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博 士 ( 工 学 ) 石 坂 淳 一 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 石 坂 淳 一

学 位 論 文 題 名

極 低 温 用 非 磁 性 鋼 の 開 発 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  液化ガス利用,宇宙航空および超電導に関する工業的応用は極低温構造材料等の周辺技術に支 えられている。特に極低温用鋼としては,低温延性および靱性の優れているオーステナイト鋼が 使用されるが,強度の低いことが大きな短所であり,その高強度化と高靱性化など機械的性質の 向上並びに磁気特性など物理的性質および製鋼法,塑性加工法,溶接性など製造性の検討とその 改善が強く望まれている。

    一

  本論文では,極低温における材料の機械的性質の挙動とそのメカニズムを把握し,高強度化お よび高靱性化を図り,信頼性の高い極低温構造材料の開発を行うと共に経済性を加味した製鋼,

鍛練,熱処理,および溶接性や切削性に優れた大型製品の製造技術の開発を目的としている。

  本論文は全5章から構成されている。

  序論は極低温応用の各分野における構造材料としての材料特性と課題を明らかにし,本研究の 目的を述べている。

  第2章では,極低温構造材料の強度と靱性に影響をおよぼす組織安定性との関係を検討してい る。とくにMn・Cr系オーステナイト鋼における低温での機械的性質と組織の安定性との関係 を論じている。極低温では強度が増加する一方,靱性および延性が低下し,これら機械的性質は オーステナイト相の加工誘起変態に強く影響を受けることを示し,強度,伸びおよび衝撃吸収工 ネルギーの最も高い値はオーステナイト相の安定領域と密接に関係する事を明らかにし,極低温 構造材料開発には,オーステナイト相を安定化するための化学成分の適正化が重要であることを 指摘した。

  第3章は,オーステナイト鋼の強化法にっいて述べている。オーステナイト鋼は優れた靱性を 有しているが,強度を付加するために固溶強化,冷間加工強化,時効硬化あるいはこれらの組合 せ加工熱処理法が考えられる。ここではオーステナイト相安定元素である炭素と窒素の侵入型元 素による固溶強化効果を検討し,オーステナイト相の安定化と固溶強化に対し,炭素および窒素 添加は極めて有効に作用することを明らかにした。また強化に及ぼす窒素の効果は炭素のそれよ

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り 約1.6倍程度 高く, さらに 脆化に 関係 する粒 界析出 物の抑 制の 観点か ら炭素 を低減させ,かっ 組 織を安 定させ 極低 温にお ける靱 性並び に強 度を向 上させ るため に窒素 添加 が重要な役割を果た す ことを 解明し た。 一方, 炭素と 窒素の 添カnによ る加 工硬化 と変形挙動にっいても検討し,炭素 と 窒素の 添加は 母地 の固溶 強化に 効果的 であ るが, 加工硬 化係数 の増加 に対 する効果は小さいこ と を示し た。

  第4章 では, 各種 の高強 度オー ステナ イト鋼 の低 温にお ける強度および靱性にっいて検討した。

高 炭 素 , 高 窒素 を 添 加 し た高Mn・Crオ ー ス テ ナイ ト 鋼 の 衝 撃 試験 に お い て 延性― 脆性遷 移挙 動 が確認 され, 低衝 撃吸収 工ネル ギーの 材料 では粒 界破壊 型と粒 内擬癖 開型 の破面からなること を 観 察 し , 粒界 破 壊 型 の 破面 はCr炭化 物の結 晶粒界 析出 により ,また 粒内擬 癖開 型破面 は準安 定 オース テナイ 卜鋼 中に発 生した 加工誘 起マ ルテン サイ卜 に起因 するこ とを 明らかにした。さら に 高強度 オース テナ イト鋼 の極低 温にお ける 靱性改 善を目 的とし て,結 晶粒 界における炭化物等 の 析出を 極力抑 制す ると同 時にオ ーステ ナイ ト相の 組織安 定性を 高めた ,極 低炭素濃度で高濃度 の 窒 素 を 添 加し た18%Mn ‑ 18Cr・N鋼に っい て検討 した結 果,低 温で 擬癖開 粒内破 壊の発 生と 靱 性低下 および 靱性 遷移挙 動を認 め,こ の原 因が変 形組織 と密接 に関係 する ことを指摘,低温靱 性 改 善 に は ,さ ら にNiの 添 加 と 窒素量 の滅少 によっ て積 層欠陥 工ネル ギーを 制御 した組 織にす る こ と が 効 果的 で あ る こ とを 明 ら か に した 。 ま た ,SUS316LN鋼 の 高 い極 低 温靱 性に 着目,Mo 添 加 に よ る 高靱 性 化 , 窒 素の 添 加に よる高 強度化 および 組織 の安定 化と固 溶強化 効果を 有す る Mnの 効 果に っ い て も 検討 し , 工 業用極 低温用 鋼とし て, 極低温 におい て優れ た強 度と靱 性を示 す12%Cr‑12%Ni‑10%Mn・5%Moの成 分から なる 鋼を開 発した 。

  第5章で は極 低温用 構造 材料の 適用と して, 核融合 炉の コイル 構造材 ,超電 導発 電機及 び核磁 気 共鳴診 断装置 機器 の製造 実績に っいて 総合的に検討している。特に,核融合実験炉用コイ´レの ケ ース構 造材料 は極 低温に おいて 強カな 磁場 をサポ ートす るため 極低温 で高 強度と高靱性ならび に 非 磁 性 が 要 求 さ れ る こ と か ら , 開 発 し た12%Cr・12%Ni,10%Mn‑5%Mo鋼 の 大 型 鍛 造鋼 材 を製造 し,そ の内 部性状 を調査 し,冶 金的 均質性 や各種 材料特 性を検 討し た結果,結晶粒度の 極 低温強 度にお よぼ す影響 と大型 化にと もナょう結晶粒微細化や清浄度向上による低温靱性改善な ら び に 製 鋼 の 精 練 技 術 な ど , 大 型 化 に 伴 う 具 体 的 改 善 方 法 を 提 言 し た 。   第6章で は本 論文を 総括 し,将 来にお けるオ ーステ ナイ ト鋼の 極低温 構造材 料と しての 重要性 と 工業分 野への 寄与 にっい て考察 した。

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学位論文審査の要旨

    主査  教授  高橋平 七郎     副査  教授  石井邦 宜     副査  教授  成田敏 夫     副査  教授  山科俊 郎

  本研究 は, 信頼性 の高い 極低温 構造材 料の 開発を 行うと 共に経 済的 な製鋼 ,鍛練,熱処理のよ び溶接 や切削 性など の大 型製品 の製造 技術の 開発 を目的 とし, 極低温 におけ る材料の機械的性質 の挙動 とその メカニ ズム を解析 し,極 低温に おけ る高強 度およ び高靱 性を有 する材料開発を行つ たもの である 。

  先 ず , 極 低温 構 造 材 料 の強 度 と 靱 性 にお よ ぼ す 組 織 安定 性 と の 関 係, とくにMn,Cr系 オ―

ステナ イト鋼 におけ る低 温での 機械的 性質と 組織 の安定 性にっ いて検 討し, 極低温における強度 増加と 靱性低 下など の機 械的性 質はオ ーステ ナイ ト相の 加工誘 起変態 に大き く影響され,強度,

仲びお よび衝 撃吸収 工ネ ルギー の最高 値はオ ース テナイ ト相の 安定化 と密接 に関係し,極低温用 構造材 料開発 にはオ ース テナイ ト相の 安定化 を図 り,そ の安定 化のた め化学 成分の適正化が重要 性であ ること を指摘 した 。

  次に, オー ステナ イト鋼 の強度 向上と して ,オー ステナ イト相 安定 元素で ある炭素と窒素によ る固溶 強化効 果を検 討し ,相安 定化と 強化に 対し 炭素お よび窒 素添加 による 固溶強化が極めて有 効であ るが, 脆化の 原因 となる 粒界炭 化物の 析出 を抑制 するた めには 炭素を 低滅させかつ安定な 組織に 制御す るため には 窒素添 加が最 も重要 な役 割を果 たすこ とを明 らかに した。また,高強度 オース テナイ ト鋼の 低温 におけ る強度 および 靱性 にっい ても検 討し, 高強度 オーステナイト鋼の 極低温 におけ る靱性 改善 に結晶 粒界に おける 炭化 物析出 を抑制 し,オ ーステ ナイト相の安定化を 図っ た 極 低 炭 素か っ 高 窒 素 濃 度の18%Mn・18Cr−N鋼 ,およ び低温 靱性改 善の ためのNi添加と 窒素 濃 度 の 低 減に よ る 積 層 欠 陥工 ネ ル ギ ー の制 御 に 加 え ,さ ら にMo添加 による 高靱化 と同時 にMnに よ り 固溶 強 化 し た ,極 低 温 に お いて 高 強 度 と 高 靱性 並 び に 非 磁性 の特性 を有す る12% Cr−12%Ni―10%Mn−5%Mo綱を 開発し た。

  最後に ,こ の開発 材料を 極低温 で強カ な磁 場をサ ポ―ト する核 融合 実験炉 用コイルのケース構 造材料 として 適用す るた めの大 型鍛造 鋼材の 製造 にっい て検討 し,結 晶粒微 細化や清浄度向上に よる低 温靱性 改善ナ ょら びに製 鋼の精練技術など大型化に伴う製造改善方法を具体的に提言した。

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以上, 本研究 は極低 温にお ける 材料の 機械的 性質に およ ぼす組 織安定 化並びに強靱化に及ばす 合金効 果とそ のメ カニズ ムを明 らかに し極低温用実用材料開発を行ったものである。

これ を要す るに, 著者は金属工学に寄与するところ大なるものがある。

よ って 著者は ,博士 (工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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