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博 士 ( 医 学 ) 大 倉 有 加

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 大 倉 有 加

学 位 論 文 題 名

C3 欠損症における遺伝子変異と臨床像の相関に関する研究 当科で解析した3 例および報告例の解析

学位論文内容の要旨

【 背景 と目 的】 補体 系は30種 以上の血清遊離蛋白、膜蛋白からぬり、自然免疫の一部 とし て 重要な役割を果たしている。補体系には古典経路、第二 経路、レクチン経路の3つの 独立 し た活 性化 経路 を有 する 。そ れぞれの経路の機能はC3を活性化することに集約され、C3は 補 体活 性化 の中 心的 役割 を果 たし てい る。C3遺 伝子 は41exonからなり、exonlからexon16 は645ア ミ ノ 酸 か ら な るロ 鎖、exon16か らexon41は991アミ ノ酸 から なるa鎖を コー ドし て いる 。C3は13のド メイ ンか ら構成されている。C3欠損症は常染色体劣性遺伝形式を とる 非常にまれな疾患であり、易感染性と免疫複合体病両者の病態が認められるとされているが、

症 状 は 一 様 で は な く 、 遺 伝 子 型 と 表 現 型 の 関 係 も 明 ら か で は な か っ た 。   今回 、当 科に おけ る自 験例3家系 を含 めた 報告 例26家系におけるC3欠損症の臨床像 と遺 伝子変異を解析し、その関連 にっいて検討した。

【対象と方法】

1.当科における解析症例

当 科へ 遺伝 子検 査を 依頼 され たC3欠損 症2症 例に 関し ては遺伝子解析結果を既に報告 して お り、臨床像に関する後方視的解析を行った。今回新たに 依頼されたC3欠損症1症例( 自験 例31は下記方法で遺伝子解析 を行った。

2.遺伝子解析

北海道大学医学研究科の倫理 審査委員会の規約に基づき患者およぴその家族から遺伝子解析 を 施行 する 同意 を得 た。 患者 と両親、兄、正常者の末梢血単核球よりgenomic DNA、RNAを それぞれ抽出しC3遺伝子解析 とReverse transcription‑PCR (RT‑PCR)を行った。PCR、RT‑PCR 産物はdirect sequence法で遺伝子解析を施行した。さらに患者と両親における転写産物の配 列 を明 らか にす るた め、RT‑PCR産物をクローニングした後、各クローンの塩基配列を 確認 した。

3.対象論文の抽出

C3欠損 症の 既報 告例 の検 索はPubMed、 医学 中央 雑誌 より2010年10月 まで に発 行され た英 語 また は日 本語 の論 文を 抽出 し、 原著 より 遺伝 子変 異と 臨 床症 状に 関す る情 報を得 た。

【結果】

1.自験例3例の臨床像

  自験 例1現在15才 の男 児で 両 親に 血縁 関係 があ る。7才 時 に初 めて 血尿 を指 摘され 、C3 欠損症であることがわかった 。易感染性は認められていない。

  自験 例2現在6才の 男児 で両 親に 血縁 関係 はな い。 乳児 期 より 易感 染性 があ りC3欠 損症 であることがわかった。4才時よりDiscoid lupus erythematosusが出現、以後口腔内潰瘍、抗 核 抗 体 が 陽 性 、 ル ー プ ス 腎 炎 の 所 見 を 認 めSLEの 診 断 で 現 在 加 療 中 で あ る 。   自 験 例3現 在7才 の 男 児で 両親 に血 縁関 係は ない 。2才 より 易感 染性 を認 めC3欠損 症で あ る こ と が わ か っ た 。6才 よ り 滑 膜 炎 の 所 見 を 認 め 現 在 加 療 中 で あ る 。

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2.当院における遺伝子解析の結果

  自験例1では、C3遺伝子に3736 3737deI(F1246X)のホモの変異を認め、両親は同変異の ヘテロ接合体であることがわかった。自験例2は3116dupT (L1039fs)、C3243G (Y1081X)のコ ンパウンドヘテロ変異を認め、前者は父由来、後者は母由来であった。今回新たに解析した 自験例3においては、の遺伝子のexon12に1432C>T (Arg 478 Term)、IVS9,2a>tの塩基置 換を認めた。1432C>Tは母由来、IVS9‐2a>tは父由来であることがわかった。IVS9‐2a>t変 異の転写産物は他と比較して少なかった。さらにRT―PCRの産物の解析より、IVS9‐2a>t変 異はexon10の5 側の4塩基がスキップし、フレームシフトにより14コドン下流に早期終始 コドンを形成することが予測された。

3.自験例を含む報告例の臨床像と遺伝子型のまとめ

世界中から26家系(34人)の報告がある。そのうち日本からの報告は自験例の3家系を含む 6家 系あ る 。 これ ら のC3欠 損症 の 臨 床像 は 下記 の よ うに ま と める こ とが で きる。

◎重症感染症:細菌性髄膜炎をはじめ様々な感染症を認めている。起因菌はStreptococcus   pneumoniaeが最も多い。

◎SLEま た はSLE様症 状:3家系3人でSLE (ACRの診 断基準11項目 のうち4項 目を満た   す)、1家系2人でSLE様症状、1家系1人でSubacute lupus erythematosusを呈している

◎腎症状:7家系9人で重症度は様カであるが何らかの腎症状を認めている。5人で病理組   織学的な診断が行われている。膜性増殖性糸球体腎炎1型が2人、メサンギウム増殖性糸   球体腎炎が2人(このうち1人はIgA腎症)、ループス腎炎(WHO分類Class IIIA)が1人   である。

@皮膚症状:SLEまたはSLE様症状を認めた症例以外の7症例において、感染時に一時的   に皮疹を伴っている。紅色の斑丘疹を認めることが多い。

◎遺伝子型一表現型相関: C3欠損症の症例で分子遺伝学的解析が施行されているのは自験例   を含め13家系で、そのうち両アリルの遺伝子変異が同定できている症例は10家系であっ   た。C3243G (Y1081X)は自験例2とSLE様の症状を呈した日本人症例の2家系で認めてい   るが、その他の変異に関しては明らかな集積は認められていない。ロ鎖上およびa鎖の   CUBドメインないしそれよりもN末端側に変異を持つ症例は全て易感染性を主症状とし   ているのに対し、ば鎖上のTEDドメインないしそれよりもC末端側に変異を持つ症例は   SLE、SLE様症状ないし腎炎を認めている。

【考察】従来C3欠損症においては明らかな遺伝子型―表現型の相関はないとされてきたが、

今回の検討で変異部位と臨床症状の相関が示唆された。

  遺伝子解析されている症例はすべてナンセンス変異あるいはフレームシフト変異であり、

従って変異部位よりC末端側は完全に欠失するか本来の蛋白とは全く異なることになる。

TEDドメイ ンのN末端側 に接するCUBドメイン よりN末端 側に生じ る変異はC3蛋白の大 きな欠失にっながり、感染防御に役立たない可能性がある。一方、SLE(様)なぃし腎炎を 主症状 とする症例 は全てC3d中 のTEDドメイン以降の欠失(3736̲3737del、3116dupT、 C3243G)であり、H因子結合部位もしくはCR2結合部位を欠くことになる。これらのドメ インはC3dを介したB細胞免疫寛容やアポトーシス体の処理能に重要であることが知られて いる。さらに蛋白翻訳後の不安定性や蛋白分泌の低下などにより、感染防御にはある程度役 立っものの自己免疫疾患を惹起しやすいことが推測された。

  【結論】  自験例も含めたC3欠損症26家系における解析から、N末端側の変異では重症感 染症が 、a鎖のTEDドメインよりC末端側の変異ではSLE様症状ないし腎炎が主症状とな ることを見いだした。いずれもナンセンス変異あるいはフレームシフトによることから、前 者ではC3蛋白の完全欠失が、後者では蛋白の不安定性、分泌異常、機能ドメインの欠失な どのメカニズムが考えられた。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    小池 隆夫 副査    教 授    今村 雅寛 副査    教 授    佐藤 典宏 副査    教 授    有賀    正 副査   准教授   田中淳司

学 位 論 文 題 名

C3 欠損症における遺伝子変異と臨床像の相関に関する研究 当科で解析した3 例および報告例の解析

  補体 系は30種 以上の血 清遊離蛋白、膜蛋白からなり、自然免疫の一部として重要な役 割を 果たしている。補体系には古典経路、第二経路、レクチン経路の3つの独立した活性 化経 路を有す る。そ れぞれの 経路の機能はC3を活性化することに集約され、C3は補体活 性化 の中心的 役割を 果たして しヽる 。C3遺伝子 は41exonからなり、exonlからexon16は 645アミノ酸カゝらなるロ鎖、exon16カゝらexon41は991アミノ酸カゝらなるa鎖をコードし てい る。C3蛋白 は13のド メインか ら構成 されてい る。C3欠 損症は常 染色体 劣性遺伝形 式をとる非常にまれな疾患であり、易感染性と免疫複合体病両者の病態が認められるとさ れ て いる が 、 症状 は 一 様で は な く遺 伝 子 型と 表 現 型の関 係は明ら かでは なかった 。   今回 、 当 科に お い て新 たに検 出した3症例 目とな るC3欠損症 の遺伝 子解析を 行いの 遺伝 子にC1432T (R478幻 とIVS9・2a>tの コンパ ウンドヘ テロ変異 を同定 した。両 親の 解析の結果、前者は母由来、後者は父由来であった。次に転写産物の解析によりIVS9・2a>t はexon10の5 側の4塩基をス キップしフレームシフトにより14コドン下流に早期終始コ ド ン を形 成 す るこ と が 予想さ れた。C3欠損症は 自験例3家系 を含め世 界中で26家系34 症例 の報告があるが、その臨床症状は@感染症、◎全身性エリテマトーデス(SLE)または SLE様症状、◎腎症状、@皮膚症状にまとめることができた。感染症の既往のなぃ症例が 6症例(17.6%)存在しそれらの多くがSLEまたは腎炎といった自己免疫性疾患を有してい るこ とに注目 し、遺 伝子解析 が施行されている10家系の遺伝子型と表現型の相関につい て 検 討し た 。C3遺 伝 子変 異の位 置がCUBgド メイン よりN末側に存 在する 症例では いず れも 易感染性 を認め ている。 一方TEDドメイ ンよりC末側 に存在す る症例 では自己 免疫 性 疾 患が 主 症 状と な っ ておりCUBgドメイ ンとTEDドメイ ンの間で 主症状 が二分さ れる ことが示された。遺伝子変異の種類はすべてナンセンス変異あるいはフレームシフト変異 であ るため、 感染症 を主症状 とする症例ではC3蛋白は大きな欠失によりほとんど産生さ れず 、一方自 己免疫 性疾患を 主症状とする症例では実際には変異C3蛋白は存在し感染症     ー279―

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コントロールに寄与している可能性を推測した。一般に前期補体成分欠損症では免疫複合 体の除去やアポトーシスを起こした細胞の処理機構に問題があるため自己免疫性疾患を発 症するりスクが高い と考えられている。今回の検討により、C3欠損症において自己免疫 性 疾患 を主症状とする症例では遺伝子変異がC3dフラグメント上に集中して存在 するこ と が明 らか とな った 。C3dは抗 原提示細胞上のcomplement receptor2(CR2)と複 合体を 形成し抗体産生を増 強すると同時にB細胞のnegative selectionに関与する可能性も示唆 さ れて いる 。CR2のsingle nucleotide polymorphismとSLE発症の関連や、CR2ノック アウトマウスではself toleranceの破綻を来し自己抗体を産生しやすいことが報告されて おり、C3dフラグメント上の遺伝子変異はC3d‑CR2 interactionの異常を来たし自己免疫 性疾患の1つの要因となっていることを推測した 。

  公開発表に際し、 今村教授から、実際にヒトの系ではC3dやCR2の異常に関する報告が あるのか質問があっ た。田中准教授よりC3欠損症で認められる多彩な症状はC3分子の欠 損で一元的に説明可能か質問があった。佐藤教授より易感染性と自己免疫疾患の両者を有 する症例をどのように説明するか、また表現型が二分されることに気づぃた経緯などに関 する質問があった。 小池教授よりN末側に変異を有する場合蛋白の大きな欠失にっながる が自己免疫性疾患を 発症していなぃ理由、またC3は補体の中心的役割を果たしているに も関わらず他の先天性免疫不全症より重症感が感じられない理由に関する質問があった。

最後に有賀教授よりこの仮説を証明するための今後検討すべき課題に関する質問があった が、申請者はいずれ の質問にも妥当に回答した。

  本研究はC3欠損症 の症状は一様ではなく、遺伝子・表現型相関を初めて指摘したこと に意義があり、今後 、存在していると仮定した変異C3蛋白の同定方法を検討することに より、C3分子の機能 解明にっながる可能性がある。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併 せ申 請者 が博 士( 医学 )の 学位 を受けるのに充分な資格を有するものと判定 した。

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参照

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