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博 士 ( 工 学 ) 倉 岡 義 孝

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 倉 岡 義 孝

学 位 論 文 題 名

ス ピ ン 分 析 器 の 応 用 に 関 す る 基 礎 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  馨 気記録の高密度化は過去10年で100倍の速度で進んでお り、2000年に20Gbit/inch を達成す るた めの新しい磁性材料、磁気 記録ヘッドの開発、これらを 組み合わせるシステム技術、記録再 生信 号処理技術等の研究が進め られている。微小領域への記 録には磁性薄膜の磁区構造制御およ びこ れら磁気記録状態の評価の 基礎研究、これを基にして磁 性体記録媒体開発、記録再生ヘッド 用材 料・デバイスの開発が重要 である。微小磁区構造観察と してはこれまでに磁気カ顕微鏡、ビ ッタ ー法、走査型カー効果顕微 鏡などが多く利用されてきた が、磁化の向きについての定量性や 空間 分解能などの問題点を抱えており、20Gbi t/inch゜を超える記録密度開発のための評価技術と して は十分ではない。磁性体表 面近傍電子状態のスピン偏極 度を検出し、直接磁区構造を評価す る手 法が必要である。

  表面電子状態のスピン 偏極度を測定する方法として は、X線、紫外線、放射光照 射による光電 子 や電子線照射によるオ ージェ電子.2次電子のスピ ン偏極度分析、スピン偏極イ オン散乱、走 査 型 トン ネル 顕微 鏡(Scanning Tunneling Microscope;STM)を用いたスピン偏極 トンネル効果 の測 定がある。このようなスピ ン分解能を持つ表面分析手法 には、高性能、高安定な電子線スピ ン分 析器が必要不可欠である。 スピン偏極走査型トンネル顕微鏡(Spin Polarized STM;SP−STM) や オ ージ 工電 子.2次 電子 線スピン分析装置を組み合 わせた走査型電子顕微鏡(Scanning Elect ron Microscope;SEM)は 高い空間分解能が期待され 、特に2次電子線分析を行う スピンSEMは、

そ の 広 範 な 応 用 性 に お い て 磁 気 記 録 工 学 分 野 を 始 め 磁 性 研 究 領 域 で 注 目 さ れ て い る 。   スピンSEMはすでにいく っかの研究室において研究 が進められており、高電圧Mott分析器や緩 慢散 乱型分析装置、低速電子線 回折による分析装置が利用さ れている。それぞれ優れた点を有す るが 、汎用的に利用される分析 装置としては構造やシステム が複雑であったり、取り扱いがその 専門 領域の研究者以外には難し いとぃう欠点がある。本研究 では、そうした問題点を解決するた めの 小型で低加速、中加速領域 での動作が可能な阻止電極型Mott分析器を新たに開発し、スピン SEMへの応用を試みた。こ のMott分析器の基本性能はGaAsを用いたスピン偏極光電 子により評価 した 。この際、GaAsスピン偏極 光電子源の安定化についての 研究を行い、光電子源作製のための 最 適条件を見いだした。 さらに超高真空走査型電子顕 微鏡とMott分析器を組み合 わせたスピンS EMシステムを試作し、ス ピンSEMへの応用の可能性を 示すとともに、いくっかの磁 性体表面の観 察 を 行 い ス ピ ン 偏 極 測 定 技 術 を 確 立 す る た め の 指 針 に つ い て 検 討 を 行 な っ た 。   本 論文は以下の構成でその詳 細を論述している。

第1章では本論文の背景と目的、 概要を述べてる。

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  第2章では電子線のスピン分析原理であるMott散乱理論の概要について述ベ、Mott分析器を作 製 す る 際 に 重 要 な パ ラ メ ー タ で あ る Sherman関 数 に つ い て 述 べ て い る 。   第3章では高速散乱Mott分析器と低速散乱Mott分析器のそれぞれの優位性および問題点を明 確にすることで低加速、中加速散乱小型Mott分析器を設計する基本方針を明らかにする。そして この基本方針に従った小型Mott分析器の設計について述べている。また設計した分析器の基本性 能を評価するために静電レンズで構成した電子輸送系を設計した。これらの設計には電子軌道シ ミュレータを用いた。この小型Mott分析器は非弾性散乱の少ない領域(60kV)から測定中の放電の 少ない領域(20kV)で動作可能な電極構造を設計し、SP―STMの開発に必要とされている磁性体探針 からの電界放射電子スピン分析測定ができる新しい電極構造を提案した。また、簡易型電子線分 析システムを構築するため静電レンズ系を設計・製作し、熱電子源を用いた電子の輸送と検出試 験により設計値の妥当性を確認した。

  第4章では第3章で提案したMott分析器のスピン検出性能を確認するために、GaAsからの光電 子のスピン分析を行った。負の電子親和力(NEA)を持っように表面処理をしたp型GaAsの光励起電 子線は良いスピン偏極電子源として知られているが、寿命の長い光電面を得るためには適切な表 面処理が必要である。本章ではそのための処理方法を検討した。また、その結果得られた光電面 を用いてスピン偏極度測定を試みた。光電子のスピン偏極度はGaAsに照射した赤外レーザの円偏 光度により変化する。円偏光度を変化させたときMott分析器で散乱非対称性の変化を測定し、計 算により求めた実効She rman関数を適応したところ、円偏光照射時にスピン偏極度土24%が得られ た。

  第5章では小型Mott分析器を用いたスビンSEMシステムの設計と試作を行った。スピンSEMシス テムは、分解能20nmでユ画像を10分以内に取得することを目的として、小型Mott分析器の検出効 率の改良、1次電子源、2次電子コレクタについてそれぞれシミュレーションによる設計を行つ た。小型Mott分析器については画像取得時間の改善を図るため、電極構造に散乱電子検出立体角 を広げる改良を加え、性能指数は2x10・5まで向上した。電子源については高輝度の1次電子線を 得るために磁界型対物レンズの電子銃を採用したが、電子銃からの漏洩磁場が試料の磁化状態を 乱さないように、ポールピース下部に磁気シールドを設置することを提案し、磁気シールド構造 の最適化を行った。磁気シールドを設置することにより電子銃動作時に試料位置での漏洩磁場は 約O. 2Gaussとなり、およそ1/10に低減できることを実験により確認した。2次電子コレクタの設 計については収集効率を考慮し、電極への衝突によるスピン偏極度の低下を防ぐ形状を電子軌道 計算により考案した。以上の改良した小型Mott分析器、1次電子銃、2次電子コレクタを超高真 空磁気シールドチャンバ内に組み込みスピンSEMを構成した。さらに検出電子系、画像処理系に ついての詳細についても述べている。

  第6章では試作したスピンSEMを用いた磁性体観察結果について述べ、スピン偏極測定技術を 確立するための指針について明らかにした。鉄単結晶(001)表面を観察したところ、鉄の典型的 な磁区構造が得られ、最大スピン偏極度士14%を得た。また、フォトリソグラフで作製した微小 80Ni―Fe薄膜パターンの磁区構造およびCoCrTaPt薄膜上に記録された記録ビットの磁区構造の観 察を行った。

  第7章では本論文の成果を総括する。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    武笠幸一 副査    教授    池田正幸 副査    教授   岡田亜紀良 副査    助教授   末岡和久

学 位 論 文 題 名

スピン分析器の応用に関する基礎研究

  磁気記録の高密度化は過 去10年で100倍の速度で進んでおり、2000年に20Gbi t/inch を達成す る目標がたてられている。 微小領域への記録には磁性 薄膜の磁区構造制御およびこれら磁気記録 状態の評価の基礎研究、こ れを基にして磁性体記録媒 体開発、記録再生ヘッド用材料・デバイス の開発が重要である。20Gbit/inch を超える記録密度開発のための評価技術としては、磁性体表 面 近 傍 の 電 子 状 態 の ス ピ ン 偏 極度 を 検出 し、 直接 磁区 構 造を 評価 する 手 法が 必要 であ る。

  スピン分解能を持つ表面 分析手法には、高性能、高 安定な電子線スピン分析器が必要不可欠で ある。スピン偏極走査型ト ンネル顕微鏡(Spin Polarized STM;SP−STM)やオージェ電子.2次電 子線 スピ ン分 析 装置 を組 み合 わせ た 走査 型電 子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM) は高 い空 間分 解 能が 期待され、 特に2次電子線分析を行うス ピンSEMは、その広範な応用 性にお いて磁気記録工学分野を始 め磁性研究領域で注目され ている。

  本研究では、小型で低加 速、中加速領域での動作が 可能な阻止電極型Mott分析器を新たに開発 し、スピンSEMへの応用を 試みた。このMott分析器の基 本性能はGaAsを用いたスピ ン偏極光電子 により評価した。この際、GaAsスビン偏極光電子源の 安定化についての研究を行い、光電子源作 製のための最適条件を見い だした。さらに超高真空走 査型電子顕微鏡とMott分析器を組み合わせ たスピンSEMシステムを試 作し、スピンSEMへの応用の 可能性を示すとともに、いくっかの磁性体 表 面 の 観 察 を 行 い ス ピ ン 偏 極 測 定 技 術 を 確 立 す る た め の 指 針 に つ い て 検 討 を 行 なっ た。

本論文の 要旨は以下の通りである。

1.高速 散乱Mott分析器と低速散乱Mott分析器のそれぞれの優位 性および問題点を明確にするこ   とで低加速、 中加速散乱小型Mott分析器を 設計する基本方針を明らか にし、この基本方針に

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    従った小型Mott分析器の設計した。設計した分析器の基本性能を評価するために静電レンズ     で構成した電子輸送系を設計した。この小型Mott分析器は非弾性散乱の少ない領域(60kV)か     ら測定中の放電の少ない領域(20kV)で動作可能な電極構造を設計し、スピン偏極走査型トン     ネル顕微鏡(SPーSTM)の開発に必要とされている磁性体探針からの電界放射電子スピン分析     測定ができる新しい電極構造を提案した。また、簡易型電子線分析システムを構築するため     静電レンズ系を設計・製作し、熱電子源を用いた電子の輸送と検出試験により設計値の妥当     性を確認した。

2. Mott分析器のスピン検出性能を確認するために、GaAsからの光電子のスピン分析を行った。

    寿命の長い光電面を得るためには適切な表面処理が必要で、処理方法の検討を行った。その     結果得られた光電面を用いてスピン偏極度測定を試み、円偏光度を変化させたときMott分析     器で散乱非対称性の変化を測定し、計算により求めた実効Sherman関数との対応により円偏     光照射時にスピン偏極度+24%が得られた。

3.小型Mott分析器を用いたスピンSEMシステムの設計と試作を行った。スピンSEMシステムは、

  分解能20nmで1画像を10分以内に取得することを目的として、小型Mott分析器の検出効率の     改良、1次電子源、2次電子コレクタについてそれぞれシミュレーションによる設計を行っ   た。小型Mott分析器については画像取得時間の改善を図るため、電極構造に散乱電子検出立   体角を広げる改良を加え、性能指数は2x10‑゜まで向上した。電子源については高輝度の1次     電子線を得るために磁界型対物レンズの電子銃を採用したが、漏洩磁場を除くために磁気シ     ールドを設置することを提案し、磁気シールド構造の最適化を行った。2次電子コレクタの   設計については収集効率を考慮し、電極への衝突によるスピン偏極度の低下を防ぐ形状を電   子軌道計算結果に基づぃて考案した。以上改良した小型Mott分析器、1次電子銃、2次電子     コレ ク タ を超 高 真 空磁 気 シ ール ドチャ ンバ内に 組み込 みスピンSEMを構 成した 。 4.試作したスピンSEMを用いた磁性体観察結果について述べ、スピン偏極測定技術を確立する     ための指針について明らかにし、鉄単結晶(001)表面を観察したところ、鉄の典型的な磁区   構造が得られ、最大スピン偏極度士1406を得た。80Ni―Fe薄膜パターンの磁区構造およびCoCrT   aPt薄膜上に記録された記録ビットの磁区構造の観察を行った。

  本論文は小型で低加速、中加速領域動作の阻止電極型Mott分析器を開発しスピンSEMへの 応用をはかり、有益な多くの新知見を得ており、磁気工学、磁気記録工学分野に貢献するところ 大なものがある。よって著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認め る。

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