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博 士 ( 工 学 ) 羽 倉 淳

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 羽 倉    淳

    学位論文題名

Design of the Mechanism for Emergent Perceptibility of Autonomous Agents

(自 律エ ージ ェン トの ための創発的知覚発現メカニズムの設計)

    学位 論文 内容 の要 旨

  本論 文は 自律 エー ジェントの構築を目的として,環境知覚の発現メカニズムの設計法の 提案を試み,その有効性を実験的検証により示したものである・

  自律 エー ジェ ント とは自らのセンサー情報を頼りに環境の状況を認識し,判断しながら 与 えら れた タス クの 遂行を目的として,白らの行動を決定可能な処理系を意味する.自律 エ ージ ェン ト構 築は ロボット工学や人工知能工学の分野の中心課題のーつであり,その課 題 は環 境情 報に 基づ く状況の知覚の問題と知覚した結果に応じた行動選択の問題に集約さ れ る. 特に 知覚 の問 題はフレーム問題,シンボルグラウンデイング問題,主観的状況理解 の 欠如 の問 題, 身体 性の問題などを内包しており,知覚のメカニズムの欠如がエージェン ト の自 律化 を妨 げる 最大の要因であることが明らかにされてきた.また,知覚メカニズム は エー ジェ ント 全体 のダイナミクスと整合性がとれた状態で構築される必要があるゆえ,

予 め与 える こと は困 難であり,後天的に獲得される必要がある.しかしながら,その獲得 メ カニ ズム に関 する 有効な方法論は未だ示されていないゆえに,創発的にこれを探究する 必要があり,その具体的な方法論の構築が待たれている.

  これ らの 要請 に対 して本論文では,知覚メカニズムを創発的に発現可能な設計法の構築 を提案している.本方法論には,(1)夕スクや環境の変化に対して特別のセンサーを準備 す る必 要が 無い ,(2)環境の知覚方法を予め付与する必要が無い,(3)エージェントの機構 的 制約 やタ スク の内 容または環境の様相を予め知っている必要が無い,などの利点が期待 される.  ,、

  本方 法論 を実 現す るために,環境知覚は,エージェントの自律性を保証するために,主 観的かつ経験的に獲得される自、己尺度に基づく環境情報のグラウンデイングを基本理念と し て構 築さ れて いる .また,主観的な環境知覚を実現するために,創発的な知覚発現メカ ニ ズム の設 計法 を提 案し,自律エージェントの行動決定問題において方法論の特性を明ら か にし た. そこ では ,(1)環境 情報 を用 いた エー ジェントの状態表現(シンボルグラウン デ イン グ) ,(2)エ ージ ェント の状 態表 現に 基づ く自己の状況認識(主観的状況理解),

(3)環 境観 測お よび 状況判断メカニズムの獲得(知覚方法の後天的獲得),(4)夕スクおよ び エー ジェ ント の機 構的 制約 に適 合し た行 動決 定(身体性の獲得),(5)自己尺度の獲得

( 自律 性の 保証 )な ど従来,自律エージェント構築の妨げとなっていた問題の解決とぃっ た 利点 が示 され てい る. 本論 文は これ らの 成果 をまとめたもので,6章より構成されてい る.

  1章 は, 自律 エー ジェ ント構 築に 関連 する 既往 の研究について述ベ,本研究の目的と背 景を示している.

  2章 は, 自律 エー ジェ ント構 築に おけ る根 本的 問題であるデカルト的知覚の問題の様相

(2)

を明らかにしている.デカルト的知覚の問題はフレーム問題,シンボルグラウンデイング 問題,主観的状況理解の欠如の問題,身体性の問題により構成されることが示されてお り , 既 往 の 研 究 の ア プ ロ ー チ 法 と そ の 詳 細 が 明 ら か に さ れ て い る .   3章は,デカルト的知覚の問題を抜本的に解決するために必要となる枠組みが模索され ており,非デカルト的設計法による問題解決の枠組みが提案されている.非デカルト的設 計法の枠組みを構築するために,認知心理学において提唱されているアフオーダンス理論 の視点が利用可能であることを導き,フレーム問題と主観的状況理解の欠如の問題を解決 するために必要となる枠組みの構築可能性を明らかにした.さらに,シンボルグラウンデ イング問題と身体性の問題の解決するためには,アフオーダンス理論に基づく枠組みの中 でも,環境情報に立脚しエージェントの知覚した情報構造を再構成可能とするような手法 の必要性,すなわち,学習よる行動選択の基準となる環境情報を自己尺度として獲得する メカニズムの必要性が示されている.

  4章は,提案した設計法の枠組みと具体的メカニズムを数理論的記述により明らかにし ている.上記要件,すなわち,エージェント自らが経験的に獲得する尺度に基づぃて環境 を知覚するメカニズムの必要性を満足する枠組みとして,能動的環境観測の問題,内部モ デルによる環境知覚の実現,行動の集合論的枠組み,主ージェントの意思決定回路の実 現,の4項目に集約されることが導出されている.さらに;本枠組みに基づぃた具体的メ カニズムは,能動的環境観測系,知覚モデル系,行動集合系,3つの系の間のマッピング を司る人工ニューラルネットワーク群(ART; Adaptive Resonance Theory)から構成され,

ARTによルマッピングの可塑性および環境知覚の創発性によルエージェントの自律的行 動決定を保証する.提案されるメカニズムは内的シミュレ一夕を持つ知覚メカニズムであ り,エージェントの環境へのパ´レス波を出カと,その反射波の利用により能動観測系を実 現 しており, これにより 創発的知覚 発現メカニ ズムの設計 法が明らかにしている・

  5章は,本論において提案された手法の自律エージェント構築における特性を実験的検 証により示している.実験は4種類のタスク条件の下で実施され,各々,(1)環境情報に 基づく静止障害物の大きさ・形状・方向・距離の知覚実験,(2)創発原理に基づく環境知 覚の獲得実験,(3)動的環境下におけるエージェントの行動選択実験,(4)窓状障害物に対 するエージェントの通過判定実験,について行っている.

  実験(1)は,能動的環境観測系において計測されたデータに基づき,障害物情報がエー ジェントの知覚モデル上に再構成され,静止障害物の物理的諸条件の判別が実現されるこ とが示されている.また,知覚モデル上のデータは,障害物の諸条件に対して特異となる ことが示されており,シンボルグラウンデイングが実現されることが確かめられている.

  実験(2)は,ARTの効果を調べた実験であり,能動的環境観測系において観測されたデ ータのARTによる自己組織的に分類により,環境情報をその類似度に応じて知覚モデル 上にマッピングされることが確かめられている.さらに,ARTと知覚モデルの協調動作 により,本メカニズムの内包する知覚方法の後天的獲得の様相が明らかにされている.

  実験(3)では動的障害物環境下における行動集合と知覚モデルの影響を調べた結果が述 べられている.行動集合は知覚モデルに構築されたデータパターンのカテゴりと個々の行 動のマッピングを試行錯誤的に獲得されることが示されており,これにより,知覚モデル と行動集合とのマッピングによって,主観的状況理解による行動決定が実現されることが 確かめられている・

  実験(4)は障害物環境下におけるエージェントの行動決定問題へ応用することにより,

自律エージェント構築の可能性を検証している.実験によルエージェントは,「通過でき る間隙」に関する経験を通じ,隙間の幅と自己の大きさに依存した知覚モデル,すなわち 自己尺度を獲得可能であることが示されている.これにより,提案メカニズムが身体性を 獲得可能であることが確かめられている.

(3)

  以上の4種類の実験は,シンボルグラウンデイング,主観的状況理解,知覚方法の後天 的獲得,身体性の獲得,自律性の保証の問題が解決されるを示しており,本手法により自 律エージェントが構築可能であることが確認されている.これらのことから,本論で提案 さ れ る 創 発 的 知 覚 発 現 メ カ ニ ズ ム の 設 計 法 の 有 用 性 が 検 証 さ れ て い る .   6章は結論であり,本研究で得られた成果を総括し,残された課題について述べてい る.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Design of the Mechanism for Emergent Perceptibility of Autonomous Agents

( 自 律 エ ー ジ ェ ン ト の た め の 創 発 的 知 覚 発 現 メ カ ニ ズ ム の 設 計 )     I

  最 近の 自 律エ ージ ェン トの 研 究分 野に おい て はエージェントに予め 与えられた単機能の発現の みで はな く ,複 雑に 変動 する 動 的環 境に 適合 す るような機能をエージ ェントにいかに埋め込むか が中 心課 題 とな って いる .そ こ では エー ジェ ン トの内部状態に対応さ せつつ,その外的環境をい かに 認知 出 来得 るか とい うエ ー ジェ ント の認 知 能力発現問題,すなわ ち認知論,およびそのメカ ニズ ム設 計 法が 基本 的課 題で あ ると 理解 され て きたのが現状である. これまでのエージェントに 付与 され て きた 認知 メカ ニズ ム は主 にデ カル ト に起因する解析的なも のであったとぃえる.そこ では ,予 め 設計 者に よっ て付 与 され た測 度に 従 って環境を細分化して 捉え,それらを再構成する こと が認 知 であ ると され てき た .し かし ,こ の 認知メカニズムが適応 可能な環境は,予めその前 事象 が予 測 可能 であ る世 界,すなわち「Toy world」に限定されるとぃ うことが指摘されてきてお り, その 実 世界 にお ける 適用 の 困難 さが 明ら か にさ れて きて いる .

  本 論文 は ,自 律エ ージ ェン ト に実 世界 にお ぃ ても適応可能な認知能 カを付与することを目的と して ,デ カ ルト によ る認 知論 の 限界 を超 える 可 能性を持っものとして 期待される,ギブソンの提 唱し た認 知 論, すな わち アフ オ ーダ ンス 理論 を 理論的ベースとして未 だ明かされていないその認 知 メ カ ニ ズ ム 設 計 法 に ア プ ロ ーチ した も ので あり ,そ の 主要 な成 果は 次の4点 に要 約 され る,

1  従 来 の デ カ ル ト 的 ア プ ロー チ, すな わち , シン ボリ ックAIに 基 礎を 置く 自律 エ ージ ェン     ト の認 知 可能 な領 域は 予 め組 み込 まれ た環 境 の捉 え方 ,す なわ ち ,特 徴空 間に 依 存し て限     定 さ れ る こ と を 数 理 論 的 に 証 明 し て い る , さ ら に, 従来 から シ ンボ リッ クAIに おい て重     大 な問 題 とさ れて きた フ レー ム問 題, シン ボ ルグ ラウ ンデ イン グ 問題 など がそ の 設計 法に     起 因し て 発生 する こと を 明ら かに する とと も に, これ らの 問題 , 及び 主観 的状 況 理解 の欠     如 ,身 体 性問 題と いっ た 基本 問題 克服 のた め には 非デ カル ト的 ア プ口 ーチ が不 可 欠で ある     こと を 明ら かに して いる .  

2  非 デカ ルト 的 認知 論と して アフ オ ーダ ンス 理論 を導 入 し, アフ オー ダンスを知覚するため     の 能カ は ,エ ージ ェン ト 自ら の実 環境 にお け る経 験と エー ジェ ン トの 内部 状態 と の相 互関     係 か ら 創 発 的 か つ 逐 次 的 に 自 己 尺 度 と し て 獲 得 され る必 要が あ るこ とを 明ら か にし てい     る .さ ら に, アフ オー ダ ンス の知 覚能 カを 持 つエ ージ ェン トは 自 己尺 度を 創発 的 かつ 逐次     的 に環 境 との 相互 作用 か ら獲 得す るゆ えに , 自ら の世 界像 まで も 後天 的に 獲得 し うる こと     を数 理 論的 に示 して いる .

  3.  アフ オー ダ ンス 理論を具体化する ためには能動的環境観測機構 ,知覚モデリング機構,内     外 情報 マ ッチ ング 機構 , 学習 機構 が必 要で あ るこ とを 明ら かに し ,そ れら を統 一 的に 表現     可 能な 物 理的 振動 場に 基 づく 認知 メカ ニズ ム を提 案し てい る. 本 メカ ニズ ムに お いて は,

    特 に, セ ンサ ー入 カに 対 して 従来 法の よう な 具体 的意 味付 けを 行 う必 要は なく , また セン     サ ー 系 に 対 し て 高 い 測 定 精 度 を 要 求 し な い ゆ え に, 複雑 に変 化 する 実環 境に お ける セン

‑ 567一

昇 市

侑 衛

数 本

嘉 宮

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

    サー入カの不安定さを吸収し,それに起因する問題を克服する可能性を持っとぃえる.

    従って,本認知メカニズムに基づく自律エージェントが,従来困難であるとされてきた実     環境における多機能の実現の可能性を持っことを示している.

4.  提案メカニズムに関する様々な計算機実験を通して,動的に変化する環境下においても,

    エージェントが主観的かつ逐次的な自己尺度をその身体性をも加味した状態で獲得できる     ことを示している.また,獲得された自己尺度に基づく環境認知を行うことにより,未知     環境下においても,これまでの経験から適切な行動選択が実現できることが示されてい     る.さらに,この自己尺度を通じての環境知覚を現象論的視点から見ると,エージェント     が 環 境 の示 す ア フオ ー ダ ンス を 知 覚し て いるこ とになる ことに も言及し ている.

  以上のように本論文は,認知機能を備えた自律エージェント実現のための中心課題である認知 能力発現問題ヘアプローチしており非デカル.ト的視点から認知理論の体系化及び認知メカニズム 構築,実験を通して多くの新知見を得ており,認知工学,ロボット工学,精密工学,情報工学の 進歩に寄与するところ大である.よって著者は,工学博士の学位を授与される資格あるものと認 める.

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参照

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