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博 士 ( 農 学 ) 加 藤 喜 明

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 加 藤 喜 明

学 位 論 文 題 名

セ イ ヨ ウハ コ ヤ ナ ギの ベ ル オ キシ ダ ー ゼ と 細胞 壁構造 夕ンノ ヾク質 の発現に関する研究

学 位 論 文内 容 の 要 旨

  セイ ヨウ ハコ ヤナ ギの懸 濁培 養細 胞よ り細 胞壁 酵素 と考 えら れて いる 酸性 ベルオ キ シ ダ ー ゼ (PCY2‑6) を コ ー ド す るcDNAク 口 一 ン と 細 胞 壁 構 造夕 ン パ ク 質 と 考 え ら れ て い る プ 口 リ ン リ ッ チ タ ン パク 質 (PCY3‑15) を コ ー ド するcDNAク ロ ー ン を 単 離 し た 。 本 研 究 に お い て は 、 機 能 が 未 だ に 不 明 で あ るPCY2‑6とPCY3‑15の mRNAお よ び タ ン パ ク 質 の 植 物 体 に お け る 発 現 と 局 在 を 解 析 し た 。 1)PCY2‑6とPCY3‑15の 遺 伝 子 フ ァ ミ リ ーの 単 離

  懸 濁 培 養 細 胞 か らPCY2―6と 相 同 性 が あ る ク ロ ー ン と し て4‑14とO‑15を 単 離 し た 。 シ ー ク エ ン シ ン グ の 結 果 、4‑14とO‑15は 同 一 の ク 口 ー ン であ った ため 、これ ら の ク ロ ー ン 名 をPCY4‑14と 命 名 し た 。 こ のcDNAは ポ リ(A)鎖 を含 む875 bpで あ っ た 。PCY4‑14は220ア ミ ノ 酸 残 基 を コ ー ド す る が 、 全 長 を コ ード せ ず 、 開 始 コ ド ン を 含 む5 末 端 側 が 欠 け て い た 。pIは9.47で あ っ た 。PCY4‑14の推 定ア ミノ酸 配 列 は 、 ベ ル オ キ シ ダ ー ゼ に おい て保 存性 のあ る近位 のヒ スチ ジン と8つの システ イ ン 中5つ のシ ス テ イ ン を 持 っ て い た 。PCY4‑14は 塩 基 性 ベ ル オキ シダ ーゼ をコー ド す る と 推 定 さ れ た 。

  PCY4‑14は 全 長 を コ ー ド し て い な か っ た た め 、 以 降 の 解 析 はPCY2―6とPCY3‑15 に 関 し て 行 っ た 。

2) PCY2‑6 mRNAと PCY3‑15 mRNAの 葉 お よ び 枝 条 に お け る 発 現   PCY2‑6とPCY3‑15は 共 に 細 胞 壁 夕 ン パ ク 質 を コ ー ド す る た め に、 こ れ ら のmRNA の 発現 を細 胞壁 の発 達が異 なる セイ ヨウ ハコ ヤナ ギの 葉の 未成 葉( 茎頂 から 第一葉 と 第 二 葉 ) と 成 葉 ( 茎 頂 下10 cm以 上の 葉) 、当 年生 枝条 の一 次木 部形 成部 (茎頂 か ら1 cmま で の 部 分 ) と 二 次 木 部 形 成 部 ( 茎 頂 下5〜15 cmの 部分 ) を 用 い て ノ ー ザ ン 解 析 し た 。 そ の 結 果 、PCY2‑6 mRNAの 発 現 は セ イ ヨ ウ ハ コヤ ナ ギ の 葉 と 枝 条 の 全 て の 部 位 で 検 出 さ れ た 。 一 方 、PCY3‑15 mRNAの 発 現 は 当年 生 枝 条 の 二 次 木 部 形 成 部 で の み 検 出 さ れ た 。

  ヤ マ ナ ラ シ 属 の ヤ マ ナ ラ シ 、 ド ロ ノ キ 、 ギ ン ド ロ に お け るPCY2‑6とPCY3‑15 mRNAの 発 現 つ い て も 、 当 年 生 枝 条 の 二 次木 部 形 成 部 を 用 い て ノー ザン 解析 した。

そ の 結 果 、 両mRNAの 発 現 が こ れ ら 三 種 の 樹 木 に お い て も 検 出 さ れ た 。   枝 条 に お い てPCY2‑6お よ びPCY3‑15 mRNAが 共 に 発 現 し て い た た め 、 以 降 の 解 析 は 枝 条 を 用 い て 行 っ た 。

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3 )PCY2‑6 mRNA とPCY3‑15 mRNA の枝条における局在

  in situ ハイプリダイゼーションによルセイヨウハコヤナギの当年生枝条の一次木 部形 成 部 と 二 次 木 部 形 成 部 に おけ る PCY2‑6 mRNA と PCY3‑15 mRNA の局 在を 検 討した 。一 次木部および二次木部形成部でPCY2‑6 mRNA の局在は樹皮の篩部と皮 層で検 出さ れ、 木部 では検 出さ れな かった 。このうち、篩部では形成層付近で 発現し、皮層では一次木部形成部で全体的に発現レ、二次木部形成部では表皮付近 で発現 して いた。一方、PCY3 ー 15 mRNA の局在は一次木部および二次木部形成部 で樹皮の篩部と皮層で検出され、木部では検出されなかった。このうち、篩部では 形成層付近で発現し、皮層では一次木部形成部で全体的に発現し、二次木部形成部 では表皮付近で発現していた。

4 ) PCY2‑6 夕 ン パ ク 質 お よ び PCY3‑15 夕 ン パ ク 質 と 抗 体 の 調 製    大 腸 菌 発 現 系 の pGEX system で PCY2‑6 夕 ンパ ク質と PCY3‑15 夕ン パク 質の 調 製し、ウサギを用いた抗体の作製に成功した。

5 ) PCY2‑6 夕 ン パ ク 質 と PCY3‑15 夕 ン パ ク 質 の 枝 条 に お け る 発 現   PCY2‑6 mRNA お よ び PCY3‑15 mRNA が と も に 発 現 し た 当 年 生枝 条 の二 次木 部 形成部 から 全夕 ンパ ク質と 順次 20 mM Tris 、 4mM Na2S205 `0.4MCaCl2 の各抽出 画分を 調製 し、ウェスタンプ口ッテイングを行った。PCY2 −6 夕ンパク質は0.4M CaCI ユ抽出画分を除く各抽出画分で発現を検出した。また、糖鎖由来と思われる複 数のア イソ フォ ーム が存在 した 。一 方、PCY3‑15 夕ンパク質は4mM Na2S20S 抽出 画分を 除く 全ての抽出各画分で発現を検出した。高塩濃度溶液の0.4MCaCIz の抽 出画分 でPCY3‑15 夕ンパク質の発現を検出したため、このタンパク質は細胞壁か ら遊離したと考えられる。

6 ) PCY2‑6 夕 ン パ ク 質 と PCY3‑15 夕 ン パ ク 質 の 枝 条 に お け る 局 在    免疫組織化学によルセイヨウハコヤナギの当年生枝条の一次木部形成部と二次木 部形成 部に おけるPCY2‑6 夕ンパク質とPCY3‑15 夕ンパク質の局在を検出した。一 次木部形成部においてPCY2‑6 夕ンパク質は、 樹皮では篩部の形成層付近と表皮で 局在し、皮層で局在していなかった。木部では木化に先行して道管で局在し、木化 が進行後も局在していた。二次木部形成部においてPCY2‑6 夕ンパク質は、樹皮で は篩部の篩部繊維と表皮で局在し、皮層では局在していなかった。木部では木化に 先行して道管、繊維、放射組織で局在し、木化が進行しても局在していた。ー方、

一次木 部形 成部においてPCY3‑15 夕ンパク質は、樹皮では篩部の形成層付近の篩 管で局在し、皮層と表皮では局在しなかった。木部では木化に先行して道管で局在 し、木 化が 進行すると局在は弱くなった。二次木部形成部においてPCY3‑15 夕ン パク質は、樹皮では形成層付近で局在し、皮層や表皮では局在していなかった。木 部 で は 形 成 層 付 近 で 局 在 し 、 木 化 が 進 行 す る と 局 在 は 弱 く な っ た 。    以上の結果から、 PCY2‑6 酸性ベルオキシダーゼは枝条の組織発達に伴い、 mRNA が篩部の形成層付近で発現し、夕ンパク質として木化に関連して木部、篩部の篩部 繊維に局在すると考えられる。よって、PCY2‑6 酸性ベルオキシダーゼは木部や箭 部においてりグニンの生合成やェクステンシンの重合に関わる可能性が示唆された。

一方、 PCY3‑15 プロ リン リッ チタン パク 質は 枝条 の組織 発達 に伴 い、mRNA が 篩 部の形成層付近で発現し、夕ンパク質として形成層付近の木部や篩部に局在すると

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(3)

考えられる。よって、PCY3 ー15 プロリンリッチタンパク質はべクチン結合性モチー フを持つために、木化に先行して木部や篩部でべクチンと結合する可能性を示唆し た。これらの成果は樹木において新たな知見であり、今後樹木の細胞壁形成機構を 解析する上で重要な基礎的知見となる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

セイヨウハコヤナギのベルオキシダーゼと 細胞壁構造夕ンパク質の発現に関する研究

  本 論 文 は 、8章 で 構 成 さ れ 、 図29、 総 頁 数120の 和 文 論 文 で 、 他 に 参 考 論 文3編 が 添 え ら れ て い る 。

  セ イ ヨ ウ ハ コ ヤ ナ ギ の 懸 濁 培 養 細 胞 よ り 細 胞 壁 酵 素 と 考 え ら れ て い る 酸 性 ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ ( PCY2‑6) と 細 胞 壁 構 造 夕 ン バ ク 質 と 考 え ら れ て い る プ 口 リ ン リ ッ チ タ ン ノ 、 ク 質 (PCY3‑15) を コ ー ド す るcDNAク 口 ー ン を 単 離 し 、 こ れ ら の mRNAお よ び タ ン パ ク 質 の 植 物 体 に お け る 発 現 と 局 在 を 解 析 し た 。 1)PCY2‑6とPC′Y3‑ヱ5の 遺 伝 子 フ ァ ミ リ ー の 単 離

  懸 濁 培 養 細 胞 か らPCY2‑6と 相 同 性 が あ 、 る ク 口 ー ン と し てPCY4‑14を 単 離 し た 。 こ のcDNAは ポ リ (A)鎖 を 含 む 875 bpで あ っ た 。PCY4ー14は220ア ミ ノ 酸 残 基 を コ ー ド し て い た が 、 全 長 を コ ー ド し て は い な か っ た 。pIは9.47で あ っ た 。 PCY4‑14は 塩 基 性 ベ ル オ キ シ ダ ー ゼ を コ ー ド す る と 推 定 さ れ た 。   PCY4‑14は 全 長 を コ ー ド し て い な か っ た た め 、 以 降 の 解 析 はPCY2‑6と PCY3‑15に 関 し て 行 っ た 。

2) PCY2‑6 mRNAと PCY3‑15 mRNAの 葉 お よ び 枝 条 に お け る 発 現   PCY2‑6 mRNAと PCY3‑15 mRNAの 発 現 を 細 胞 壁 の 発 達 が 異 な る セ イ ヨ ウ ハ コ ヤ ナ ギ の 未 成 葉 ( 茎 頂 か ら 第一 葉 と 第 二 葉 ) と 成 葉 ( 茎 頂 下10 cm以 上 の 葉 ) 、 当 年 生 枝 条 の 一 次 木 部 形 成 部 ( 茎 頂 か ら1 cmま で の 部 分 ) と 二 次 木 部 形 成 部

( 茎 頂 下 5〜 15 cmの 部 分 ) を 用 い て ノ ー ザ ン 解 析 し た 。 そ の 結 果 、PCY2‑6 mRNAの 発 現 | ま セ イ ヨ ウ ハ コ ヤ ナ ギ の 葉 と 枝 条 の 全 て の 部 位 で 検 出 さ れ 、     ―1057―

實 清

   

   

澤 浦

寺 三

授 授

   

   

教 教

査 査

主 副

(5)

  PCY3‑15 mRNA の 発現は 当年 生枝条 の二 次木部 形成 部での み検 出され た。

3 )PCY2‑6 mRNA と PCY3‑15 mRNA の枝条における局在

  in situ ハイブリダイゼーションによルセイヨウハコヤナギの当年生枝条の一 次 木 部 形 成 部 と 二 次 木 部 形 成 部 に お け る PCY2‑6 mRNA と PCY3‑15 mRNA の 局在 を検 討した 。一 次木部 およ び二次 木部形成部で PCY2 ― 6mRNA の局在は樹 皮の篩部と皮層で検出され、木部では検出されなかった。一方、PCY3‑15 mRNA の局在もまた一次木部および二次木部形成部で樹皮の篩部と皮層で検出され、

木部では検出されなかった。

4 )PCY2‑6 および PCY3‑15 夕ンパク質と抗体の調製

   大 腸 菌 発現 系 の pGEX system で PCY2‑6 と PCY3‑15 夕 ン バ ク 質 の 調 製し 、 ウサギを用いた抗体の作製に成功した。

5 ) PCY2 − 6mRNA と PCY3 − 15 夕 ン ノ ヾ ク 質 の 枝 条 に お け る 発 現   PCY2‑6 mRNA お よ び PCY3‑15 mRNA がと もに発 現し た当年 生枝 条の二 次木 部 形成 部から 全夕 ンバク 質と 順次 20 mM Tris 、 4mM Na2S205 ` 0.4MCaCI2 の 各抽 出画 分を調製し、ウエスタンブ口ッティングを行った。 PCY2‑6 夕ンバク 質は 0.4MCaCI2 抽出画分を除く各抽出画分で発現を検出した。一方、PCY3 − 15 夕ン パク 質は 4 mM Na2S205 抽出画分を除く全ての抽出各画分で発現を検出し た。

6 ) PCY2‑6 夕 ン バ ク 質 と PCY3‑15 夕 ン パ ク 質 の 枝 条 に お け る 局 在    免疫組織化学によルセイヨウハコヤナギの当年生枝条の一次木部形成部と二 次 木 部 形 成部 PCY2‑6 夕 ン パ ク 質と PCY3‑15 夕ン バク 質の局 在を 検出し た。

PCY2‑6 夕 ンバク質は一次木部および二次木部形成部において、樹皮の篩部繊 維と木部の道管や繊維で木化に先行して局在し、木化後も局在していた。一方、

PCY3‑15 夕 ンバ ク質は 一次 木部お よび 二次木部形成部において、樹皮の篩部 や木部の道管などで木化に先行して局在し、木化が進行すると徐々に局在が弱 くなった。

以上 の結 果から、 PCY2‑6 酸性ベルオキシダーゼはェクステンシンの重合やり

グニンの生合成に関わる可能性が示唆された。一方、 PCY3‑15 プ口リンリッチ

タンノヾク質はべクチン結合性モチーフを持っために、ベクチンと結合する可能

性を示唆した。これらの成果は樹木において細胞壁形成機構を解析する上で基

(6)

礎的知見となる。よって審査員一同は、加藤喜明が博士(農学)の学位を受け

るに十分な資格を有するものと認めた。

参照

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