第 2 章 距離空間と位相空間 119
2.8 閉包 , 触点
定義 2.8.1. X を位相空間, A ⊂ Xを部分集合とする. Aを含むX の閉集合すべての共 通部分をAの閉包(closure) といい, AaまたはAで表す.
Aa = \
F⊃A F:closed
F
(X は閉集合なので, Aを含む閉集合は少なくとも一つは存在することに注意.) 定理 2.5.2 F3により, Aa は閉集合である. またAを含む(包含関係に関して) 最小の閉集合である. (明らかに Aa ⊃Aであり, F ⊃Aが閉集合であればF ⊃Aaである.)
問 111. A ⊂B⇒Aa⊂Ba. 問 112. A: closed ⇔A=Aa.
定義を見ると分かるように内部と閉包には関係がある. 定理 2.8.2. Aac =Ac◦.
証明. Aa⊃AゆえAac ⊂Ac. Aac は開集合でAc に含まれるのでAac ⊂Ac◦.
一方,Ac ⊃Ac◦ゆえA⊂Ac◦c. Ac◦cは閉集合でAを含んでいるのでAa⊂Ac◦c. よっ てAac ⊃Ac◦.
なお, 定義の式を直接変形しても分かる. 系 2.8.3. A◦c =Aca.
証明. 上の定理をAc に適用すればよい. 系 2.8.4. Aa =Aec =A◦tAf.
証明. Aac =Aco =Aeで, X =A◦tAf tAeであったから, Aa =Aec =A◦tAf. 定義 2.8.5. A ⊂Xを部分集合, x ∈X とする.
xがAの触点(adherent point) である⇔
def xの任意の近傍U に対し, U ∩A6=∅. 定義より明らかに, xがAの触点であることと, xがAc の内点ではないことは同値で ある.
気分としては(距離空間の場合は次の練習問題から分かるように実際にそうであるが), xがAの触点であるというのは, xのいくらでも近くにAの点があるということ.
問 113. U∗(x)をxの基本近傍系とする. このとき xがAの触点⇔ ∀U ∈ U∗(x) :U ∩A6=∅.
定理 2.8.6. Aの閉包AaはAの触点全体のなす集合である. Aa=
x∈X xはAの触点 . すなわち, x∈Aa ⇔xの任意の近傍U に対し, U ∩A 6=∅. 証明.
x ∈Aa ⇔x∈Ac◦c
⇔x6∈Ac◦
⇔xはAc の内点ではない
⇔xはAの触点.
系 2.8.7. 1次元ユークリッド空間Rの空でない有界閉集合は最大元, 最小元を持つ. 証明. A ⊂ Rを空でない有界閉集合とする. A は空でない有界集合だから上限が存在す る. s= supAとおく. 命題 1.7.29より, 任意のε > 0に対し(s−ε, s]∩A6=∅であるか らsはAの触点ゆえs ∈ Aa. Aは閉集合だからAa =A である. よってs ∈ Aとなり, s = maxA. 最小元についても同様.
系 2.8.8. X が距離空間のとき, x ∈Aa ⇔d(x, A) = 0.
証明. X を距離空間とする. {Uε(x)}ε>0 がxの基本近傍系であることに注意すれば, 定 理 2.8.6, 問113より,
x∈Aa ⇔ ∀ε >0 :Uε(x)∩A 6=∅
⇔ ∀ε >0,∃a ∈A:d(x, a)< ε
⇔ inf
a∈Ad(x, a) = 0.
例 2.8.9. n次元ユークリッド空間Rnでは開球の閉包は閉球であり, 境界は球面である, すなわちUr(x)a=Br(x), Ur(x)f =Sr(x). (ただしr >0.)
証明. 例えば上の定理 2.8.6を使えば, 例 2.7.4と同様にしてUr(x)a = Br(x)が分かる. 詳細は練習問題. Ur(x)f =Ur(x)a\Ur(x)◦ =Br(x)\Ur(x)よりUr(x)f =Sr(x).
問 114. n= 2のとき, 上の等式Ur(x)a =Br(x)を示せ. また,距離空間において一般に Ur(x)a=Br(x)は成り立つか?
例 2.8.10. 1次元ユークリッド空間Rの部分集合Qについて,Qf =Qa=Rである. 実
際, 補題 2.1.7および定理 2.7.11からQf =Rが分かる. 詳細は練習問題.
問 115. 上の等式Qf =Qa =Rを示せ.
定理 2.8.11. A, B ⊂X を部分集合とするとき次が成り立つ. A1 Aa ⊃A.
A2 (A∪B)a =Aa∪Ba. A3 (Aa)a=Aa.
A4 Xa=X, ∅a =∅.
証明. 定理 2.7.7, 2.8.2を使えば
(A∪B)a = (A∪B)c◦c = (Ac∩Bc)◦c = (Ac◦∩Bc◦)c =Ac◦c∪Bc◦c =Aa∪Ba 等として示せる. もちろん別の方法もある.
注意 . 共通部分については, (A∩B)a ⊂ Aa ∩Ba が成り立つが等号は一般には成立し ない.
1 次元ユークリッド空間 R の部分集合 A = [−1,0), B = (0,1] を考えると, Aa = [−1,0], Ba= [0,1]であるから,Aa∩Ba ={0}だが(A∩B)a =∅a =∅.
もっと極端な例としては, Q,Qc ⊂Rを考えると, 先にみたようにQf =Qa =R. よっ てQcf =Qf =RだからQca =R. したがってQa∩Qca =R. 一方(Q∩Qc)a =∅. 問 116. 上の例の(0,1]a = [0,1]を示せ.
問 117. (A∩B)a ⊂Aa∩Baを示せ. 定理 2.8.12. Xを集合とする.
写像(−)a: P(X)→ P(X)が定理 2.8.11のA1~A4をみたすとする. このとき, 部分 集合A⊂X に対し,
Aが閉集合である⇔
defA =Aa
と定めることによりX に位相が入り, Aaはこの位相に関するAの閉包である. また, 位相空間の閉包からこのようにして定めた位相はもとの位相と一致する.
問題集 . 87(1)-(5)(閉包を求めよ.), 164(閉包を求めよ.)なお,問題集ではAの閉包を
Aと書いている.