材料特性が異なる粒状層体の非線形振動応答に関する研究
日大生産工(院) ○ 橋井 康美 日大生産工 木田 哲量 日大生産工 澤野 利章 日大生産工 阿部 忠
1.はじめに
我が国は環太平洋地震帯に位置し、大規模な地 震が頻発する世界でも有数の地震多発国である。
過去の地震において甚大な被害をもたらした要 因に、市民生活を営む平野部の表層地盤が、砂質 土、礫、シルトなど未固結な粒子で構成される沖 積地盤であることが挙げられる。一般に沖積地盤 は軟弱地盤として扱われ、このような地盤に地震 動などの強力な強制外力が作用した場合、共振振 動数および最大応答加速度の特定が困難な非線 形振動応答となる。さらに、非線形振動応答現象 には、砂質土の持つ材料特性が大きく影響してお り、それらの特定が非線形振動応答現象の解明に 必要とされている。
そこで本研究では、沖積地盤を模した粒状層体 に強制水平振動を作用させることで、非線形振動 応答現象の再現をし、材料特性値の違いが非線形 振動応答現象に与える影響の検討を行う。さらに、
砂質土のせん断波速度からせん断弾性係数を算 出し、これを理論式に適用した非線形振動応答解 析を行うこととする。
2.実験概要
本研究は粒状層体の非線形振動応答実験とせ ん断弾性係数を算出し、これを理論式に適用する ためのせん断弾性係数測定実験からなる。本実験 で用いる粒状層体砂は、粒度構成の異なる硅砂4 号、硅砂6号、硅砂7号とする。なお、硅砂の号 数が上がるにつれ、粒径は細かくなる。各硅砂の 密度を表−1に、粒径加積曲線を図−1示す。
2−1 非線形振動応答実験
せん断面が 300mm × 300mm × 10mm の軽量 溝形鋼製型枠内側に砂の流出を防ぐためのゴム シートを貼り付け、せん断振動を生じやすくする ために、直径 15 ㎜の鋼球のベアリングを 60 ㎜ 間隔に配置する。これを高さ 410 ㎜となるよう に積み上げたものを 400 ㎜の高さまで各硅砂を 投入しながら十分に締め固めたものを供試体と する。この供試体を油圧式二軸振動台に固定し、
入力加速度を 50gal 、 100gal 、 150gal の一定に 保ちながら、入力振動数を 0.2Hz 刻みに増加・
減少させた場合の供試体砂上面に設置した加速 度計によりの応答加速度を測定する。なお、入力 加速度は供試体底面に設置した加速度計により 測定することとする。供試体概略を図−2に示す。
Study on the Non-Linear Vibration Response of Different Characteristic of Granular Layer
by Yasuyoshi HASHII,Tetsukazu KIDA Toshiaki SAWANO and Tadashi ABE
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
10 100 1000 10000
粒径 (μm)
通過百分率 (%)
No.4 N0.6 No.7
図−1 各硅砂の粒径加積曲線 表−1 硅砂の密度
硅砂4号 硅砂6号 硅砂7号
最小密度
(N/mm3) 1.35×10-5 1.31×10-5 1.26×10-5 最大密度
(N/mm3) 1.62×10-5 1.60×10-5 1.60×10-5
2−2 せん断弾性係数測定実験
せん断弾性係数はせん断波速度を求めること により算出される。塩化ビニル袋内において内径 130mm 、高さ 20mm 、厚さ 4mm の鋼管型枠内 に試料を充填し密閉後、真空ポンプにより塩化ビ ニル袋内の空気を吸引して、試料に負圧を作用さ せる。その後、ウルトラソニースコープのせん断 波発振子および受振子を砂面に接触させること でせん断波を入力し、塩化ビニル袋内の内圧を 0.09MPa から 0.01MPa までを 0.01MPa 刻みに 減少させ、そのつどせん断波伝播時間をウルトラ ソニースコープにより、試料厚の変化をダイヤル ゲージ式変位計により測定し、各内圧作用時にお けるせん断波速度を得る。供試体概略を図−3に 示す。
3.実験結果および考察 3−1 非線形振動応答実験
図−4から図−6に各硅砂を用いた供試体の 入力加速度と応答加速度の関係である応答加速 度曲線を示す。これより、各硅砂とも非線形材料 特有の現象である、共振振動数付近で応答加速度 が急激に増加・減少するジャンピング現象が生じ ている。また、入力加速度が増すにつれ共振振動 数が低振動数域に移行する砂の材料特性による 現象が確認できる。このことから材料特性が異な る粒状層体を用いた場合でも非線形振動応答特 有の現象を確認することが出来た。
次に、共振振動数と最大応答加速度について考 察する。まず、図−7に各入力加速度おける入力 振動数の増加時と減少時の平均共振振動数の関
図−2 振動応答実験供試体概略図
410
300
300
加 速 度 計 硅 砂
鋼 球 ベ ア リ ン グ 軽 量 溝 鋼 製 型 枠
図−3 せん断弾性係数測定実験供試体概略図
4
20
130 4
変位 計
発振 子 鋼 管型 枠
吸引 ノ ズ ル ビニ ル 袋
受振 子
スタ イ ロ フォ ー ム 板 硅 砂
0 100 200 300 400 500 600
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 入力振動数(Hz)
応答加速度(gal)
50gal増加時 50gal減少時 100gal増加時
100gal減少時 150gal増加時 150gal減少時
図−4 硅砂4号の応答加速度
8 10 12 14 16 18 20 22
50 100 150
入力加速度(gal)
共振振動数(Hz)
硅砂4号 硅砂6号 硅砂7号
図−7 入力加速度と共振振動数の関係
0 100 200 300 400 500 600
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 入力振動数(Hz)
応答加速度(gal)
50gal増加時 50gal減少時 100gal増加時
100gal減少時 150gal増加時 150gal減少時
図−5 硅砂6号の応答加速度
0 100 200 300 400 500 600
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 入力振動数(Hz)
応答加速度(gal)
50gal増加時 50gal減少時 100gal増加時
100gal減少時 150gal増加時 150gal減少時
図−6 硅砂7号の応答加速度
係を示す。これより、いずれの入力加速度におい ても硅砂7号、硅砂6号、硅砂4号の順で共振振 動数が高くなる傾向にあることが確認できる。ま た、硅砂6号と硅砂7号には粒径や密度の差異が あるものの、共振振動数にあまり大きな差異が見 られない。このことから、共振振動数には粒径の 他に砂質土間の摩擦や粘性などの影響が作用し ているものと考えられる。次に最大応答加速度は、
いずれの硅砂においても各入力加速度における 最大応答加速度に大きな違いが見られない。たと えば、入力加速度 150gal において、最大応答加
速度は約 500gal 程度であることからも、材料特
性値の差異は最大応答加速度に大きな影響を与 えないものと考えられる。
3−2 せん断弾性係数測定実験
表−2に実験で得たせん断波速度示す。このせ ん断波速度より式(1)に適用し得た各内圧作用 時における硅砂のせん断弾性係数を表−3に示 す。なお、密度は JISA1224 に規定されている砂 の最小密度・最大密度試験による表−1に示した 最大密度とした。
3 2
0
ρ 10
× ×
= g G Vs
ここで、 Vs :せん断波速度(m/sec
2) ρ :密度(N/mm
3)
g :重力加速度(m/sec
2)
これより、内圧の減少に伴って各硅砂ともにせ ん断弾性係数の値が減少していることが確認で きる。これは、内圧の減少に伴い、土粒子間の間 隙が増加したためにせん断波速度が低下したた めであると考えられる。また、せん断弾性係数は 硅砂4号、硅砂6号、硅砂7号と硅砂の号数が増 加するにつれ大きくなる傾向にあることが確認 できる。このことから、せん断弾性係数は粒度構 成に対する依存度が強く、細粒分が多く含まれる ほどせん断弾性係数は大きくなることが確認で きる。また、 0.09MPa 以上の内圧が作用する場 合にはせん断弾性係数はある一定の値に収束す るものと考えられる。
次に、実験により算出したせん断弾性係数を振 動応答実験に用いた供試体状態に適用し、各入力 加速度における共振振動数との関係を考察する。
ま ず 、 振 動 応 答 実 験 で 用 い た 供 試 体 は 高 さ
400mm であることから内部に土圧が生じている。
この土圧を単位体積質量から算出した場合、
0.01MPa 以下となることから、せん断弾性係数
が収束し始める前の 0.04MPa 以下の値を用い、
最小二乗近似法によりせん断弾性係数を推定し、
その結果を表−4に示す。
ここで得たせん断弾性係数と振動応答実験に より得られた共振振動数を考察すると、せん断弾 性係数が大きいほど、共振振動数が高くなる傾向 にあることがわかる。このことから、せん断弾性 係数と共振振動数は密接な関係にあり、せん断弾 性係数が高くなるほど、共振振動数は高くなる傾
(1)
表−3 せん断弾性係数算出結果
硅砂4号 硅砂6号 硅砂7号
0.09 61.3 64.5 66.7
0.08 60.5 63.8 64.9
0.07 59.1 62.6 63.3
0.06 57.3 59.7 60.8
0.05 54.4 56.4 57.2
0.04 51.0 51.9 53.3
0.03 46.9 47.5 48.8
0.02 41.4 42.3 43.5
0.01 34.5 35.4 35.9
せん断弾性係数(N/mm
2) 内圧
(MPa)
表−2 せん断波速度測定結果
硅砂4号 硅砂6号 硅砂7号
0.09 192 199 202
0.08 191 198 200
0.07 189 196 197
0.06 186 191 193
0.05 181 186 187
0.04 175 178 181
0.03 168 170 173
0.02 158 161 163
0.01 144 147 148
せん断波速度(m/sec) 内圧
(MPa)
表−4 供試体状態のせん断弾性係数
硅砂4号 硅砂6号 硅砂7号
内圧
(MPa) 0.00650 0.00641 0.00639 せん断弾性係数
(N/mm
2) 32.4 33.3 33.6 共振振動数
(Hz) 9.6 12.0 12.3
向にあることが推察される。その要因として、一 般に細粒分を多く含む粒状層体ほど剛性が強く、
締め固まり状態が良好なために共振振動数が高 くなるとされており、せん断弾性係数も同様に剛 性の高い層体ほど、土粒子間の間隙が小さいため、
大きくなるとされているためであると考えられ る。
3−3 共振曲線算出式への適用
実験により得たせん断弾性係数を理論式に適 用した共振曲線を求め、その適合性の検討を行う。
なおここでは、入力加速度 50gal のみ適合性の検 討を行うこととする。まず、粒状層体の振動モデ ルを非線形フォークト体と仮定し、一次振動モー ドの基本方程式より、共振曲線算出式(2)を得 る。
底面応答ひずみパラメータηを応答加速度に、
振動数パラメータξを入力振動数に換算するこ とで共振曲線を得る。ここで、未解明要素である 粘性係数 G ´および粒状層体の最大せん断ひず みγ
1を適宜に仮定することで得た共振曲線を図
− 8 から図− 10 に示す。これより、各硅砂とも に振動応答実験により得た応答加速度曲線と計 算により求めた共振曲線を近似させることが可 能であることが確認できる。また、本共振曲線に おいては共振振動数付近で解が2つ以上存在す る箇所があるが、これは計算過程においてのみ生 じる現象であり、実現象ではこの付近において粒 状層体特有の現象であるジャンピング現象が生 じるものとされている。
4.まとめ
①材料特性の異なる粒状層体を供試体に用いた
場合にも非線形振動応答特有の現象を確認でき た。
②最大応答加速度には材料特性値の違いは大き な影響を与えない。また、共振振動数はせん断弾 性係数や粒度構成に大きな影響を受けるが、砂質 土粒子間の摩擦や粘性の影響も受けるものと考 えられる。
③せん断弾性係数は粒度構成に大きな影響を受 け、粒径の細かい砂質土ほど砂質土間の剛性が強 いため、せん断弾性係数は大きくなる。
④振動応答実験により得た応答加速度曲線と計 算により得た共振曲線は近似が可能である。
参考文献
熊膳和也,粒度構成が異なる粒状構造体の非線形せん断振動 応答に関する研究,日本大学大学院生産工学研究科修士論文,
2004
山田雄児,粒状層体のせん断弾性係数と非線形振動応答に関 する研究,日本大学大学院生産工学研究科修士論文,2008
G
0:せん断弾性係数G′
:粘性係数L
:粒状物体 の高さρ
:粒状構造体の密度ω
:入力振動数P
: 入力加速度γ
1:粒状層体の最大せん断ひずみG P
P L L
G
G h G
=
⋅
=
⋅
′ =
=
1 0 2 2 2 2
2
0
0 1
8 4
2
γ ρ ω π
π ρ
ω γ η
γ
ξ
ξ
ここで、
2 2 2 2 2 2
2
4
16
1 3 h = P
⎪⎭
⎪ ⎬
⎫
⎪⎩
⎪ ⎨
⎧ ⎟⎟ ⎠ +
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛ − η − ξ ξ
η (2)
0 100 200 300 400 500 600 700 800
13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 入力振動数(Hz)
応答加速度(gal)
本実験共振曲線 振動実験値(増加時)
振動実験値(減少時)
図−8 硅砂4号の共振曲線
0 100 200 300 400 500 600 700 800
13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 入力振動数(Hz)
応答加速度(gal)
本実験共振曲線 振動実験値(増加時)
振動実験値(減少時)
図−9 硅砂6号の共振曲線
0 100 200 300 400 500 600 700 800
13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 入力振動数(Hz)
応答加速度(gal)
本実験共振曲線 振動実験値(増加時)
振動実験値(減少時)