名・形
い駄い 15 5 一 「〜なければ」のような否定条件であり・全体として だめ 5 2 一 は「〜ないといけない」のように二重否定の形で積極
的にすすめる意味をあらわすものばかりである。「〜といけない(だめ)」のばあし・は,前に肯定の 表現も来うるはずであるが,実際には7例とも否定が先行していた。これに対して,次に「いい」
がくるものは,「ば」に「施術を誤らなければいいが」というのが1例あるほかは,全部肯定約な条 件である。(なお,類似の表出として「〜ては(いけないetc.)」のばあいをしらべると,「いけな い」17「だめ」5「ならない」15である。)
「〜(なけれ)ばいけない(だめ)」と「〜(ない)とし・けない(だめ)」とのあいだにはほとんど差がな いように思われる。
「〜たらよい」「〜ばよい」「〜とよい」の三つをくらべると,「〜たら」がほとんど完全に「〜ば」に おきかえられるのに対して,F〜と」と「〜ぼ」とのあいだには多少の差がある。それは,「〜とよ い」がやや積極的に聞き手にある行動をすすめており,「〜方がよい」「〜なさい」に近づくのに紺
して,「〜ばよい」は時に薪〜ばそれですむ」という,消極的なニュアンスをともなうことである。
つぎの例を比較されたいo
Oお兄さんから「朝H新聞のおじさんに,お礼じょうを出すといいよ」といわれたので,さっそく書きました (週干畦朝El 9月9日 84)
○学徒動員が始まってどの学校でも授業を止めて工揚へ行くようになった時に,一番最後まで行かずに残っ ていたのも彼女の学校であった。
「勉強しとりやあ良えんじゃ」
そう校長は云うだけで,対外的な思惑は気にしていなかった(知性 6月 273)
「〜さえ〜ばよい」という表現の中のr〜ば」が「〜と」におきかえられなし・ことも,このことに関 係があるのであろ5。
OA力価からB工場にかわっても,賃金1が同じです。社宅さえあればいい(ダイヤモンド 1月21日 30)
ただし,このようなニュアンスが,すべての「〜ばよい」「〜とよい」に一様につきまとっているわ けではない。特に,つぎに「よいが」がきて,話し手の希望をあらわすばあいには,「〜ば」でも
「〜と」でもちがいは見られない。
○これがうまく行くとよいが,そうでないと経費増が何時までも続き,当社の収益面を圧迫することになる (ダイヤモンド 4月21縫 78)
○これから,会鮭がミ=一ジカルスに本腰を入れて考えてくれるキッカケになればいいがと,真剣に思いま す(婦入画報 8月 100)
「〜ばよい」「〜とよい」のちがいについてこれ以上調べるには,三三をもっとふやさなければな らない。
(2)前 お き
a)題旨の提示
一150 一
○合作映画といえば必ず思わしからざる結果を招くものとの定説を,かぼそい入千箪が健気にも, うち 破ってくれたのだから(サンデー毎}ヨ 4月15日 IG)
○漂白というとおっくうがる方もありますが,次簾塩素酸ソーダ(溝品名オーヤラックス,小瓶一五〇円)
を使うと簡単に漂由できます(主婦と生活 6月 72)
○東京や大阪の後援会になると,絶対といっていいほど,そんなことは聞かない(娯楽よみ5り 5月1三 fi 15)
○アメリカ人のデブちゃんだと三富200ポンド以上というのはザラにいるから(ポピェラーサイエンス エ2月 12)
b) 発雷内容についての注釈
○このほかにlllぼしい作品をあげれば,トルストイの「復活」を日本流に翻案映爾化した山本薩夫監督の 陛雪崩」…(中略)…などがありました(映繭ファン 6月 i32)
○いま,集臼本の各地について糠え村け期をみたとき,いつごろまでならさしつかえないのか,その限界 を示すと,つぎのとおりです(家の光 11欝 188)
C) 一隅形式についての注釈
○換薔すれば七月藁十一襲{までは自然休会となっているPtンleンの話を,属本がやってみたらいい(棄洋
経重斉影了弱乏 6月9 田 54)
○法政大学院ビルは夜になると,ちょ「)ど入闘でいうと頭にあたるところに,鉢巻のよらに細く長くHO
鐡撒 UN王VERCI?Y GRADUATE SCHOOLという青い色のネオンがつく(知性13月 34)
d)根 拠
○まず渚水幾太郎氏の論文によれば,革紙政党が謁1『のヨ分の一をとったといってもけっして安心とい うことはできない(嬉性 11月 42)
○ルイスとは何度もやってるが,今迄の経験から考えると大したことはなかろう(ファイト 2月 24)
このほか,沈較の韮準(「〜にくらべれば(くらべると)」),話し手の判断であるむねの注釈(「懲え ば」「考えてみると」)などいくつかの小分けを立てることもできると思われるが,これらのあらわ す意味は微妙できちんと分類しきれない。
このヂ前おき」をふつ5の「客観的条件」から区別する特徴は,それが次元のちがうものをつな いでいるということである。すなわち,つぎにのべる客観的条件では,「ぱ」「と」などのついた従
属句も,これにつづく主文も,ともに話し手をはなれた客観的なできごとであるのに鮒して,前 おきのばあいは,主文のあらわすのは客観的なできごとであるが,従属旬の方は題目の提示にせ
よ主文への注釈にせよ,話し手のはたらきを示している。「ば∫と」などのついている語は,元来は動詞ないし助動詞であるが,ここではすでにその本来 のはたらきを失って,後題1調的なものになっているQ
Oしかしこの頃の娘は我が子でも親の意志のままにはゆかん。もしあれがどうしてもイヤだと云えば諦めて 下さるのじゃぞ(小説と読物 9鍔 360)
のばあい,「云えば」は話し芋をはなれた客観的なできごとであり,このことは,その動作の主体
「あれ」があきらかにされていることで示される。これに対して上にひいた例の「合作映画といえ ば」や「人間でいうと」では,「いt)」の主体はあきらかでない。このことは「前おき.1の騰徴の一一 っである。(ただし,客観的条件でも・一一,・般的な条幸1・で主語のない方が自然なものが少なくない から,これはそれほどきわだった特徴とはいえない。)
一 151 一
「前おき」と「客観的糸件1とのあいだには,ほっきりした線はひきにくい。かぞえ方によって多
〔15・2〕 少うごくはずだが,一応「前おき」
ば と たら 丁だ」「です」ヂますゴに
それ!以外に
一 ,16
86 110
29日1
に属するとおもわれるものの数を かぞえてみると,〔!5一. 2〕のよ5に なる。「〜ば」と「〜と」が大差ない のに対して,「〜たら」が少ないのが琶立っている。
(3) 客 観 白勺 条 イ牛
ここには,〔15.3〕のように,大多数の用例が属している。
〔15・3〕 このうち,おきかえられないものとして,まず
ば と たら主文に命令・すすめ・許可・希望・意志などの表現
292 482 186
(命令形・意志形とはかぎらない)がきたときの「〜
たら」「〜ば」があるQこれは「〜と」ではいえない。
○これは,お作りになったらすぐ召上って下さい(小説倶楽部 8月 79)
○妙められましたら別の器にとって,葱と生姜を取りのけます(若い女性 1月 198)
○出来ればそれはさけた方がよい(それいゆ 40号・159)
○よかったらお幽でになりませんか(講談倶楽部 4月 37)
○軍備に使う金があったら,教育や文化,生活の方に圓すべきだと思うようになってきた(文芸春秋 9 月 98)
○私と女房の名から一字ずつ取って洋樹(ひろき)としたら,という案も杜1ましたが(娯楽よみうり1月6 日 35)
○洪積土壌に限り播種後の覆土,鎮圧に注意すれば使ってさしつかえない(農業1せ界 3月 155)
0目違っていたら其の蒔は其の特で頭を下げればいい(葦 11月 38)
○震えのとまらぬ薬があったら飲みたいね(笑の泉 2月 57)
○まだ中等科だったころ,例のアメリカの女教師が「卒業したら何をするつもりか」というテストを皇太子 グループの全員に書かせたことがあった(キング 6月 70)
○いっか,私にふさわしい人にめぐり会ったら,結婚はするわ(主婦と生活 1月 206)
このよ弓な表現のものの数は〔15。4〕のとおりである。
〔15.4〕 「と」にこのよ5な用法がないの
ば と たら「だ」「です」「ます」に
その他に 6 (2)
2戸0
13
は,「と9が前件と後件とのあいだ の自然・当然な結びつきをあらわ しているためであろう。つまり後 件が前件の当然の結果として展開されるために,意志によって左右されることが後件たりえな いのだと思われる。なお,上にあげた例のうち,最初の「お作りになったらすぐ召上って下さい」は,rば」ではお きかえられない。例が少ないのでこれについて分析することができないが,つぎの条件がみた されたばあいは,「たら」以外は使えないようである。
1) 後件が命令であること
2)前件が動作性の表現であること
3) 前件と後件の主体が同じであること 一一 152 一上で「と1のところにかっこをつけてあげた2例は,つぎの二つである。このように後件が意 志であるとき,前件の主体が後件の主体と一致しなければ(つまり二人称,三人称であれば)
「と」が使えるようであるが,くわしい条件はわからない。(「受付けない」は意志ではないとも みられる。)
○これからは,竹あんさんか,竹兄秘とかいわねえと承知しねえぞッ(読切小説集 9月 96)
○このニュージョージア州では,この手続をする前,必ずパリアデス公園にある「愛のS・ンネル」を,その 嚢君と腕を組んで連続六十六回通らなければならないことになっているそうです。そうしないと乎続を 受付けないというわげです(婦人繭報 7月 246)
つぎに,やはり「〜と」でおきかえにくいものに,「〜さえ〜ば」という十分条件の表現がある。
これには
一・般的な条件(超fS寺)
○女という奴は,肉体を奪いとりさえずれば,必ず寄りかかってくるものなんだ(週刊読売 3月4日 49)
一般約な条件(過去)
○嫁をもらったときにゃジマンで/入に会いさえすりゃいったもんだ/「今度のあ ええぞな/なんしろ おみや一さん/いくずりもって来たと 思ヤーす/牛車に三杯だぞな一}(人生乎帖 5月 122)
高来の仮定条件
0つまり,この娘さんは切符を失くしたのだから,行先までの代金さえ払えば,このまま網走まで行って もいいわけなんでしょ「)ね(小説サロン 1月 215)
などがあるが,どれも「〜と」でいうのはむずかしいようである。r〜さえ〜たら」という奮い方 はありうるはずだが,標本には現われなかった。
「〜さえ〜ば」の形の用例は15例あった。
動作がひきつづいておこったことを示す用法が「と」にはある。43例。これは「たら」でも「ば」
でもおきかえられないσ
○久栄は,乞田のそばに霧り添って坐ると彼のひざに手をおいた(キング 7月 77)
○痴者村越欣弥は気を揉む白糸を馬に乗せると,金沢までつつ走った(映爾ファン 8月 169)
○仲旧風の男が素早く書状を門内に押しこむとさつと走り去った(映爾ファン 12月 175)
などのように,主語が前件よりも前にあるばあいにくらべて,
○奥まった椅子に腰をおろすと,また,平助は懐中から手紙を出した(小親の泉 4月 259)
○映画館を出ると,英一はすぐ不三子に別れを告げた(講談倶楽藻 2月 34)
O焼場から嚇}るとかめは酒を飲み始め,仲間が止めるのもきこうとしなかった(小説春秋 10月 161)
のように,霊語が前件と後件とのあいだにあるときは,まだしも「たら」にしたばあいの不自然 さがすくないかもしれない。
一般に,条件表現とは,前件と後件とが独立した現象である場合のものであるが,この「と」
によってつながれる二つの動作は,むしろ両者を通じて一貫した全体をなすものであり,動作 の主体も前件のはじまる以前にすでに後件の実行を予定しているようなものであることが多
い。それで厳密には,これを条件表現というのは適i当でなく,蒔闘的な継起の表現というべき であろう。主語が前件の前にあるとき,この「と」は「たら」でなくて「て」でおきかえることができる。
一エ53一