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第4節 ソーシャルストーリーTMにおける随伴性評 価文

 第4章においては、ソーシャルストーリーTMの随伴性評価文が、標的 行動に及ぼす影響について検討を行った。第1節においては、ソーシャ ルストーリーTMを用いた介入により金曜日に目直がしたいというこだわり 行動が減少し(事例1)、不適切な座り方が減少した(事例2)。しかし、こ のどちらの事例においても、随伴性評価文の有無による効果の差は確 認されず、特に事例2においては、随伴性評価文の迫力日されたソーシャ ルストーリーTMによる介入の実施により行動は悪化してしまった。第2節 においては、随伴性特定評価文の検討を行った。随伴性評価文のな いソーシャルストーリーTMによる介入において、標的行動の改善が観察さ れた一方、対象児の教師に対する挑戦的な反応も観察され、その後の 随伴性特定評価文の追加によって、手を洗う行動が一層自立し、手を 洗ったことを教師に報告したり、自分からソーシャルストーリーTMを書き写 す学習をしたいと言ったりするなど好意的な反応が報告された。これらは、

ソーシャルストーリーTMの除去後も維持が確認された。第3節では、随伴 性評価文の自閉症に対する効果の検討を行ったが、明確な結果は得 られず、自閉症に関して随伴性評価文、あるいは随伴性特定評価文 が効果を示すという結果は部分的に示されたのみであった。

 先行研究との比較

 ソ∵シャルストーリーTMの実施により、標的行動が望ましい方向に変 化することは、過去の多くの先行研究において報告されている通りである。

今回の研究では、どの事例においても、ソーシャルストーリーTMの除去後

も効果が確認されている。これは、Thiemann and Go1dstein

(2001)(1)、KuochandMirenda(2003)(2)などの結果と一致し Kutt1er,My1es,and Car1son (1998)(3)、Ivey,Hef1in,and

A1berto(2004)(4〕などの結果とは一致しない。Kuoch舳dMlirenda

(2003)(2)が指摘しているが、Gray(2004)(4)の主張どおり、ソーシャル ストーリーTMの効果が「子どもたちがその出来事において期待されている 事がよく理解できるようになった結果」であるとすると、対象児には、ソー シャルストーリーTMにより不可逆な学習が成立していると・考えられる。この ように考えると、介入除去後も効果が維持したという今回の実験結果は、

納得のできる内容である。

 随伴性評価文の有無による効果の違いについては、今回の研究か らは相反する結果が確認された。第1節におけるA君とB君の事例では、

随伴性評価文の追加により期待された標的行動の改善は観察されず、

第2節のC君の事例においては、期待通りの標的行動の改善が観察さ れた。第3節の一D君と風君の2事例においても、随伴性評価文の追 加のみでは期待された結果は得られなかった。

 随伴性評価文の効果

 第1節と第建節の事例についての考察を行う。それぞれに追加された 随伴性評価文を検討すると、次のようなことが見いだされた。効果のあっ た事例においては、「注意されている行動を修正した時に、肯定的な評 価が得られること(C君:手を洗うと自分の評価が向上する事)」であり、

効果のなかった事例では、「ルールを守る事の理由(A君1順番を守る事、

順番を守るとみんないい気持ちで暮らす事ができる)」と「過去の行動へ の評価と今求められている行動との関連(B君:かっこいい座り方、以前 マナ㎞を守って食事をしたら、周りの人たちが肯定的な印象をもった)」で あった。随伴性評価文の主語に着目すると、効果のあったC君の事例 では担任教師に特定されており、効果のなかった第1節の2事例(A君、

B君)では不特定多数が見解文の主語となっていた。今回の実験から 確認されたのは、望ましい行動を選択したときに特定の個人の肯定的な 見解が提示された場合、すなわち随伴性特定評価文が使用された場 合において効果があることであった。随伴性評価文の主語が特定される ことが重要なのか、それともその随伴性評価文において記述される内容

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が重要なのか、あるいはその両方の相互作用により効果が現れるのか、

結論は得られていない。

 随伴性評価文の内容について考えると、効果のあったC君の事例に おいては、注意されている行動を修正したときに、自分への評価がよりよ いものになるということが記述されていた。これは、C君が見落としていた 事実なのかもしれない。つまり、注意をされる場合には、その行動を修正 して欲しいという他者の意図が暗黙の了解(6)(7〕として含まれ、注意した とおりに行動を修正した場合には、他者の自分に対する評価は好意的 なものとなる。このような暗黙の了解を見落としていた場合、注意されるこ とは、その嫌悪的な面σ)みが強調される。今回の実験では、B条件の他 者の見解文のないソーシャルストーリーを提示したところ、初めのうち、行 動は改善を見せたが、セッションの最後には手を洗っていない事を担任 が注意するとrいつも注意ばかりしてうるさい」と言い、注意されても洗おう としなかった。これは、C君が注意されるという嫌悪的な面にのみ注目し ており、注意されている行動を修正することが好意的な評価につながると いう情報を見落としていたためではないかと考えられる。この事例におい ては、その後の随伴性特定評価文の追加されたソーシャルストーリー条 件(C条件)において、指示されたとおり手を洗う事で担任の教師の評 価が好転する事を知り、行動が改善したのではないだろうか。C条件に おいて、自発的に石けんで手を洗う確率が非常に高くなり、そのため注 意される回数が激減した。エピソード記録においてもC条件のストーリー 年大変に気に入り、朝の自立課題として書き写したいと自分から言い、

実際に書き写す学習もしていた。効果のなかった事例について、記述内 容の面から考察を行うと、A君において示された「順番を守るとみんなが いい気持ちで過ごせます」という随伴性評価文は、順・番を守ることに対 する暗黙の了解(6)(7〕ではあるが、この随伴性評価文における中核的な 語は「いい気持ち」であり、具体的にはどのような状態であるのかが定義 しにくい語で説明されている。また、B君の事例においては、過去の行動 の評価は示されているが、今回の行動との直接の関連は具体的には語 られていない。これらの事例において、肯定的な結果が示されなかった

理由は、具体性が欠けたりするなど直接的な内容でなかったためと、推

測している。

 随伴性評価文とその実行性

 第3節の随伴性特定評価文の挿入においても効果を示さなかった2 事例については、ソーシャルストーリーTMにおいてストーリーを読ませる事 のみで行動の変容を計る事が困難である事を示唆している。この事例に おいては、行動変容に随伴する好感度の高い他者からの評価が示され たが、行動変容は観察されなかった。しかしながら、この事例において直 接の教師からの言葉がけが行われた場合には、効果が示される可能性 が示唆された。ソ]シャルスト山リーTMによって効果が示されない場合、こ のような直接の指導が必要となるのかもしれない。これらの点については、

次章において検討する。

引用文献

(1)Thiemann,K.S.&Go1dstein,H.(2001)Soci&1stohes

written text cues,&na video £eedback1 effects on socia1

corn1㎝unic&tion of chi1dre濃 with autisn1。∫oαγ刀∂ノ。fλ一ρ。ρノゴθゴ 3θ五風γゴ0rλ刀∂ノy 8/8,34,425−446.

(2)Kuoch,H,&Mirenda,P.(2003)Socia1Story i損terventions for young chi1aren with autis㎜spectrum

disorders.F06α80刀λα左加㎜易刀ゴ0泌θγ刀θγθノ。刀〃θ刀畑ノ

ーZプノ8身ろノノノ庄ノθ8, 18,219−227.

(3)Kutt1er,S.,My工es,B.S.,&Car1son,J.K.(1998).The uさe

ofsocia1stories toreduceprecursors to tantrumbehavior in a student with autism. Foo〃8 0刀 λα〃β〃 ∂刀a 0〃er

∠)θγθノ。ρ伽θ刀C2ノノフゴ8∂ゐゴノゴCゴθ8, 13(3), 176−182。

(4)Ivey,M.L.,Hef1in,L.J.,&A1berto,P.(2004)The use of socia1 stories to prom◎te independent behaviors in .noveI

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events for chi1dren with PDD−NOS.Foc〃βo刀λ〃ノ8〃一∂刀ゴ

0肋θr刀θγθノ。ρ〃θ刀畑ノ刀ノ舳〃方方θβ、,19,164−176.

(5)Gray,C.(2004).8oc加ノ8庄。〃θβ「M/0.0,Jenison Pub1ic SchooIs.

(6) Attwood,T.(1998)λ8ρθγ厚θr8∫刀ゴro〃ピ∠ 0αメ♂θ 允r 戸〃舳姑舳3〃。允舳ゴ。〃ノ8、(冨田真紀・内山登紀夫・鈴木正子

訳)、JessucaKings1eyPub1ishersLtd

(7)My1es,B.S。&Southwick,J.(1999)λ8ρθ∫8θr8y刀a70〃θ

〃a〃肋 C〃〃M0〃帥畑刃〃0〃6∂ノ80ルれ0皿8地r畑〃珊皿β,〃8θ,

肌ゴmθノ〃。w刀β.(富田真紀。萩原拓。高垣ナオ1ミ訳)Autism Asperger Pubhshing Co、

ソーシャルストーリーTMによる効果的な介ノ入、

第1節 ソーシャルストーリーTMが効果を示すため