用途混合市街地における住環境形成に関する研究ー
台北市を対象としてー
著者
黄 貞淵
学位授与大学
東洋大学
取得学位
博士
学位の分野
国際地域学
報告番号
32663甲第352号
学位授与年月日
2013-09-25
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00006460/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja用途混合市街地における住環境形成に関する研究
-台北市を対象として-
東洋大学大学院
国際地域学研究科 国際地域学専攻 博士後期課程
博士論文(2013 年 5 月)
黄 貞淵
博士論文要旨
用途混合市街地における住環境形成に関する研究
-台北市を対象として-
東洋大学大学院国際地域学研究科国際地域学専攻博士後期課程3年
4810090002
黄 貞淵
1.研究の背景及び目的 従来の都市計画は、都市の機能をゾーニング制度で区分し、土地利用を単一用途で形成してきた近代 都市計画への批判が 強 まっている。かって ジ ェイン・ジェイコブ ス は「アメリカ大都市 の 死と生」 (1961)の中で、地域に多様性をもたらすためには、用途の混合を必須の条件と主張したが、20 世紀 後半における都市化の急速な進行は、ゾーニング的な空間利用を効率的合理的な計画手法として優先さ せてきた。ところが都市の成熟化や衰退化過程に入った先進国では少子高齢化が進み都市内での人的交 流、賑わいの創出やコミュニティの再生などが課題となり、一方、過剰都市や農村から都市への人口集 中がみられる開発途上国では拡大する都市域のもたらす交通混雑の解消や新たなコミュニティの形成が 課題となっており、再び既存の都市市街地の用途混合地域の高密度かつ多様性に富んだ住環境形態の可 能性がソフト面、ハード面の両方から着目されるようになってきている。この対象となるような地域は 都市計画規制の比較的緩いとされるアジアの都市に多くみられる。たとえば東京の既存市街地内を見る と、いわゆる谷根千地区、下北沢、浅草、千住など賑わいのある地区は重点整備地域に隣接して立地し ている。これら密集用途混合地域を対象にした従来の計画では、自然災害等からの防災対策として、道 路の拡幅や耐火建築物の整備などが行われてきた。しかし近年では、景観を巡るマンション紛争や、路 地景観や歴史的に形成されてきた緊密なコミュニティの再評価にみられるように、都市市街地の捉え方 が変化しており、対応して新たな都市計画手法が問われていると考える。 本研究では、台湾台北市の居住環境に着目した。その理由は、次の 3 点である。まず、台北市はア ジアの中でも有数の高密度都市であり、旧市街地においては、基本的に「先居住-後計画」(国連居住 計画)といった生成的な発展形態がみられる。次に、個別の建物利用においては、低層部に店舗や工場 などの非住居施設、上層部に住居といった立体型用途混合形態が、既成市街地に一般的にみられる。東 京近郊においても賑わいの創出のために、新築マンションの低層部には商業用途を導入することを定め た三鷹市(三鷹市特別活性化地区内における建築制限に関する条例、2004 年)を始めとして、用途の 混在に着眼し勧告を盛り込む自治体も増えつつあるが、その具体的な空間形態については台北市の事例 が示唆する点が多いと考える。最後に、本稿で考察する立体型混住モデルは景観面から、中層建築群に よって構成され、台北の既存市街地に特徴的なヒューマンスケール(人間尺度)に依拠した空間に類似 していることによる。 本研究は、まず台北市が立体的な用途混合市街地を形成していくメカニズムを明らかにし、ついで、 これらの地域の住環境について、用途混合率と満足度の関係に着目して住民による質的評価を行い、最 終的に、「混住環境」を形成するための適正な立体型混住モデルについて考察する。なお、住環境の評 価については様々な蓄積と展開(浅見泰司等)があるが、ここでは台北市の市街化過程を通して形成さ れた、用途混合地域の優位特性を比較分析することに限定して行っている。博士論文要旨 2.研究の方法 用途混合地域の計画手法への考察との結論を導くために、次のような方法で進める。 第 1 章では、近年都市が抱える問題の多様化を背景に、都市開発の対象外とされていた用途混合地域 に焦点を当てる理由及び問題提起を行う。第 2 章では、関連研究のレビューを通して、都市計画分野 における近年の動きを追っていく。第 3 章では、台北市の市街地において高密度かつ用途混合が広が る背景を、地形、生活文化、制度的側面として捉え、用途混合市街地の形成メカニズムを明確化する。 第 4 章では、街区単位での計画手法について考察するために、調査対象地域のハード的環境の比較調 査を行った。第 5 章では、今後の住環境指標について考察するために、住民対象のアンケート調査結 果から満足度及び住環境評価要素、近隣関係について述べた。第 6 章では、台北市の事例から得られ た知見をもとに、第7 章では、用途混合地域計画手法の考察を行い結論としてまとめる。 調査対象地域として、台北市の中心市街地内に位置する 4 つの地域を選定し、対象地域の空間形成 状況(ハード面)や住環境への満足度(ソフト面)について、ヒアリング調査、アンケート調査、目視 調査を実施した。空間の形成状況は、郵便ポストや看板などを目視し、居住・非居住施設の使用用途及 び店舗の業種を判断した。また、アンケート調査は各里長を通して配布し、鄰江地域 154 部、民有 154 部、東区 78 部、西門 50 部を回収した。 3.先行研究のレビュー ここでは、用途混合地域に焦点を当てるようになった時代の流れ及び近年用途混合を計画導入する際 の議論について述べた。近代都市計画手法を批判し、用途混合地域のにぎわいに着目し、多様性をもた らす条件を提唱した、ジェイン・ジェイコブス(1961)は、その後多くの都市の都市計画に大きい影響を 与えた。しかしながら、高度経済成長期を迎え大規模な商業開発を中心として行われ、用途の混合を主 とするコンパクトシティやニューアーバニズムの概念が積極的に提唱されるようになったのは、1980 年代以降である。近年、都市の抱える様々な問題の解決手法として、用途混合の積極的な導入が主なテ ーマとされるが、一方では、住環境や生活の質の低下を懸念し、カナダの失敗事例により、懐疑的な議 論があるのが現状である。 本研究は、コンパクトシティの有効性を評価し、用途の混合を計画手法として捉える一連の研究であ るが、都市全体に用途混合が拡大していくメカニズムを解明し、都市市街地を対象に、今後の用途混合 市街地の計画を提起する研究として位置づける。 4.台北市における立体型用途混合の形成過程 用途が混合する建物が中心市街地に集積した結果、台北市は、都市への集積圧力が郊外のスプロール 的な市街地化に直接つながってきた他の大都市の発展過程とはやや異なる高密度な用途混合型-立体的 な混住環境-の都市空間を実現している。その背景として、まず低層部を店舗や小工場など非住居用途 とし、職住近接を図る伝統的な中国の商業都市空間の継承が考えられるが、加えて①地形的要因、②外 向的な生活スタイル、③建築形態や都市計画による規制があげられる 。 4-1.地形的背景-制約的可住地による高密度居住 台北市は、台湾島の北部に立地し、大屯山などに囲まれた盆地に形成されている。人口は約 261 万 人であり、台湾総人口の 20%以上の割合を占める。市統計年報 2011 によると、総面積約 271km2 の うち 47.8%が住宅や商業区などの市街化区域で、高密度な都市空間を形成している。用途地域では、 住宅区は29%(3,803km2)、商業区は 7%(869km2)、工業区は 3%(419km2)であるが、住宅区で
博士論文要旨 あっても徒歩圏内に十分な商業施設が混在している。台北市の都市空間の形成は、中国からの移民が本 格化した 18 世紀初期に始まる。台中間の貿易で栄えた艋舺(現在の萬華区の一部)、西北部の大稻埕 (現在の大同区の一部)、台北城内といった 3 地域を中心に発展してきたが、終戦直後から 90 年代初 期までの短期間に、中国大陸や地方から大量の人口が流入したため、都市のインフラや住宅供給が追い つかない状況が続いた。このため市行政は旧市街地への人口集中を抑制し、過密状態を解消するために、 松山、大安、信義の新市街地に社会や経済、政治等の機能を分散させ、東へと拡大を図った。1968 年 「新市」として、文山、南港、内湖、士林、北投が加わり、市域は拡大したが、山地が多く、可住地が 限られるため、現在も平野部に立地する 7 つの区に商業機能や人口が集中している。都心 7 区の面積 は約68km2、台北市の 25%、総人口の約 55%(約 145 万人)を占める。 4-2.生活文化的背景 台湾では一般的に外食の生活習慣が維持されており(陳、1997)、こうした生活スタイルに対応した 多様な規模と食材の食堂や弁当屋が低層部に存在する。外食は単身世帯だけでなく、家族がいる場合で も多くみられる。加えて、女性の社会進出に伴い外食へのニーズがさらに高まった。 外食が一般的であることは、外出しやすい台湾の年間気温の高さも影響しているが、結果として住居と 外部との境界を相対化し、住居外部での食生活以外の生活を拡大させている。これは建物の低層部にお ける非住居用途の一般化と相互的な関係にあると考えられる。 4-3.制度的背景-現状追従型の規制 台北市の建物の立体型用途混合に関する規制は、1993 年「台北市土地使用分区管制規則」により、 1階及び地下1階以外の階で商業用途に転用することを厳しく制限するまでには、建物の全ての階にお いて、住宅→商業、業務用途への転用が事実上認められていた。その後、商業用途の増加は住環境の低 下を引き起こしたため、規制を強化する内容の改正に至った。このように、先規制→後開発ではなく、 現状に合わせた形で用途混合の拡大を制限してきた。 こうした背景をもとに形成した市街地の建物利用パターンは、まず、低層の店舗(非住居)がセット バックし、アーケードのような騎楼空間(私有地)を形成する建物群-騎楼型-と、店舗部分が道路に 接し、上層の住居施設部分がセットバックしている建物群-突出型-で区分される。後者の場合、道路 幅拡大の事業化に伴い店舗の突出部分が道路に転換されることを予め承諾しているケースも多い。 突出型用途混合の 1 階部分は、二通 りの用途転用が行われている(図 1)。 60 年代初期の写真(Ⅱ突出型用途混合) と比較すると、囲まれていた塀を撤去し、 階段室の壁に沿って拡張している様子が 伺える。初期は住宅用途として画一的に 建てられが、現在のように変わっている。 さらに緩い都市計画の適応はこうした用 途混合形態を促進したと考える。 図1.突出型の 1 階部分の用途転用の例 5.住環境に対する住民満足度の調査 5-1.調査対象地域の概要 対象地域とした 4 地域を選定した理由は次の 2 点による。第一に、都市発展の過程を比較するため
博士論文要旨 市街地区分 (1968年以前) 地域名 鄰江 西門 民有 東区 街区の類型 *濃い部分は街区 の内側を、淡い部 分は外側を示す 立体型用途混 合の状況 *グレー部分は非 住居施設を示す 建物の高さ *割合の高い順 地域別建物使 用状況 *「棟」の数え方 は、住所別に計上 している 居住専用240棟 商業専用1棟 用途混合135棟 居住専用 7棟 商業専用190棟 用途混合98棟 居住専用51棟 商業専用19棟 用途混合194棟 居住専用50棟 商業専用20棟 用途混合227棟 業種(上位5種) *()はユニット数 **全体のユニット 数は、「不明」及び 「空室」は含まず 旧市街地 新市街地 4階建て 94棟 25% 2階建て 91棟 24% 5階建て 72棟 19% 3階建て 71棟 19% 7階建て 13棟 3% … 全体 376棟 2階建て 62棟 21% 3階建て 59棟 20% 5階建て 49棟 17% 4階建て 44棟 15% 6階建て 35棟 12% … 全体 295棟 7階建て 219棟 83% 4階建て 19棟 7% 5階建て 17棟 6% 14階建て 5棟 2% その他 4棟 2% … 全体 264棟 4階建て 90棟 30% 7階建て 75棟 25% 6階建て 37棟 12% 5階建て 32棟 11% 12階建て 17棟 6% … 全体 298棟 全体 112 工業(41) 36.6% 業務(24) 21.4% 小売(23) 20.5% 飲食(15) 13.4% サービス(14) 12.5% 全体 547 小売(284) 51.9% 飲食(189) 34.6% その他(52) 9.5% 旅館業(37) 6.8% 娯楽・スポーツ(30) 5.5% 全体 382 小売(112) 29.3% 業務(104) 27.2% 飲食(63) 16.5% サービス(34) 8.9% 金融(32) 8.4% 全体 615 小売(276) 44.9% 業務(159) 25.9% 飲食(98) 15.9% サービス(55) 8.9% 娯楽・スポーツ(32) 5.2% に、台北市域が拡大する(1968 年)以前から形成されてきた市街地の中で、早い時期に形成された 2 地域(旧市街地)と、近年に形成された 2 地域(新市街地)を選定した。第二に、立体型混住モデル の類型化を図るため、各地域は用途混合形態の異なる地域を選び、街区のまとまりを対象範囲として選 定している。 図2.対象地域の空間形状と用途混合度 調査対象地域の概要は以下の通りである。 ①大同区鄰江(リンジャン)地域:清朝時代に形成された大稲埕に立地し、淡水河を利用した国際港と して発展した。都市発展の初期段階では、商業と住宅地が密集していたが、近年は小規模自動車整備所 等が並ぶ工業地域としての性格が強い。従業員の地域内居住も多い。 ②松山区民有(ミンヨウ)地域:台北市が東へと移転し始めた 1980 年代に開発が進められた地域の一 つ。経済中枢の南京東路に面しており、交通条件の良さなどからオフィスや金融機関が集中している。 ③大安区東区(トンチー)地域:1980 年代新しく開発された 3 区(松山、大安、信義)のうちの一つ。 政治・文化中枢の仁愛路や MRT 板南線が走る忠孝東路に隣接し、デパートや商店、オフィスなどが集 中する。 ④萬華区西門(シーメン)地域:清朝時代国内貿易が盛んな艋舺に立地し、戦争当時では日本の製造会 社が多く建てられたことから、日本人居住区が形成された。現在は用途地域の商業区として指定されて おり、平面的商業区の様子がみられる。
博士論文要旨 5-2.建物の利用状況 4 つの調査対象地域の建物の使用状況と用途混合率の比較を図 2 にまとめた。建物に入居している全 てのユニット(戸数)を住居・非住居施設に分類し、全体のユニットの中で非住居施設が占める割合を 当該地域の用途混合率として計上している。 鄰江地域は、環境に多大な影響を及ぼす危険物を取り扱う業種以外はほとんど許容される「住 3」用 途地域に指定されている。総建物数376 棟のうち、240 棟は居住専用、135 棟は住商・住工のように用 途混合として使用している。高さ 2 階から 5 階建てが 87%を占めており、中低層の建物で構成されて いる。住居施設は 1,129 ユニット(88%)、非住居施設は 133 ユニット(10.4%)あった。一方民有地 域は、7 階建てが 8 割を占めており、そのほとんどが 1 階に店舗が入っている。地域総数 1,868 ユニッ トのうち、住居施設は 1,428 ユニット(76%)、非住居施設は 411 ユニット(22%)である。東区地域 は、227 棟に店舗が入っており、高さ 4 階から 7 階の建物がおよそ 8 割を占めている。総数 2,428 ユ ニットのうち、住居施設は 1,713 ユニット(71%)、非住居施設は 665(27%)である。商業地域の西 門地域は、約 6 割が商業専用の建物、道路率は 36.5%である。総数 1,491 ユニットのうち、住居施設 は552 ユニット(37%)、非住居施設は 743(49.8%)である。 各地域の非住居施設の業種区分をみると、鄰江地域は、小規模自動車整備所の「工業」が 36.6%と もっとも多く、次いで、オフィス等の「業務」は 21. 4%、食堂、カフェ、洋服店等の「小売」は 20.5%の順であった。民有地域は、「小売」が 29.3%と最も多く、次いで「業務」(27.2%)、「飲食」 (16.5%)が占めている。東区では、「小売」が 44.9%ともっとも多く、「業務」25.9%、「飲食」 15.9%が占めている。西門地域は、「小売」が 51.9%を占め、「飲食」34.6%と合わせて 8 割を超えてい る。 5-3.住民の居住環境評価 対象地域の居住環境への住民満足度アンケート調査結果は次の通りである。住民に対する「居住地域 に満足しているか」の質問に対し、鄰江地域は、回答者 144 人に対し、「満足」と答えた人は 39 人 (27.1%)、「普通」は 83 人(57.6%)、「不満」は、22 人(15.3%)であった。次いで民有地域は、回 答者 140 人中、「満足」は 73 人(52.1%)が、「普通」は 66 人(47.1%)。東区地域は 78 人のうち、 「満足」は 45 人(58%)、「普通」は 25 人(32%)、「不満」は 8 人(10%)と回答した。西門地域は、 回答者 50 人中、「満足」は 17 人(34%)、「普通」は 30 人(60%)、「不満」は 3 人(6%)であった。 住民を対象にした場合も調査対象とした非居住者の割合が少ないことによりほぼ同様の結果となった。 6.台北市の事例で得られた知見 台北市街地の調査からは以下の 4 つの知見が得られた。第1に、高密度の居住や施設の多様な集約 を前提に、小規模の住戸が住民のニーズに応えた形で商業用途に転用する様子がみられる。 第 2 に、 高密度居住と、歴史的な起源を有する生活行動の外向性や起業精神は空間の多様な目的での利用を促し、 結果としてにぎわいのある空間の形成につながる。第3に、住民の生活環境評価から、満足度と近隣関 係の関連性は見られないものの、公園の共同管理や里単位のコミュニティ活動、朝の慣習的な体操、朝 食時の近隣での会合などを通して、濃密ではないが安定し、継続的な交流社会が形成されていることが 分かる。第4に、台北市街地の類型は、職住が近接し、中低層のヒューマンスケールな空間が広がり、 多様なライフスタイルの「混住型」であることが明らかになった。
博士論文要旨 7.今後の用途混合地域開発手法への考察 これらを今後の用途混合地域開発手法への考察については、以下の 4 つの提起が可能と考える。第 1に、台北市の用途混合市街地の生成的な形成には、急速な都市化と盆地状の限定的な地形による高密 度居住の出現や歴史的に形成された外向的な生活文化、現状追従型都市計画制度が指摘され、これらに より立体的な用途混合のメカニズムが存在する。第2に、街区単位での計画方法については、地域別比 較で、用途混合率の上昇と共に満足度も上昇するが、一定の混合率を超えると満足度も変曲点を迎えて いることがみられることから、今後計画的に用途混合地域を形成する際に混合率が一つの集団指標とな る可能性を指摘した。第3に、用途混合地域の住環境評価の指標については、満足している要素では、 環境衛生等への評価は低いが、利便性への評価は高いことが明らかであり、このことがにぎわいや活気 を裏打ちしていると考える。従って、用途混合地域の評価指標は、利便性や住み良さによる快適性など に重点を置いて評価すべきである。最後に、具体的な建物の立体的利用については、用途混合の二つの 形態より、今後の建築の高層化に対応した次のような計画手法が提起できる(図3)。突出型の場合、人 が認知できる高さの 5 階程度(J.Gehl、2010)を商業用途とし、上層部の住宅については、セットバ ックし、高層化による圧迫感を軽減する。また騎楼型は、下層部の商業用途をセットバックし、歩道空 間を設ける手法である。 8.今後の課題 本研究では、現段階では台北市街地を対象にしたが、今後も精緻につめていくと共に、用途混合開発 事例の収集及び他の市街地との比較研究を行う。さらに、高密度の居住に焦点を当て、「混住環境」が 志向する「集まって住む」快適な住環境の可能性について明らかにしていきたい。 【参考・引用文献】 浅見泰司編著(2001)『住環境 評価方法と理論』東京大学出版会 安藤元夫(1988)「住み良さに対する混合地域居住者の評価-住工混合地域の職住関係と居住地評価に関する研究(その 3)」日本建築学会計画系論文報告集 第 361 号、pp67-pp78 エドワード・レルフ(1999)『場所の現象学』筑摩書房 郭中端,堀込憲二(1980)『中国人の街づくり』相模選書 黄健二(1991)「都市住宅區可相容使用用途與分類研究」台湾内政府建築研究所、台湾 蘇瑛敏(1987)「台北市高層集合住宅共用外部空間形態與使用関係之研究-以民間投資興建為對象」私立淡江大学建築 研究所碩士論文 臺灣省政府社会處(1966)『臺灣的國民住宅建設』裕台公司中華印刷 臺北市政府主計處(2011)『台北市統計年報 2011』台湾 陳世明(1993)「混合集住からみた台北市の都市・建築管理制度-ゾーニング制度と建築管理システムを対象とし-」日 本建築学会大会学術講演梗概集 pp371-372 陳世明(1997)「台北市における集合住宅の立体混合利用に関する研究」京都大学博士学位論文、京都 藤井敏信(2006)『混住がもたらすもの(第 8 章)』「共生のかたち」誠信書房、p172-p201 J.Jacobs(1977)『アメリカ大都市の死と生』黒川紀章訳、鹿島出版会 Jan Gehl(2010) Cities for People,ISLAND PRESS.pp205
Wu,Jih-Hwa,Huang,Pao-Hsuan,Yeh,Ching-Chia,Tasi,Yuan-Pei.(2005) Analysis on Firm Clustering around MRT Stations in Taipei City 10th Asian Real Estate Society (AsRES) International Conference, 18 -21 July 2005, Sydney, Australia.
目 次
第1章 序論
1. 研究の背景 ………...1 2. 研究の目的 ………...….4 3. 研究の方法 ………...4 4. 論文の構成 ………...6第
2 章 先行研究のレビュー
1. 用途混合地域に関する研究 ...8 2. 用途混合地域の住環境評価に関する研究...11 3. 街区管理に関する研究...11 4. 用途の混合を計画に導入することへの懸念...12 5. 本研究の位置づけ...12第
3 章 台北市の用途混合市街地形成の背景
1 地形的要因―盆地による空間の制約 ………..……13 1.1 台北市の建築用途混合利用の歴史………16 1.2 台北市の住宅事情 ………...…17 2 外向的な生活スタイル... 18 3 建築形態 ... 20 3.1 用途混合形態-騎楼型と突出型 ...20 3.2 突出型の形成過程 ...22 3.3 都市計画の規制 ...22 3.3.1 ゾーニング制度...22 3.3.2 路線型商業地域の指定...23 3.4 まとめ...27第4章 対象地域の建物利用
1 用途混合地域の類型 ... 28 2 対象地域の立地 ...29 2.1 鄰江地域(リンジャン)-旧市街地...30 2.2 西門地域(シーメン)-旧市街地 ...35 2.3 民有地域(ミンヨウ)-新市街地...40 2.4 東区地域(トンチー)-新市街地 ...42 3 まとめ ...49第5章 住環境への住民の満足度
1 調査対象地域における住民の生活形態の類型 ...50 2 回答者の属性 ...51 2.1 各地域の満足度の比較 ...52 2.2 東区地域住民の相関関係 ...54 2.3 居住環境への不満要素について ...55 2.4 東区地域住民の相関関係...58第6章 台北市の事例から得られた知見
1 市街地における小規模商業施設の拡大について...60 2 都市に居住する住民の近隣関係について...61 3 都市市街地の類型...61第
7 章 結論
各章の要点...63 1 用途混合のメカニズムについて...64 2 街区単位での計画方法について...64 3 用途混合地域の住環境評価の指標について...65 4 都市計画手法論への提起...66 引用・参考文献 ...681
第 1 章 序 論
1. 研究 の 背 景 近 年 、 都 市 の 機 能 を ゾ ー ニ ン グ 制 度 で 区 分 し 、 土 地 利 用 を 単 一 用 途 で 形 成 し て き た 近 代 都 市 計 画 へ の 批 判 が 強 ま っ て い る 。か っ て ジ ェ イ ン・ジ ェ イ コ ブ ス は「 ア メ リ カ 大 都 市 の 死 と 生 」(1961) の 中 で 、 地 域 に 多 様 性 を も た ら す た め に は 、 用 途 の 混 合 を 必 須 の 条 件 と 主 張 し た が 、20 世紀 後半に おけ る都市 化の 急速な 進行 は、 ゾ ー ニ ン グ 的 な 空 間 利 用 を 効 率 的 合 理 的 な 計 画 手 法 と し て 優 先 さ せ て き た 。 と こ ろ が 都 市 の 成 熟 化 や 衰 退 化 過 程 に 入 っ た 先 進 国 で は 少 子 高 齢 化 が 進 み 都 市 内 で の 人 的 交 流 、 賑 わ い の 創 出 や コ ミ ュ ニ テ ィ の 再 生 な ど が 課 題 と な り 、 一 方 、 農 村 か ら 都 市 へ の 人 口 集 中 が み ら れ る 開 発 途 上 国 で は 拡 大 す る 都 市 域 の も た ら す 交 通 混 雑 の 解 消 や 新 た な コ ミ ュ ニ テ ィ の 形 成 が 課 題 と な っ て お り 、 再 び 既 存 の 都 市 市 街 地 に お け る 用 途 混 合 地 域 の 高 密 度 か つ 多 様 性 に 富 ん だ 住 環 境 形 態 の 可 能 性 が ソ フ ト 面 、 ハ ー ド 面 の 両 方 か ら 着 目 さ れ る よ う に な っ て き て い る 。 こ の 対 象 と な る よ う な 地 域 は 都 市 計 画 規 制 の 比 較 的 緩 い と さ れ る ア ジ ア の 都 市 に 多 く み ら れ る 。 た と え ば 東 京 の 既 存 市 街 地 内 で の 重 点 整 備 地 域 図 を 見 る と 、 当 該 地 区 の 隣 接 地 域 に は 、 い わ ゆ る 谷 根 千 地 区 、 下 北 沢 、 浅 草 、 千 住 な ど 賑 わ い の あ る 地 区 が 立 地 し て い る( 図 1.1)。これ ら密 集用途 混合 地域を 対象 にした 従来 の 計 画 で は 、 自 然 災 害 等 か ら の 防 災 対 策 と し て 、 道 路 の 拡 幅 や 耐 火 建 築 物 の 整 備 な ど が 行 わ れ て き た 。 し か し 近 年 で は 、 景 観 を 巡 る マ ン シ ョ ン 紛 争 や 、 路 地 景 観 や 歴 史 的 に 形 成 さ れ て き た 緊 密 な コ ミ ュ ニ テ ィ の 再 評 価 に み ら れ る よ う に 、 都 市 市 街 地 の 捉 え 方 が 変 化 し て お り 、 そ れ に 対 応 し て 新 た な 都 市 計 画 手 法 が 問 わ れ て い る 。 一 方 、 都 市 開 発 の 手 法 に お い て 、 中 心 市 街 地 で は 商 業 施 設 を 中 心 と し た 再 開 発 行 わ れ 、 郊 外 地 区 に お い て は 、 農 地 か ら 住 宅 地 に 転 用 し た 新 し い 開 発 が 行 わ れ て い る 。 し か し な が ら 、 自 然 発 生 的 に 形 成 さ れ た 用 途 混 合 地 域 の 開 発 手 法 に つ い て は 、こ れ ま で ほ と ん ど 対 象 と な ら ず 、開 発 計 画 の 対 象 外 と さ れ て い た 。図 1.2 は 、 用 途 混 合 地 域 が 形 成 す る 過 程 を 示 し て い る 。 一 般 的 な 都 市 の 事 例 で は 、 時 代 別 に 3 段 階 の 都 市 が 拡 大 す る 様 子 が み ら れ る 。 第 1 段 階 の 伝 統 的 な 商 業 都 市 で は 、 商 業 や 住 宅 用 途 が 混 ざ っ た 形 で 都 心 や そ の 周 辺 地 域 に 形 成 さ れ て い る が 、第 2 段 階の 工 業都市 では、都市に お ける大 規模 な 商 業 施 設 の 開 発 等 に よ り 地 価 が 上 昇 し 、 さ ら に 、 郊 外 地 で の 新 た な 住 宅 地 の 開 発 に よ り 、 用 途 混 合 地 域 は 、 都 心 周 辺 に シ フ ト す る 。第3 段階 の大 都 市の時 代にな2 る と 、こ う し た 現 象 は さ ら に 拡 大 し 、都 心 で は 、住 居 用 途 は 商 業 用 途 に 吸 収 さ れ 、 そ の 格 差 は さ ら に 拡 大 し て い く 。 交 通 手 段 の 発 達 に よ り 郊 外 の 農 地 は 住 宅 地 に 転 用 さ れ る 。 し か し 、 用 途 混 合 地 域 は 、 空 間 の 変 化 が 少 な く 、 都 心 と の 距 離 を 理 由 に 、 住 居 用 途 の 需 要 は 増 し 、 商 業 や 住 宅 用 途 が 混 在 す る 高 密 度 な 居 住 空 間 が 形 成 さ れ る 。 こ れ ま で の 都 市 開 発 は 、 都 心 の 商 業 用 途 中 心 の 再 開 発 や 郊 外 で の 農 地 を 住 宅 地 に 変 え る 新 し い 開 発 の 事 例 は た く さ ん み ら れ る が 、用 途 混 合 地 域 に 関 す る 開 発 は 、 イ ン フ ラ 整 備 に 伴 う 開 発 コ ス ト の 増 加 や 住 宅 を 巡 る 複 雑 な 契 約 関 係 、 既 存 の 開 発 手 法 に よ る コ ミ ュ ニ テ ィ 崩 壊 な ど が 指 摘 さ れ 、 こ れ ま で 事 実 上 開 発 は 行 わ れ ず に 放 置 さ れ て き た の が 現 状 で あ る 。 本 研 究 で は 、台 湾 台 北 市 の 居 住 環 境 に 着 目 し た 。そ の 理 由 は 、次 の 3 点であ る。 ま ず 、 台 北 市 は ア ジ ア の 中 で も 有 数 の 高 密 度 都 市 で あ り 、 旧 市 街 地 に お い て は 、 基 本 的 に「 先 居 住 - 後 計 画 」( 国 連 居 住 計 画 )と い っ た 生 成 的 な 発 展 形 態 が み ら れ る 。 次 に 、 個 別 の 建 物 利 用 に お い て は 、 低 層 部 に 店 舗 や 工 場 な ど の 非 住 居 施 設 、 上 層 部 に 住 居 と い っ た 立 体 型 用 途 混 合 形 態 が 、 既 成 市 街 地 に 一 般 的 に み ら れ る 。 東 京 近 郊 に お い て も 賑 わ い の 創 出 の た め に 、 新 築 マ ン シ ョ ン の 低 層 部 に は 商 業 用 途 を 導 入 す る こ と を 定 め た 三 鷹 市 ( 三 鷹 市 特 別 活 性 化 地 区 内 に お け る 建 築 制 限 に 関 す る 条 例 、2004 年 )を始め とし て、用途 の 混在に 着眼 し勧告 を盛 り込む 自治 体 も 増 え つ つ あ る が 、 そ の 具 体 的 な 空 間 形 態 に つ い て は 台 北 市 の 事 例 が 示 唆 す る 点 が 多 い と 考 え る 。 最 後 に 、 本 稿 で 考 察 す る 立 体 型 混 住 モ デ ル は 景 観 面 か ら 、 中 層 建 築 群 に よ っ て 構 成 さ れ 、 台 北 の 既 存 市 街 地 に 特 徴 的 な ヒ ュ ー マ ン ス ケ ー ル ( 人 間 尺 度 ) に 依 拠 し た 空 間 に 類 似 し て い る こ と に よ る 。 た と え ば 、 東 京 の ミ ッ ド タ ウ ン 開 発 は 、「 用 途 の 混 在 」を 掲 げ 計 画 的 に 構 築 し た が 、周 辺 と の 一 体 感 が 欠 如 し 既 存 の 市 街 地 景 観 に は な い 超 高 層 建 築 物 が 歩 行 者 に 圧 迫 感 を 与 え て い る 。 用 途 の 混 在 は 条 件 で あ る が 、 同 時 に 「 ま ち 空 間 」 と し て の ヒ ュ ー マ ン ス ケ ー ル を 考 え る 必 要 が あ る 。
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図 1.1 東京 都重 点整 備地域
出 所 : 東 京 都 都 市 整 備 局 「 防 災 都 市 づ く り 推 進 計 画 ( 平 成 22 年 1 月改定 )」 p.8
図 1.2 生成 的用 途混 合地域 の形 成過程 出 所 : 図 内
4 2. 研究 の 目 的 本 研 究 は 、 住 民 満 足 度 の 高 い 用 途 混 合 地 域 の 計 画 手 法 を 構 築 す る た め に 、 台 北 市 の 事 例 か ら さ ま ざ ま な 示 唆 を 得 る こ と を 目 的 と す る 。 ま ず 台 北 市 が 立 体 的 な 用 途 混 合 市 街 地 を 形 成 し て い く メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に し 、 つ い で 、 こ れ ら の 地 域 の 住 環 境 に つ い て 、 用 途 混 合 率 と 満 足 度 の 関 係 に 着 目 し て 住 民 に よ る 質 的 評 価 を 行 い 、 最 終 的 に 、 用 途 混 合 地 域 の 都 市 計 画 手 法 へ の 考 察 を 行 う 。 な お 、 住 環 境 の 評 価 に つ い て は 様 々 な 蓄 積 と 展 開 ( 浅 見 泰 司 等 ) が あ る が 、 こ こ で は 台 北 市 の 市 街 化 過 程 を 通 し て 形 成 さ れ た 、 用 途 混 合 地 域 の 優 位 特 性 を 比 較 分 析 す る こ と に 限 定 し て 行 っ て い る 。 3. 研究 の 方 法 用 途 混 合 地 域 の 計 画 手 法 へ の 考 察 と の 結 論 を 導 く た め に 、 次 の よ う な 方 法 で 進 め る 。 (1)先 行研 究のレ ビュ ーを通 して 、近 年用混 合地域 を巡 る議論 を整 理する こと で、 本 研 究 の 位 置 づ け を 行 う ( 第 2 章)。 (2)台 湾台 北市に 用途 混合市 街地 に広が った 背景を 明ら かにし 、住 宅地に 商業 用 途 が 混 合 し て い く メ カ ニ ズ ム を 追 っ て い く ( 第 3 章) (3)用 途が 混合し た街 区単位 の住 環境を 比較 するこ とで 、用 途混合 の実態 を把 握 し 、 用 途 混 合 地 域 の 開 発 手 法 に お け る 集 団 指 標 を 考 察 す る ( 第 4 章 )。 (4)用 途混 合地域 に居 住して いる 住民を 対象 に、満 足度 への アンケ ート調 査を 行 う 。 住 環 境 の ど の よ う な 要 素 に 満 足 し て い る か を 明 ら か に し 、 今 後 の 用 途 混 合 地 域 対 象 に 評 価 を 行 う 住 環 境 指 標 に つ い て 考 察 す る(第 5 章)。 (5)台 北市 の事例 から 得られ た知 見をも とに 、今後 の用 途混 合地域 の開発 手法 に つ い て 考 察 す る ( 第 6 章)。 調 査 対 象 地 域 と し て 、 台 北 市 の 中 心 市 街 地 内 に 位 置 す る 4 つの 地域を 選定 し、 対 象 地 域 の 空 間 形 成 状 況( ハ ー ド 面 )や 住 環 境 へ の 満 足 度( ソ フ ト 面 )に つ い て 、 ヒ ア リ ン グ 調 査 、 ア ン ケ ー ト 調 査 、 目 視 調 査 を 実 施 し た 。 空 間 の 形 成 状 況 は 、 郵 便 ポ ス ト や 看 板 な ど を 目 視 し 、 居 住 ・ 非 居 住 施 設 の 使 用 用 途 及 び 店 舗 の 業 種 を 判 断 し た 。ま た 、ア ン ケ ー ト 調 査 は 各 里 長 を 通 し て 配 布 し 、鄰 江 地 域 154 部、民有 154 部、東区 78 部、 西門 50 部を 回収 した (表 1.1)。
5 表 1.1 現地 調査方 法の 概要 3.1 対象 地 域 の 選定 方 法 対 象 地 域 と し た 4 地 域を選 定し た理由 は次 の 2 点によ る。第 一に 、都市 発展 の 過 程 を 比 較 す る た め に 、台 北 市 域 が 拡 大 す る(1968 年 )以 前か ら形 成され てき た 市 街 地 の 中 で 、 早 い 時 期 に 形 成 さ れ た 2 地域(旧市 街地)と、近 年 に形成 され た 2 地域( 新市 街地 )を 選定し た。第二 に 、立 体型混 住モ デルの 類型 化を図 るた め、 各 地 域 は 用 途 混 合 形 態 の 異 な る 地 域 を 選 び 、 街 区 の ま と ま り を 対 象 範 囲 と し て 選 定 し て い る 。 地 域 は 行 政 区 域 の 一 つ で あ る 「 里 」 を 単 位 と す る 。 里 は 日 本 の 「 町 」 に 当 た る 行 政 区 域 で あ り 、一 つ の 区 は 、お よ そ 19(南 港区)~ 53(大 安区)で構成 され る な ど 、人 口 や 面 積 は 地 域 に よ っ て 異 な る 。 里 は 2 年ごと に住民 投票 によっ て里 長 を 選 出 し 、地 域 全 般 の 業 務 を 行 う 。里 は さ ら に 約 25 世帯 前後 で構 成され る「 鄰」 に 分 か れ 、 代 表 の 鄰 長 を 選 出 す る 。 台 北 市 は 、2011 年 12 月現在、 12 の区 、456 の里、9545 の鄰で 構 成され てい る ( 台 北 市 統 計 要 覧 2011)。 調 査 対 象 地 域 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。 ① 大 同 区 鄰 江 ( リ ン ジ ャ ン ) 地 域 : 清 朝 時 代 に 形 成 さ れ た 大 稲 埕 に 立 地 し 、 淡 水 河 を 利 用 し た 国 際 港 と し て 発 展 し た 。 都 市 発 展 の 初 期 段 階 で は 、 商 業 と 住 宅 地 が 密 集 し て い た が 、 近 年 は 小 規 模 自 動 車 整 備 所 等 が 並 ぶ 工 業 地 域 と し て の 性 格 が 強 い 。 従 業 員 の 地 域 内 居 住 も 多 い 。 調査 期間 2008年6月、8月/2009年8月 2010年1月/2010年9月 計5回 ①建物の使用状況記録調査→ 郵便ポストや看板、商品等を見 て判断し、記録 総ユニット数 1.鄰江:1283、2.民有:1868 3.西門:1491、4.東区:2428 ②住民対象アンケート調査 1,2地域:留置式 3,4地域:面接式 回収部数/配布部数 1.鄰江:154/300、2.民有:154/300 3.西門: 50/ 50、4.東区: 78/ 80 調査 方法
6 ② 松 山 区 民 有 ( ミ ン ヨ ウ ) 地 域 : 台 北 市 が 東 へ と 移 転 し 始 め た 1980 年代に開 発 が 進 め ら れ た 地 域 の 一 つ 。 経 済 中 枢 の 南 京 東 路 に 面 し て お り 、 交 通 条 件 の 良 さ な ど か ら オ フ ィ ス や 金 融 機 関 が 集 中 し て い る 。 ③ 大 安 区 東 区 ( ト ン チ ー ) 地 域 :1980 年代 新しく 開発 された 3 区 (松山 、大 安、 信 義 ) の う ち の 一 つ 。 政 治 ・ 文 化 中 枢 の 仁 愛 路 や MRT 板南線が 走 る忠孝 東路 に 隣 接 し 、 デ パ ー ト や 商 店 、 オ フ ィ ス な ど が 集 中 す る 。 ④ 萬 華 区 西 門 ( シ ー メ ン ) 地 域 : 清 朝 時 代 国 内 貿 易 が 盛 ん な 艋 舺 に 立 地 し 、 戦 争 当 時 で は 日 本 の 製 造 会 社 が 多 く 建 て ら れ た こ と か ら 、日 本 人 居 住 区 が 形 成 さ れ た 。 現 在 は 用 途 地 域 の 商 業 区 と し て 指 定 さ れ て お り 、平 面 的 商 業 区 の 様 子 が み ら れ る 。 4. 論 文 の構 成 本 論 文 の 構 成 を 図 1.3 に示す。 第 1 章で は、近年 都 市が抱 える 問題の 多様 化を背 景に、都市開 発 の対象 外と さ れ て い た 用 途 混 合 地 域 に 焦 点 を 当 て る 理 由 及 び 問 題 提 起 を 行 う 。 第 2 章で は、関連 研 究のレ ビュ ーを通 して 、都市計 画分 野にお け る近年 の動 き を 追 っ て い く 。 第 3 章で は、台北 市 の市街 地に おいて 高密 度かつ 用途 混合が 広が る背景 を、地 形 、 生 活 文 化 、 制 度 的 側 面 と し て 捉 え 、 用 途 混 合 市 街 地 の 形 成 メ カ ニ ズ ム を 明 確 化 す る 。 第 4 章で は、街区 単 位での 計画 手法に つい て考察 する ために、調 査対象 地域 の ハ ー ド 的 環 境 の 比 較 調 査 を 行 っ た 。 第 5 章で は、今後 の 住環境 指標 につい て考 察する ため に、住民 対 象のア ンケ ー ト 調 査 結 果 か ら 満 足 度 及 び 住 環 境 評 価 要 素 、 近 隣 関 係 に つ い て 述 べ た 。 第 6 章で は、台北 市 の事例 から 得られ た知 見をも とに、用途混 合 地域計 画手 法 の 考 察 を 行 う 。 第 7 章では 、これ らの 議論を 結論 として まと める。
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第 2 章 先 行 研 究 の レ ビ ュ ー
1. 用 途 混合 地 域 に 関す る 研 究 国 際 連 合(2009)で み るよう に、20 世紀 に入 り従来 の都 市計画 は、新たな 住民 の ニ ー ズ に 対 応 で き ず 、 イ ン ナ ー シ テ ィ や ス ラ ム な ど 、 こ れ ま で な か っ た 問 題 の 改 善 の た め に 変 革 を 求 め ら れ る よ う に な っ て き た 。 1960 年代 ジェ イン・ジェイ コブ スは、土地 利用の 画一 的な開 発や 都市計 画が も た ら し た 道 路 や 街 区 の 規 模 、 公 園 の あ り 方 等 を 批 判 し 、 当 時 の 開 発 構 想 と し て 提 案 さ れ た 、 ル ・ コ ル ヴ ィ ジ ェ の 「 輝 く 都 市 」 な ど は 「 高 層 の 田 園 都 市 」 と 言 わ れ る な ど 辛 辣 な 批 判 を 余 儀 な く さ れ た 。彼 女 は「 ア メ リ カ の 大 都 市 の 死 と 生 」(1961) の 中 で 近 代 の 都 市 計 画 に よ っ て 形 成 さ れ た ア メ リ カ マ ン ハ ッ タ ン の 事 例 を 取 り 上 げ 、 都 市 の 多 様 性 を 生 じ さ せ る た め の 必 修 条 件 と し て ① 用 途 混 合 地 域 、 ② 小 規 模 ブ ロ ッ ク 、 ③ 古 い 建 物 、 ④ 人 口 や 建 物 の 集 中 、 の 必 要 性 を 提 示 し て い る 。 藤 井 敏 信(2006)は「共生 のか たち 」に お いて多 様性 に富ん だア ジアの まち を 例 に 挙 げ 、 こ の 多 様 性 を 活 か し た ア ジ ア 型 混 住 環 境 を 提 案 し て い る 。 中 で も 、 東 京 墨 田 区 京 島 の 住 商 工 用 途 混 合 地 域 の 事 例 を 取 り 上 げ 、木 造 密 集 市 街 地 に お い て 、 現 在 の ス ト ッ ク を 活 か し た 修 復 型 改 善 と 地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ の 再 構 築 等 の 用 途 混 合 地 域 が 持 つ 共 生 へ の 可 能 性 を 提 案 し て い る 。 安 藤 元 夫(1986)は「 住み良 さに 対する 混合 地域居 住者 の評価 ―住 工混合 地域 の 職 住 関 係 と 居 住 地 評 価 に 関 す る 研 究( そ の 3)」にお いて 、大 阪市 の 九条南 地区 な ど 4 つの地 域を対 象事 例とし て取 り上げ 、対 象地域 にお ける居 住環 境の実 態と 住 民 評 価 に つ い て 考 察 し て い る 。 調 査 対 象 地 区 の ( 住 工 用 途 ) 混 合 地 域 で は 職 住 近 接 の 実 現 に よ り 、① 仕 事 上 の 住 み 良 さ に 対 し 、ア ン ケ ー ト 質 問 回 答 者 の 2/3、特 に 自 営 層 が 住 み 良 い と し 、 ② 生 活 上 の 住 み 良 さ に 対 し て は 、 買 い 物 や 交 通 な ど 居 住 地 と し て の 利 便 性 が 評 価 さ れ 世 帯 主 、 主 婦 と も 満 足 度 が 高 く 、 ③ 子 供 環 境 の 良 い 点 と し て 、 労 働 へ の 理 解 や 知 識 欲 の 拡 大 、 と い う 住 民 の 居 住 環 境 評 価 が 挙 げ ら れ て い る 。「 混 ざ っ て 住 む ま ち を 計 画 す る 」(1990)で は、住 商や 住工 混 合地域 の特 質 と し て 、 用 途 が 混 合 す る 形 態 と 庶 民 性 を あ げ て い る 。 こ う し た ま ち の 計 画 を 日 常 生 活 圏 レ ベ ル で 拠 点 的 に つ く る こ と で 、 住 み 良 い 条 件 の ま ち が 拡 大 し て い く 、 と し て い る 。 田 端 修(1992)は、都心に 隣接 してい る商 住型市 街地 につい て、「 職・住・遊 」 が 身 近 な 生 活 範 囲 に お い て 享 受 し う る と し 、 都 市 型 ラ イ フ ス タ イ ル が 発 展 し 、 都9 心 居 住 の 回 復 の 役 割 を 果 た す と の 評 価 を し て い る 。 1980 年代 末か ら台 頭した 地球 環境問 題へ の懸念 から 発展し た「 持続可 能性」と い う キ ー ワ ー ド は 、 コ ン パ ク ト シ テ ィ や ニ ュ ー ア ー バ ニ ズ ム な ど 都 市 の 将 来 の あ り 方 に も 導 入 さ れ る よ う に な っ た 。 ニ ュ ー ア ー バ ニ ズ ム や 用 途 混 合 の メ リ ッ ト に つ い て 、 歩 行 者 を 優 先 し た 都 市 構 造 づ く り や 環 境 に や さ し い 公 共 交 通 シ ス テ ム の 導 入 、 イ ン フ ラ 整 備 へ の コ ス ト 削 減 、 職 住 近 接 に よ る 活 気 の 発 生 や 様 々 な 費 用 の 軽 減 、 計 画 プ ロ セ ス へ の 住 民 の 参 加 、 な ど を 挙 げ て い る 。 1990 年 代 初 め ア メ リ カ で は 、 P.Calthorpe(1993) の TOD(Transit-Oriented Development) や A.Duany and Plater-Zyberk(1994) に よ る Traditional Neighborhood Design(TND)な どの コン セプ トを 含む ニュ ーア ー バ ニズ ムの 提案 が 大 き く 取 り 入 ら れ る よ う に な っ た 。 こ こ で 取 り 上 げ る 手 法 は 、 公 共 交 通 手 段 や 歩 行 者 を 優 先 す る コ ミ ュ ニ テ ィ や ま ち な み の デ ザ イ ン コ ー ド な ど 、 提 唱 の 契 機 に つ い て は 異 な る も の の 、 い ず れ も 住 宅 、 公 園 、 学 校 、 店 舗 、 公 共 サ ー ビ ス 施 設 、 職 場 が 公 共 交 通 機 関 か ら 歩 い て い け る 範 囲 内 に 配 置 さ れ た 伝 統 的 な ア メ リ カ の 近 隣 地 区 の 形 態 に 着 目 し 、 現 代 の 住 民 の ニ ー ズ に 対 応 し て 実 現 す る も の と し て い る(P.Calthorpe,1993). 特 に TOD のア プ ロ ー チ は 多 く の 研 究 で 取 り 入 ら れ 、 主 と し て 、 駅 か ら 半 径 500m、用途 の混 合 や 住 宅 や 職 場 の 多 様 性 、徒 歩 圏 内 と い っ た 形 態 を 提 案 し て い る(Li and Lai, 2009)。 海 道 清 信(2001)は 欧 米の 事 例 から コ ン パク トシ テ ィ の概 念 を 明確 に説 明 し てい る 。 鈴 木 浩(2007)は 、 海道 を 引 用し な が ら、 日本 で は コン パ ク トシ ティ へ の 議論 が 中 心 市 街 地 の 活 性 化 な ど と し て 捉 え ら れ て い る が 、 欧 米 で は 、 資 源 や 環 境 問 題 な ど 地 球 全 体 の お か れ て い る 状 況 を 課 題 と し て 認 識 し て い る 、と し て い る(表 2.1、 表 2.2)。
10 表 2.1 コン パク トシ ティの 原則 出 所 : 鈴 木 浩 「 日 本 版 コ ン パ ク ト シ テ ィ 」pp.26-27 よ り 引 用 表 2.2 コン パク トシ ティの 効果 出 所 : 鈴 木 浩 「 日 本 版 コ ン パ ク ト シ テ ィ 」pp.27-28 よ り 引 用 施策 効果 地球温暖化問題への対応 快適で効率の高い都市空間の創出 社会的な公平性の維持 農地、景観、自然環境の保護 都心部の活性化 投資効率 単調な郊外開発防止 都市の個性の維持再生 社会全体の無駄の排除 歩いて暮らせるまちの実現 省エネルギー化 地域コミュニティの育成 自動車利用の抑制と公共交通機関利用促進による効果 郊外への外延的開発を抑制する効果 市街地内の高度利用、複合機能の配置による効果 高い居住と就業などの密度 複合的な土地利用の生活圏 自動車だけに依存しない交通 多様な居住者と多様な空間 独自な地域空間 明確な境界 社会的な公平さ 日常生活上の自足性 地域運営の自律性 空間的形態 機能 コンパクトシティの原則
11 2. 用途 混 合 地域 の 住環 境 評 価 に 関す る 研 究 黄 健 二 (1989)「 都 市 住 宅 區 可 相 容 使 用 用 途 與 分 類 研 究 」 で は 、 台 北 市 の 東 湖 地 区 な ど6 つの調 査対 象地域 の用 途混合 の現 状と地 域住 民が否 定ま たは許 容す る 用 途 及 び 業 種 を 分 析 し て い る 。 黄 健 二 に よ れ ば 、 台 北 市 で は 伝 統 的 に 用 途 の 混 合 が 立 体 的 か つ 平 面 的 に 実 現 さ れ て い る が 、 商 ・ 工 用 途 の 住 宅 地 へ の 拡 大 に よ る 居 住 環 境 の 悪 化 が 進 行 し て い る た め 、現 行 道 路 か ら 30m 以内に 指定 し ている 商業 地 域 の 許 容 範 囲 の 縮 小 を 提 示 す る と と も に 、 用 途 制 限 を 順 守 す る た め の 法 律 や 罰 則 の 整 備 を 提 案 し て い る 。 台 北 市 の 市 街 地 に 関 す る 文 献 で は 、 こ の よ う に 用 途 混 合 を 拡 大 し な い よ う 規 制 す る 提 案 が 多 数 み ら れ る 。 陳 世 明(1997)「 台 北市 に お ける 集 合 住 宅 の 立 体 混 合 利 用 に 関 す る 研 究 」 で は 、 建 物 の 立 体 的 混 合 利 用 に 関 し て 、 ま ち に 活 気 や に ぎ わ い は 生 ま れ る が 、 住 環 境 と し て の 低 下 が 懸 念 さ れ る と し 、 用 途 の 転 用 可 能 な ゾ ー ン を 別 途 指 定 し て い く よ う 提 案 し て い る 。 3. 街区 管 理 に関 す る研 究 佐 藤 圭 二(2002)は 、日 本の 密集事 業地 区 におけ る事 業目的 と事 業の方 法に よ り 、街 区 面 積 の 指 標 の 目 安 と し て「 小 街 区 タ イ プ(0.45ha 未満 )」、袋小路 や細街 路 を も つ 個 別 改 善 地 区 の 「 中 街 区 タ イ プ (0.45~0.90ha)」、街 区の 中に道 路が 1 本 以 上 必 要 と す る 「 大 街 区 タ イ プ (0.90ha 以上)」に類 型化 し、 事業計 画( 一般 型 や 特 殊 型 、 フ レ キ シ ブ ル 型 な ど に 分 類 ) と の 関 係 か ら 、 ① 小 街 区 タ イ プ の 設 計 計 画 は 、「 住 民 の 同 意 に よ る 任 意 事 業 で あ る 」と い う 特 徴 を 反 映 し 一 般 性 を 持 っ て お り 、 比 較 的 短 期 に 実 現 可 能 で あ る が 、 地 区 面 積 が 大 き く な る と 時 間 と 費 用 の 面 か ら 、 実 現 可 能 性 や 進 歩 率 が 低 く な る こ と 、 ② 基 盤 未 整 備 や 住 宅 改 善 先 行 型 に お い て 道 路 と 一 体 化 し た 整 備 ま た は 道 路 事 業 を 優 先 さ せ る 場 合 に お け る 明 確 な 優 遇 施 策 を 実 施 す る こ と 、 な ど を 指 摘 し 、 既 存 の 街 並 み を 維 持 し な が ら 効 果 的 な 密 集 住 宅 市 街 地 の 改 善 を 提 案 し て い る 。 小 林 重 敬(2005)は 、 住宅 市 街 地像 の あ り方 につ い て 、① 都 心 部周 辺高 密 市 街地 の 「 ア ン 」 と 「 ガ ワ 」 に よ る 住 宅 市 街 地 形 成 と 、 ② 一 般 住 宅 市 街 地 の 開 放 型 を 提 案 し て い る 。 前 者 は 街 区 の 中 心 部 で あ る 「 ア ン 」 の 街 区 形 成 と 基 盤 整 備 の 実 施 、 ま た は 道 路 沿 道 の 「 ガ ワ 」 の 高 密 化 を 図 る 方 法 で あ り 。後 者 は 街 区 等 を 1 つの住 環 境 と し て 見 な し 、 建 築 タ イ プ や 建 物 の 配 置 を 特 定 す る こ と に よ っ て 高 さ 、 規 模 の 統 一 感 の あ る 空 間 の 造 成 と と も に オ ー プ ン ス ペ ー ス の 確 保 が 可 能 に な り 、 一 定 の 環 境 が 確 報 さ れ る 住 宅 市 街 地 を 形 成 す る こ と で あ る 。 本 研 究 で 取 り 上 げ て い る
12 台 北 市 の 二 つ の 事 例 か ら は 旧 市 街 地 の リ ン ジ ャ ン 地 区 で 「 ア ン と ガ ワ 」 の 空 間 構 成 、 新 市 街 地 の ミ ン ヨ ウ 地 区 で 「 開 放 型 」 空 間 モ デ ル が 見 ら れ 、 先 行 的 事 例 と し て 考 え ら れ る 。 4. 用途 の 混 合を 計 画に 導 入 す る こと へ の 懸念 実 際 に 用 途 混 合 の 手 法 が 計 画 さ れ た ま ち に つ い て は 、 欧 米 の ニ ュ ー タ ウ ン 建 設 な ど に 多 く み ら れ る 。 カ ナ ダ の 事 例 か ら は 、 ト ロ ン ト や バ ン ク ー バ ー の 一 部 の 大 都 市 を 除 く 地 方 都 市 に お い て は 、 用 途 混 合 地 域 に お い て 住 民 の ク ラ ス 別 分 離 が 拡 大 し 、 依 然 と し て ア フ ォ ー ダ ビ リ テ ィ は 改 善 さ れ な い ま ま と 指 摘 し て お り 、 今 後 の 用 途 混 合 開 発 手 法 に つ い て 懐 疑 的 な 指 摘 も あ る(J.Grant,2002)。一方 、1980 年 代 か ら 大 都 市 に お い て 用 途 混 合 を 奨 励 し て き た オ ラ ン ダ の Amsterdam に あ る Eastern Docklands 地域では 、地 域によ って 異なる もの の、そ の経 済的効 果な ど か ら 行 政 や 住 民 は 概 ね 満 足 し て い る と の 評 価 を し て い る(E.Hoppenbrouwer & E.Louw,2005)。 羽 鳥 洋 子(2009)は 、 GIS データ をも とに 東 京 23 区に おけ る用 途 混合地 域の面 積 を 割 り 出 し て い る 。 用 途 混 合 形 態 に 転 用 さ れ て 、 集 合 住 宅 の 住 宅 機 能 が 失 わ れ た と し 、 そ う い っ た 地 域 に 商 業 専 用 の 建 物 を 建 て る よ う に 提 案 し て い る 。 近 年 の 都 市 開 発 に お い て 、 ま る で 「 万 能 薬 」 の よ う に 使 わ れ て い る が 、 ダ イ ナ ミ ッ ク に 変 動 す る 都 市 の 中 で 、 今 後 の 用 途 混 合 の 目 的 や 手 法 等 に つ い て は 更 な る 議 論 が 必 要 で あ る 。 5. 本研 究 の 位置 づ け 本 研 究 は 、 こ れ ま で 見 て き た コ ン パ ク ト シ テ ィ の 有 効 性 を 評 価 し 、 用 途 の 混 合 を 計 画 手 法 と し て 捉 え る 一 連 の 研 究 で あ り 、 都 市 全 体 に 用 途 混 合 が 拡 大 し て い く メ カ ニ ズ ム を 解 明 し 、 都 市 市 街 地 を 対 象 に 、 今 後 の 用 途 混 合 市 街 地 の 計 画 を 提 起 す る こ と を 主 テ ー マ と し て い る 。
13
第
3 章 台北市の用 途混合市 街地形 成 の 背景
【 は じ め に 】 本 章 で は 、 生 成 的 な 混 住 環 境 の 形 成 メ カ ニ ズ ム に つ い て 概 説 す る 。 台 湾 台 北 市 の 高 密 度 空 間 が 形 成 さ れ た 背 景 と し て 、 地 形 、 急 速 な 人 口 の 増 加 、 外 食 文 化 や 都 市 計 画 制 度 な ど の 4 つ の 要 因 に 焦 点 を 当 て る 。 1. 地形 的 要 因- 盆 地に よ る 空 間 の制 約 台 北 市 は 、 台 湾 島 の 北 部 に 立 地 し 、3 面を 山で囲 まれ 、淡水 河や 基隆河 が流 れ る 台 北 盆 地 に 形 成 さ れ て い る 。 台 北 市 の 都 市 空 間 の 形 成 は 、 中 国 か ら の 移 民 が 本 格 化 し た 18 世紀 初期 に始ま る。 淡水河 を利 用した 台中 間の貿 易が 栄え、 その 周 辺 地 域 で あ る 艋 舺( 現 在 の 萬 華 区 の 一 部 )、西 北 部 の 大 稻 埕( 現 在 の 大 同 区 の 一 部 )、 台 北 城 内 と い っ た 3 地 域1を 中 心 に 発 展 し て き た 。1896 年 46.71km2だ っ た 面 積 は 、日 本 統 治 時 代2に 入 る と 、日 本 か ら の 移 民 者 も 増 え 、面 積 は 600km2に 拡 大 し た 。 戦 後 直 後 、 中 国 大 陸 や 地 方 か ら 大 量 の 人 口 が 流 入 し た た め 都 市 の イ ン フ ラ や 住 宅 供 給 が 追 い 付 か な い 状 況 が 続 い た 。 こ の た め 行 政 は 、 こ れ ま で 都 心 へ の 人 口 集 中 を 抑 制 し 、 過 密 状 態 を 解 消 す る た め に 、 松 山 、 大 安 、 信 義 の 新 市 街 地 に 社 会 や 経 済 、 政 治 等 の 機 能 を 分 散 さ せ 、 東 へ と 拡 大 を 図 っ た 。 さ ら に 、1968 年には 、 周 辺 地 域 5 区3を 統 合 す る こ と で 、 市 域 は 一 気 に 拡 大 し 、 現 在 に 至 る ( 図3.1)。 人 口 は 約 267 万 人で あり 、台 湾総人 口の約 11%の 割合 を占め てい る4。2011 年 12 月現在 、市 域の 総面 積約 271km2の う ち 市 街 化 地 域5は 、約 48%( 129.9 km2) で あ り 、用 途 地 域 制 度 上 で は 、住 宅 区 は 29%(38km2)、商 業 区 は 7%(8.6km2)、 工 業 区 は 3%(4.2km2) で あ る が 、 住 宅 区 で あ っ て も 徒 歩 圏 内 に 十 分 な 商 業 施 設 が 混 在 し て い る ( 表 3.1)。 士 林 な ど の 5 区 には 山地が 多く、可住地 が 限られ るた め、現在 も 平野部 に立 地 す る 7 つ の区に 商業 機 能や人 口が 集中し てい る。都 心 7 区の 面積 は 約 68km2で 、 1 現 在 の 12 区 中 、 中 山 、 萬 華 、 大 同 、 中 正 、 の 地 域 に 当 た る 。 当 該 地 域 は 、 1990 年 現 在 の 12 区 に 再 編 さ れ る ま で 、 10 の 区 に 分 類 さ れ て お り 、 地 名 や 面 積 も 現 在 と は 異 な る 。 2 台 湾 の 論 文 で は 、「 日 據 時 代 」 や 「 日 治 時 代 」 な ど が 一 般 的 に 使 わ れ て い る が 、 こ こ で は 、 「 日 本 統 治 時 代 」 と し て 書 い て い る 。 3 現 在 の 12 区 中 、 文 山 、 南 港 、 内 湖 、 士 林 、 北 投 、 の 地 域 に 当 た る 。 4 台 湾 内 政 府 統 計 處 「 内 政 統 計 年 報 2012」 2013 年 4 月 30 日 現 在 http://sowf.moi.gov.tw/stat/year/list.htm 5 「 臺 北 市 統 計 年 報 2011」で は 、「 都 市 発 展 土 地 」と な っ て い る が 、こ こ で は 、「 市 街 化 区 域 」 を 併 記 し て い る 。2004 年 以 前 は 、「 台 北 市 統 計 年 報 」 は 「 台 北 市 統 計 要 覧 」 で あ っ た 。14 台 北 市 面 積 の 25%占め ており 、台 北市人 口の 約 55% ( 約 145 万人 )が暮 らし て い る な ど 、当 該 地 域 の 人 口 密 度 は 著 し く 高 い こ と が み て と れ る( 表 3.2)。さ らに 、 全 市 域 の 中 で 商 業 区 (73%) や行政 区( 100%)が 占め るなど 、都 心 7 区に 台北 市 の 商 業 や 行 政 機 能 が 集 中 し て い る 様 子 が 見 ら れ る 。 ま た 、そ の 他 5 区には 、全 市 域 の 工 業 区 の 88% が 集中し てお り、工業 区 は都心 から 離れた 地域 に分散 して い る 様 子 が 見 ら れ る 。 士 林 な ど の 5 区 には 山地が 多く、可住地 が 限られ るた め、現在 も 平野部 に立 地 す る 7 つ の区に 商業 機 能や人 口が 集中し てい る。都 心 7 区の 面積 は 約 68km2で 、 台 北 市 面 積 の 25%占め ており 、台 北市人 口の 約 55% ( 約 145 万人 )が暮 らし て い る な ど 、当 該 地 域 の 人 口 密 度 は 著 し く 高 い こ と が み て と れ る( 表 2.3)。さ らに 、 全 市 域 の 中 で 商 業 区 (73%) や行政 区( 100%)が 占め るなど 、都 心 7 区に 台北 市 の 商 業 や 行 政 機 能 が 集 中 し て い る 様 子 が 見 ら れ る 。 ま た 、そ の 他 5 区には 、全 市 域 の 工 業 区 の 88% が 集中し てお り、工業 区 は都心 から 離れた 地域 に分散 して い る 様 子 が 見 ら れ る 。 加 え て 、 鉄 道 整 備 の 遅 れ は 市 街 地 へ の 人 口 集 中 に よ る 交 通 混 雑 を 解 消 で き ず 、 結 果 と し て 立 体 型 用 途 混 合 を 促 進 し た 。 東 京 と そ の 首 都 圏 へ の ス プ ロ ー ル は 鉄 道 の 発 達 と 共 に 進 行 し た の に 対 し 、 台 北 で は 、 最 初 の メ ト ロ 、 淡 水 線 が 1996 年 か ら 運 行 を 開 始 し 、 鉄 道 が 台 北 市 周 辺 地 域 に 拡 大 し た の は 2000 年以 降であ る。 そ れ ま で 車 や ス ク ー タ ー な ど が 主 な 移 動 手 段 で あ っ た 。 結 果 と し て 、 都 市 部 に 人 口 が 集 中 す る こ と に な り 、 建 物 の 高 層 化 が 進 む こ と に な る 。 そ の た め 、 限 ら れ た 空 間 の 中 に 様 々 な 機 能 が 集 約 す る こ と に な る 。 自 宅 か ら 各 施 設 へ の 距 離 は 、 通 勤 の 場 合 、平 均 7km で あり 、約 18%が 1km 以内 に職場 があ る。他 にも、学校や 市場 、 レ ジ ャ ー 施 設 等 へ の 距 離 は 、 お お む ね 500m~1km 以 内に ある こと が見て 取れ る ( 表 3.4)。 近 年 、 高 速 道 路 や 鉄 道 の 発 達 に 加 え 、 都 心 の 住 宅 価 格 の 高 騰 な ど を 理 由 に 桃 園 市 や 新 北 市 な ど の 郊 外 へ の 拡 大 が み ら れ る が 、 都 市 全 体 と し て は 、 依 然 と し て 立 体 的 な 用 途 混 合 型 の 高 密 度 都 市 の 特 徴 を 有 し て い る 。
15 図 3.1 台北 市域 の拡 大の様 子 表 3.1 台北 市の 都市 計画面 積 計 住宅区 商業区 工業区 行政区 その他(文教、 公共用地等) 計 農業区 保護区 その他(風景・ 河川区等) 271.7 129.9 38 8.6 4.2 0.8 78.83 141.8 5.3 69 67.4 100% 48% 29% 7% 3% 1% 61% 52% 4% 49% 48% 67.6 51.55 14 6.3 0.45 0.8 30 57.93 0.13 47.3 10.5 25% 76.3% 27.2% 12.2% 0.9% 1.6% 58.2% 21% 0% 82% 18% 37% 73% 11% 100% 38% - 2% 69% 16% 204.1 77.6 24 2.3 3.7 0 47.5 126.4 5.1 64.3 57 75% 38% 31% 3% 5% 0% 61% 62% 4% 51% 45% 63% 27% 88% 0% 60% - 96% 93% 85% 出所:台北市統計年報2011より作成 pp.492-495 単位:k㎡ 都心7区 全市域の中で占める面 積の割合 その他5区 全市域の中で占める面 積の割合 区分 合計 全市域 都市発展土地(市街化区域) その他土地(市街化調整区域)
16 表 3.2 行政 区域 別面 積及び 人口 表 3.3 自宅 と施 設と の距離 表 3.4 通勤 ・通 学先 の場所 1.1 台北 市 の 建 物用途 混 合 利 用 の歴 史 戦 前 か ら 台 北 市 へ の 人 口 の 集 中 は 著 し く 、1905 年 に 11 万だ っ た人口 は 1920 年 に は 17 万人 に、1945 年には 35 万人 を超 した。 こう した急 激な 人口の 増加 は 台 北 市 域 の 拡 大 は も ち ろ ん 住 宅 の 高 層 化 に つ な が り 、 現 在 の 台 北 市 に お け る 居 住 職場 小学校 中学校 市場やスーパーマーケット レジャー施設 平均(km) 7.09 0.6 1.1 0.85 1.04 0.5km以内(%) 12.8 56.7 33.8 50.2 46.4 1km以内(%) 4.6 28.5 29.6 24.9 30.1 出所:陳世明(1997) pp.4(1993年現在) 施設別 距離 合計 同じ区・また は台北市内 台北県内 他都市・海外 合計 同じ区・または 台北市内 台北県内 他都市・海外 591,993 440,669 198,227 322,992 132,529 75,574 48% 36% 16% 61% 25% 14% 通勤先(15歳以上の労働者) 通学先(6歳以上の学生、仕事はしていない) 1,230,889 531,095 出所:中華民国統計資訊網、2010年普査統計結果表査詢系統 表16 臺北市6歲以上常住人口之工作地及就學地狀況 単位:人 区分 面積(k㎡) 人口(人) 人口密度(人) 合計 271.80 2,676,128 9,846 松山区 9.29 210,973 22,715 信義区 11.21 227,992 20,342 大安区 11.36 313,564 27,599 中山区 13.68 227,129 16,600 中正区 7.61 162,448 21,355 大同区 5.68 129,011 22,707 萬華区 8.85 192,747 21,774 文山区 31.51 269,727 8,560 南港区 21.84 118,618 5,431 内湖区 31.58 280,362 8,878 士林区 62.37 289,257 4,638 北投区 56.82 254,300 4,475 出所:台北市政府:台北市年報2011により作成
17 形 態 や 生 活 ス タ イ ル な ど を 変 え る 原 因 と な っ た 。 台 北 市 の 土 地 利 用 や 居 住 形 態 は 大 き く 清 朝 時 代 、 日 本 統 治 時 代 、 戦 後 の 3 つの時 代に 分類す るこ とがで きる が、 清 朝 か ら す で に 土 地 の 混 合 使 用 が 一 般 化 し て お り 、 建 築 や 居 住 形 態 も 住 商 ・ 住 工 な ど の 職 住 が 近 接 し て い た 歴 史 が あ る( 表3.5)。陳世 明(1997)は 、台北市 の「立 体 混 合 使 用 」の 背 景 の ひ と つ と し て 、「 居 住 以 外 の 用 途 と の 共 存 を 容 認 で き る 人 が 多 い 」と 指 摘 し て い る が 、店 舗 住 宅 や 住 工 用 途 の 混 合 形 態 は 都 市 全 体 で み ら れ る 。 表 3.5 台北 市の 住宅 建築形 態の 変遷 出 所 : 洪 堯 駿 (1990)、郭光 文( 1990) をも とに筆 者作 成 1.2 台北 市 の 住 宅事情 住 宅 の 建 て ら れ た 年 数 を 見 る と 、1971 年 ~1980 年に かけて 321,063 号 に達 す る 住 宅 が 建 て ら れ 、2010 年 まで建 設さ れた 住宅の 約 35%が この 時期に 当た る。 次 に 、1981 年 ~1990 年まで の合 計 265,479 号で、29%、 次い で 70 年ま でが 129,094 号で 14% を占 める。つ まり 、台北 市 全住宅 の約 50% が 1980 年まで、約 78%が 1990 年 まで に 建設さ れた という こと になる 。 さ ら に 、建 物 の 階 数 を み る と 、平 屋 は 24,606 号(3%)、2 階 ~5 階 建ては 492,836 号 (54%)、6 階 ~12 階建ては 289,390 号( 32%)、13 階建 て以上 は 110,574 号 (12%)、で ある 。台 北市全 住宅 の約 89% が 12 階建 て以 下で あ り、中 高層 市街 地 を 構 成 さ れ て い る こ と が み て と れ る ( 図 3.2)。 土地利用 居住形態 建築形態 艋舺時代 前舗後居 戸建・平面式 大稻埕時代 下舗上居 二階建て 混合使用 (商業と住宅の区分が始まる) 下舗上居 2~4階建て木造連棟街屋 住宅・商業・行政等の区分 店舗住宅 2~3階建て街屋 店舗公寓 低層公寓 商住混合 エレベーター付き マンション 中・高層公寓(5階~12階以 上)高層大廈(20階以上) 日本統治時代 戦 後 年代 清朝時代 大型ショッピングセンターの登場 道路沿道に商業地区が発達 混合使用
18 図 3.2 年代 ・階 数別 住宅建 設の 内訳 出 所 : 台 北 市 統 計 年 報 (2011)をも とに 作成 2 外向 的 な 生 活ス タイ ル 台 湾 で は 一 般 的 に 外 食 の 生 活 習 慣 が 維 持 さ れ て お り ( 陳 、1997)、 こ う し た 生 活 ス タ イ ル に 対 応 し た 多 様 な 規 模 と 食 材 の 食 堂 や 弁 当 屋 が 低 層 部 に 存 在 す る ( 写 真 3.1、 3.2)。 外 食 は 単 身 世 帯 だ け で な く 、 家 族 が い る 場 合 で も 多 く み ら れ る 。 加 え て 、 女 性 の 社 会 進 出 に 伴 い 外 食 へ の ニ ー ズ が さ ら に 高 ま っ た 。 外 食 が 一 般 的 で あ る こ と は 、 外 出 し や す い 台 湾 の 年 間 気 温 の 高 さ も 影 響 し て い る が 、 結 果 と し て 住 居 と 外 部 と の 境 界 を 相 対 化 し 、 住 居 外 部 で の 食 生 活 以 外 の 生 活 を 拡 大 さ せ て い る 。 こ れ は 建 物 の 低 層 部 に お け る 非 住 居 用 途 の 一 般 化 と 相 互 的 な 関 係 に あ る と 考 え ら れ る 。
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写 真 3.1 朝 食を 買う ために 並ぶ 様子
出 所 : 筆 者 撮 影
写 真 3.2 食 事の 時間 帯には 騎楼 空間を 臨時 的に利 用
20 3 建築 形 態 3.1 用途 混 合 形 態-騎 楼 型 と 突 出型 建 物 の 立 体 的 用 途 混 合 は 、 所 有 者 が 賃 貸 ま た は 自 営 目 的 で 住 宅 を 非 住 居 施 設 に 転 用 す る か 、 開 発 主 体 が 分 譲 リ ス ク を 軽 減 す る 目 的 で 予 め 低 層 部 に 非 住 居 施 設 を 設 け る か の 二 通 り が あ る 。 低 層 部 の 非 居 住 用 途 化 は 一 般 化 し て い る が 、 賑 わ い の あ る 街 路 で は 用 途 間 の 流 動 化 も 常 態 と な っ て お り 、 ま た 、 人 通 り の な い 街 路 で は シ ャ ッ タ ー の 下 り た 店 舗 も み ら れ る 。 建 物 は 道 路 に 沿 っ て 列 状 に 並 ぶ が 、 こ れ は 二 通 り に 区 分 さ れ る 。 ま ず 、 低 層 の 店 舗 ( 非 住 居 ) が セ ッ ト バ ッ ク し 、 ア ー ケ ー ド の よ う な 騎 楼 空 間 ( 私 有 地 ) を 形 成 す る 建 物 群 - 騎 楼 型 - と 、 店 舗 部 分 が 道 路 に 接 し 、 上 層 の 住 居 施 設 部 分 が セ ッ ト バ ッ ク し て い る 建 物 群 - 突 出 型 - で あ る 。 後 者 の 場 合 、 道 路 幅 拡 大 の 事 業 化 に 伴 い 店 舗 の 突 出 部 分 が 道 路 に 転 換 さ れ る こ と を 予 め 承 諾 し て い る ケ ー ス も 多 い 。 突 出 空 間 は 店 舗 以 外 に も 小 広 場 や 駐 車 場 、 緑 地 と し て 利 用 さ れ て お り 、 通 り の 景 観 に 変 化 を 与 え て い る ( 図 3.3)。 住 宅 と 店 舗 が 同 一 建 物 に 入 り 、 連 続 し た 長 屋 は 宋 朝 以 来 発 展 し た が 、 従 来 は 店 舗 を 家 屋 の 前 面 を 設 け る 細 長 い 形 態 で あ っ た ( 蘇 、1997)。 連 続 す る 店 舗 群 は 集 客 を 目 的 と し 、 日 差 し や 雨 を 避 け て 顧 客 の 確 保 を 図 る た め 、 道 路 に 面 す る 建 物 の 1 階部 分を セット バッ クし、 現在 のよう なア ーケー ド( 騎楼) 空間 を形成 する こ と と な っ た 。 騎 楼 は 建 物 が 面 し て い る 道 路 幅 に よ っ て 現 在 も 設 置 が 義 務 付 け ら れ て い る 。 こ の 空 間 は 、 歩 行 利 用 の 他 に 露 店 商 の 占 拠 や 、 バ イ ク の 駐 輪 場 ま で 様 々 に 利 用 さ れ て い て 、 商 品 等 が 通 行 を 妨 害 し た り 、 時 間 帯 に よ っ て は テ ー ブ ル が 並 ぶ 食 事 の 場 所 に な る こ と が し ば し ば み ら れ る が 、 規 律 で 制 御 す る こ と な く 、 多 様 な 用 途 が 共 存 す る 柔 軟 な 空 間 と な っ て い る 。
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