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博士(工学)川上 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)川上 学位論文題名

A Study on Genetics‑based Adaptive Problem Solver

(ジェネティックベース適応型問題解決器に関する研究)

学位論文内容の要旨

  

より知的で柔軟な工学システムを構築するために,多くの困難な問題を自律的に解決出来るよ うな仕組みの実現が期待されている.この問題解決は人工知能の分野では以前から主たる研究対 象として扱われてきたが,近年,自然からヒントを得た問題解決の手法が注目を集めている.特 に進化的計算論の範疇に入る遺伝的アルゴリズムは,J.H.Hollandにより提案された遺伝学に基 づく多点探索手法で,これまで解決が困難であった問題に対する有効なアプローチとして知られ ている.遺伝的アルゴリズムの特徴は遺伝子型と呼ばれる内部表現と表現型と呼ばれる外部表現 を分離し,環境との相互作用により進化的に良好な遺伝子型を獲得する点である.したがって,

構造を完全に定式化出来ない複雑な問題や環境が動的に変化するような問題に対しても高い問 題解決能カが期待できる.そこで本論文では,主に組み合わせ最適化問題や未知環境におけるブ ランニング問題等の従来の手法では解決困難な問題を対象に,遺伝的アルゴリズムとそれに基づ いた機械学習の枠組みであるクラシファイアーシステムを適用した適応型問題解決器を構築し,

その問題解決能カの解析とさらに性能を向上させるための拡張機構について行った研究結果を 論述している.

  

本論文は

5

章から構成されており,第

1

章では序論として,本研究の背景・目的,本論文の構 成・概要にっいて述べている.

  

第2章では,本論文の主題であるGenetics‑based Adaptive Solver(くAPS)の定義とその特性 について論述している.そのためにまず,従来の人工知能分野における問題解決への取り組み手 法について言及し,その問題点を指摘することによりくAPSに必要なメカニズムを明らかにし ている.すなわち,GAPSは,組み合わせ最適化問題や未知環境におけるプランニング問題を解 決するために,適応型の探索機構と行動ペースの強化学習機構を有している.さらにこれらの機 構を実現するために遺伝的アルゴリズムとクラシフんイアーシステムをくAPSに適用する手法 について理鑰的に述べることによりくAPSの構造を定式化している.また,ここで適用してい るクラシフんイアーシステムは遺伝的アルゴリズムに基づぃた学習システムで,同様の遺伝子型 内部表現を用いるため,

GAPS

は簡便な内部探索空間を持ち,外環境との相互作用により適応的 に問題を解決できることを示している.

  

3

章では,GAPSに適用した遺伝的アルゴリズムとクラシファイアーシステムにおける問題 点について言及し.その問題点を解消するための拡張メカニズムについて論述している.遺伝的 アルゴリズム及ぴクラニファイアーシステムは問題解決のための強カなツールとして,様々な検 証報告がされているが.

Holla nd

により提案されたものは理論的フレームワークであるため,

対象問題へのインプリメントに際しては種々の問題が生じ,設計者が対象問題ごとにそれらの問 題を試行錯誤的に解決しているのが現状である.このような問題に対して遺伝的アルゴリズムに ついてはぃくっかの理論的拡張が行われているが,クラシファイアーシステムに対してはあまり

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(2)

報告が なされていない.そこで本 研究では特にクラシフんイアーシステムの適用に際して生じる 問 題点 を 克服 する ため に2種類 の拡 張 メカ ニズムにつ いて述べている‐第1に,ク ラシファイア ーシス テムはその柔軟さゆえ,多様 な問題に適用できるが,種 々の学習バラメータが,タス クに 対して 適切に設定されなければなら ない.これらのバラメー夕 設定が学習性能に大きな影響 を与 えるに もかかわらず,経験則や試行 錯誤により設定されている のが現状である.したがって ,よ り広範 なタスククラスにおいて,自 律エージェントをコントロ ールできるように,システム アー キテク チャの一般的構築手法が必要 になる.しかし高性能を有 すみシステムアーキテクチャ は適 用する タスクに強く依存し,かつシ ステム内の多数の要因が相 互に影響を与えあうため,決 定論 的にア ーキテクチャを決定する手法 は提案されていない.そこ で本論文では遺伝的アルゴリ ズム を用い て,クラシファイアーシステ ムのアーキテクチャを進化的に合成する手法を提案している・

さ らに 未 知作 業空 間に おけ る ロボ ット マニ ピュレータ のモーションプランニング 問題を対象と して, 計算機実験を行い,丶その結 果から本提案手法の有効性 を述べている.第2に,クラシファ イ ア― シ ステ ムに おい て学 習 すべ き問 題の ルール空間 が大きい場合にはその全て をクラシファ イアー の集合として保持することは 困難である.その結果,記 述されたルールのみによる学 習が 行われ 最適とはぃえない解が導かれ たり,または解に到達する ことさえ出来ない場合がある ,本 論文で は,この問題を解決するため にルールの表現方法の拡張 手法を提案している.すなわ ち通 常 のク ラ シフ ァイ アー に対 し てフ イル ター の役割を果 たすようなマスキングクラ シファイアー を定義 し,より広いルール空間の記 述を可能にしている.本提 案手法を単純なプロックスタ ッキ ング問 題に適用し,その表現能カを 検証している.

  

4

章 で は , 提 案 し た 拡 張 メ カ ニ ズ ム を 有 す る

GAPS

5

種類 の 問題 に適 用し ,計 算 機実 験 に より 得 られ た結 果か らく

APS

の問 題 解決 能カ を解 析す る こと によ り工学問題へ の適用性につ い て論 述 して いる .第

1

に ,複 雑な 組 み合 わせ最適化 問題としての3次元箱詰め問 題を進化的探 索 アル ゴ リズ ムと ヒュ ーリ ス テイ ック スの ハイプルッ ド手法により効果的に解決 できることを 示 し,

3

次 元箱 詰め ルール ベースの構築可能性について も言及している.さらに対 象問題をマル チエー ジェント環境に拡張し,階層 型適応手法を提案すること により,その問題を解決した 結果 に つい て も述 べて いる .第

2

に ,2次元 の未 知迷路内を 探査しながら出発地点から 目標地点まで の 径路 を 強化 学習 によ ルプ ラ ンニ ング する 自律型ロボ ットナピゲーション問題を 解決するナピ ゲ ータ を くAPSによ り 構築 し, その 学 習性 能を 検証 して い る. 第3に, 幾何 的制 約条 件 を持 つ 順序づ け問題として,プロセスブラ ンニングにおける加工順序 決定タスクを遺伝的アルゴル ズム ベース の探索手法とクラシフんイア ―システムベースの学習手 法により解き,両手法の問題 解決 性能の 差や得られた解の特性につい て論述している.さらに両 手法を統合し,遺伝的アルゴ リズ ム ベー ス の探 索手 法に より 得 られ た解 をク ラシフんイ アーシステムの初期ルール として利用す るアプ ローチを提案し.問題解決能 カをより向上させるシステムの構築法についても述べている・

4

に ,分 散型 計画 問題と して,マルチエージェント環 境におけるロポットタスク プランニング 問題を 分散型強化学習手法により解 決し.協調的プラン獲得に 関する結果を述べている.最 後に ロ ポッ ト マニ ピュ レー タの 軌 道生 成問 題を りアクテイ プブランニング手法により 解くことによ り,未 知作業空間における学習性能 について錨じている.以上 の得られた結果から工学問題 に対 してGAPSが高い問題解決能カを有す ることが示されている.

  

第5章 では,本研究の結諭として 得られた結果を総括している .

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(3)

学位論文審査の要旨

主 査    教 授   嘉 数 侑 昇 副 査    教 授   宮 本 衛 市 副 査    教 授   和 田 充 雄

     学 位 論 文 題 名

A Study on Genetics ― based Adaptive Problem Solver

( ジェネティ ックベー ス適応型 問題解決 器に関す る研究)

  近年,知的で柔 軟な工学システム を構築するために ,大規模問題や複雑 な問題を解決でき るような仕組の実 現 を 目的とした研究 が盛んに行われて いる.しかしなが ら,その多くは人工 知能的枠組みに基 づぃたアプローチ で あ り ,問 題自 体 の構 造を 完 全に 定式 化 でき ない複雑 な問題や,環境が動 的に変化するよう な問題などがボト ル ネ ッ クと なり , 有効 な方 法 論の 構築 が 妨げ られてき た.目的とするシス テム構築のために は,対象問題への 適 応 ,学習などの自 律性が必須となる が,自律性を有す る工学システムの実 現は未開拓の分野 であり,今後の発 展 が待たれている状況にある.

  本論文はそのよ うな問題に対して ,進化的計算論の 枠組みを基本概念と することにより, 新しい問題解決機 構 を 提案したもので ある,提案された 機構は,遺伝アル ゴリズムとクラシフ ァイアーシステム を統合した適応型 問 題 解決機構となってお り,GAPS(Genetics‑based Adaptive Problem Solver)と 呼ばれる.遺伝アルゴリズムはJ H.Hollandに より提案された遺 伝学に基づく多点探 索手法であり,そ の解探索性能の高 さは広く認識されてきてい る .クラシファイ アーシステムは遺 伝アルゴリズムに 基づぃた機械学習の 枠組みであり,対 象問題ヘシステム を 適 応 させ るの た めの 強カ な ツー ルと な る. 論文では これら2つ の手法を統合する ことによって構築さ れたG APS が 有 する 問題 解 決能 カの 評 価検 討, お よぴGAPSに内 在する問題点を克服 するための拡張的 方法論の提案がな さ れており,その主要な成果は,次の点に要約される.

1 GAPSにお け る望 まし い シス テム ア ーキ テクチャ の設計に関して,ク ラシファイヤーシ ステムのアーキテ ク チ ャを遺伝的アル ゴリズムを用いて 進化的に合成する 手法を提案し,ロボ ットモーションプ ランニング問題な ど を対象とした計算機実験の結果から提案手法の有効性が検証されていること,

2. GAPSの 基本 的ア ー キテ クチ ャ とし て, 組 み合 わせ 最 適化 問題 や未知 環境におけるプラ ンニング問題を解 決 す る ため に, 適 応型 の探 索 機構 と行 動 ベー スの強化 学習機構を有するこ とが,数理論的に 示されていること . 3. GAPSの 汎用 性の 問 題に おい て ,特 にク ラ シファイヤーシス テムの適用に際し て生じるtjq題点,すなわち , システムバラメー夕(内部l珂題空HlJ)の設定ljq題と,学習対象となるR‖題のルール空t・|qの拡張川題に対して,そ の 問 題の 様栩 を 論理 的に 記 述し た後 , これ らを克服 するために必要とな るGAPSの拡張メカ ニズムが提案され て いること.

4.システム巾に表現される内PiBI{11題空Iiuの;tみ合わせ珊ijcin‖題に対して,マスキングクラシーノァイヤーと呼ぷ 拡張的表現手法を提案し,プロックスタッキングタスクに適応した災験耕果から災川lj!J題に対する適応ti:ilol...が 検 証 さ れ る こ と に よ り , マ ス キ ン グ ク ラ シ フ ァ イ ヤ ー の 持 つ 適 応 能 カ が 確 か め ら れ て い る こ と . 5. 拡張 さ れたGAPSの 工学 州題 に 対す る適 心 性お よぴ イrJH性 につ いて,複雑な 組み合わせ問題,特 に3次元 締 詰 め|!iJ題に対して ,遊化的探索アルゴリズムとヒューリステイックのハイブリッド于法の効栄が確かめられ,問 題に応じて再檮築されるルールベースの学習過程の ,bjが明らかにされていること.

6.f駐 型 ロポ ット ナ ピゲーション 問題,幾何的制約 条件付き順序づけ剛 題,ロボットマニ ピュレーダの軌道 生 成 川題に対して,未知1作巣空IiIJにおけるGAPSの 学習竹:能を評価災験により実証的に示し,提案された方法論の 高いIlJ題解決能カと学習の有効性が確かめられていること.

7. 分散 型 計画 問題 の ーつであるマ ルチエージェント 環境におけるロポッ トタスクプランニ ンググ|瑚題に対 し て ,マスキングクラシ フんイヤーの適応 能カに怒づぃた協 調的プラン獲f讐特性を明ら かにすると共に,問題解決 に お けるG APSの協 調 的プ ラン ニ ング が, 結 果と して 柔 軟な 問題 解決能 カを有することが 確かめられている こ と.

  こ れを 要す る に, 著者 は ,進 化的 計 算理 論に基づ ぃてジェンネテイッ クベース適応型問 題解決器GAPSを提 案

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し,種 々の応 用問 題を通 して学 習及び 適応機能の有効性を十分に検討することによって,特に未知環境における 自律的 問題解 決に 対して 多くの 新知見 を得ており,情報工学,知識工学の進歩に寄与するところ大である.よっ て 著 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る .

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