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機械システムの受動性に基づく非線形制御に関する研究

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Academic year: 2021

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Title 機械システムの受動性に基づく非線形制御に関する研究( 内容の要旨(Summary) ) Author(s) 清水, 年美 Report No.(Doctoral Degree) 博士(工学) 甲第196号 Issue Date 2003-03-25 Type 博士論文 Version publisher URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/1917 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位記号番号 学位授与年月日 専 攻 学位論文題 目 清 水 年 美 (岐阜県)士(工学) 甲 第 196 号 平成15年 3月25日 生産開発システム工学専攻 機械システムの受動性に基づく非線形制御に関する研究 (恥n-1inearControlofMechnicalSy8ten8BasedonPassivity) 学位論文審査委員 (主査)教 授 堀 康 郎 (副査)教 授 武 藤 義 教 谷 和 男 助教授 佐 々 木 実 論文内容の要旨 機械システムは一般に非線形なシステムである.非線形の機械システムを制御する 場合には、以下の各種の方法が提案、研究されている。 (1)線形近似制御 非線形なシステムを平衡点近傍で線形近似し,近似線形モデルにもとブいたコント ローラを設計するものであるが、平衡点近傍においては良好な制御特性を示すものの, 平衡点近傍から離れたところでは制御性能,あるいは安定性自体を保証することができ ない. (2)非線形要素をシステムに含まれる不確かさとして扱い,安定領域を広げるロバ スト制御 ロバスト制御は最悪値に対する制御法であるため,不確かさを大きく見積もった場合 には制御性能を向上させるのが困難になる. (3)非線形要素を陽に考慮した非線形制御 非線形システムの安定性に関する必要十分条件が確立されていないため,一般的なシ ステムに対する設計法はいまだ確立されていない.しかし,ある条件を満たすクラスに 属するシステムに対するさまざまな非線形制御系設計法が提案されている.一般的にこ れらの設計法は微分幾何学をはじめとする高度な数学を必要とし,数学的厳密性が要求 されるため,現在のところ実用段階にあるとはいいがたい. 一方,柔軟構造を含む機械システムでは弾性振動の影響により系が振動的になり,場 合によっては不安定になることがある.そのため,柔軟構造を含む機械システムでは軌 従制御のみならず振動抑制も行う必要がある.しかし,柔軟構造を含む機械システムは 運動方程式が偏微分方程式で表される無限自由度系となるため,弾性振動を抑制するに は無限自由度のコントローラが必要となる.通常,無限自由度のコントローラは実装不

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可能であるので,このような機械システムに対しては (1)無限次元コントローラを設計し、そのコントローラを有限次元化する. (2)モデルを有限次元化し、有限次元モデルに対して、有限次元コントローラを設 計する しかし,このような有限次元化を行った場合,切り捨てられたモードに対しては制御 が行われないためスピルオーバーが生じ,制御性能が劣化するおそれがある. そこで,本研究では系が有する受動性に注目し,受動性にもとづく非線形制御を考え た.受動性とはシステムの入出力関係に着目した概念で,直感的にはシステム内部にエ ネルギ源がないときに,シえテムの外から流入したエネルギとシステム内部に蓄えられ るエネルギを比較すると,システム内部に蓄えられるエネルギの方が小さくなることを 表している.システムが出力強受動性と呼ばれる強い受動性を有するとき,システムは リアプノフの意味で安定となることが知られている.さらに,受動性を有する系に対し てはエネルギの整形とダンピングの挿入を行うことで安定なコントローラを得ることが できる.また,この設計手法は分布定数系に対しても適用することができ,弾性エネル ギの整形を考えることで弾性振動を減衰することができる. 本論文では、以下の非線形系に対して閉ループ系が受動系となるようにエネルギの整 形とダンピングの挿入を行い、受動性にもとづく非線形コントローラの設計を行ってい る。 (1)浮上対象物として剛体球を用いた場合の磁気浮上系 磁気浮上系の入力を電磁石への印加電圧とし,出力を電磁石に流れる電流としたとき に受動性が成立することを利用した.これより,印加電圧を用いて電流を制御するのは 容易であるが,印加電圧から剛体球の位置までの受動性が成立しないため,剛体球の軌 道を制御するには何らかの工夫が必要であることがわかった.そこで,閉ループ系が受 動的になるようにエネルギの整形とダンピングの挿入を行うことでコントローラを設計 した.得られたコントローラはモデルにもとづくフィードフォワードと剛体球の位置, 速度と電磁石の電流のフィードバックから構成される. (2)電気系と機械系を分離し,それぞれのサブシステムに対して独立に制御する剛 体球磁気浮上系 このとき,電気系サブシステムに対しては入力を電磁石の印加電圧とし,出力を磁束 とすることで出力強受動性が成立し,機械系サブシステムに対しては入力を電磁力と重 力の和とし,出力を剛体球の速度とすることで受動性が成立する.したがって,それぞ れのサブシステムに対してエネルギの整形とダンピングの挿入を行うことでコントロー ラを設計することが可能である.全体のコントローラはこれらを結合することで得られ た.得られたコントローラは剛体球の位置と速度のフィードバックのみから構成され、 電流のフィードバックやフィードフォワードを必要としない. (3)柔軟ビームを浮上対象物とする磁気浮上系 柔軟ビーム磁気浮上系に対しても電気系と機械系を分離する方法にもとづいてコント

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ローラ導出を行った.柔軟ビームに対する磁気浮上系に対して受動性を解析した結果, 電磁力が柔軟ビームの中心に集中荷重として作用すると考えた場合,電磁力から電磁力 が作用する点の速度(剛体速度と弾性速度の和)までの受動性が成立することが確認で きた.この結果より運動エネルギと弾性エネルギの整形を行いダンピングの挿入を行っ た結果,ひずみ速度フィードバックを含むコントローラが得られた.また,このコント ローラを用いることで目標軌道への追従と弾性振動の抑制が同時に達成できることがし めされた. 以上のようにして導出されたすべてのコ㌢トローラに対して数値シミュレーションと 実験を行ない,有効性を確認した. 論文審査結果の要旨 この論文は非線形な機械システムを制御する非線形コントローラの設計法の研究に関 するものである。制御対象とする系の受動性、すなわち、系の外から流入したエネルギ と系内部に蓄えられるエネルギを比較したとき,系内部に蓄えられるエネルギの方が小 さくなる性質を利用することにより、従来に比べて安定な性能の非線形コントローラを 導出している。機械システムの例として、剛体球磁気浮上系と柔軟ビーム磁気浮上系に 対して、それぞれの系が有する受動性に着目して目標軌道に漸近追従するコントローラ を導出し、シミュレーションと実験により、有効性を確認したものである。本論文の成 果とその評価は以下の通りである。 1.非線形系に対する制御法について、従来の論文を整理し、各種の非線形制御法の 得失を明らかにするとともに、系の受動性に基づく非線形制御の有用性を明らかにして いる。過去の論文の課題が十分検証され、本研究の位置づけ、方向づけが正しく行われ たことが認められる。

2・.制御対象として剛体球を浮上させる磁気浮上系を取りあげ、系全体の受動性の考

察を行い、電磁石の入力電圧から電流を制御することは容易であるものの、剛体球の位 置制御には無理があることがわかり、系の運動エネルギを整形し、閉ループ系のストレ ージ関数を構築することで位置制御と軌道追従を可能としたコントローラを導出してい る。数値シミュレーションと実験により、従来にない非常に高い追従性能を得ている。 3.次に、剛体球磁気浮上系を電気システムと機械システムに分割して、それぞれの 受動性を考察し、電気系に対しては入力電圧から磁束、機械系では電磁力から剛体球の 速度までの受動性を証明している。これにより、それぞれの系に対して独立にコントロ ーラを設計できることを明らかにし、それぞれの系の±ントローラを導出している。シ ミュレーションと実験セその有効性を示し、線形コントローラに比べ、広い動作範囲で 安定に制御できることを示している。 4.柔軟ピ⊥ム磁気浮上系に対しても制御系設計を行っている。電気系サブシステム と機械系サブシステムに分離し、全体の系が2つのサブシステムのフィードバック結合

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で表わされることを示すとともに、柔軟ビームを含む機械系サブシステムでは、電磁力 から電磁力の作用点における柔軟ビームの剛体運動の速度とたわみ速度との和までが受 動的になることを示している。この結果より、柔軟ビームの剛体運動を目標軌道に漸近 追従させ、なおかつ柔軟ビームの弾性振動を抑制できるコントローラを導出している。 数値シミュレーションと実験によりこのコントローラの有効性を確認している。 このような非線形で無限自由度を持つ柔軟ビーム磁気浮上系の運動と振動を同時に安 定に制御する例ははとんどなく、大きな成果と考えられる。 以上、要するに、、本論文は、非線形な機械システムに対して系の持つ受動性を用いて、 安定なコントローラを導いたもので、用いた手法は磁気浮上系に限らず、一般の非線形 系に対しても比較的容易に適用できるものであり、学術上及び産業応用上寄与すること が大であると結論できる。 よって本論文は博士(工学)の学術論文として価値あるものと認める。 最終試験結果の要旨 平成15年2月13日に学位論文の内容を中心として、またこれに関連した事項につ いて試問を行った結果、合格と認めた。

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