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光学

ドキュメント内 チャレンジ・ガイド II (ページ 59-85)

2.1 光

可視光(visible light)は,横波である電磁波(electromagnetic wave)の一種であり,

波長が3.8107~7.7107 m程度のもの(波長の上限値と下限値は人によって若干異な る)をいう。真空中を伝わる光の速さcは,真空の誘電率を

0,透磁率を

0として,

m/s 10 9979

1 2 8

0 0

 .

c

(2.1) で与えられる。また,誘電率

,透磁率

の物質中の光速cは,



 1

c (2.2) となる3

物質中の光速がcであるとき,その物質の(絶対)屈折率(index of refraction)n は,

c n c

  (2.3) で定義される。物質中の光速cはcより遅いから,その屈折率は 1 より大きく,真空の屈 折率は1である。

2.2 光の反射と屈折

光が領域の境界面に達すると,光は反射,屈折する。入射光の射線(これを入射光線

(incident ray)とよぶ),反射光線(reflected ray),屈折光線(refracted ray)は,同一 平面上にある。図2.1のように,光は屈折率n1の媒質1から

屈折率n2の媒質2に入射角

で入射し,反射角

で反射する と同時に屈折角

で屈折している。この光の振動数をf とす ると,媒質1での光速はc1c/n1,波長は

1c1/f ,媒質 2 での光速はc2c/n2,波長は

2c2/f である。光は波 動であるから,1.7節で述べたことと同様に,光に関する反射 の法則と屈折の法則(スネルの法則(Snell’s law)ともいう)

  (2.4)

1 2 2 1 2 1

n n c

c  

sin

sin (2.5)

が成り立つ。(2.5)式の最初と最後の等式は,

sin

sin 2

1 n

n  (2.6) とも書くことができる。(2.6)式は,屈折率が連続的に変化する場合などを考察するときに は便利である。

3 誘電率と透磁率については,第4部で学ぶ。

 

1

2

図2.1 n1

n2

56 例題 2.1 水中の物体

(1) 水中にある物体Aを観測者が眺めると,物体はどの位置にあるように見えるか。物体

Aからわずかに異なる方向に出た2つの光線が,ともに観測者の目に入る場合を考えて作 図せよ。

(2) 問(1)と同様に考えて,水面から深さhにある小物体Cを真上から眺めると,物体は水

面下いくらの位置にあるように見えるか,水面から物体の見える位置までの深さhを求 めよ。ただし,水の屈折率をn,水面上の空気の屈折率を 1 とする。必要ならば,微小 角

1)に対する近似式

sin tan を用いてよい。

【解答】

(1) スネルの法則(2.6)より,水面への入射角の大きな光 線の屈折角は,入射角の小さな光線の屈折角より大きい。

したがって,物体 A からわずかに異なる方向に出た2

つの光線 1, 2は,図2.2のように屈折する。この光線

1, 2を観測者が眺めると,その光は位置Bから出た光の ように見える。こうして,物体Aは浮き上がった位置B にあるように見える。

(2) 図2.3のように,水面から深さhの位置にある小物体Cから,

鉛直上方とそれからわずかな角

1)だけずれた方向に 出た2つの光線1, 2がともに観測者の目に入るとする。角

だ けずれた光線2の水面での屈折角を

とすると,(2.6)式より,

sin

sin n (2.7) このとき,光線1, 2を観測者が眺めるとすると,小物体Cは

位置Dにあるように見える。小物体Cの真上の水面の点をO,

光線2と水面の交点をHとすると,∠ODH

であるから,

OC

 OH

tan

sin ,

OD

 OH

tan

sin (2.8) (2.7), (2.8)式より,



h OD= 

n OC

n h

全反射

一般の波と同様に,媒質の境界面で光が屈折するとき,必ず反射光も存在する。屈折の 法則にしたがって,屈折角がちょうど90°になるときの入射角を臨界角(critical angle)

1 2

A B 空気

図2.2

C

D

O H

 

空気 1

n

図2.3

1 2

57

という。入射角が臨界角を超えると,屈折光がなくなり反射光だけになる。この現象を全 反射(total reflection)という。ただし,屈折角がちょうど 90°になるとき,屈折光の強 度はゼロになる。したがって,屈折角が90°で境界面に沿って進む光は存在しないことに 注意しよう。

図2.4のように,光が屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質に 向かうときの臨界角

cは,屈折の法則(2.6)より,

2 90

c

1sin n sin

n

1 2

c n

n

sin となる。

例題 2.2 水中からの光を閉じ込める

水面から深さh 10cmにある点光源Sから出る光を,水面から上に出てこないように水 面に円板を置きたい。円板の半径rをいくら以上にすればよいか求めよ。ただし,水の屈折 率をn 4/3,水面上の空気の屈折率を 1 とし,円板はちょうど光が空気中に出てこない ように水面を隠すものとする。

【解答】

円板の半径が求める下限値rcのとき,水中の点光源S を発した光がその円板の端 P に達する光の入射角が臨 界角

cに等しくなる(図2.5)。このとき,臨界角

cは,

c 1

sin

n

n 1

c

sin となる。

2 2 c

c

c r h

r

 

sin より,

h n r

r 1

2 2 c

c

 

2 1

c n

r h 11cm以上 ■

例題 2.3 光ファイバー

光通信などに使われている光ファイバーの原理を,次のような円柱状物質のモデルで考 えよう。

図2.6のように,円柱の中心軸から半径rまでは屈 折率n1の物質1で満たし,その外側を厚さdの物質2

(屈折率n2)で覆う。円柱の端面は中心軸に垂直であ り,光は空気中から端面の中心Oに入射する。ここで,

屈折率の間にはn1n2 1の関係があり,空気の屈折 率は1と見なすことができる。

入射した光がその入射角にかかわらず物質 1 の中だけを進むための,屈折率の間に成り

c n1

n2

図2.4

rc

c

c

h

S 空気

1 n

3

4 n

図2.5 P

d r r d 物質2 n2

物質1 n1

n1 物質2 n2

O

図2.6

58

立つ条件を求めよ。また,入射した光が,入射角によっては物質 2 の中に入るが,物質 2 から外部に漏れないために,屈折率の間に成り立つ条件を求めよ。

【解答】

点Oに入射角

で入射した光が物質2の外まで出ると仮定して,物質1と2の境界面上

の点A,および,物質2と外部の境界面上の点Bでの

屈折の法則を考える。点Oでの屈折角を

1,点Aでの 屈折角を

2,点Bでの屈折角を

3として(図2.7),

点O:sin

n1sin

1

点A: 1 1 2 2

2

 

sin

sin n

n  

 

  点B:n2sin

2 sin

3

光が物質 2の中に入らない条件は,光が点Aで全反射すればよい。全反射する条件は,

その屈折角

2が存在しなければよいから,sin

2 1となればよい4

1 1 2 1

2 2 1 2 2

1 2

1 1 2 1 1 2

1

2    

 





 

 

    

sin cos sin sin

sin n

n n

n n n

n n

n

∴ sin

n12n22 (2.9)

(2.9)式が0≦

/2の任意の

に対して成り立つ条件は,

2 1

2 2

1 n

n  ∴ n1≧ 1n22 入射角によっては物質2の中に入る条件は,

2 1

2 2

1n

nn12n22 1 (2.10) 物質2の中に入った光が外部に漏れないための入射角

に対する条件は,点B で全反射 すればよいから,

2 1

2 1 2 2

3

 

sin sin

sin n n ∴ sin

n12 1

これが0≦

/2の任意の

に対して成り立てばよいから,

1

2 1

1  ≧

nn1≧ 2 (2.11) 物質 2の中に入る光はあるが,外には漏れない条件は,(2.10),(2.11)式がともに成り立 てばよい。よって,

2 2

1 1

2≦n  n

42 90のとき,屈折光の強度はゼロであるから,点Bで光が全反射する条件は,sin21としても よい。ただし,物理では,境界はどちらとも言えないので,不等号に等号を付けるかどうかは意味をもた ない。「習慣としてどちらか」という程度である。

O

1

2

3

物質1 物質2 外部

図2.7 A

B

59 光の反射と位相変化

光波の反射における位相変化を考えよう。

(2.3)式より,屈折率が小さい物質中で光速は速く,屈折率が大きくなると光速は遅くな る。このことは,屈折率が小さい程,光は振動しやすいことを示している5。したがって,

屈折率の大きい物質中から小さい物質中に進もうとするときは自由端反射となり,反射波 の位相は変化しない。逆に,屈折率の小さい物質から大きい物質に進もうとするときは固 定端反射となり,反射波の位相変化は

となる。

ただし,屈折光あるいは透過光の位相は変化しない。

【発展】☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2.3 光の分散

太陽光のように,いろいろな波長を含んだ白色光をプリ ズムにあてると,屈折角の小さい順に,赤,黄,紫の色に

分かれる(図2.8)。この現象を光の分散(dispersion of light)

という。これは,物質の屈折率,すなわち,物質中での光 の速さが波長によって異なるために生じる。可視光の場合,

光の波長が短くなるにしたがって光速は減少し,屈折率は

大きくなる。その結果,赤い光より紫の光の方がその進行方向を大きく曲げられて光の分 散が生じる。真空中では光速は波長に依存せず一定で,光は「分散のない波」であるが,

物質中では,光速は波長によって異なり,「分散のある波」である6。 物質中で光の分散が生じる理由

物質の屈折率nは,その誘電率

,透磁率

を用いて,(2.1)~(2.3)式より,

r r 0 0

 



n

と表される。ここで,

0

0は,それぞれ真空の誘電率と透磁率であり,

r

/

0

0

r

 

 / は,それぞれ物質の比誘電率と比透磁率である。

光波のような振動数の高い弱い磁場Hの振動に,多くの物質は応答できず,透磁率

は 真空の透磁率

0にかなり近くなってしまう。したがって比透磁率は,多くの物質で

r 1と みなすことができ,

r

n

5 屈折率と反射の際の位相変化の関係は,厳密には,電磁気学の性質から決められる。しかし,直観的に はこのように考えておくと分かりやすい。

6 1.13節参照。

白色光

プリズム

図2.8

60 となる。

物質に電磁波を照射すると,物質内の電子は振動する電場から力を受けて振動するし,

その振動の振幅Aが大きい程そのときの比誘電率

rは大きくなる。振動電場の角振動数を

とすると,電子の振幅Aは,

2 2 0

1

A

と表される。ここで,

0は物質で決まる角振動数であり,通常,紫外線(可視光より振動 数の大きい電磁波)の領域にある。そのため,電場の角振動数すなわち光の角振動数

が 大きくなり,紫色に近づくと,Aは大きくなり,

rは増大し,屈折率nは大きくなる。こ うして,光の振動数の違い,すなわち波長の違いによって物質の屈折率が異なり光の分散 が起きる。

例題 2.4 虹の原理

雨上がりの空には,しばしば虹が浮かぶ。図2.9のように,虹は太陽を背に約42°の角 度の円弧を描く。このような虹はどのようにして生じるのであろうか。

空気中に浮かんだ半径a ,屈折率nの球形の水滴に,太陽 Sから平行光線があたってい る。図2.10のように,水滴の中心Oから太陽の方向の直線と平行に,この直線から距離lだ け離れて水滴に入射する光線の入射点をA,点Aでの入射角を

,屈折角を

とする。屈 折光は点Bで屈折して外部に漏れるが,残りは反射して点Cで屈折して観測者Dに達する。

(1) 入射光SAと出射光CDのなす角

で表せ。

距離lがゼロのとき,

0で

0であるが,lが増加 するとともに

は増加し,ll0

は最大値

0に達する。観測者Dの見る光は,

0で強度最大になり,この角度の 方向に明るい光(虹)を見る。このとき,

0

0とする。

(2)

0における

0

d

d

0

0

cos

cos を求め,sin

0sin

0をそれぞれnで表せ。

(3) 水の屈折率を,赤色光に対してn 1.33,青色光に対してn1.34として,観測され

る虹の赤と青の出射光の角度差

 

(逆三角関数の値)を,関数電卓を用いて求めよ。

【解答】

A B

C

D O

S

a l

図2.10

図2.9

42

ドキュメント内 チャレンジ・ガイド II (ページ 59-85)