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初等物理学における共鳴・共振現象に関する教材研究 気柱と弦の振動

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初等物理学における共鳴・共振現象に関する教材研究

気柱と弦の振動 福山  豊*・中島 克彦**

(平成元年4月5日受理)

A Study on Teaching of Resonance Phenomena in Elementary Physics Courses

一一一 scillations in Air Columns and in a Stretched String一

Yutaka FUKUYAMA and Katsuhiko NAKASHIMA

(Received,Apr115,1989)

1.はじめに

 高等学校で物理を学んだ学生は,共鳴している気柱や共振している弦の長さとスピー カーや電磁音叉によって生じた波の波長との関係についてはかなり良く記憶している。例 えば,長さ!の弦の一方の端を固定しておき他の端を電磁音叉で振動させると,この振動 数レが,両端に節をもち波長λ.が2!/%(%一1,2,……)である定常波が生じる振動数レ.

とほぼ等しくなったとき共鳴が起こるなどの結果である。しかし,なぜ共鳴・共振は,そ の関係が成立するときに起こり,その関係が成立しないときは起こらないのかというこの 関係を説明する問いには,ほとんどの学生が答えられないでいる。

 これは,教科書が共鳴・共振を説明するのに定常波と固有振動数との関係で記述されて いるためではないかと考えられる。かなりの教科書では,まず,ギターやピアノなどの弦 をつま弾いたりたたいたりしたときの弦の運動は定常波となり,これをこの弦の固有振動 といい,このときの振動数を固有振動数ということを述べ,つぎに,弦に固有振動数と同 じ振動数の振動を加えたときに共振すると説明されている。すなわち,気柱や弦はその長 さ固有の振動をおこなう性質をもっており,その固有振動数に等しい外からの振動数で弦 や気柱に振動をくわえたときだけ共鳴・共振を起こすとみなしている1)。

 そもそも固有振動(基準振動)は,振動体の波動方程式を,ある境界条件のもとで解く ことによって求められるものである。その結果,可付番無限個の基準振動のモードと固有 振動数が導かれる。このときのモードは,固定端では節,自由端では腹となる定常波で表 されるが,振幅の大きさについてはいかなる情報も与えてはくれない。この基準振動はこ

*長崎大学教育学部物理学教室,**長崎県立豊玉高等学校

(2)

12 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

の弦に働きかける振動源を意識しないで,ただ振動体のすべての点が同じ振動数で動くこ とが可能な様式(モード)を,実際の観測とは関係なく数理的に求めて表現したものであ る。この基準振動のうち,ただ一つの基準振動だけを振動させるには,初期条件としてそ の基準振動の一つのモードの形を与えて振動させる必要がある。単振り子の場合は,おも りを平衡点から少しずらして離してやると固有振動数がわかったが,波動現象では,モー ドをあらかじめ知らずに振動体の一つのモードを見いだすことは不可能である。

 また,弦においては,弦に結びつけた電磁音叉によって生じた共振の写真を示すことに よって固有振動を説明しているものもある2)。しかし,共振を上のように固有振動とむすび つけて説明すると,この固有振動と共振の関係は循環論法的な表現となってしまう。

 このように,いままでの共鳴・共振の説明の仕方はアリストテレスがもちいた形相因の 分析の展開の仕方に大変よく似ており,その説明は適切な形相を提示することとそれから の帰結を導くことに終始している。しかし,初心者のためにわかりやすくするには,波動 の微分方程式を特種な境界条件と組み合わせて固有振動の現象を誘導する形相因的分析展 開ではなく,もっと機械論的な説明,すなわち,能動的作動者や結果より時間的に先行し 分離しうる原因をとりだし,それによる結果の説明を展開することが必要であり有用であ

る。

 そこで,本報告では,固有(基準)振動の概念をもちいず,波動の基本的な原理やこと がらから気柱や弦の共鳴・共振の特徴を理解するために,コンピューターによる時系列的 な図を作成した。図は,弦の振動と閉管内と開管内の気柱の振動について共鳴時と非共鳴 時について描かせ,比較検討をおこなった。

2.共鳴・共振現象の理解のための波動の基礎

 高等学校でとりあつかう弦や気柱の共鳴現象を固有振動の概念を先行させず,波動の基 本的性質にもとずいて理解させる試みをおこなう3−12)。まず,共鳴は振動体に及ぼす強制振 動であることの認識が不可欠である。振動体に外から働きかけないと振動は生じない。そ のため,振動体が外から振動させられる事実を無視した固有振動などの振動体自体がもつ 固有な振動を考えるのはまったく便宜的なものにすぎない。そうではなくて振動体にある 働きかけがおこなわれたとき,振動体に適用できる波動の基本的原理とのからみで,どの ようなときに共鳴が生じたり生じなかったりするのかを導き出すことが必要である。それ は共鳴現象を振動体への外からの働きかけが振動体に適用できる波動の性質によってどの ような結果を生じるかという視点で理解することである。

 振動体への外からの働きかけとしてスピーカーや電磁音叉などの振動源が振動をおこな う。その振動源はAsin碗で振動することによって振動体に正弦波を生じ伝播させる。こ の正弦波は振動体の端に到達すると自由端か固定端かによって,反射波の位相が0かπだ け変化することを考慮すると,気柱や弦の振動変位はこれらの両端で反射した反射波をす べて重ね合わせて表すことができる。このとき振動体の長さが正弦波の波長とどのような 関係になっているかによって共鳴を生じるか否かを議論することにする。

 振動体に生じる波動の基本的性質を改めて箇条書にしてみると次のようになる。

 1.波は正弦波として伝播する。(振幅は・4θ『αεで減少する:α,減衰係数;s,伝播距   離)

(3)

 3.変位はすべての(反射)波の重ね合わせによって表現できる。

上で述べた振動体の長さ!や振動源の振動数ω(または正弦波の波長λ)に無関係な波動 の基本性質をもとに

 a.振動数(または波長)が一定として振動体の長さを変化させた場合と  b.振動体の長さを一定にして振動源の振動数を変化させた場合

について考察する。共鳴か否かは振動体粒子の変位を多重波の合成波で表したときの振幅 の極大値か否かで決定される。

3.振動体の多重波による表現

 基本的に1次元の振動体とみなせる気柱と弦の数学的表現は上の波動の性質を考慮して 多重波によって表現できる。気柱については両端が自由端か固定端かで,4つの場合が考 えられる。そこで気柱の振動源側の端を∫,反対側の端をgと表して,それらが自由端な ら0,固定端なら1とする。弦の振動は∫一g−1の気柱の振動と同じである9)。

 時刻渉での長さ!の共鳴管のスピーカー側の端を座標の原点として測った位置ωでの気 柱の粒子変位は,スピーカーで発生する正弦音波の振幅をみ,角振動数をの,波長をλ,音 速を∂とすると

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      +・・一 ,(0<∬≦!)

となる。ただし,振幅は進行距離sとともに。4ε一αsで減少するものとした。

 この式の第1項は,スピーカーで発生して∬のところに到着した音波,第2項は,スピー カーの反対側の共鳴管の端で1度反射され灘のところに到着した音波,第3項は,スピー カー側の共鳴管の端で,さらにもう1度反射され∬のところに到着した音波である。以下 の項も同様にして,共鳴管の両端でつぎつぎに反射させられ∬に到着した音波を表す。

 (1〉式は,二三の計算の結果

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と表される。

 ただし,ここで位相定数ψと位相ψノ(のは,それぞれ,

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(4)

14 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

によって表され,(4)式は詔の値によって変化することがわかる。

 変位の式(2)からは,共鳴管内の気柱の運動は,完全に時間部分と空間部分とに分離して いる定常波にはなっておらず,位相ψノ(oじ)が」σに依存している不完全な定常波を形づくる ことがわかる。この式で減衰係数αが小さくなればなるほど完全な定常波となる。

4.共鳴現象における定常波形成のシミュレーション

 前節で求めた粒子変位の式(2)の振幅の極大値は共鳴を表す。(2)式の振動の様子をコン ピューターで描かせてみると,定常波の形はどのようになっているかがよくわかる。しか し,もう一歩踏み込んで,気柱や弦の長さの違いによって共鳴・共振を生じたり生じなかっ たりする様子を理解するには,これでは不十分である。そこで気柱や弦の任意の長さの場 合に,その定常波がどのように形成され,どのような振動になるかを理解できるようにす るためにコンピューターによるシミュレーションをおこなってみた。また,その形成過程 をコンピューターがない場合でも見ることができるようにするため図を作成した。この図 をながめることにより,振動体の端の条件や長さの違いによる図との比較をとうして共 鳴・共振とそうでない場合の様子や特徴を理解できるようにした。

 ここでは(a)弦,(b)閉管の気柱,(c)開管の気柱の3種類について共鳴する場合と振動が最 小になる場合について,コンピューターによるシミュレーションをもとにした図を紹介す る。この3種類は,高等学校の物理でとりあつかわれているもので,この図は高校生にも 理解を深める教材として活用できるようにしている。

 (a)弦の定常波形成のシミュレーション

 弦の端の1方はおもりをとりつけてそれを滑車で吊し,他方は電磁音叉で振動させる。

このとき,弦に生じる波の波長λ(すなわち電磁音叉の振動数)は一定とする。図1と図2 では弦の長さ4が,おのおの,λ/2の共振の場合と3λ/4の非共振の場合について,定常波 の形成過程を表す図を作成した。図と図の間の時間間隔は波がλ/8の距離伝播するに要す る時間とした。各図には電磁音叉があると想定されている左側から弦へ伝播していく波の 様子を表しているが,1行目は弦に伝播してきた波を,2行目は弦の滑車側の端で反射さ れて電磁音叉側へ伝播している波を,3行目はもう1度電磁音叉側で反射されて滑車側へ 伝播している波を表している。以下同様に7行目まで伝播していくときの弦の振動の様子 を順に表している。さらに,1番下の8行目には,1行目から7行目までの波の重ね合わ せによる合成波を表している。これは弦の実際の変位を表している。ただし,ここでも波 に振幅は前節とおなじくε一αε(FO。01cm−1)で減少するものとして描いた。

 図1は,弦が共振を生じる場合であるが,このときの最も特徴的なことは,電磁音叉側 での反射波が,電磁音叉から弦へ伝播する新しい進入波と同位相となる点にある。そのた め電磁音叉側から滑車側へ伝播する波はつぎからつぎに雪だるま式に重ね合わさることに なり,それが滑車側ですべて固定端反射をおこなうため,どちら側へ進行する波も大きな 波に成長する。このお互いに反対向きの大きい進行波の合成は弦の大きな振動となり共振 を生じ両端を節とする定常波が形成されることになる。

 図2は,弦の振動が最も小さくなる場合である。このときは電磁音叉側での反射波は,

電磁音叉からの新しい進入波と位相がπずれる。電磁音叉側から滑車側への進行波の数が 偶数の場合には,その重ね合わせは打ち消しあい,特に減衰係数が0のときには0となる。

(5)

合成進行波は全然大きくなることができず,ほかの弦の長さのときより小さい振動しか起 こらないことになる。

 弦の長さが半波長の整数倍の場合は図1のときのように共振を生じ,両端が節となる定 常波ができる。また,4分の1波長の奇数倍の場合には図2のときのような弦の振動は振 幅が極小になり,電磁音叉側が腹,滑車側が節の小さい定常波ができる。そのほかの弦の 長さの場合は,電磁音叉側での反射波と電磁音叉からの進入波とで,位相が揃わず大きな 振動に成長することができない。またこのときは,滑車側に節,電磁音叉側は節でも腹で

もない振動の状態の定常波ができる。

 このように弦に共振を生じるか否かは,波の基本的性質を考慮すると,ただ単に,弦の 長さの違いによる音叉側での反射波が,新たに電磁音叉からの進行波と位相が同じかどう か,どれだけずれるかによって決定されるものであることが理解できる。両者の位相がず れればずれるだけ重ね合わせによる弦の振動は小さな振幅になる。

 (b)閉管の気柱の定常波形成のシミュレーション

 っぎに,図3と図4に閉管内の気柱の振動の様子を表すシミュレーションである。図3 は,気柱の長さ!が3λ/4で共鳴を生じる場合である。このときも図1と同じようにスピー カー側の気柱の端で反射した波が,新たに気柱に進入した波と同じ位相で進行する。その 結果,それらを重ね合わせた波は建設的に干渉し,さらには大きな振幅をもつ定常波とな

る。図4は!=λ/2のときで上の反射波と進入波の位相がπずれている場合である。

 (c)開管の気柱の定常波形成のシミュレーション

 図5と図6には,気柱の両端が自由端となっていて開管のシミュレーションを示してい る。図5は,気柱の長さ/がλ/2で共鳴を生じるときの定常波形成の様子を示している。

図6は,/=3λ/4で振動の振幅が最小の場合である。

 以上のシミュレーションから共鳴・共振を起こす場合は,いずれの場合にも振動源側で 反射された波が,振動源からの新たな波と同じ位相で伝播できるときであることが確かめ られた。振動体の両端が固定端か自由.端であるかにより,これらの波が同位相になる振動 体の長さが決まり共振となる。

 これらのシミュレーションをもとに共鳴・共振のおこる様子を考察すると,先で述べた 固有振動の概念は必ずしももちこむ必要はない。むしろ,上のように共鳴を示すときに生 じるときの定常波の形を,この振動体の固有振動と定義するほうが論理的に一貫している

と考える。この定常波は減衰係数が0のとき発散し無限大となり振動の振幅については決 定できない。この場合は,ただ定常波の形,即ち,モードと,その固有振動数のみが意味

をもつことになる。

5.おわりに

 気柱や弦などの振動体がスピーカーや電磁音叉などの振動源で強制振動させたとき,振 動体に伝播された波の波長(振動源の振動数と振動体の波の伝播速度によって決まる)と 振動体の長さによってどのような振動が生じるのかを考えることによって共鳴現象を考察 してきた。その結果を初めて共鳴・共振の学習をおこなう高校生にも理解できるようにす るために共鳴現象で生じる定常波の形成を明らかにする時系列による図を作成した。この

(6)

16 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

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図1b。弦(1=〃2〉の定常波形成(17〜28)

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18 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

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20 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

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図2d.弦(/一3λ/4)の定常波形成(37〜42)

(12)

22 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

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26 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

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(18)

28 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

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30 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

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図6b.開管内気柱(/一3λ/4)の定常波形成(13〜24)

(22)

32 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

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図6d.開管内気柱(/=3λ/4)の定常波形成(37〜42)

(24)

34 長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第13号

図は高校生たちに見せることにより波動の基本性質から振動体の両端の条件と長さによっ て,初心者が共鳴するときとしないときを統一的に理解し,それらの振動の特徴をイメー ジ化できるようにするための教材として役に立つようにと考えた。今後この教材をもちい て高校においてその有効性を検討したいと考えている。

参考文献

1)例えば,伏見康治他:高等学校物理,(数研出版株式会社,1983)100.

2)例えば,霜田光一他:高等学校物理改定版,(学校図書株式会社,1988)102.

3)福山豊:物理教育,33−1(1985)19.

4)福由豊,広瀬美恵子,阿部由美子,富山哲之:物理教育,33−3(1985)220.

5)福山豊,阿部由美子,広瀬美恵子,富山哲之=物理教育,34−4(1986)237.

6)富山哲之,福山豊:長崎大教育教科教育研報 10(1987)25.

7)Y.Fukuyama:Int.Conf.Trends in Physics Education Proceedinds Part II(1986)121.

8)福山豊,富山哲之,川里祥之:物理教育,35−4(1987)248.

9)福山豊:長崎大教育自然研報 39(1988)21.

10)富山哲之,福山豊:物理教育,36−2(1988)95.

11)福山豊,富山哲之,森山一夫二物理教育,36−4(1988)389.

12)福山豊:長崎大教育自然研報 40(1989)13.

参照

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