測量作業規程に準拠したデータを範囲としているので、記載される地物の精 度と取得基準については、国土交通省公共測量作業規程自身が間接評価のより どころとなる。
① ディジタルマッピングデータファイル説明書による方法
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② インデックスファイルによる方法
③ 図郭レコードによる方法
④ 仕様書・計画書による方法
⑤ 精度管理表・第3者検定記録による方法
(1) ディジタルマッピングデータファイル説明書による方法
ディジタルマッピングデータファイル説明書には以下記載される。
・ 地域名
・ 座標系
・ 新規又は修正
・ 地図情報レベル
・ データ分類(真位置・作図)
・ 地域最小コーナー座標
・ 地域最大コーナー座標
・ レコードフォーマット
・ オプション項目(公共規程に定めない追加項目等)
・ 作成年月日(データの作成時点)
・ 計画機関
・ 管理部署
・ 管理者名
・ 作業機関
・ 作業部署
・ 責任者名
・ ボリューム数(媒体の数量)
・ 記録媒体名
上記により、概略のデータ整備の目的と用途等を把握することが出来る。し かし、このデータファイル説明書はデータファイルが数値情報であるのに対し て、電子化はされていない。よって、この情報を活用するためには、既存のデ ータファイル説明書を数値化すると共に、今後整備されるものについても電子 化されるべきである。電子化されたデータファイル説明書をメタデータと共に 検索対象とするか、あるいはメタデータにその内容を記載する等の措置が必要 になる。
88 (2) インデックスファイルによる方法
インデックスファイルはデータセット全体(例えば、1市町村全体)に対す るデータスペックを定めている。通常データセットに対して1つのインデック スファイルが存在する。内容は上記データファイル説明書とは異なり、ディジ タルマッピングデータファイルの構成(図郭番号のリスト)と記載される具体 的地物が採用するデータタイプ(点、線、面、属性等)を地物毎に定義してい る。構成する地物のデータタイプを把握するのに必要なファイルである。この ファイルは通常、ディジタルマッピングデータファイルと共に、同一媒体に保 存されている。
(3) 図郭レコードによる方法
図郭レコードはディジタルマッピングデータファイル1つに対して、必ずレ コードの先頭部分に存在する。このレコードの後ろに個別地物が記載される部 分(要素レコード以下)が続いている。図郭レコードには、ディジタルマッピ ングデータファイルを作成するのにあたって使用した航空写真の情報、現地調 査の時点等が記載される。なお、作成方法が航空写真測量によるか、既製図数 値化によるかについては、要素レコードに記載されるフラグを参照しなければ 判別できない。
この図郭レコードによる間接評価を行うためには、公共測量作業規定に記載 されている、ディジタルマッピングデータファイル仕様を参照し、データファ イルの各レコードに記載されている数値を個別に判読する必要が生じる。よっ て、図郭レコードを自動的に読み取り、結果をわかりやすく抽出できるユーテ ィリティを整備するこが望ましい。
(4) 仕様書・計画書による方法
既述の方法はディジタルマッピングデータの一連成果から評価を行う方法で あるが、その他の方法としては、データ作成時点の特記仕様書、作業実施計画 書より評価する方法がある。これらを参照することで、データ整備の目的、必 然性が明らかになるので、ディジタルマッピングデータ整備の背景も含めた評 価が可能となる。この仕様書・計画書もそれ自身は数値化されているとは限ら ない。紙面での利用を原則として考えるべきである。また、ディジタルマッピ ングデータの成果に位置付けられていないので、入手できない場合も想定して おく必要がある。
(5) 精度管理表・第三者検定記録による方法
精度管理表、第三者の検定記録は、ディジタルマッピングデータを直接評価
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した結果を詳細に記述している。この記録を参照することが利用者としては、
データの詳細な品質を知るうえでの評価方法に活用できる。しかし、記述内容 がかなり専門的な部分もあり、利用者にとっては難解な情報となることがある。
そうした場合には、既述による方法が無難であろう。また、精度管理表、第三 者の検定記録はディジタルマッピングデータの一連成果の一部ではあるが、第 三者の検定記録は存在しない場合もあり、また精度管理表、第三者の検定記録 共に入手できない場合も想定しておく必要がある。
9.1.3. 間接評価の手順
間接評価の手順は前記の方法に対応して整理すると以下の通りとなる。
(1) ディジタルマッピングデータファイル説明書による手順
ディジタルマッピングデータファイル説明書はどのようなデータに対しても、
必ず作成が義務付けられているので、最も簡単に評価する手順となる。地物を 含むデータファイルを参照しない手順としては、最も簡単な手順となる。しか し、この説明書自身が紙面であるので、データファイル管理者から、別途郵送 当の手段で入手することになる。場合によってはword等のファイル書式で 作成されているが、その場合は通常のパソコンがあれば十分に内容を評価する ことが可能である。
(2)インデックスファイルによる手順
インデックスファイルはデータセット全体に関する概要情報を記載しており、
地物の空間属性定義を含んでいる。データの構造はディジタルマッピングデー タと同様にテキスト形式であるので、通常のパソコン環境で対応することがで きる。ただし、この記述内容はそれ自身だけで解読できるものではなく、公共 測量作業規程を参照することで、意味を解することができる。よって、既に触 れたとおり、専用ユーティリティを用意した上で利用することが望ましい。
(3) 図郭レコードによる方法
図郭レコードは1図郭ファイルに必ず含まれるものである。よって、ディジ タルマッピングデータを直接読むことで情報を入手できる。上記インデックス ファイルと同様のテキスト形式であるので、通常のパソコン環境で対応するこ とができる。より詳細な情報が得られる反面、規程に則った書式であるので、
インデックスファイルと同様、解読するためのエディタを利用することが望ま
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しい。地物の詳細定義も記述されているので、詳細な評価が求められる場合に 有効な方法である。
(4) 仕様書・計画書による方法
仕様書(特記仕様書)は利用者(計画機関)により作成されるもので、ディ ジタルマッピングデータを作成するに際しての、条件が記載されており、準拠 する規定、作成方法、使用する機器の指定、期限等諸条件が記載されており、
これらにより評価可能である。計画書はディジタルマッピングデータ作成者が 仕様書に対して、計画段階で作成するもので、通常は仕様書に整合した記述内 容としているので、仕様書とほぼ同等の情報が得られる。
(5) 精度管理表・第三者検定記録による方法
精度管理表はディジタルマッピングデータ作成工程毎における、品質状況を 報告しているもので、位置精度、記載情報の漏れ・誤りについて報告している。
内容としては、むしろ直接評価項目であるので、間接評価としては精度管理表 自身が存在するかどうかの問題ともなろう。第三者検定記録も同様に直接評価 項目的であるが、第三者機関が適か不適の判定を行っている場合があるので、
その場合はこの判定結果に注目することになろう。
9.1.4 望ましい間接評価手法
ディジタルマッピングデータの間接評価については、既述の方法が考えられ るが、どの方法もある程度の専門知識を有することを前提としている。また、
関連資料も多岐にわたるので、利用・用途と照合させるにも各種手続きが足か せとなりかねない。よって、ディジタルマッピングデータに関係してきている 各機関が、一般ユーザに対して情報をわかりやすく開示できるよう、メタデー タの整備を別途行い、ディジタルマッピングデータの利活用促進を図るべきと 考える。