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距離

ドキュメント内 PDF 幾何学序論講義ノート (ページ 130-141)

第 2 章 距離空間と位相空間 119

2.2 距離

定義 2.2.1. Xを集合とする. X×X 上定義された実数値関数

d: X×X R

が次の三つの条件をみたすとき, dX 上の距離関数(metric) という. D1 (i) 任意のx, y∈X についてd(x, y)0.

(ii) d(x, y) = 0⇔x=y.

D2 任意のx, y∈X についてd(x, y) =d(y, x).

D3 (三角不等式) 任意のx, y, z∈X についてd(x, y) +d(y, z)≥d(x, z).

定義 2.2.2. 集合 X とその上の距離関数 d が与えられたとき, 組 (X, d) を距離空間 (metric space) という.

またx, y∈X に対し実数d(x, y)xyの距離(distance) という. 混乱のおそれがないときはdを省略して単に距離空間X と書くことが多い.

定義 2.2.3. (X, d)を距離空間, A X を部分集合とする. 距離関数dA に制限した もの, すなわち,

A×A3(a, b)7→d(a, b)R

を考えると, これはA上の距離関数になり, この距離によりAは距離空間になる.

距離空間の部分集合をこのようにして距離空間と見たとき, 部分距離空間 (metric subspace) または単に部分空間(subspace) という.

定義 2.2.4. (X, dX), (Y, dY)を距離空間とする.

写像f: X →Y が距離を保つあるいは等長写像(isometry) である

def

任意のx, x0 X に対し, dY(f(x), f(x0)) =dX(x, x0)である.

X からY への全射等長写像が存在するとき, XY は距離空間として等長(isomet- ric) , あるいは同型(isomorphic) であるという.

注意 . 全射であるもののみを等長写像という場合もある. 問 71. 等長写像の合成は等長写像である.

72. 部分距離空間の包含写像は等長写像である. 問 73. 1. 等長写像は単射である.

2. f: X →Y が全射等長写像ならば, f の逆写像も等長写像である.

3. XY が距離空間として等長である 等長写像f: X Yg: Y X が存 在して, g◦f = 1X, f ◦g= 1Y が成り立つ.

74. 写像f: X →Y が距離を保てば, Xf(X)は距離空間として等長である. 定義 2.2.5. X を距離空間, x∈X, ε > 0とする.

1. X の部分集合

Uε(x) ={y∈X d(x, y)< ε}

xを中心とする半径εの開球(open ball), 開円盤(open disc) あるいはε近 傍 という.

2. X の部分集合

Bε(x) ={y ∈X d(x, y)≤ε}

を点xを中心とする半径ε の閉球(closed ball) または閉円盤(closed disc) と いう.

3. X の部分集合

Sε(x) ={y∈X d(x, y) =ε}xを中心とする半径εの球面(sphere) という. 問題集 . 85(1)(2), 86(1)(2), 88(1), 93, 98(1)(2)

2.2.6 (n次元ユークリッド空間, n-dimensional Euclidian space). Rn個の直積 Rn ={(x1, x2, . . . , xn)|xi R}

の2点x = (x1, . . . , xn), y= (y1, . . . , yn)に対しxyの距離d(x, y)を

d(x, y) = vu utXn

i=1

(xi−yi)2 で定めるとdRn 上の距離関数である.

証明. D1 明らかにd(x, y)0であり, x=yならばd(x, y) = 0である. d(x, y) = 0とすると,

0(xi−yi)2 Xn i=1

(xi−yi)2 = 0 であるからxi−yi = 0. よってx=y.

D2 明らか.

D3Rnの3点x= (x1, . . . , xn),y = (y1, . . . , yn),z = (z1, . . . , zn)に対しai =xi−yi, bi =yi−ziとおく. xi−zi =xi−yi+yi−zi =ai+bi であるから

d(x, y) = vu utXn

i=1

a2i, d(y, z) = vu utXn

i=1

b2i, d(x, z) = vu utXn

i=1

(ai+bi)2 となる.

(d(x, y) +d(y, z))2−d(x, z)2 = Xn i=1

a2i + Xn i=1

b2i + 2 vu utXn

i=1

a2i vu utXn

i=1

b2i Xn

i=1

(ai+bi)2

= 2

 vu utXn

i=1

a2i vu utXn

i=1

b2i Xn

i=1

aibi

0.

ここで最後の不等号は次に示すSchwarz の不等式をもちいた. d(x, y), d(y, z)はとも に非負であるからd(x, y) +d(y, z)≥d(x, z)となる.

補題 2.2.7 (Schwarzの不等式). ai, bi (i = 1, . . . , n)を実数とすると次の不等式が成立 する.

Xn i=1

aibi

!2

Xn i=1

a2i

! n X

i=1

b2i

!

注意 . Rn における(標準的, ユークリッド)内積ha, biとノルムkak ha, bi=

Xn i=1

aibi kak=p

ha, ai

を使うとSchwarzの不等式は

|ha, bi| ≤ kakkbk と同値である.

証明. P

b2i = 0ならば全てのiについてbi= 0であるので両辺ともに0となり成立する. Pb2i 6= 0とする. 任意の実数tに対して

0 Xn i=1

(ai+tbi)2 = Xn

i=1

a2i + 2t Xn i=1

aibi+t2( Xn

i=1

b2i)

であり, P

b2i >0であるから, 判別式を考えると Xn

i=1

aibi

!2

Xn

i=1

a2i

! n X

i=1

b2i

!

0 となる.

この距離をユークリッドの距離といい, Rn にこの距離を与えて得られる距離空間をn 次元ユークリッド空間 という.

n= 1のとき

d(x, y) =p

(x−y)2 =|x−y| Uε(x) = (x−ε, x+ε) Sε(x) ={x−ε, x+ε} n= 2のとき

Uε((x0, y0)) =

(x, y) (x−x0)2+ (y−y0)2 < ε2

. . .. .. .. .. .. .. .. .. .. .....

......

......

......

...........

...............................................................

//

OO

x2+y2=1 max{|x|,|y|}=1

|x|+|y|=1

2.1 U1((0,0)),2.2.10, 2.2.11参照

75. 1次元ユークリッド空間Rからそれ自身への等長写像はどのようなものか?(ま ず0,1の像を調べてみよ.)

2.2.8. x, y Q (あるいは Z) に対し, d(x, y) Rd(x, y) = |x−y|と定めると, d はQ (あるいは Z) 上の距離関数であり, この距離によりQ (あるいはZ) は(1次元ユー クリッド空間Rの部分)距離空間である.

2.2.9.

R :=

(

(x1, x2, . . .)

xi R, X i=1

x2i <∞ )

とする. すなわちR の元は実数列{xi}であって級数P

x2i が収束するもの. x= (x1, x2, . . .), y= (y1, y2, . . .)R に対し

d(x, y) = vu utX

i=1

(xi−yi)2 = vu ut lim

n→∞

Xn i=1

(xi−yi)2 で定まる関数はR 上の距離関数である.

(R l2 と書くことも多い. またR という記号は別の意味で使われることもあるの で注意.)

証明. まずd(x, y)がwell-definedすなわち級数P

(xi−yi)2が収束することを示そう. sn = Pn

i=1(xi−yi)2とおく. {sn}は単調増加である. n次元ユークリッド空間Rn 3点(x1, . . . , xn),(0, . . . ,0),(y1, . . . , yn) に対する三角不等式から

0≤sn= (

sn)2

 vu utXn

i=1

x2i + vu utXn

i=1

y2i

2

 vu utX

i=1

x2i + vu utX

i=1

yi2

2

であるから{sn}は有界である. よって収束する.

これがD1, D2をみたすことは明らかである. 三角不等式をみたすことは上と同様にn

次元ユークリッド空間における三角不等式を考えてその極限をとることで示すことができ る.

76. 上の三角不等式を示せ. 例 2.2.10. Rnにおいて

d(x, y) = max

1in|xi−yi|

を考えると Rn 上の距離関数である. (この距離はチェビシェフ距離 (Chebyshev distance) とよばれることがある.)

証明. D1, D2は明らか.

任意の1≤i≤nについて|xi−yi| ≤d(x, y)が成り立つ. よって d(x, y) +d(y, z)≥ |xi−yi|+|yi−zi| ≥ |xi−zi|. したがって

d(x, y) +d(y, z)max

i |xi−zi|=d(x, z).

n= 2のときUε((0,0)) ={(x1, x2)|max|xi|< ε}. 例 2.2.11. Rnにおいて

d(x, y) = Xn

i=1

|xi−yi|

は距離関数である. (この距離はマンハッタン距離(Manhattan distance) とよばれる ことがある.)

証明. D1, D2は明らか.

d(x, y) +d(y, z) = Xn

i=1

|xi−yi|+ Xn i=1

|yi−zi|

= Xn

i=1

(|xi−yi|+|yi−zi|)

Xn

i=1

|xi−zi|=d(x, z).

n= 2のときUε((0,0)) ={(x1, x2)||x1|+|x2|< ε}

77. R において例 2.2.10, 2.2.11に相当することを考察せよ.

2.2.12(離散距離空間, discrete metric space). X を集合とする. 関数d: X×X R を

d(x, y) = (

1, x6=y 0, x=y で定めるとdX上の距離関数になる. (問題集88(1)参照.)

(X, d)を離散距離空間(discrete metric space) という. Uε(x) =

({x}, ε≤1 X, ε >1

Sε(x) =

(∅, ε6= 1 X− {x}, ε= 1

2.2.13 (p進距離, p-adic metric). pを素数とする. l∈Zに対し vp(l) =

(

max{n∈Z n≥0, pn|l}, l 6= 0

∞, l = 0

とおく. l 6= 0のときvp(l)はpn|l, pn+1 6 |l となるようなn∈Zである. すなわちlを素 因数分解したときのpの重複度.

dp: Z×ZR

dp(l, m) =pvp(lm)

で定める. ただしp−∞ = 0と約束する. dp はZ上の距離関数である. この距離をp進距 離という.

証明. D1, D2は明らか. D3を示そう. まず

vp(l+m)min{vp(l), vp(m)}

であることに注意する. なぜならlpnで, mpk で割れればl+mpmin{n,k}で割 れるから. pxxに関して単調減少であることに注意すれば

dp(k, l) +dp(l, m)max{dp(k, l), dp(l, m)} (どちらも非負だから)

= max{pvp(kl), pvp(lm)}

=pmin{vp(kl),vp(lm)}

≥pvp(kl+lm) =dp(k, m).

78. 上のD1,D2を示せ.

79. 上の例でp= 2の場合を考える. n∈Nとする. 1. l = 0,1,2, . . . ,10に対しd2(l,0)を求めよ. 2. d2(2n,0)およびd2(2n−1,0)を求めよ. 3. S1(0)およびU1(0)を求めよ.

4. S1/2n(0)およびU1/2n(0)を求めよ.

注意 . この距離は, 三角不等式よりも強い不等式(超距離三角不等式) max{d(x, y), d(y, z)} ≥d(x, z)

をみたしている. このような距離を非アルキメデス的距離 (non-Archimedean met- ric) という.

80. X を集合とする. 関数d: X ×X Rが非負(∀x, y X, d(x, y) 0) で, 超距 離三角不等式をみたせば, 三角不等式をみたすことを示せ.

注意 . この距離はQに拡張できる. 写像vp:Q\{0} →Zを以下のように定義する. 任意 の0でない有理数rr = pns/t, (n, s, t∈ Z, s, tpで割れない)と表せ, このnr により一意に定まる. vp(r) =n とする. またvp(0) =と定める (p進付値).

dp: Q×QR

dp(l, m) =pvp(lm)

で定める. ただしp−∞ = 0と約束する. dp はQ上の距離関数である. この距離をp進距 離という.

証明.

vp(l+m)min{vp(l), vp(m)}

であることを示せば, あとはZのときと同様. l = pns/t, m=pku/vs, t, u, v Z pで割れないとする. n≤kとして一般性を失わない.

l+m=pns

t +pku v

=pn s

t +pknu v

=pnvs+tpknu tv

であるがvs+tpknu∈Zなのでvs+tpknu =pewと書ける, ただしe, w∈Z, e 0, wpで割れない. したがってl+m=pn+ew/tvとなり, tvpで割れないことに注意 すればvp(l+m) =n+e ≥nであることが分かる.

2.2.14 (ハミング距離, Hamming distance). X を集合とする. x = (x1, . . . , xn), y = (y1, . . . , yn)∈Xnに対し,

d(x, y) =]{i xi 6=yi}

と定めるとdXn上の距離関数になる(問82). この距離をハミング距離(Hamming distance) という.

2.2.15. (Xi, di) (i = 1, . . . , n) を距離空間とすると (x1, . . . , xn), (x01, . . . , x0n) X1× · · · ×Xnに対して

1. pPn

i=1di(xi, x0i)2

2. max{d1(x1, x01), . . . , dn(xn, x0n)} 3. Pn

i=1di(xi, x0i)

で定まる関数はいずれもX1× · · · ×Xn上の距離関数である.

81. 上の1,2,3が距離関数であることを示せ.

82. X を離散距離空間とする. 例2.2.15.3 で与えられるXn上の距離関数とハミング

距離(例 2.2.14)との関係を調べ, ハミング距離が距離関数であることを示せ.

定義 2.2.16. (X, d)を距離空間, A⊂X をその空でない部分集合とする. このとき δ(A) := sup{d(x, y)|x, y ∈A}

Aの直径(diameter)という.

(空集合については必要ならδ() =−∞と考える.)

δ(A)<+であるときAは有界(bounded)であるという. 問 83. A ⊂Bならばδ(A)≤δ(B).

2.2.17. ユークリッド空間の点 x = (x1, . . . , xn) を中心とする半径 r(> 0)の開球 Ur(x)の直径は2rである.

証明. 任意の2点y, z∈Ur(x)について

0≤d(y, z)≤d(y, x) +d(x, z)< r+r = 2r.

したがって0≤δ(Ur(x))2rである. 任意の正の数ε≤2rに対しRn の2点

x± = (x1±(r− ε

4), x2, . . . , xn)

を考えると d(x±, x) = r −ε/4だからx± Ur(x). d(x+, x) = 2r−ε/2 > 2r −ε.

よってδ(Ur(x)) = 2r.

注意 . 一般の距離空間においてδ(Ur(x)) 2rであることが上の証明の前半より分かる が, 等号は必ずしも成立するとはかぎらない.

84. 上で等号が成立しない, すなわちδ(Ur(x))<2rとなる例を挙げよ.

補題 2.2.18. (X, d)を距離空間, A ⊂X をその空でない部分集合とする. このときAが 有界 任意の点x∈X に対し, あるr >0が存在してA⊂Ur(x)となる.

証明. ) δ(A) =s, x ∈X とする. a Aを一つ固定する. r =s+d(x, a) + 1とする と, 任意のa0 ∈Aに対し

d(x, a0)≤d(x, a) +d(a, a0)≤d(x, a) +s < r だからa0 Ur(x). よってA⊂Ur(x).

) A⊂Ur(x)ならばδ(A)≤δ(Ur(x))2r.

85. Aが有界 ある点x∈X と, あるr >0が存在してA Ur(x)となる.

86. (X, d)を距離空間, A ⊂X をその空でない有限部分集合とする. このときAは有 界であることを示せ.

定義 2.2.19. (X, d)を距離空間, A, B⊂X をその空でない部分集合とする. このとき d(A, B) := inf{d(a, b)|a ∈A, b ∈B}

ABの距離 という.

とくにA が1点x X からなる集合A = {x}であるときはd({x}, B)をd(x, B)と 書いて, ({x}Bの距離といわずに) xBの距離 という.

d(x, B) = inf{d(x, b)|b∈B} である.

明らかにA∩B6=ならばd(A, B) = 0であるが,逆は一般には正しくない. 例 2.2.20. 2次元ユークリッド空間R2の部分集合A, Bを次のように定義する.

A={(x,0)|x∈R}

B =

x, 1 x

|x >0

このとき任意の正の数xに対し

d(A, B)≤d

(x,0),

x, 1 x

= 1 x であるからd(A, B) = 0であるが,A∩B=.

87. 1. r Rとする. 任意の正の数εに対しr ≤εであればr 0であることを 示せ.

2. 上の最後の部分, すなわち, 任意の正の数x に対し d(A, B) 1x となるならば, d(A, B) = 0であることを示せ.

* 88. (X, d)を距離空間とし, Pf+(X)でX の空でない有限部分集合全体のなす集合を 表す:

Pf+(X) =

A ⊂X Aは有限集合 A, B ∈ Pf+(X)に対し,

d(A, B) = max˜

aAd(a, B) と定める. ただしd(a, B) = inf

bBd(a, b) (= min

bBd(a, b))である.

1. d(A, B0であり, d(A, A) = 0.˜ 2. d(A, B) = 0˜ ⇔A ⊂B.

3. d(A, B) = ˜˜ d(B, A)は成り立つか? 4. d(A, B) + ˜˜ d(B, C)≥d(A, C˜ ).

5. dH(A, B) = max{d(A, B),˜ d(B, A} と定めると dHPf+(X) 上の距離関数で ある.

dH はHausdorff距離とよばれる(ものの特別な場合である).

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