第 2 章 距離空間と位相空間 119
2.13 連続写像
問 138. X を位相空間, (Y, d) を距離空間とする. このとき, 写像 f: X → Y が点 a ∈ X で連続 ⇔任意の ε > 0 に対し, 点a のある近傍U が存在して, x ∈ U ならば d(f(x), f(a))< εとなる.
位相空間の間の連続写像は以下のように特徴付けられる. 定理 2.13.5. f:X →Y を写像とする. 次は同値.
1. f は連続.
2. 開集合のf による逆像は開集合.
すなわち, Y の任意の開集合Oに対し, f−1(O)はX の開集合である. 3. 閉集合のf による逆像は閉集合.
すなわち, Y の任意の閉集合F に対し, f−1(F)はXの閉集合である. 4. X の任意の部分集合Aに対し, f(Aa)⊂f(A)a.
証明. 1 ⇒ 2) f が連続とし, O 6= ∅をY の開集合とする. 任意のx ∈ f−1(O)に対し, f(x) ∈ O であり, Oは開集合だから, O はf(x)の近傍である. f は点xで連続なので,
命題 2.13.4よりf−1(O)はxの近傍である.よって定理 2.6.3より f−1(O)は開集合で
ある.
2⇒1) 任意の開集合の逆像は開集合であるとする. x∈X とし, V をf(x)の近傍とす る. 近傍の定義から, f(x) ∈O⊂V となる開集合Oが存在する. U =f−1(O)とおけば, 仮定よりU は開集合であり,x ∈U であるから, U はxの近傍である. f(U)⊂O⊂V で あるから, f は点xで連続. xは任意にとったのでf は連続.
2⇔3はやさしい.
3 ⇒ 4) 任意の閉集合の逆像が閉集合であるとする. f(A) ⊂ f(A)a であるから A ⊂ f−1(f(A)a). f(A)a は閉集合であるから仮定より f−1(f(A)a)も閉集合. よって, Aa ⊂f−1(f(A)a), すなわち, f(Aa)⊂f(A)a.
4 ⇒ 3) 任意の A に対し, f(Aa) ⊂ f(A)a であるとする. F ⊂ Y を閉集合とする. f f−1(F)
⊂F に注意すると, 仮定よりf f−1(F)a
⊂f f−1(F)a
⊂Fa =F. よっ てf−1(F)a ⊂f−1(F)となり, f−1(F)a =f−1(F). したがってf−1(F)は閉集合. 問 139. 上の2⇔3を示せ.
命題 2.13.6. f:X →Y がa∈X で連続⇔ ∀A⊂X(a ∈Aa) :f(a)∈f(A)a.
証明. ⇒. ∀V ∈ U(f(a)),∃U ∈ U(a) : f(U) ⊂ V. a ∈ Aa とすると, U ∩A 6= ∅ ゆ えf(U ∩A) 6= ∅. V ∩f(A) ⊃ f(U)∩f(A) ⊃ f(U ∩A)ゆえV ∩f(A) 6= ∅. よって f(a)∈f(A)a.
⇐. 対偶を示す. f がaで連続でないとする. ∃V ∈ U(f(a)),∀U ∈ U(a) :f(U) 6⊂V. A = f−1(Vc) = f−1(V)c とおく. f(U) 6⊂ V ⇔ U 6⊂ f−1(V) ⇔ U ∩ A 6= ∅ に 注意すると, a ∈ Aa である. 一方, 明らかに f(A) ⊂ Vc ゆえ f(A)∩V = ∅ だから f(a)6∈f(A)a.
例 2.13.7. X を位相空間, Aをその部分空間とするとき, 包含写像i: A → X は連続で ある.
問 140. なぜか. さらに次が成り立つ.
定理 2.13.8. X を位相空間, A をその部分集合とする. A の相対位相は, 包含写像 i: A →Xが連続になるようなAの位相のうち最も弱いものである.
証明. 上の例 2.13.7で見たように, Aに相対位相をいれるとiは連続である.
また, i: (A,O)→Xが連続であれば, X の任意の開集合Oに対しi−1(O) =A∩Oは 開集合だからA∩O∈ O. すなわち, 相対位相はOより弱い.
例 2.13.9. X, Y を位相空間とする.
1. X が離散位相空間のとき, 任意の写像f: X →Y は連続である. 2. Y が密着位相空間のとき, 任意の写像f: X →Y は連続である. 問 141. なぜか.
例 2.13.10. X を集合, O1,O2 をX の位相とする. このとき恒等写像1X: (X,O1) → (X,O2)が連続であることと, O2 ≤ O1であることとは同値である.
問 142. なぜか.
定理 2.13.11. X, Y, Z を位相空間とする.
1. f: X →Y, g: Y →Z がともに連続ならば, 合成g◦f: X →Z も連続である. 2. 恒等写像1X: X →X は連続である.
証明. 2は例 2.13.10で見た. 1は練習問題. 問 143. 1を示せ.
もちろん, より強く, 次が成り立つ.
問 144. X, Y, Z を位相空間,f: X →Y,g: Y →Zを写像とする. f が点a∈X で連続
であり, gが点f(a)∈Y で連続であれば, 合成g◦f: X →Z は点a∈X で連続である. 部分空間への写像の連続性を調べる際, 次は有用である.
命題 2.13.12. X, Y を位相空間, B⊂Y を部分空間, i: B→Y を包含写像とする. この とき,
写像f: X →Bが連続⇔合成i◦f:X →Y が連続. 問 145. 証明せよ.
連続写像と関連して次の概念もしばしば使われる.
定義 2.13.13. X, Y を位相空間, f: X →Y を写像とする.
1. f が開写像(open mapping) である⇔ X の任意の開集合の像がY の開集合で ある.
2. f が閉写像(closed mapping) である⇔ X の任意の閉集合の像が Y の閉集合 である.
定義からf が開(閉)写像であればf(X)はY の開(閉)集合である. 写像が連続, 開写像, 閉写像であるというのはそれぞれ独立した概念である.
例 2.13.14. X の部分空間Aの包含写像i: A →X は連続である(例2.13.7)が, Aが開
(閉)集合でなければ開(閉)写像ではない.
問 146. Aが開集合のとき, 包含写像は開写像か? 閉集合の場合はどうか?
例 2.13.15. 1. Y が離散位相空間のとき, 任意の写像f: X → Y は開かつ閉写像で ある.
2. X が密着位相空間のとき, 写像f: X → Y が開(閉)写像であることとf(X)が 開(閉)集合であることは同値である.
(例 2.13.9と比較せよ.)
例 2.13.16. X を集合, O1,O2 をX の位相とする. このとき恒等写像1X: (X,O1) → (X,O2)が開(閉)写像であることと,O1 ≤ O2であることとは同値である. (例 2.13.10 と比較せよ.)
例 2.13.17. 位相空間X の恒等写像は連続かつ開かつ閉写像である. 問 147. 開写像の合成は開写像か?
同相写像について考える.
定理 2.13.18. X, Y を位相空間, f: X →Y を連続写像とする. 次は同値. 1. f は同相写像.
2. 連続写像g: Y →X で, g◦f = 1X, f ◦g = 1Y をみたすものが存在する. 3. f は全単射かつ開写像.
4. f は全単射かつ閉写像.
証明. 1⇒2は明らか(g = f−1 とおけばよい). 2⇒1も明らか. 実際このような写像g があれば, f は全単射でありg = f−1 である. 1⇔3,4も明らか. 実際, f が全単射である とき, f が開写像(閉写像)であることとf−1が連続であることは同値である.
注意 . 連続な全単射は必ずしも同相写像とは限らない. 実際O1,O2 をX の位相でO2 <
O1であるものとすると, 例 2.13.10で見たように, 恒等写像1X: (X,O1) →(X,O2)は 連続な全単射であるが, 逆1X: (X,O2)→(X,O1)は連続ではない.
注意 . f: (X,OX) → (Y,OY)が連続であれば, 逆像を取る写像f∗: P(Y) → P(X)は f∗(OY)⊂ OX をみたす:
P(Y) f
∗ // P(X)
OY
∪
//OX
∪
f が(連続な)全単射であれば, f∗: P(Y) → P(X)も全単射であるが, f∗(OY) = OX
であるとは限らない. f が同相写像の場合はf∗(OY) =OX となる.
問 148. 写像f: [0,1)→S1 をf(θ) =e2πiθで定めると, f は連続な全単射であるが, 同 相写像ではない. ここで, [0,1)にはユークリッド距離から定まる位相をいれている. また CとR2を自然に同一視してS1 ⊂Cとみている.
例 2.13.19. 1次元ユークリッド空間の部分空間(−1,1)から1次元ユークリッド空間R への写像f: (−1,1)→Rをf(x) = tanπ2xで定めると,f は同相写像である.
例 2.13.20. n次元ユークリッド空間Rnの点x = (x1, . . . , xn)に対し, Rn+1において Sn の北極N = (0, . . . ,0,1)と点(x1, . . . , xn,0)を結ぶ直線がSnと交わる(N 以外の)
点をϕ(x)とする. これにより写像ϕ: Rn →Sn− {N}が定まり, これは同相写像である. この写像の逆写像をN からの立体射影(stereographic projection) という.
問 149. 1. ϕ(x)を具体的に(x1, . . . , xnを用いて)あらわし,ϕが連続であることを 示せ.
2. ϕの逆写像を求め, ϕの逆写像が連続であることを示せ.
定義 2.13.21. 同相写像によって保たれる性質を位相的性質 (topological property) という.