第 3 章 位相空間 175
3.2 直積と直和
定義 3.2.1. (X,OX), (Y,OY)を位相空間とする. 直積集合 X ×Y に, 部分集合の族 B = {U ×V U ∈ OX, V ∈ OY} が生成する位相をいれた位相空間を X とY の直積 空間(product space), あるいはデカルト積(Cartesian product) といい, この位相 を直積位相(product topology)という.
普通, とくにことわらなければ, 直積集合には直積位相をいれる.
命題 3.2.2. B={U ×V U ∈ OX, V ∈ OY}は直積位相の開基である. すなわち, 直積 位相の開集合はX の開集合とY の開集合の直積の和集合で書けるもの全体である. 証明. 直積位相は Bの生成する位相であるから, 定理 3.1.11よりB は準基である, すな わち,
Bˆ: = (
U ⊂X ×Y U = \
i∈F
Bi, F:有限集合, Bi ∈ B )
が開基である. Bˆ=Bであることを示そう. B ⊂ Bˆ を示せばよい. X ∈ OX, Y ∈ OY で あるからX ×Y ∈ Bである(0個の元の共通部分). Ui×Vi ∈ B (1 ≤i ≤ n)に対し, 有限個の開集合の共通部分は開集合であるから,
\n i=1
(Ui×Vi) =
\n i=1
Ui
!
×
\n i=1
Vi
!
∈ B.
注意 . 問題集197を使ってBが開基の条件をみたすことをチェックしてもよい. 定理 3.2.3. X, Y, Z を位相空間, pX: X ×Y →X, pY : X×Y →Y を射影とする.
1. X×Y の直積位相は,pX とpY がどちらも連続になるような最弱の位相である. 2. pX, pY は開写像である.
3. 写像f: Z →X×Y が連続である⇔pX◦f, pY ◦f がどちらも連続. 証明. X×Y の直積位相をOとする.
1. pX: (X×Y,O)→X, pY : (X ×Y,O)→Y が連続であることは明らか.
O0 を X × Y の位相で pX: (X × Y,O0) → X, pY : (X ×Y,O0) → Y がど ち ら も 連 続 で あ る も の と す る. O ≤ O0 で あ る こ と を 示 そ う. O は B = {U ×V U ∈ OX, V ∈ OY} が生成する位相, すなわち, B を含む最弱の位相
であったから, B ⊂ O0 であることを示せばよい. U ∈ OX, V ∈ OY とすると, 仮 定からp−X1(U), p−Y1(V)∈ O0 である. よって
U ×V = (U ×Y)∩(X×V) =p−X1(U)∩p−Y1(V)∈ O0.
2. 開基の元の像が開集合であることを示せばよいが, pX(U×V) =U, pY(U ×V) = V であるから明らか.
3. 連続写像の合成は連続なので⇒は明らか.
pX◦f,pY ◦f がどちらも連続であるとする. 開基の元の逆像が開集合であることを 示せばよい. U ∈ OX,V ∈ OY とすると,仮定から(pX◦f)−1(U),(pY◦f)−1(V)∈ OZ である. よって
f−1(U ×V) =f−1((U ×Y)∩(X ×V))
=f−1(U ×Y)∩f−1(X ×V)
=f−1 p−X1(U)
∩f−1 p−Y1(V)
= (pX ◦f)−1(U)∩(pY ◦f)−1(V)∈ OZ.
例 3.2.4. (X, dX), (Y, dY)を距離空間とする. X×Y 上の距離 d((x, y),(x0, y0)) = max{dX(x, x0), dY(y, y0)} を考える.
X×Y の距離dの定める位相と直積位相は一致する. 問93で見たように, 距離dの定める位相と,p
d2X+d2Y, dX+dY の定める位相は同じ であったから, これらの定める位相と直積位相も同じ.
特にR2 =R×Rのユークリッド位相と直積位相は一致する. 証明. まず
Uε((x, y)) =Uε(x)×Uε(y) である事に注意する. 実際,
(x0, y0)∈Uε((x, y))⇔d((x, y),(x0, y0)) = max{dX(x, x0), dY(y, y0)}< ε
⇔dX(x, x0)< ε かつ dY(y, y0)< ε
⇔x0 ∈Uε(x)かつ y0 ∈Uε(y)
⇔(x0, y0)∈Uε(x)×Uε(y) である.
Od を距離dの定める位相, OP を直積位相とする.
ε 近傍全体は Od の開基であり, Uε((x, y)) = Uε(x) ×Uε(y) ∈ OP であるから, Od ⊂ OP.
一方, {U ×V U ∈ OX, V ∈ OY} がOP の開基であるから, OP ⊂ Od を示すには, U ×V ∈ Od を示せばよい.
(x, y) ∈ U ×V とする. ある εi > 0 が存在し, Uε1(x) ⊂ U, Uε2(y) ⊂ V となる. ε = min{ε1, ε2}とおくと, ε >0で,
Uε((x, y)) =Uε(x)×Uε(y)⊂Uε1(x)×Uε2(y)⊂U ×V となるので, U ×V ∈ Od.
問 157. 対角線写像∆ : X →X×X は連続である.
問 158. pX: X×Y →X が閉写像とはならない例を挙げよ.
問 159. y0 ∈ Y とする. 写像iy0: X →X× {y0}をiy0(x) = (x, y0)により定める. iy0 は同相写像であることを示せ. ただし, X × {y0}にはX×Y からの相対位相をいれる. 問 160. X1, X2, Y1, Y2を位相空間とする.
1. fi: Xi → Yi を連続写像とする. このとき, (f1×f2) (x1, x2) = (f1(x1), f2(x2)) で与えられる直積空間の間の写像
f1×f2: X1×X2 →Y1×Y2
は連続である.
2. X1とY1, X2とY2が同相であればX1×X2 とY1×Y2は同相である.
問 161. (0,1) × [0,1) と [0,1] × [0,1) は 同 相 で あ る こ と を 示 せ. た だ し (0,1),[0,1),[0,1]⊂Rは1次元ユークリッド空間の部分空間.
注意 . (0,1) と[0,1]は同相ではない (後の節参照). X ×Z とY ×Z が同相であって も, X とY が同相になるわけではない. 別の言い方をすれば, X とY は同相ではないが, X×Z とY ×Z が同相となることもある.
問題集 . 203, 204, 205, 206
定義 3.2.5. {(Xλ,Oλ)}λ∈Λ を位相空間の族とする. 直積集合Q
λ∈ΛXλ に, 部分集合
の族 [
λ∈Λ
p−λ1(O) O∈ Oλ
が生成する位相 (この位相を直積位相 という) をいれた位相空間を, 族{(Xλ,Oλ)}λ∈Λ
の直積空間または弱位相による直積空間という. ただしpλ: Q
Xλ→Xλは標準的射影.
直積集合には普通とくにことわらなければ直積位相をいれる. 命題 3.2.6.
B = (Y
λ∈Λ
Aλ ある有限集合L⊂Λが存在して,λ ∈LならばAλ ∈ Oλ, λ6∈LならばAλ =Xλ
)
は直積位相の開基である. 証明. S
λ∈Λ
p−λ1(O) O∈ Oλ の元の有限個の共通部分としてあらわされる部分集合 全体がBである.
直積位相は定理 3.2.3と同様な性質をみたす(問題集201を参照).
問題集 . 200, 201 注意 . 直積集合Q
λ∈ΛXλには, Bbox:=
(Y
λ∈Λ
Oλ ∀λ∈Λ : Oλ ∈ Oλ
)
が生成する位相(これを箱位相(box topology) という)をいれることもできる. Λが 有限集合の場合は箱位相と直積位相は一致するが, 一般には箱位相の方が直積位相よりも 強い. 一般には箱位相では問題集201(4),(5)に相当することが成立しない.
定義 3.2.7. {(Xλ,Oλ)}λ∈Λ を位相空間の族とする. 非交和X =`
λ∈ΛXλに, 位相 O ={O⊂X ∀λ∈Λ : O∩Xλ∈ Oλ}
= (
O= a
λ∈Λ
Oλ Oλ∈ Oλ
)
を与えた位相空間(X,O)を族{(Xλ,Oλ)}λ∈Λの位相和という. 定理 3.2.8. X = `
λ∈ΛXλを位相和, iλ: Xλ → X を標準的包含写像とする. 位相和の 位相は, 全てのiλが連続となるような最強の位相である.
証明. O を位相和の位相とする. 明らかにiλ: (Xλ,Oλ) → (X,O)は連続である. 実際, O ∈ Oとすると, i−1λ (O) =O∩Xλ ∈ Oλ.
O0 を X の位相で, 任意の λ ∈ Λ に対し iλ: (Xλ,Oλ) → (X,O0) が連続である ものと する. O0 ≤ O であ る こと を 示 そう. O ∈ O0 とす る. 各 λ ∈ Λ に対 し, O∩Xλ =i−1λ (O)∈ Oλであるから, O∈ O である.
問 162. iλは開写像かつ閉写像である. 問 163. 各XλはX =`
Xλの開かつ閉集合である.
問 164. Rを1次元ユークリッド空間とし, Rの部分空間A, B をA ={x∈R x > 0}, B = {x∈R x ≤0}により定める. このとき, 恒等写像 id : A`
B →Rは連続である が, 同相写像ではない. (実は位相和A`
BとRは同相ではないことも分かる.) 問 165. (X,O)を位相空間とする. 集合としてX = `
Xλ と非交和に分かれていると し, 各XλにOからいれた相対位相をOλとする. このとき,
Oが族 {(Xλ,Oλ)}の位相和の位相である⇔ 任意のλに対しXλが(X,O)の開集合 である.
問題集 . 202