博 士 ( 工 学 ) 若 林 高 明
学 位 論 文 題 名
フ ァ ジ イ 構 造 モ デリ ン グ に おけ る 推 移 的結 合 問 題 の 特 殊 解 及 び そ の 推 移 的 具 象化 へ の 応 用に 関 す る 研究
学 位 論 文 内容 の 要 旨
本論文 は, ファジ ィ構造 モデリ ングに おけ る推移 的結合 間題の 研究 に関す るもの である.
論文 で は , 本 問題 の 解 に 関 す る知 見 を 述ベ ,推 移的結 合間題 を含む ファ ジィ構 造モデ リン グに お け る 具 象化 理 論 を 提 案 し, 実 例 への 適用 により その有 効性を 示し ている .推移 的結 合問 題 を 含 む ファ ジ ィ 構 造 モ デリ ン グ は , 具象 化 過 程 に おけ るqオ 比較 数削減 の効果 が大 きい こ と か ら ,人 的 要 因 を 含 む大 規 模 なシ ステ ムの構 造解析 におい て有 用であ ると考 えら れる.
論 文 は 全 8章 よ り 構 成 さ れ て い る . 以 下 , 各 章 ご と に 概 要 を 述 べ る . 第1章は序 論とし て, 研究の 背景, 目的に っいて 述べ ている .
暖 味 模 糊 とし た 対 象 を 構成 要 素 集 合 とそ の 上 に 定 義 され る 二 項 関 係に 注 目 し , 構造 を 有向 グ ラ フ 等 を用 い て モ デ リ ンク : 分 類, 整理 する方 法を構 造モデ リン グとい う,社 会シ ステ ム ナ ょ ど の大 規 模 か っ 複 雑な 問 題 を分 析す るため の有効 な手段 とし て様々 な構造 モデ リン グ 技 法 が 開発 さ れ て い る .構 造 モ デリ ング 技法の 代表的 なもの に, 二値関 係を用 いた ISM(Interp retiveS tructural Mod eling)があり,その改良版として,FISM(Flexible ISM) が開発 されて いる.
こ れ ら の ニ値 関 係 構 造 モデ リ ン グ の 応用 実例を 通して ,人間 の判 断の曖 味さを 考慮し た シス テ ム の 開 発に 対 す る 要 求 が強 い こ とが 認識 された .即ち ,ある 要素 二項対 が 関 係に ある, ない から どの 程度の 度合い の関係 があ るか を考慮 すると いうも ので ある.要素 間の ニ 項 関 係 の有 無 を 従 属 関 係の 曖 昧 さを 許容 し,フ ァジィ 化した ファ ジィ構 造モデ リン グ の 主 な も の と し て は 従 来 ,RagadeのFuzzy ISM,TazakiのFSMが 考 案 さ れ て い る . Fuzzy ISMは 二 項 関 係 を 半 順 序 関 係 と し て お り, 具 象 化 理 論も 不 十 分 で ある .FSMでは 利用 す る フ ァ ジィ 二 項 関 係 に 特別 な 条 件は 要求 されな い代わ りに, 同関 係の推 移性を 利用 した無 矛盾ナ ょ具象 化や 一対比 較の効 率化は 考慮 されて いない .
そこで ,従 来のフ ァジィ 構造モ デリン グに はない 機能をf寸 加した,FISMのファジイ関係版 への 自 然 な 拡 張と し て の フ ァ ジィ 構 造 モ デ リン グFISM/fuzzyが 提案さ れた.FISM/f uzzy にお い て は 要 素間 の 二 項 関 係 のフ ァ ジ ィ 化 する こ と に 加 えてFISMの も っ 構 造 化 にお け る 柔軟 性 を も 実 現し よ う と す る ,FISM/fuzzyに お い て , 構成 要 素 集 合 が多 い 場 合 や 問題 領 域を 幾 っ か の カテ ゴ り に 分 割 した 方 カ 漣切 な場 合に一 対比較 の効率 化を 図るた めの手 段と し て , 本 論 文 の 主 題 で あ る フ ァ ジ ィ 推 移 的 結 合問 題 が 考 え られ た こ と を 述べ て い る . 第2章 は 本論 の 数 学 的 準備 と し て , 本研 究 が そ の 基礎 を お く ファ ジィ関 係にっ いて概 説 し, 論 文 中 で 使用 す る 諸 定 義 ,諸 記 号 を 説 明し , 第4章 にお い てフ ァジ ィ推移 的結合 問題 の解 を 求 め る にあ た り 理 論 的 背景 と な る フ ァジ ィ 関 係 不 等式 の 解 に っ いて 述 べ て い る.
第3章 で は , フ ァ ジ ィ 構 造 モ デ リ ン グFISM/fuzzyの 概 要 を 述 べ て い る . FIS M/fuzzyに よる シス テム構 造化プ ロセス の実行 を FISM/fuzzyセ ッショ ン と 呼ぷ,
−550−
FISM/fuzzyセ ッシ ョン に おい ては 対象 を有 限 集合SとSxS上 のフ ァ ジィ 二項 関係Rの 組く5,R>としてモデリングする .FISM/fuzzyセッションは問 題設定,関係定義,具象 化,構造化,描画の各プロセスより構成される.
第4章で は, 本 論文 の主 題で ある フ ァジ ィ推 移的 結 合間 題に っい て述 べ ている.
共通のファジィ関係を有し,ファジィ行列A,Bで定義されるニっのサブシステムを結合 し, ファジィ行列Mで定義される ーっのシステムを形成する問 題をファジィ推移的結合 問題という.本問題は, FIS M/fuzzyセッションの具象化において重要な部分を占める.
シ ステムの具象化を行うにあた り,システム構成要素が多い場合は,構成要素集合を 幾っかの部分集合に分割して構造化を行い,後でその結果を結合してシステム全体のファ ジ ィ 構 造 行 列 を 形 成 す る こ と に よ っ て 効 率 的 な 具 象 化 が 可 能 と な る . 論文では,推移的 結合によって生成されるフ ァジィ行列Mの推移性によりMの未知要 素に課せられる条件式を数学的に解析することによって特殊解の存在を示し,特殊解に関 する 知見を補題,定理の形で述べ ている.また,特殊解に関する考察の中で,max‑rrun 解,min―max解,nun‑nun解とい うシステムの階層構造を反映 した特殊解が存在すると いう結果を述べている.更に,推移的結合の特殊な場合である推移的拡大にっいて言及し,
サ イズの小さい行列 の推移的拡大を柔軟に行う ためのアルゴリズムを提案し ている.
第5章では,ファジイ推移的結 合問題の応用としてのFISM/fuzzyセッションにおける 具象化過程にっいて述べている,提案する方法では,各部分構造行列及びその間の階層構 造が決定すれば,自動的にシステム全体のファジィ構造行列を生成することができる,こ の方法を用いることによって,人的労カを要する要素間の一対比較の回数が低滅され,効 率的なシステムの具象化を図ることができる.
第6章では,一般的なファジィ推移的結合問題の例題を示し,推移的結合間題の特殊解 が求められる過程を数値例により説明している.
第7章では,ファジィ推移的結合を用いたFISM/fuzzyセッションの実例として, 乗用車 の車種選択に当たりどのような点を重視するか という意思決定問題に関するFISM/f uzzy セ ッ シ ョ ン を 行 い , 本 論 で 提 案 し た 理 論 の 有 効 性 を 検 証 し て い る . 第8章は本論文の結諭である.
本研 究 の全 体的 なま と めとFISM/fuzzyに お ける 今後の課題にっいて述べ ている.
− 551‑
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
フ ァジイ構造モデリングにおける推移的結合問題の 特殊 解及び その推移的具象化への応用に関する研究
構造モデリングとは暖味模糊とした対象を構成要素集合とその上に定義される二項関係 に注目し、構造を有向グラフ等を用いてモデリングヽ分類、整理する方法である。社会シ ステムなどの大規模かつ複雑な問題を分析するための有効な手段として様々な構造モデリ ング技法が開発されている。
モデリングに人間の主観をより反映させるために、要素間の二項関係の有無を従属関係 の暖味さを許容しファジィ化したファジィ構造モデリングは幾っかの手法が考案されてい るが、従来の手法においてはシステム全体のファジィ関係を決定する具象化過程において、
ファジィ関係の推移性を利用して無矛盾にこれを行うことや一対比較の効率化は考慮され ていない。
そこで、従来のファジィ構造モデリングにはない機能を付加したファジィ構造モデリン グFISM/fuzzyが提案された 。FISM/fuzzyにおいては要素 間の二項関係をファジィ化 す ることに加えて構造 化における柔軟性をも実現しようとする。FISM/fuzzyの適用に当た り、構成要素集合が多い場合や問題領域を幾っかのカテゴりに分割した方が適切な場合に 一対比較の効率化を図るための手段として、本論文の主題であるファジィ推移的結合問題 が考えられた。
本論文では、ファジィ構造モデリングにおける推移的結合問題の解に関する知見を述べ、
推移的結合問題を含むファジィ構造モデリングにおける具象化理論を提案し、実例への適 用によりその有効性を示している。
論文は全8章より構成されている。
第1章は序論として、研究の背景、目的について述べている。
第2章は本論の数 学的準備として、本研究の理論的背景となるファジィ関係、ファジィ 関係不等式について概説し、論文中で使用する諸定義、諸記号を述べている。第3章では、
ファジィ構造モデリングFISM/fuzzyの概要を述べている。
FISM/fuzzyによる システム構造化プロセスの実行は FISM/fuzzyセッション と呼ば れ、問題設定、関係定義、具象化、構造化、描画の各プロセスより構成されることを述べ ている。
第4章 では 、本 論 文の 主題 であ る ファ ジィ 推移 的結 合 問題 につ いて 述べ ている 。
− −552−
東 治
勝 昇
義
侑
内 藤
保 数
大 佐
新 嘉
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
ファジィ推移的結合問題とは、共通のファジィ関係を有し、ファジィ行列で定義される ニっの サブシ ステム を結合し、ファジィ行列Mで定義されるーつのシステムを形成する 問題であると定式化している。
続いて 、推移 的結合 によっ て生成 される ファジィ行列Mの推移性によりMの未知要素 に課せられる条件式を数学的に解析することによって特殊解の存在を示し、特殊解に関す る知見を楠題、定理の形で述べている。また、特殊解に関する考察の中で、システムの階 層構造を反映した特殊解が存在するという知見を述べている。更に、推移的結合の特殊な 場合である推移的拡大について言及し、推移的拡大を柔軟に行うためのアルゴリズムを提 案している。
第5章で は、フ ァジイ推移的結合問題の応用としてのFISM/fuzzyセッションにおける 具象化理論について述べている。提案する方法では、各部分構造行列及びその間の階層構 造が決定すれば、自動的にシステム全体のファジィ構造行列を生成することができる。こ の方法を用いることによって、人的労カを要する要素間の一対比較の回数が低減され、効 率的なシステムの具象化が可能になったことを述べている。
第6章では、推移的結合問題の特殊解が求められる過程を数値例により説明し、第7章 では、ファジィ推移的結合を用いたFISM/fuzzyセッションの実例として、 乗用車の車種 選択に当たりどのような点を重視するか という意思決定問題に関するFISM/fuzzyセッ ションを行っている。
これを要するに、著者はファジィ推移的結合問題の解及びファジィ構造モデリングに おける具象化過程の効率化において、有益な新知見を得たものであり、情報システム工学 に対して貢献するところ大なるものがある。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
―553―