第 2 章 距離空間と位相空間 119
2.6 近傍
定義 2.6.1. X を位相空間とする.
1. U ⊂X を部分集合, x∈X とする. このとき U がxの近傍(neighbourhood) である⇔
def x∈ O⊂U となるような(X の)開 集合Oが存在する.
とくに,点xを含む開集合はxの近傍である. xを含む開集合をxの開近傍(open neighbourhood) という.
x の近傍でかつ閉集合であるものを x の閉近傍 (closed neighbourhood) と いう.
2. 集合
U(x) =
U ⊂X U はxの近傍 をxの近傍系(system of neighbourhoods) という. 3. A, U ⊂Xを部分集合とする. このとき
U がA の近傍(neighbourhood) である⇔
def A ⊂ O ⊂ U となるような(X の) 開集合Oが存在する.
注意 . 近傍の定義は位相にもとづいている. 距離の定める位相を考えるとき, 距離関数は 異なっていても位相が一致すればU(x)は一致する.
例 2.6.2. 距離空間において, ε近傍Uε(x) (ただしε > 0) はxを含む開集合なので, x の近傍である.
問 99. 距離空間においては, U ∈ U(x)⇔ ∃ε > 0s.t. Uε(x)⊂U. 開集合は近傍を用いて特徴づけられる.
定理 2.6.3. O ⊂X を部分集合とする. このとき次は同値である. 1. Oは開集合である.
2. 任意のx∈Oに対しO∈ U(x).
3. 任意のx∈Oに対し, あるU ∈ U(x)が存在し,U ⊂Oとなる. 証明. 1⇒2 ⇒3は明らか.
3⇒1を示す. x ∈ O とすると, 仮定よりUx ⊂ Oとなるx の近傍Ux が存在する. 近 傍の定義からx ∈ Ox ⊂ Ux となる開集合Ox が存在する. 明らかにOx ⊂ Oである. 各
x ∈Oに対しこのような開集合Oxをとると, O= [
x∈O
{x} ⊂ [
x∈O
Ox ⊂O
であるから, O=∪Oxとなり, 開集合の和集合なので, Oは開集合.
定義 2.6.4. Xを位相空間, x∈X とし, U(x)をxの近傍系とする. このとき U∗(x)がxの基本近傍系(fundamental system of neighbourhood) である
⇔def
(
(i) U∗(x)⊂ U(x)
(ii) 任意のU ∈ U(x)に対し,あるV ∈ U∗(x)が存在して, V ⊂U となる. 注意 . 基本近傍系はxに対し一意的に定まるわけではない.
例 2.6.5. X を距離空間, x∈Xとする.
U∗(x) ={Uε(x) ε >0} は基本近傍系である(問 99参照).
U∗∗(x) = n
U1
n(x) n∈No は可算基本近傍系である.
証明. U∗∗(x)⊂ U(x)は明らか.
任意のU ∈ U(x)に対し, 問99からあるε > 0が存在してUε(x)⊂U となる. 1/n < ε となるn∈NをとればU1
n(x)⊂Uε(x)⊂U. U∗∗∗(x) =
n B1
n(x) n∈No は可算基本閉近傍系である.
問 100. 上のU∗∗∗(x)が基本近傍系であることを示せ.
問101. U∗(x)をxの基本近傍系,U∗∗(x)をU∗(x)の部分集合とする. 任意のU ∈ U∗(x) に対し, あるV ∈ U∗∗(x)が存在してV ⊂ U となるとする. このとき, U∗∗(x)はxの基 本近傍系である.
定義 2.6.6. 位相空間X が第一可算公理(first axiom of countability) をみたす⇔
def
任意のx∈X が高々可算個の近傍からなる基本近傍系を持つ. 命題 2.6.7. 距離空間は第一可算公理をみたす.
例 2.6.8. 2次元ユークリッド空間R2 において,
{(x−ε, x+ε)×(y−ε, y+ε) ε >0}
は点(x, y)の基本近傍系である. 実際, (x−ε, x+ε)×(y−ε, y+ε) は例 2.2.10で与え た距離に関する点(x, y)のε近傍であり, この距離の定める位相とユークリッド距離の定 める位相は一致する(例2.3.6).
同様にn次元ユークリッド空間Rnにおいて ( n
Y
i=1
(xi−ε, xi+ε) ε >0 )
は点(x1, . . . , xn)の基本近傍系である.
定理 2.6.3 で見たように開集合は近傍を用いて特徴づけられるが, 基本近傍系を用いて
特徴付けることもできる.
命題 2.6.9. U∗(x)をxの基本近傍系とする.
Oが開集合である ⇔ 任意のx ∈ O に対し, あるV ∈ U∗(x)が存在して, V ⊂ O と なる.
証明. 定理 2.6.3より, Oが開集合であることと次の1は同値である. よって次の 1と2)
が同値であることを示せばよい.
1. 任意のx∈Oに対し, あるU ∈ U(x)が存在して, U ⊂Oとなる. 2. 任意のx∈Oに対し, あるV ∈ U∗(x)が存在して, V ⊂Oとなる.
1 ⇒ 2 ) x∈ Oとすると, 仮定(1)より, U ⊂O となるU ∈ U(x)が存在する. 基本近傍 系の定義よりV ⊂U となるV ∈ U∗(x)が存在する. 明らかにV ⊂O.
2 ⇒ 1 ) U∗(x)⊂ U(x)ゆえ明らか. 詳しく書けば,
x∈ Oとすると, 仮定(2)よりV ⊂OとなるV ∈ U∗(x)が存在する. 基本近傍系の定 義よりV はxの近傍なのでV ∈ U(x).
注意 . この証明のように, xの近傍系に関する条件を基本近傍系に関する条件におきかえ ることができる場合がしばしばある. (基本近傍系とはそのように定義されている.)上の 議論はそのような場合の証明の典型である.
近傍系を指定することで位相を定めることができる.
定理 2.6.10. Xを位相空間, U(x)をx∈X の近傍系とする. 次が成り立つ. U1 U ∈ U(x)⇒x∈U.
U2 U1, U2 ∈ U(x)⇒U1∩U2 ∈ U(x).
U3 U1 ∈ U(x), U1 ⊂U2 ⇒U2 ∈ U(x).
U4 任意のU ∈ U(x)に対し, あるV ∈ U(x)が存在して, V ⊂U かつ, 任意のy∈ V に ついてU ∈ U(y)となる.
注意 . U4は気分としては, 近所は, 近所の近所. 証明. U1 明らか.
U2 Ui ∈ U(x)とすると, 定義よりx ∈ Oi ⊂ Ui となる開集合Oi が存在する. このとき x∈O1∩O2 ⊂U1∩U2 であり, O1∩O2は開集合であるからU1∩U2 ∈ U(x).
U3 U1 ∈ U(x)とすると, ある開集合Oが存在してx∈O ⊂U1となる. U1 ⊂U2 であれ ば, x∈O⊂U2 であるからU2 ∈ U(x).
U4 U ∈ U(x) とすると, x ∈ O ⊂ U となる開集合O がある. V := Oとすれば, V は x を含む開集合なので V ∈ U(x)であり, V ⊂ U. また任意のy ∈ V について, y ∈V ⊂U かつ, V は開集合ゆえ, U ∈ U(y).
定理 2.6.11. X を集合とする. 各点x ∈ X に対し, ∅ 6= U(x) ⊂ P(X)が与えられ, 定
理 2.6.10のU1~U4が成り立つとする. このとき, 部分集合O⊂X に対し,
Oが開集合である⇔
def
任意のx ∈Oに対しO ∈ U(x)
と定めると, 開集合全体はX に位相を定め, U(x)はこの位相に関するx ∈Xの近傍系で ある.
また, 位相空間の近傍系からこのようにして定めた位相はもとの位相と一致する. 問題集 . 153