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弦の非線形振動に関する研究

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Academic year: 2021

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弦の非線形振動に関する研究

著者 田形 源一

雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

巻 16

ページ 142‑144

発行年 1995‑03‑28

出版者 静岡大学大学院電子科学研究科

URL http://hdl.handle.net/10297/1273

(2)

氏名・ (本 籍 )      形    源    (静 岡県 )

学 位 の 種 類   (工 )

学 位 記 番 号    工博乙第   51  

学位授与の日付    平 成 5年 10月 5日

学位授与の要件    学位規則第 4条 第 2項 該当 学位論文題目    弦の非線形振動に関する研究

論文審査委員    (委 員長

)

教 授 森 田 信 義

教 授 鈴 木 久 喜   教 授 松 田   孝 教 授 大 月 卓 郎   助教授 鳥 居 孝 夫

論 文 内 容 の 要 旨

ビアノ、ギター、琴などは、 どこにで もある身近な弦楽器である。 ビアノの弦は大 きな力で両端が 支えられ、鍵盤を叩 くとビアノのフレーム、弦を支えているピン、そ して響板 など全てが振動 してよ い音 を出 している。ギターは、振動 している弦を指で押 さえた り、移動 した りして音程や効果を出 し ている。琴は、伝統ある和楽器で、弦の張力 を指で押 さえて音程変化や効果 を出 している。そ して、

発音体が弦でるこの馴染のある現象の解明に興味を抱いた。 ところが、弦の振動は線形系で説明 され、

非線形効果には殆 ど触れ られていない。そこで、弦楽器が発す る音の機構や効果を非線形弦で解明す ることにしたのが研究の動機であつた。取 り組んだ課題は、 (1)弦 のパラメ トリック振動、 (2)長 さが変化する弦の振動、 (3)弦 の狭帯域不規則振動、この究明か ら得 られた成果 を工学的に応用する ために (4)非 線形弦の楽音形成、そ して研究過程で派生 した。 (5)ブ ト 線形微分方程式 と近似微分方 程式の初期値問題である。

(1)ビ アノの弦が振動 しているときに、弦の両端 を止めてあ るビンが前後 にゆれていることを見 て、これを解明 しようとして弦のパ ラメ トリック振動の研究 を始めた。研究 を調べて見ると、 RaFnan (1912)は 、弦の振動実験から基本モー ドが時間で変化する弦の非線形微分方程式を導 き出 していた。

それ以後、基本周波数の振動のみが研究 されていた。そこで、弦の非線形方程式 を第3高調波振動 まで 近似 して周波数応答 を求め、マシューの微分方程式 による安定性 と実験 を行つた結果、高調波振動振 動 になるに従つて振幅確率密度関数が小 さ くなることが理論 と実験で確証 された。弦の非線形パ ラメ

トリック振動の高調波振動特性が、Raman(1912)以 来発めそ明らかにされた。高調波振動が発生しに くいこの現象は、その後富安 (1971)ら によつて解明された。

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(2)ギ ターは長 さを変化 させて既存の振動 に音程・効果などを与えている。 ところが、線形で も長 さが変化する弦振動の解析 は大変難 しいためか、非線形振動への究明はなかった。そこで、これを既 存の振動 に長 さの変化が どのような影響 を及ぼすかを弦の非線形振動 として究明 した。振動 を高調波 振動振動 まで近似 して、ラウスフル ビッツの安定法で解析 と数値計算 をした結果、わずかな長 さの変 化で周波数応答の途 中に不感帯が存在 し、振幅が少 し増すことが判明 した。長 さが変化する非線形弦 の高調波振動研究は初めてである。

(3)数 多 くの振動モー ドをもつ弦 を振動 させ るには、たた く 。は じくなどのインパルスに近い入力 で弦が振動 される。 ところが、非線形系 を自色雑音のように帯域が広い外力で励振 して長時間域の応 答を集計すると、秋月 (1970)ら は、跳躍現象は表れない と指摘 していた。そこで、長時間域のデー タを処理するのに都合のいい振幅確率密度関数 を選んで、狭帯域不規則雑音で非線形弦 を励振する数 値計算 した結果、零近傍 に凹状のある振幅確率密度関数 を見出 した。 これを準平均法で解析 した結果、

振動が非線形であるために途中で跳躍 して発生す ることを解明 した。その後、筆者の非線形系 におけ る跳躍現象の解明は Rた hard(1983)ら によって更 に推 し進め られ、究明は近年 まで続いている。

筆者 (1973)は 、非線形弦 を大 きな狭帯域不規貝 1雑 音で励振 した数値計算で、大 きな凹状の振幅確 率密度係数 を得ていた。 この現象は長い問解明 されていなかったが、筆者 (1985)は 、波形が弦衰項 と非線形項 によつて飽和現象を起 こ し、数多 くの高調波振動が発生 しているためであることを数値計 算で立証 した。 この課題 と究明は、他の研究者 によつて も行われ、正当性が確かめられた。

(4)弦 の非線形振動の究明を工学的に応用するために、弦にかかわる楽音の形成を行つた。弦の張 力 と長 さを任意の時間関数で変化 させた結果、ギ ターで長 さを急 に変化 させると聴感的に約半音変る 効果が立証で きた。 トレモ レ効果 も張力の変化で実現 された。 メモ リを活用 したフー リエ級数楽音高 速合成法、各章 に関連する楽音形成 も示 した。

(5)高 次の高調振幅動 まで含む周期解で非線形微分方程式 を近似する際、周期解の振幅を定める微 分方程式お よびその安定性 に関する変分方程式 と元の非線形微分方程式間において、初期値数が異な ることに矛盾がないか と、論文査読中に指摘 された。 ところが、この課題は、Ha2yashi(1964)が 基本 振動で論 じている程度であつた。そこで、従来の ように高次の高調波振動 まで非線形方程式 を近似 し て解析 して も、全 く数学的になん ら支障がないことを、初めて証明 した。

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論 文 審 査 結 果 の 要 旨

弦の振動は、これまで線形系で説明 され、非線形効果 にはほとんど触れ られていない。本論文は弦 楽器の より自然な合成音 を作 り出すための基礎研究 として、弦の非線形振動の解析 を行った ものであ る。

1章 は、研究の背景 と目的について述べ た。

第2章 は弦のパラメ トリック振動である。張力が時間変化するとき、高次の高調波振動 になる程、振 動する振幅は小 さくな り、振動が存在する周波数範囲が狭 くなることを、ハーモニ ックバランス法 と

ヒルの方程式の安定解析か ら導 き、数値計算お よび実験 によって確認 した。

第3章 は長 さが変化する弦の振動である。弦の長 さが変化することによる振動 を、ハーモニ ックバラ ンス法 とラウス eフ ルビッツの安定法で解析 した結果、高次の高調波振動になると、長 さが変化する ことによる振幅抑制効果で周波数の途中に振動 しない領域が発生することを解析的に導 き、これを数 値計算 により確認 した。

第奉書は弦の狭帯域不規則振動である。弦が狭帯域不規則運動 によって励振 されたときの振動 を統計 的に究明 した。まず小 さな凹状の振幅確率密度関数の発生機構では、準静的平均法によつて得 られた 入力 と出力の二乗平均値応答に生 じる不連続領域 における跳躍現象か ら、変位の振幅確率密度関数に 小 さな凹状が発生することを解析的に導 き、 これ を数値計算で検証 した。つ ぎに大 きな凹状の振幅確 率密度関数の発生機構では、非線形項の振幅抑制効果 によつて、変位の振幅確率密度関数に大 きな凹 状が発生する機構 を数値計算で明 らかに した。 さらに変位 と速度で表わ される偶関数の減衰項 を有す る線形 ステイフネス系では、変位お よび速度の振幅確率密度関数 に凹状がそれぞれ発生することを数 値計算で明 らかにした。

第5章 は非線形弦の楽音形成である。弦の長 さと張力 を様々な時間関数で変化 させたときの楽音の形 成を行 つた。一定の速 さで長 さを変化 させて得 られた解析楽音 を試聴 した結果、音程が半音異なる心 理効果が確認 され、解析波形 による楽音形成の有効性が実証 された。 また正帰還 をかけた解析周波数 か ら得 られた補正楽音波形 は、数値計算 とよ く一致 し、帰還の効果が示 された。

第6章 は結言であ り、各章のまとめと研究の展望 について述べ た。

以上のように本論文では、弦の非線形振動 に関す る新 しい現象の発見 と解明を行つた。

よって、本論文は博士 (工 学 )の 学位 を授与す るに十分な内容 を有するもの と認める。

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参照

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