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原子核と放射線

ドキュメント内 チャレンジ・ガイド II (ページ 119-138)

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いなければならない。この強い引力を核力(nuclear force)という。原子核にはそれ程大 きなものがないことを考えると,核力は,作用すれば非常に強いが,原子核の大きさ程 度の近距離でのみ作用する近距離力(short range force)のはずである。核子数が増大し,

原子核が大きくなると,核力が原子核全体に及ばなくなり,クーロン斥力がまさって原 子核は不安定になると考えられる。

このような近距離力がどのようにして作用するのかを最初に明らかにしたのは,湯川 秀樹(Hideki Yukawa)である。湯川は,核子間で中間子という粒子を交換することで 核力がはたらくと考える中間子論を発表して,日本人として最初のノーベル物理学賞を 受賞した。

原子量と原子質量単位

原子番号は等しいが,質量数のことなる原子核からなる原子を同位体(isotope)とい う。

質量数12の炭素原子(126C)1個の質量の1/12を1uと書き,uを原子質量単位(atomic

mass unit)という。

質量数12の炭素原子1molの質量は12103 kgであり,1mol中の原子数はアボガド ロ数6.021023に等しいから,

kg 10 66 12 1

1 10 02 6

10 u 12

1 23 27

-3   

  .

. となる。

4.2 放射線

23592Uや21082Pbなどの不安定な原子核が自ら別の原子核に変わるとき,大きなエネルギー をもつ放射線(radiation)を出す。この現象を放射性崩壊(radioactive decay)といい,

自ら放射線を出す能力を放射能(radioactivity)という。放射性崩壊には次の3種類があ る。

α崩壊

原子核が自らα粒子(αparticle)(42Heの原子核)を放出して別の原子核に変わる現 象をα崩壊(αdecay)という。原子核がα崩壊すると,原子番号が2,質量数が4だけ 減少して別の原子核に変わる。

He Y X AZ--4242

A Z

原子核がα崩壊するときに放出するα粒子による放射線をα線(αrays)という。

β崩壊

原子核中の中性子が陽子に変化し,電子とニュートリノ(neutrino)の反粒子11を放

11 反粒子とは,元の粒子と電荷の符号のみが反対で,質量など,その他の性質が全く同じ素粒子のことで ある。電子の反粒子である陽電子(positron)eは,質量は電子に等しいが,電荷eをもつ粒子である。

粒子と反粒子が衝突すると,質量は消滅して電磁波のエネルギーだけになってしまう。

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出する現象をβ崩壊(βdecay)という。いま,電子は陽子と逆符号の電荷eをもち,

質量は陽子より十分に小さいので,電子を01eと書いて,β崩壊の原子核内の反応は,

 p e n 11 01

1

0 (4.1) となる。このとき放射する電子線をβ線(βrays)という。原子核AZXがβ崩壊すると,

原子番号が1だけ増加し,質量数は変化しない。したがって,その反応式は,

Y e X ZA1 01

A Z

となる。

ニュートリノは,はじめパウリによって存在が予言され,その後,発見された素粒子 であり,物質の貫通力が非常に強く,地球をも貫いてしまう。その質量は非常に小さい。

β崩壊には,(4.1)式であらわされる崩壊の他に,原子核が陽電子とニュートリノを放 出する

崩壊がある。陽電子は,電子の反粒子であり,陽子と同じ電荷eをもち,質量 は電子に等しく陽子より十分に小さいので,01eと書かれる。したがって,

崩壊では,

原子核内で,

 n e p 01 01

1

1 (4.2) という反応が起こる。

(4.1)式で表されるβ崩壊は,

崩壊に対応させて,

崩壊ともよばれる。何も断ら

なければ,β崩壊は

崩壊のことである。

γ崩壊

原子核にも原子の場合と同様に,とびとびのエネルギー準位が 存在する。図 4.3 のように,原子核がエネルギーの高い励起状態 から低い基底状態に遷移するとき,そのエネルギーの差に等しい 光子を放出する。このときの電磁波をγ線(γrays)という。γ 線の波長は,10111015m程度である。

例題 4.1 中性子の発見

静止していたポロニウムから放出されたα線をベリリウムにあてたところ,電気的に中 性な放射線が放出された。この放射線がγ線であるか,陽子と同程度の質量をもつ電気的 に中性な粒子であるかを判定するため,この放射線を静止している水素原子核(陽子)11Hと 静止している窒素原子核147Nにあてる実験を行った。標的が水素のとき,放出された水素原 子核の運動エネルギーの最大値は5.6 MeVであり,標的が窒素のとき,放出された窒素原 子核の運動エネルギーの最大値は1.4 MeVであった。陽子の静止エネルギーを940 MeVと して,次の問いに答えよ。ただし,1 MeV=1106eVであり,相対論を考慮する必要はな い。

(a) 放射線をγ線と仮定して,標的が水素原子核である場合と窒素原子核である場合のそ れぞれについて,放射線(γ線)のエネルギーを求めよ。

(b) 放射線を陽子と同じ質量をもつ中性な粒子と仮定して,標的が水素原子核である場合

励起状態

基底状態

図4.3

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と窒素原子核である場合のそれぞれについて,放射線(中性粒子)のエネルギー(運動 エネルギー)を求めよ。

標的が水素原子核であるか窒素原子核であるかによらず,入射放射線のエネルギーは同 じであると考えられる。こうして,この放射線は陽子と同程度の質量をもつ中性の粒子で あることがわかり,この粒子は中性子と名付けられた。

【解答】

(a) 放出された水素原子核あるいは窒素原子核の運動エネル ギーが最大になるのは,弾き飛ばされた原子核の速度がγ線 の進行方向になり,散乱されたγ線が入射方向と逆向きにな る場合である(図4.4)。

まず,標的が水素原子核の場合を考える。弾き飛ばされた 水素原子核の質量をm,最大の運動エネルギーをもつときの

速さをv,最大の運動エネルギーをKHとすると,その運動量の大きさは,mv  2mKH と書ける。入射γ線と散乱γ線のエネルギーをそれぞれ

,

とすると,運動量保存則と エネルギー保存則は,cを真空中の光速としてそれぞれ,

2mKH

c c 

KH

これら2式から

を消去して,

5.6 2 940 5.6

2 2 1

2 1

H 2

H    





  

K mc K

≒54 MeV

次に,標的が窒素原子核である場合を考える。窒素原子核の質量は14mであるから,

運動エネルギーの最大値をKNとすると,標的が水素原子核である場合と同様にして,入 射γ線のエネルギー は,

≒97 MeV

未知の放射線をγ線と考えると,水素原子核にあてた場合と窒素原子核にあてた場合 で,そのエネルギーが大分異なってしまう。

(b) 中性粒子の質量をM ,その入射時の運動エネルギーを

KM,散乱時の運動エネルギーをKM とする。この場合も,

放出された原子核の運動エネルギーが最大になるのは,弾 き飛ばされた原子核の速度が入射粒子の進行方向になり,

散乱された中性粒子が入射方向と逆向きになる場合である

(図4.5)。

まず,標的が水素原子核の場合,運動量保存則とエネルギー保存則はそれぞれ,

1.4 2 14 9401.4

2 14 1

2 2 1

N 2

N     





   

K mc K

入射 H or N 原子核

散乱

図4.4

入射中性粒子 H or N 原子核

図4.5

119 2 H

2

2MKM  MKM  mKKMKM KH これらよりKM を消去してtm/Mとおくと,

M H

H

M K tK K

K   

となる。さらに両辺2乗して,

H 2

4

1 K

t

KM ( t) (4.3) を得る。ここで,(4.3)式に,t 1KH 5.6MeVを代入して,KM 5.6 MeVを得る。

次に,標的が窒素原子核の場合,(4.3)式で,t 14KHKN 1.4MeVとすればよ いことから,KM≒5.6 MeVを得る。

両者でKMがほぼ一致することから,未知の放射線は,陽子と同程度の質量をもつ中性 の粒子であることがわかる。 ■

4.3 半減期

一般に,原子核が単位時間の間に崩壊するかどうかは,その原子核に特有な確率で決 まる。同種のN個の原子核があるとき,1つの原子核の単位時間の崩壊確率をとする と,単位時間あたりの崩壊数I は,

dt N

I dN

(4.4) と表される。ここで,dN/dtの前に負号が付くことに注意しよう。

(4.4)の微分方程式の解N(t)は,両辺をNでわり,時間tで積分することにより,簡単

に求められる。

dNN

dt logN

tC C:積分定数)

初期条件を「t 0のとき,NN0」とすると,C logN0,これより,

e t

N

N0 (4.5) となる。

崩壊することなく残っている原子核数がはじめの1/2になるまでの時間を半減期(half-

life)といい,T で表す。そうすると,(4.5)式より,

e T

N

N0/2 0

2

 1

T

e

となるから,時間tだけたったとき残っている原子核数Nは,

 

e T t T N t T

N N

/ /



 

 

2 1

0 0

(4.6) と表される。

120 例題 4.2 放射性元素の崩壊

22286Rnは半減期T1 3.8日でα崩壊して21884Poになり,さらに,半減期T2 3.1分でα崩壊 して21482Pbになる。

222Rn

8621884Po → 21482Pb

はじめt 022286Rnだけが存在し,21884Poは存在しないとする。22286Rnが崩壊すること により一度は21884Poの数は増加するが,21884Poも崩壊する。いま,微小時間tの間に22286Rn が崩壊して21884Poが生成される数

N1は,そのときの22286Rnの数N1に比例する。一方,生 成された21884Poがtの間に崩壊する数

N2も,そのときの21884Poの数N2に比例する。し たがって,ある程度の時間がたつと,

N1

N2はほぼ等しくなり,半減期より十分に 短い時間tでは,21884Poの数N2はほぼ一定値になる。このような現象を放射平衡

(radiation equilibrium)という。22286Rnの数がN1 1.01015であるとき,21884Poの数N2 はいくらか。

ただし,正の数xが1に比べて十分に小さいとき,

x x 69 0 2 1  . と近似できることを用いてよい。

【解答】

時刻tからt

tの間の微小時間(

t T )の間に崩壊する原子核数

Nは,(4.6)式 を用いると,

T t t t N

N t t N t N N

T t

( ) ( ) ( ) . ( )

/

69 2 0

1 1 









 

 



と書ける。よって,

N1

N2より,

T t t N

T

N

 

2 2 1

1 0.69

69 .

0  ∴

2 2 1

1

T N T N

となる。これより,

1 1 2

2 N

T

NT ≒5.71011

4.4 原子核反応

相対論的エネルギーと静止エネルギー

原子核の問題では,質量とエネルギーが等価であるというアインシュタインの関係式 が用いられる。この関係式は,相対論的エネルギーの表式に基づかれている。

質量mの粒子が速さvで運動しているときの相対論的エネルギーEは,真空中の光速 をcとして,

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