ない状況が全国的にみられ、小学校入学を機 に利用できないケースが各地で起きている。
財政面からみた学童保育の取り組み状況 は、国の補助基準注3を「超えている」都道府 県が半数以上ある一方で、「下回る」が1割 あり、施設当りの運営費補助額には3倍の差 があるなど大きな格差がみられる。また、実施 している市区町村の学童保育運営費は、国の 枠組みの3倍前後と過重な負担をしている。
市区町村では、解消が課題となる大規模施 設をかかえ、また、国の補助対象外の9人以 下の小規模施設等があり、補助が無いなか
「児童数の減少により閉鎖が余儀ない」など 格差が拡大している。
学童保育は第2種社会福祉事業として都道 府県に届出義務注4があるが、届出数の把握 率には差があり、指導監督は低率にとどま る。全国的に待機児童が問題となるなか、市 区 町 村 が 把 握 し て い る 中 途 退 所 児 童 は 3万8千人にのぼり、質の拡充に課題があ る。一方で、都道府県は市区町村の実施実態
(指導員数、中途退所児童数など)の把握率 が低く、市区町村との連携の取れた消費者の 利用環境は未整備である。
市区町村は1万件を超えるケガ・事故の報 告(2008年度)を受けているが、都道府県の 把握は101件にとどまるうえ、保険の請求件 数の把握も無く、広域的に安全を守る環境整 備に問題がみられた。
これらを踏まえ、必要とする全ての子ども が、どこに住んでいても安全な生活の場とし て利用できる制度・システム構築に向けた環 境整備のあり方などについて検討を重ね、行 政へ向けて以下の6つの提言をまとめた。
【提言】
①市区町村との連携を強化し、社会的基盤と しての環境を整備する
②必要とする子どもが利用できるように学童 保育サービスの空白自治体を解消する
③第2種社会福祉事業の届出を徹底し、研修 を通して質を拡充する
④消費者へ情報提供を行い、利用に際して契 約書等を交付する
⑤ケガ・事故情報を広く収集・活用する
⑥学童保育にも災害共済給付制度を適用する
⑴実施状況(2009年5月現在)
・管内の市区町村の実施率が100%の都道府 県は、10府県。一方、50%台もあり実施状 況に大きな格差。未実施は195区町村で、
37都道府県(78.7%)にわたっている。
・40人以下の施設は48.1%にとどまり、71人 以 上 の 大 規 模 施 設 は1,543か 所(12.6%)
で、全都道府県にわたり、うち8都道府県 は各50か所を超える。
・市区町村が把握している待機児童は7,539 人。中途退所児は3万8千人で、全都道府 県にわたる。
学童保育は子育て世代の就労継続の上で高 いニーズがあるが、実施が市区町村の努力義 務にとどまるため、財政的、政策的な判断で 未実施の区町村が全国的にみられる。そのた め、就学前に保育所(自治体に実施義務があ る)を利用していた子どもが小学校入学を機 に利用できないケースがおきている。
⑵運営費
・補助が国の基準を上回る都道府県が半数以 上(53.2%)、下回るが1割ある。1施設 あたりの補助額には3倍の差がみられる。
注3)公費の枠組は、国、都道府県、市区町村は同率(各 1/6で公費分を3/6とし、残りの3/6を保護者負担。
政令市・中核市は道府県負担0で2/6負担)、2009 年度予算では、開設日250日、36人~70人運営費モ デルは公費242.6万円(各80.9万円)、運営費総額 176億2200万円、24,153か所分。
注4)都道府県知事(政令市・中核市長)は、学童保育 事業(20人以上)の開始後1ヶ月以内に第2種社 会福祉事業の届出を受け、その後は指導監督、許 可の取消し等が可能となる。
7.学童保育サービスの環境整備に関する調査研究
・市区町村の年間運営費の1施設あたりの負 担額は299万円(49.2%)であり、国の補 助基準額80.9万円の3.7倍である。
1ヶ月の1施設あたり(利用児童数40.1人)
の運営費(指導員の人件費や光熱水費など)
の平均は50.7万円であり、子どもの生活環境 の確保、指導員の処遇は運営費からみても厳 しい状況にある。保育士資格や施設の最低基 準等があり全国的に実施されている保育所と 比べて条件整備が遅れている。
⑶第2種社会福祉事業の届出状況
・都道府県で、届出施設数の回答があったの は36府県(76.6%)、対象施設の届出率は 25.5%~100%と大差。届出総施設は7,450 か所であり、都道府県総施設の54.6%(20 人以上届出対象施設の63.7%)にとどまる。
・市区町村では、対象施設数の記入がある自 治 体 は63.3%。 届 出 先 で あ る 政 令 市 は 86.7%、中核市は80.7%。届出施設は6,548 か所であり、総施設の53.3%にとどまる。
・「施設への立ち入り調査を行った」3.4%、
政令市は20.0%、中核市は6.5%。「届出の 無い施設へ届出を促した」7.2%、政令市 は20.0%、中核市は9.7%。
指導監督や質を確保する上で重要な、立ち 入り調査や無届施設への届出の促進は低率で あった。
⑷指導員数の把握、研修事業
・都道府県の指導員数の把握は38.3%にとど まり、延べ19,722人。
・ほとんどの都道府県(95.7%)が研修を実 施し(1回~22回)、延べ回数は210回、延 べ参加人数は23,292人。
研修内容は「障害児への対応」80.0%、「学 童保育・指導員の役割」77.8%など。
・市区町村では、「常勤指導員数を把握」は 82.8%(19,185人)、「非常勤等指導員数を 把握」84.6%(26,329人)、指導員の総合計 45,514人。常勤指導員に比べて非常勤等指 導員が多く、1.4倍である。
・研修を実施している市区町村は54.1%(延 べ2,429回)。
⑸学童保育が拡充しない理由
・学童保育が拡充しない理由として、都道府 県調査では、「施設建物の確保が困難」
97.9%、「指導員の確保が困難」91.5%、「国 の補助金額が低く、自治体の持ち出し金額 が多い」87.2%、「市区町村の実施責任が
『利用推進の努力義務』にとどまっている」
63.8%、「保育所のように最低基準が決め られていない」53.2%が半数を超えている
(図)。
図 学童保育の内容が充実しない主な理由(都道府県調査より)
施設建物の確保が困難 指導員の確保が困難 国の補助金額が低く、自治体の持ち出し金額が多い 市区町村の実施責任が「利用推進の努力義務」にとどまっている 保育所のように最低基準が決められていない 都道府県の財政措置が不安定 国の財政措置が不安定
97.9
0% 50% 100%
0.0 2.1
91.5 4.3 4.3
87.2 8.5 4.3
63.8 31.9 4.3
53.2 40.4 6.4
48.9 46.8 4.3
34.0 59.6 6.4
無回答 いいえ
はい
⑹学童保育利用の適正化への取り組み
・都道府県調査では、「管内の窓口等で施設の 状況や入所の手続きを情報提供している」
23.4%。「学童保育事業に関する苦情相談の 窓口を開設している」12.8%。
市区町村に対する指導項目は、「窓口等で施 設の状 況や入 所 手 続きを情 報 提 供」は 19.1%、「利用者に一方的に不利な内容の誓 約書の是正」は4.3%、「契約書等に中途解 約の清算の規定の明示」は2.1%。「入所手 続き時に、契約書を交付」を指導している は8.5%にとどまる。
・市区町村調査では、「入所の受付をしている」
は、市区町村が59.2%、施設34.8%、運営主 体36.1%。「入所の決定をしている」は、市区 町村が68.1%、施設14.8%、運営主体36.2%。
「窓口等で施設の状況や入所手続きを情報提 供している」85.4%。「入所手続き時に、契約 書を交付している」13.0%にとどまる。
自治体の利用受付への関与は、自治体や運 営主体によって差があり、自治体の窓口等で 消費者に対して全施設に関する情報提供や入 所手続きができる状況には無い。利用者に不 利益が無いように、契約内容の明文化や契約 書の交付の取り組みは低率で未整備である。
⑺ケガ・事故件数・把握
・都道府県のケガ・事故件数の把握は、「市区 町村から報告を受けている」が29.8%、「件数 を集計している」は14.9%にとどまる。2008年 度のケガ・事故総件数101件(うち入院1件、
死亡0件)。傷害保険や賠償責任保険の請求 件数を把握している都道府県はない。
・市区町村調査では、2008年度のケガ・事故 の総報告件数は11,034件(うち、入院件数 110件、死亡件数0件)。
市区町村には1万件超のケガ・事故の報告が あるが、都道府県は101件(1%)に過ぎない。
2008年7月に、学童保育中に児童2名が死亡 する痛ましい水難事故が発生しているが、調
査では死亡事故の報告は無く、現状収集・報 告体制のネットワークに漏れがみられる。
⑻ケガ・事故の具体例・傷害保険
・市区町村から寄せられたケガ・事故の事例 4,804件から、発生場所をみると、「校庭・
園庭(球技中、ブランコなど固定遊具)」
44.9%、「生活室・保育室」20.2%、「遊戯室」
13.5%でのケガ・事故が多い。
・71人以上の大規模施設では通院日数1週間 以上のケガ・事故が多く、支払われた保険 金額は5,000円以上が60.7%であり、人数が 多い施設で重症化の傾向がある。
・傷害保険等で問題と感じているのは、「小学 生の集団活動中のケガ・事故であるが、災 害共済給付の適用を受けられない」「補償範 囲が限定され、保育活動のすべてをカバー できる保険がない」「保険料が高いので、補 償が十分な保険に入れない」が上位である。
学童保育の事故は「校庭・園庭」で起こる ことが多く、災害共済給付制度が適用される 小学校との共通性がみられる。
調査研究の結果・要望を受け、厚生労働省 雇用均等・児童家庭局育成環境課健全育成係 から都道府県等の児童健全育成担当係に対 し、事務連絡「放課後児童クラブの運営に 当っての留意について」(平成22年3月18日)
が発出され、第2種社会福祉事業の届出の徹 底、契約書の是正や、ケガ・事故への対応等 について周知された。なお、これに合わせて 本調査の報告書(概要版)が資料として送付 され、活用されている。
また、厚生労働省育成環境課健全育成課長 からは「放課後児童健全育成事業(放課後児 童クラブ)における事故防止等について」(平 成22年3月23日)において、事故の報告様式 が示されるなど、学童保育における事故の実 態把握等へ向けた取り組みが進められている。
(情報部)