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量子論の誕生

ドキュメント内 チャレンジ・ガイド II (ページ 93-103)

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 

hhc (1.2) をもつ粒子の集まりと考えることができるという論文を発表した。この粒子を光量子

(light quantum)あるいは光子(photon)という。この論文の中で,アインシュタイン はそれまで説明できずに残されていた光電効果(photoelectric effect)という現象を明快 に説明できると主張した。

1.3 光電効果

光電効果は,金属に,ある値より大きな振動数の光をあてると電子が飛び出す現象で あり,図1.3に示すような回路を用いて,定量的な実験が行われる。光電管(phototube)

の陰極(negative electrodeあるいはcathode)に0より大きな振動数の光をあて,陰極 に対する陽極(positive electrodeあるいはanode)の電位V をいろいろ変えると,図1.4 のような電流(これを光電流(photocurrent)という)iが流れる。光電流が0になる電 圧をV0とおくとき,V0を阻止電圧(blocking voltage)あるいは臨界電圧(critical

voltage)という。V を正で大きくすると,光電流は一定値i0に近づく。i0は飽和電流

(saturation current)とよばれる。また,0を限界振動数(threshold frequency),0 に対応する波長

0c/

0を限界波長(threshold wavelength)という。

仕事関数

金属内の電子が外へ飛び出すにはある程度のエネルギーを吸収する必要があり,その エネルギーの最小値を仕事関数(work function)という。仕事関数は次のようにして生 じると考えられている。

図1.5のように,金属表面では,最も外側の正イオンのまわりの電子が,電気的斥力を 受けて外側にわずかに滲みだす(この層を電気二重層(electric double-layer)という。)

結果,表面の狭い範囲だけに内側から外側に向かう電場が発生する。そのため,金属内 の電位が高くなり,金属外部に電場は生じない。したがって,金属内の負電荷をもつ電 子の電気的位置エネルギーは外部より低くなり,金属内の電子が外へ飛び出すにはある 程度のエネルギーが必要になる。

G

V 陰極

陽極

図1.3

i

i0

0 0

V V

図1.4

91

金属内の電子の中で,最もエネルギーの高い電子が外部に飛び出すのに必要な最小の エネルギーが仕事関数である(図1.6)。

光電効果の基本的な関係式

金属に振動数 の光をあてると,金属内の電子がエネルギーhの光子を吸収して金属 外に飛び出す1。最もエネルギーの高い電子が正イオンなどに邪魔されることなく飛び出 すとき,光電子のもつ運動エネルギーは最大になる。その最大値をKmとすると,

W h

Km

 (1.3) が成り立つ。金属から飛び出す光電子の運動エネルギーKは,

0KKm

となる。限界振動数0は,(1.3)式でK 0とおいて,

h

W

0 (1.4) で与えられる。

陽極の陰極に対する電位がV0V0:阻止電圧)のと き,最大運動エネルギーKmをもつ光電子がちょうど速さ 0 で陽極に達する。したがって,KmV0の間には,電 子の電荷をeとして,関係式

0

m eV

K  (1.5) が成り立つ(図1.7)。

光電効果の検証

(1.3)式と(1.5)式より,

e W e

V0h

 (1.6)

1 金属内の電子が光子を連続的に2個以上吸収して外部に飛び出すことはない。

電位

図1.5

金属内部 真空

最大運動エネルギー :

K

金属表面

:仕事関数

W

図1.6

金属内の電 子のエネル ギー準位

Km 0

eV

図1.7

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が成り立つことに注目したミリカン(R.A. Millikan)は,照射する光の振動数 を変化 させたときの阻止電圧V0の変化を精密に測定して,図 1.8 のような結果を得た。図 1.8 の直線の傾きからh/eの値が定まり,電気素量(quantum of electricity)(電子のもつ 電荷の大きさ)eの値を使えばプランク定数h

値が定まる。こうして求められたhの値は,空洞 輻射に対する実験などから求められていた値に非 常によく一致した。これにより,アインシュタイ ンが提案した光子という考え方がはっきりと認め られるようになった。

例題 1.1 光電効果

図1.3のような回路を用いて,光電管の陰極にあ る波長の光を照射して,陰極に対する陽極の電圧V を変えて,回路に流れる電流を測定したところ,図

1.4のような結果を得た。電圧V が正である程度以上の電圧をかけると,電流はある一定値

(この一定電流を飽和電流(saturation current)という)i0以上には流れなくなる。それ は,V がある程度以上に大きくなると,陰極から飛び出した電子(これを光電子(photo

electron)という)がすべて陽極に達するためと考えられる。電気素量をe 1.601019C,

プランク定数をh 6.631034Js,真空中の光速をc 3.00108 m/sとする。ここでは,

エネルギーには電子ボルト(eV)の単位を用いる。1 eV は電子を1 Vの電圧で加速したと きに電子のもつエネルギーであり,1 eV=1.601019 Cである。

(a) 陰極に照射する光の波長は変えずに強度を2倍にして実験を行う場合,回路に流れる と予想される電流のグラフを描け。

(b) 光電管の陰極に仕事関数W 2.25eV用いるとき,照射する光の限界振動数を求めよ。

また,陰極に波長3.0107 mの光を照射した場合の阻止電圧を求めよ。

【解答】

(a) 照射する光の波長,したがって光の振動数

c/

は変えないので,阻止電圧V0

変わらない。光の強度I は,単位面積に単位時間あたり照射される光のエネルギーであり,

光子のエネルギーをh,単位面積に単位時間あたり 照射される光子数をnとすると,

nh I

で与えられる。したがって, を変えずにI を2倍 にすると,nが2倍になる。nが2倍になると,光 電子数も2倍になると考えられ,飽和電流は2倍に なる。これより,図1.9の太い実線のグラフを得る。

(b) 限界振動数0は,(1.4)式より,

V0

0

e

W

0

傾き:e h

図1.8

i

i0

0 0

V V

2i0

図1.9

93

 

 

3419

0 663 10

10 60 1 25 2

. . . h

W 5.431014Hz

波長  3.0107 mの光の振動数は,  1.01015Hz

 

c であるから,(1.6)式より,

阻止電圧V0は,

 

  10 10 2 25 10

60 1

10 63

6 15

19 34

0 . .

.

V . 1.9 V ■

1.4 コンプトン効果

1923 年,コンプトン(A.H. Compton)は,石墨に可視光より波長の短い電磁波であ るX線2をあてて散乱されるX線の波長を測定したところ,その中に,入射X線より波長 の長い X線が混じることを見出した。この現象をコンプトン効果(Compton effect)と いう。

可視光による散乱

光(電磁波)を結晶にあてると散乱される。こ れは主に,電磁波が結晶中の電子によって散乱さ れるためである。図1.10のように,電荷eをも つ電子は入射する電磁波の振動電場Eから力を 受けて入射波と同じ振動数 で振動する。マクス ウェルによる古典電磁気学理論によると,一般に,

荷電粒子が加速度運動すると電磁波が発生する。電荷をもつ電子が振動すると電磁波が 発生し,その振動数は電子の振動数に等しい。こうして発生した散乱電磁波の振動数は 入射電磁波の振動数に等しい。これが,マクスウェル理論に基づかれた研究によって示 されていた結論であり,可視光の散乱では,散乱電磁波の振動数は入射電磁波の振動数 に等しいことがわかっていた。

コンプトンの実験

図1.11のように,可視光より波長の短い電磁波であることがわかっていたX線を試料 である石墨に照射し,散乱された X 線を,結晶構造のはっきりわかっている単結晶にあ てて,いろいろな散乱角 をもつX線の波長を測定した3。入射X線の波長をとすると,

散乱角 0ではない場合,散乱X線の波長の強度分布は図1.12のようになり,入射X 線と同じ波長のところに小さな強度極大が現れるが,より波長の長い

のところに 大きな極大が現れた。波長の伸びた X線が散乱されることは,X線を電磁波と考えるか ぎり,上に述べたマクスウェル理論に基づかれた結論と矛盾するように思われた。そこ でコンプトンは,アインシュタインが考えたように,X線を光子の集合と見なし,X線の

2 X線の発生は,2.3節で述べる。

3 結晶にX線を照射する実験については,2.3節を参照。

E

e 入射電磁波

の振動数

散乱電磁波 の振動数

図1.10

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散乱を,光子と電子の弾性散乱として上の実験結果をうまく説明することに成功した4。 ただし,ここでは,光子はエネルギーをもつだけでなく運動量をもつとして,その表式 を用いる必要がある。

光子の運動量

古典電磁気学理論によると,電磁波は単位体積あたり,エネルギー と大きさpの運 動量をもち,これらの間に

cp

c:真空中の光速) (1.7) の関係が成り立つ。

光子についても,古典電磁気学と同様に(1.7)式が成り立つとすれば,光子の運動量の 大きさpは,(1.2)式を用いて,

h

c h

pc   (1.8) で与えられる。これが光子の運動量の大きさを与える表式である。

例題 1.2 電磁波の与えるエネルギーと運動量

図1.13のように座標軸をとり,x軸方向に速度vで動いている電荷qをもつ荷電粒子に,

z軸方向に進む電磁波を照射する。電荷qに電場EからqEの力が微小時間tの間にする 仕事wと,磁場(磁束密度)からのローレンツ力qvBx軸方向に与える力積

pの間 の関係を求めよ。ただし,電磁波において,電場の大きさEと磁場の大きさBの間には,

関係式

cB

E  (1.9) が成り立つことを用いてよい5

4 入射X線と同じ波長の散乱X線が現れることは,入射X線が原子に強く束縛された電子を外部にはじき 出すことができない場合に現れると考えられる。この場合,電子のエネルギーは変化できないので,散乱 X線のエネルギーすなわち波長は,入射X線のものに等しくなる。

5 電磁気編第7章(7.12)式参照。

単結晶 入射X線

石墨

検出器

図1.11

 波長

強度

図1.12

ドキュメント内 チャレンジ・ガイド II (ページ 93-103)