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博士(経済学)佐野博之 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(経済学)佐野博之 学位論文題名

  Game ― theoretic Approaches to the Rent‑Dissipation Problem in the Social Cost of Rent‑seeking Activities

(レント・シーキング活動の社会的費用におけるレント消失問題に対する      ゲーム論的アプローチ)

学位論文内容の要旨

  Tullock(1980) の先 駆的 な研究以降、レント・シ ーキングに関して膨大な数の研究 がなされてきた。T ,ulloCk (1980 )とそれに続く研究の関心は主に、人為的に作り出さ れ たレ ント が社 会的 に無 駄な レン 卜・ シー キ ング 活動 によって消失される程度、す な わち 、レ ント 消失 率に 向け られ てき た。 こ の学 位論 文の目的は、いわゆる夕口ッ ク ・コ ンテ スト を基 礎に した 拡張 モデ ルに お ける レン ト消失率を検討することであ る 。そ のた めに 、3 つ のレ ント ・シ ーキ ング ・モ デル を提 示す る。 これ ら のモ デル に おい ては 、ナ ッシ ュ均 衡概 念に 限定 され ず 、ゲ ーム 理論の分野で確立された分析 道 具をTlmoCk (1980 )のモデルに適用することによ って、この論文の目的を達成しよ うとするものである。

   まず第1 章では、Tullock (1980 )以前のレント・シーキングの文献を概観してから、

Tuuock く1980 冫のモデ ルを再検討する。加えて、1ulock (1980 )以降のレント消失率に 焦 点を 当て た様 々な 拡張 モデ ルの 理論 研究 、 およ び実 験研究を概観し、論じる。こ れ らの 理論 研究 の大 部分 は、 レン ト消 失率 が 1 よ り小 さい (過 少消 失) と いう とい う 結 果 を 示 し て お り 、 消 失 率が 1 (完 全消 失) 、ま たは 1 より 大き い( 過大 消失 ) と いう 結果 を示 した 理論 研究 は数 少な い。 こ れに 対し て、夕ロック・コンテストに 関 す る 実 験 研 究 で は 、 過 大 消失 の可 能性 が 排除 され なし ゝこ とが 示さ れて いる 。    第2 章で は、 レ ント ・シ ーカ ーが レン ト・ シー キン グ支 出に 関す る収 穫 逓増 があ る ゆえ に負 の期 待利 得を 負う こと にな る状 況 を想 定し 、その状況下でのレント・シ ーカーの長期的行動を 研究する。そのために、T .u110ck (1980 )の1 回限りのレン卜・

シ ーキ ング ・ゲ ーム を消 耗戦 の枠 組み の中 に 組み 込む 。この多期間ゲームの設定に お いて 、各 プレ イヤ ーは レン ト・ シー キン グ 支出 のみ ならず、各期においてレント

・ シー キン グ コン テス トに 留ま るか 退出 す るか に関 する混合戦略も選択する。レ

ン ト・ シー キン グか らの 各プ レイ ヤー の期 待 利得 が負 である限り、すべての生き残

っ たプ レイ ヤー の期 待利 得が 非負 にな る長 期 的な 水準 まで、プレイヤー数は減少し

て いく 。し たが って 、長 期均 衡に おい ては 、 レン トは 完全に消失されるか、または

過 少消 失と なる 。他 方、 消耗 戦が 行わ れて い る間 は各 プレイヤーの期待利得が負に

     ―359 ―

(2)

な る の で 、 短 期 的 に は 過 大 消 失 が 起 き る 。

  

3

章 で は 、 進 化 ゲ ー ム 論 的 ア プ ロ ー チ を 用 い て 、 夕 ロ ッ ク ・ コ ン テ ス ト の 長 期 均 衡 を 調 べ る 。 有 限 人 口 の 進 化 的 に 安 定 な 戦 略

(ESS)

は 、 レ ン ト ・ シ ー キ ン グ 支 出 に 関 す る 収 穫 逓 増 が あ る と き に 、 レ ン ト の 過 大 消 失 を も た ら す こ と が 知 ら れ て い る 。 し か し な が ら 、

ESS

に お け る 進 化 動 学 の 源 泉 と 考 え ら れ る 単 純 な 模 倣 的 行 動 は 、 個 人 合 理 性 が 必 ず し も 満 足 さ れ なし ゝが ゆえ に、 現 実味 に乏 しい と 言え る。 とは 言え 、 有 限 人 口 の

ESS

で は 、 進 化 動 学 の 源 泉 と な る 行 動 が 明 示 的 に 示 さ れ て い る わ け で は な い 。 そ こ で 、 第

3

章 で は 、 暗 黙 に 想 定 さ れ て い る で あ ろ う 模 倣 的 行 動 を 明 確 に 特 定 化 し 、 明 示 的 な 進 化 動 学 を 構 築 す る 。 最 も 成 功 し た 戦 略 を 模 倣 す る と い う 単 純 ぬ 行 動 に 従 う と 、 最 も 成 功 し た 戦 略 が 負 の 利 得 を も た ら し た と し て も 、 プ レ イ ヤ ー は そ の 戦 略 を 模 倣 す る 。 し か し 、 レ ン ト ・ シ ー キ ン グ 支 出 を ゼ ロ に す れ ば ゼ 口 の 利 得 が 得 ら れ る に も 関 わ ら ず 、 負 の 利 得 を も た ら す 戦 略 を 模 倣 す る プ レ イ ヤ ー は 、 過 度 に 合 理 性 を 欠 く も の と 言 わ ざ る を 得 な

b

ユ 。 そ こ で 、 個 人 合 理 性 と 矛 盾 し な い よ り 現 実 味 の あ る 模 倣 ル ー ル を 設 定 し 、 そ の 下 で 収 穫 逓 増 が あ る と き に は 、 完 全 消 失 が 長 期 的 に 優 勢 に な る こ と を 示 す 。

  

4

章 で は 、 互 恵 的 な 選 好 を 持 つ 合 理 的 ぬ レ ン ト ・ シ ー カ ー が 、 夕 口 ッ ク ・ コ ン テ ス ト に お い て 負 の 利 得 を 進 ん で 許 容 す る 可 能 性 が あ る モ デ ル を 構 築 す る 。 さ ら に 、 こ の 互 恵 的 夕 ロ ッ ク ・ コ ン テ ス ト に お い て 、 レ ン ト ・ シ ー カ ー の 互 恵 的 関 心 が 物 質 的 関 心 に 比 べ て 十 分 に 小 さ い ぬ ら ば 、 破 壊 的 均 衡 と い う 互 恵 的 均 衡 が 一 意 に 存 在 し 、 さ も な け れ ば 、 破 壊 的 均 衡 と 建 設 的 均 衡 の

2

つ の 互 恵 的 均 衡 が 存 在 す る こ と が 示 さ れ る 。 破 壊 的 均 衡 に お け る 総 レ ン ト ・ シ ー キ ン グ 支 出 は 、 夕 口 ッ ク ・ コ ン テ ス ト の ナ ッ シ ュ 均 衡 に お け る そ れ よ り も 大 き く な る 。 そ の う え 、 レ ン ト ・ シ ー キ ン グ 支 出 に 関 し て 収 穫 一 定 で あ っ て も 、 破 壊 的 均 衡 に お い て は 過 大 消 失 が 起 き る 場 合 が あ る 。 こ れ に 対 し て 、 建 設 的 均 衡 に お け る 総 レ ン ト ・ シ ー キ ン グ 支 出 は 、 ナ ッ シ ユ 均 衡 の そ れ よ り も 小 さ く な る 。 そ れ ゆ え に 、 そ の 結 果 は よ り 協 調 的 で 、 社 会 的 に 見 て よ り 好 ま し い も の と な る 。

  

5

章 で は 、 こ の 学 位 論 文 の 結 論 を 述 ぺ る 。

360

(3)

学位論文 審査の要旨 主査   教授   板谷浮一 副査   准教授   肥前洋一

副査   教授   小西秀樹(早稲田大学政治経済      学術院)

学 位 論 文 題 名

  Game‑theoretic Approaches to the Rent‑Dissipation Problem in the Social Cost of Rent ― seeking Activities

( レ ン ト ・ シー キ ング 活 動 の社 会 的 費用 に おけ る レ ント 消 失問 題 に 対す る      ゲ ー ム 論 的 ア プ ロ ー チ )

  Tullock (1980)

の 先駆的 な研究 (夕ロ ック ・コン テスト)以降、レント・シーキン グ 競 争 ( 狭い 意 味 では、 政府 や官僚 から独 占権や 許認 可を得 るため の利益 団体間 の 合 法 的 あ るい は 非 合法的 な活 動によ る競争 )に関 して 膨大な 数の研 究がな されて き た 。 研 究 の関 心 は 主に、 社会 的に無 駄なレ ント・ シー キング 活動に よって 資源が 消 失 さ れ る 程度 ( レ ント消 失率 :消失 される 資源の 大き さを獲 得でき るレン トの大 き さ で 除 し た値 ) に 向けら れて きた。 佐野氏 の学位 論文 の目的 は、夕 ロック ・コン テ ス ト を 基 礎に し た 拡張モ デル におけ るレン ト消失 率、 特に過 大消失 (消失 される 資 源 が レ ン 卜を 上 回 る こ と )が 生 じ る か 否か を検討 するこ とであ る。そ のた めに、

3

つ の レ ン ト・ シ ー キング ・モ デルを 提示す る。こ れら のモデ ルにお いては 、ナッ シ ユ 均 衡 に 限定 さ れ ず 、 ゲー ム 理 論 の 分 野で 確 立 さ れ た様 々 な 均 衡 概念 を

Tullock (1980)

のモデ ルに適 用し ている 。

  

1

章で は 、

Tullock (1980)

以 前 の レン ト・ シーキ ングの 文献を 概観し てか ら、

Tullock (1980)

のモデルを再検討する。加えて、Tullock (1980)以降のレン卜消失率に 焦 点 を 当 てた 様 々 な拡張 モデ ルの理 論研究 および 実験 研究を 概観す る。こ れらの 理 論 研 究 の 大部 分 は 、 レ ン 卜消 失 率 が

1

より 小さい (過 少消失 )とい う結果 を示し て お り 、 消 失率 が1( 完 全消 失 ) 、 ま た は1よ り 大 き い( 過 大 消 失)と いう 結果を 示 し た 理 論 研究 は 数 少ない 。他 方、夕 口ック ・コン テス トに関 する実 験研究 では、 過 大 消失の 可能性 が排 除され ないこ とが示 されて いる 。

  

2

章で は 、 レ ン ト・ シ ー キ ン グ支 出 に関 する 収穫逓 増を仮 定して 、レ ン卜‐ シ ー カーの 長期的 行動 を研究 してい る。そ のため に、

Tullock (1980)

のレント・シーキ ン グ ・ ゲ ーム を 消 耗戦の 枠組 みの中 に組み 込んだ 多期 間ゲー ムを構 築し、 各プレ イ ヤ ー は レ ン卜 ・ シ ーキン グ支 出のみ ならず 、各期 にお いてレ ン卜・ シーキ ング・ コ ン テ ス ト を続 け る か退出 する かに関 する混 合戦略 も選 択する と想定 した。 各プレ イ ヤ ー の 期 待利 得 が 負であ る限 ルプレ イヤー たちは 退出 してい き(消 耗戦) 、長期 的 に は 、 生 き残 っ た すべて のプ レイヤ ーの期 待利得 が非 負にな る水準 までプ レイヤ ー 数 が 減 少 して い く 。 そ の 結果 、 長 期 均 衡に お い て は 、レ ン ト は完 全に消 失され る か 、 ま た は過 少 消 失とな る一 方、消 耗戦が 行われ てい る各期 におい て各プ レイヤ ー の 期 待 利 得が 負 に な る の で、 短 期 的 に は過 大 消 失 が 起き る こ とを 明らか にした 。

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(4)

    3章 で は 、 進 化 ゲ ー ム 論 的 ア プ ロ ー チ を 用 い て 、 コ ン テ ス ト の 長 期 均 衡 を 調 べ     る 。 有 限 人 口 の 進 化 的 に 安 定 な 戦 略(ESS)は 、 レ ン ト ・ シ ー キ ン グ 支 出 に 関 す る     収 穫 逓 増 が あ る と き に 、 レ ン ト の 過 大 消 失 を も た ら す こ と が 知 ら れ て い る 。 し か し     な が ら 、ESSに お け る 進 化 動 学 の ミ ク 口 的 な 基 礎 で あ る 単 純 な 模 倣 的 行 動 は 、 必 ず     し も 合 理 的 な 行 動 原 理 と は 言 え な い 。 そ こ で 、 佐 野 氏 は 、 プ レ イ ヤ ー は 最 も 成 功 し     た 戦 略 を 模 倣 す る と い う 行 動 を 仮 定 し た 。 さ ら に 、 最 も 成 功 し た 戦 略 が 負 の 利 得 を     も た ら す 場 合 、 そ れ を 単 純 に 模 倣 す る の は 合 理 性 を 欠 く の で 、 個 人 合 理 性 と 矛 盾 し     な い よ う な よ り 洗 練 さ れ た 模 倣 ル ー ル を 仮 定 し た 。 そ の よ う な 設 定 に お い て 収 穫 逓     増が ある ときに は、 完全消 失が 長期的 に優 勢にな るこ とを示 した 。

    4章 で は 、 ラ イ バ ル に 対 し て 互 恵 的 な 選 好 を 持 っ レ ン ト ・ シ ー カ ー を 想 定 し   て 、 コ ン テ ス ト に お し ゝ て 負 の 利 得 を 許 容 す る モ デ ル を 構 築 し た 。 そ し て 、 レ ン 卜 ・   シ ー カ ー の 互 恵 的 選 好 が 物 質 的 選 好 に 比 べ て 十 分 に 小 さ い 時 、 破 壊 的 均 衡 ( 互 恵 性   の な い モ デ ル に お け る ナ ッ シ ュ 均 衡 よ ル レ ン ト ・ シ ー キ ン グ 支 出 が 大 き く な る 互 恵   的 均 衡 ) が 一 意 的 に 存 在 す る が 、 そ う で な レ ゝ 時 、 破 壊 的 均 衡 と 建 設 的 均 衡 ( 同 じ く   小 さ く な る 互 恵 的 均 衡 ) の2っ が 存 在 す る こ と を 示 し た 。 さ ら に 、 破 壊 的 均 衡 に お   い て は 過 大 消 失 が 起 き る 可 能 性 が あ る こ と 、 お よ び 建 設 的 均 衡 で は 過 小 消 失 が 起 き   る可 能性が ある ことを 示し た。

    こ の よ う に 、 本 論 文 は 、 レ ン ト ・ シ ー キ ン グ ・ コ ン テ ス ト 理 論 に お け る 標 準 的 な   理 論 モ デ ル の 本 質 的 な 拡 張 を 行 っ て 、 従 来 の 研 究 で 得 ら れ て い る も の と は 異 な っ た   理 論 的 成 果 を 得 て い る オ リ ジ ナ リ テ ィ の 高 し ゝ 研 究 を 含 ん で い る と 言 え る 。 平 成23   729日 に 、 本 研 究 科 の 板 谷 お よ び 政 治 経 済 学 が 専 門 の 肥 前 に 、 日 本 に お け る 政 治   経 済 学 の 第 ー 人 者 で あ る 早 稲 田 大 学 政 治 経 済 学 術 院 の 小 西 秀 樹 教 授 を 審 査 員 と し て   加 え た 審 査 委 員 会 を 実 施 し た 。 審 査 委 員 会 の 評 価 を ま と め る と 次 の よ う に な る 。   (1) 問題 の設定 と分 析は明 確で あり、 論文 は大変 なカ 作であ る。

  2) イ ン 卜 口 ダ ク シ ョ ン ( 第1章 ) で 述 べ ら れ る 研 究 の 動 機 づ け が 弱 い 点 も あ る が 、     理 論 展 開 の 数 学 的 厳 密 性 も 高 く 、 学 位 申 請 者 の 高 い 分 析 能 カ が 十 分 に 示 さ れ て い     る。

  3) 第2章 、 第3章 お よ び 第4章 と も オ リ ジ ナ リ テ ィ が 十 分 高 く 、 第2章 の 元 に な る     論文 はJapaみese Economic Review (v01.5,2003,p.218‑228),第3章の 元になる論文もJournal     o′宀刪m蜘刄甜翻d鰯¢D陀比甜&。n弸洫(vol.165,2009,pp.365‐383)に掲載されており、第4     章 も 一 定 以 上 の ラ ン ク の 査 読 付 き 学 術 雑 誌 に 掲 載 可 能 で あ る と 思 わ れ る 。   4) 各 章 で 展 開 さ れ る 理 論 モ デ ル の 動 機 付 け が 弱 い と 思 わ れ る 。 特 に 、 政 治 経 済 現 象     を 説 明 す る た め の コ ン テ ス ト モ デ ル で あ る の で 、 各 モ デ ル が 説 明 し よ う と し て い     る 政 治 経 済 現 象 に 関 連 す る 実 例 や 経 験 的 な 裏 付 け あ る い は 歴 史 的 事 実 等 が あ れ     ぱ 、 本 論 文 は さ ら に 説 得 的 な も の に な っ て い た で あ ろ う 。 こ の 点 が 不 十 分 で あ     り、 本論 文の欠 点に なって いる 。

5) 本 論 文 で し ぱ し ば 弓I用 さ れ て い る 実 験 結 果 が 必 ず し も 理 論 モ デ ル の 設 定 と 整 合 的     であ ると は言え なぃ ゝとレ ゝう 指摘が あっ た。

(6) 博士号 を取 得する 水準 は間違 いな くクリ アし ている 。

  上 で 述 べ た 学 位 請 求 論 文 の 評 価 に よ り 、 当 審 査 委 員 会 は 全 会 一 致 を も っ て 、 佐 野 博 之 氏 よ り 提 出 さ れ た 学 位 請 求 論 文 が 論 文 博 士 ( 経 済 学 ) の 学 位 授 与 に 値 す る と 判 断 し た 。

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