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博士(農学)藤本征司 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)藤本征司 学位論文題名

北海道の高木類の生育・更新様式に関する      比較形態・生態学的研究

学位論文内容の要旨

  北海 道の高 木類の 生育・ 更新様 式に 関する 包括的 認識枠 組み の構築 などを 目的として,北海道 の高木 類の破 陰に 対する 対応や パ夕一 ンや ,有珠 山噴火 後の植 生回復 を事 例とした撹乱に対する 対応パ ターン の解 析,ま たこの ような対応パターンを規制していると考えられる樹形形成′くター ン ( 体 制 的 特 性 ) の 分 枝 レ ベ ル や 枝 条 形 成 レ ベ ル で の 解 析 な ど を 行 な っ た 。   まず ,分岐 比や主 軸に対 する枝 の相 対分岐 速度の 解析よ り, 突出型 樹種( 突出型樹形を形成す る高木 類)で は, 被陰の 有無に 関わら ず, 頂部支 配が顕 著な状 態に保 たれ るが,沿下型樹種(沿 下型樹 形を形 成す る高木 類)で は少な くと も被陰 下で頂 部支配 の度合 いを 著しく低下させること がわか った。 これ らの性 質が突 出型・ 沿下 型樹種 それぞ れの体 制的特 性の 重要な一側面と考えら れる。 また末 端枝 の年伸 長量の 頻度分 布の 解析よ り,突 出型樹 種は, よく 伸長する末端枝と殆ど または 全く伸 長し ない末 端枝を 分枝し ,沿 下型樹 種は比 較的よ く伸長 する 末端枝を分枝すること で,そ れぞれ の体 制的特 性を維 持して いる ことが 明らか となっ た。こ れに 関連して,明瞭な長・

短枝分 枝は突 出型 樹種に 固有の 分枝パ 夕― ンであ ること がわか ヮた。

  さら に,突 出型・ 沿下型 樹種の 被陰下での樹体形成′くターンに,それぞれの体制的特性と密接 に関わ った特 徴が 数多く 認めら れた。 その ため, 突出型 ・沿下 型樹種 の体 制的特性は,それぞれ の 個体 レ ペ ル で の被 陰 対 応パ 夕―ン の基本 を規 定して いると 結論し た。ま た生 産構造 の発達 パ ターン などの 解析 より, 突出型 樹種は 被陰 下では 生産構 造の発 達を極 度に 抑制させるが,彼陰開 放下で は生産 構造 を垂直 方向に 効率的 に拡 大させ るとい った, 被陰下 でも 被陰開放下でも物質経 済的に 有利と 考え られる 対応パ 夕―ン を示 すこと がわか った。 そのた め, 突出型樹種は体制本来 の性質 として は, 潜在的 に陰樹 (スト レス 耐性) ・後発 樹種的 対応と 陽樹 的・先駆樹種的対応を ともに 示すと 判断 した。 このよ うな対応は,ともに被陰下では上層木化し得なぃ対応である点で,

被陰を 個体レ ベル で回避 し得な い非競 合的 な対応 といえ る。そ れに対 し沿 下型樹種では,突出型 樹種の ような 対応 はそれ ほど顕 著には 示さ ず,被 陰下で も一定 の成長 を持 続させる特性が認めら

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れた。 そのた め沿 下型樹 種は, 体制的 に後 発樹種 的対応 も先駆 樹種的 対応 もそれ ほど顕著には示 さ な い が , あ る 程 度 ま で 個 体 レ ベ ル で 被 陰 を 回 避 し 得 る 競 合 的 性 質 を 持 っ と 判 断し た 。   有 珠 山 噴 火後の 植生回 復に 関して は,ま ず沿下 型樹種 の方 が突出 型樹種 よりも 噴火3年後 まで の「物 理的強 度で みた中 規模撹 乱域」 (火 山降下 物の堆 積量が20〜80c:mの地域)における個体の 残存率 がはる かに 高いこ とがわ かった 。ま た,噴 火に伴 う撹乱 に対す る個 体維持 は,沿下型樹種 に特徴 的な不 定枝 形成に よるも のであ った 。個体 の回復 過程も ,樹体 頂部 から形 成された不定枝 が枯損 し,樹 高成 長が著 しく抑 制され ても 樹冠幅 などを 拡大さ せると いっ た沿下 型樹種の特性と 密接に 関連し た対 応に基 づくも のであ り, またこ のよう な対応 は,火 山降 下物の 堆積に対して順 応 的な 対 応 と考 えられ た。さ らに, 不定 枝を多 数形成 してい た沿 下型樹 種の噴 火8年後ま での残 存率は かなり 高か った。 これら の事実 より ,体制 的に沿 下型樹 種の方 が個 体レベ ルでの噴火に伴 う攪乱 に対す る抵 抗カが 高いと 判断し た。

  個体 群レベ ルでの 対応パ ターン に関 しては ,まず 突出型 広葉 樹は個 体レベ ルでの 抵抗カが低い ため, 中規模 撹乱 域から 個体教 を大幅 に減 少させ ていた うえに ,その 噴火 以後の 侵入・定着も不 良であ った。 その ため, その中 規模撹 乱域 全体か ら後退 した状 態は今 後も 続くと 考えられた。そ れに対 し,沿 下型 樹種の 場合は 噴火後 の残 存木の 回復が 進み, 稚樹の 侵入 ・定着 もある程度まで 認めら れた。 その ため沿 下型樹 種は中 規模 攪乱域 に残存 ・優占 してい くと 推察し た。ただし中規 模撹乱 域でも ,も ともと 突出型 樹種が 優占 してい たため 大きな 影響を 受け た林分 (影響度で見た 大規模 撹乱域 )で は,突 出型樹 種であ るド 口ノキ などの 更新が 盛んな 箇所 が部分 的に認められ,

その成 長も活 発で あった 。それ 故この よう な林分 では, 将来突 出型樹 種が 少なく とも重要な構成 要素と なると 考え られた 。物理 的強度 で見 た大規模攪乱域にっいては,突出型,沿下型を問わず,

噴 火8年 後 まで に顕 著な侵 入・成 長は認 められ なか ヮた。 しかし ド口ノ キな どの突 出型広 葉樹の 場合は ,部分 的に 更新し ていた 箇所も 認め られたので,その生理・生態的特性なども考えあわせ,

将来的 にはこ れら が物理 的強度 で見た 大規 模撹乱域に優占していくと判断した。以上のことから,

沿下型 樹種は 中規 模撹乱 域に定 着して いく 特性を 持ち, 突出型 広葉樹 は物 理的強 度で見た大規模 撹乱域 にも中 規模 撹乱域 にも対 応する ,更 新立地 をあま り限定 しない 非定 着的な 対応を示す性質 を持っ と結論 した 。

  突出 型樹種 の枝条 形成に 関して は, カラマ`ソにっいて,まずその長・短枝の形成過程に,頂部 優勢に それほ ど支 配され ないで ,高等 植物 にとっ て本来 的な積 みかさ ね体 制に従 って求頂的に形 態形成 を進行 させ ていく 傾向が 顕著に 認め られた 。また ,その せん定 処理 試験に より,長・短枝 芽分化 の最も 重要 な前提 条件の ひとっ が, 上記の ような 形態形 成パタ ーン に求め られることがわ

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かった 。さらに,マ`ソ 科カラマ`ソ亜科 に属する3属4種の比較解剖を行なった結果,カラマ`ソ亜 科 に属 す る樹 種は , 長・ 短枝 芽 を形 成するなどの点で ,基本的に一致し た栄養芽構造を示す が,

同 時 にCedrus,Pseudolarix,Larixへ と移 行的 に 変化 する 傾 向も 認め ら れた 。以 上 のよ うな 解 析結 果 を踏 まえ , 比較 発生 学 的論 議を加えることで ,突出型樹種は, 有鱗芽形成により, 裸芽 を 持つ 温 帯性 針葉 樹 以来 の突 出 型の 体制を固定化させ ると同時に,それ が本来的に持つ生態 的欠 点 の 修 正 を 行 ナ ょ う 方 向 に 進 化 し て い っ た グ ル ー プ と し て 一 括 可 能 と 判 断 し た 。   以上 の 解析 結果 を 前提 にし て ,北 海道の高木類の適 応戦略を,突出型 樹種の示す非競合的 ・非 定 着的 戦 略と 沿下 型 樹種 の示 す 競合 的・定着的戦略に 区分する類型区分 を呈示した。また, この よ う な 戦 略 を 示 す 高 木 類 を そ れ ぞれ ,Populus―type,Ulmus一typeと 呼 ぶこ とを 提 案し た。

さ らに 提 案し た類 型 区分 の北 海 道の 森林の構造や動態 を理解する上での 認識枠組みとしての 有効 性 を論 議 した 結果 , この 類型 区 分に 従うことで,北海 道の高木類や天然 生林の構造や動態に 関す る 諸事 象 の包 括的 説 明が 可能 と なる ことがわかった。 またその一環とし て,提案した類型区 分に 従 い , 亜 寒 帯 林 をPopttltLs―typeに よるUlmUs−typeから の 半ば 自発 的 な歴 史的 競 合回 避に よ り生 じ たと みる 仮 説( 突出 型 樹形 説)を取ることで ,亜寒帯林の成立 史が,これまでの考 え方 に従う より,より矛盾な く説明できるよう になることがわかっ た

  以上 の 実証 的並 び に理 論的 解 析か ら,北海道の高木 類の適応戦略を, 突出型樹種の示す非 競合 的 ・非 定 着的 戦略 と 沿下 型樹 種 の示 す競合的・定着的 戦略に類型区分す る考え方が,北海道 の高 木 類の 生 育・ 更新 様 式を 包括 的 に認 識する上で極めて 重要な理論的枠組 みのひとっとなり得 ると 結論し た。

学位論文審査の要旨

  本 論文 は6章 で 構成 され ,図71,表46, 写真35,引用文献299,総頁 数187の 和文論文である。

別に 参考 論 文24編が 添 えら れて い る。

200

夫 茂

一 夫

恒  

  達

十 ・

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  森林の 重要 性が, 近年と くに強 調され るの に伴い ,より 多くの 知見 が集積 される ようになって きたが ,それ ら知見 の総 合化が 強く望 まれて いる 。この 研究tま,森林育成分野の基本的課題であ る北海 道の高 木類の 生育 ,更新 様式を 形態学 的・ 生態学 的に分 析し, 包括的 認識 枠組みを構築す る こ と を 目 的 と し て 行 わ れ た も の で あ る 。 そ の 成 果 の 概 要 は 以 下 の と お り で あ る 。   1, 高 木 類の被 陰に 対する 対応: 中川, 岩見 沢,夕 張,定 山渓, 苫小牧 の各 地森林 での調 査お よび採 取試料 の解析 から ,突出 型樹形 を形成 する 高木類 (以下 突出型 樹種と 記す )は被陰の有無 にかか わらず 頂部支 配が 顕著で あり, 一方, 沿下 型樹形 を形成 する高 木類( 以下 沿下型樹種と記 す)は 被陰下 で著し く頂 部支配 の度合 いを低 下さ せるこ とが明 らかに なった 。こ れらの性質は突 出型・ 沿下型 樹種そ れぞ れの重 要な体 制的特 性の ーっと 考えら れる。 また, 末端 枝の年伸長量の 頻度分 布の解 析から ,突 出型樹 種はよ く伸長 する 末端枝 と殆ど あるい は全く 伸長 しない末端枝を 分枝し ,沿下 型樹種 は比 較的よ く伸長 する末端枝を分枝し,それぞれの体制を維持していること,

ま た , 明 瞭 な 長 ・ 短 枝 分 枝 は 突 出 型 樹 種 に 固 有 な も の で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。   また生 産構 造の発 達様式 の解析 から, 突出 型樹種 は被陰 下では 生産 構造の 発達を 極度に抑制さ せ,破 陰開放 下では 生産 構造を 垂直方 向に効 率的 に拡大 させる という ,被陰 下で も被陰開放下で も物質 経済的 に有利 な対 応を示 すこと が明ら かと なった 。その ため, 突出型 樹種 は体制本来の性 質とし ては, 潜在的 に陰 樹(ス トレス 耐性) .後 発樹種 的対応 と陽樹 的・先 駆樹 種的対応をとも に示す と考え られる 。こ れに対 し沿下 型樹種 は, 被陰下 でも一 定の成 長を持 続さ せ,体制的に後 発樹種 的対応 も先駆 樹種 的対応 も顕著 には示 さな いが, ある程 度まで 被陰を 回避 しうる競合的性 質を持 っもの と考え られ る。

  9. 噴 火 による 攪乱 に対す る対応 :有珠 山の 火山降 下物の 堆積に 対し, 沿下 型樹種 の方が 突出 型樹種 よりも ,個体 の残 存率が はるか に高か った 。沿下 型樹種 は,不 定枝を 形成 し,樹高成長が 抑制さ れても 樹冠幅 を拡 大する など, 樹種の 特性 と密接 に関連 した順 応的な 対応 が見られた。体 制 的 に , 沿 下 型 樹 種 の 方 が 噴 火 に 伴 う 攪 乱 に 対 す る 抵 抗 カ が 高 い と 判 断 さ れ た 。   3. 枝条形 成にっ いて :カラ マ`ソ を対象 に枝条 形成 過程を 解析したが,頂部優勢にそれほど支 配され ず,積 み重ね 体制 にした がって 求頂的 に形 態形成 が進行 する傾 向が顕 著に 認められ,この 形 態 形 成 パ タ ー ン が 長 ・ 短 枝 芽 の 分 化 の 重 要 な 前 提 条 件 で あ る こ と が 明 ら か と なっ た 。   さらに マツ 科カラ マツ亜 科に属 する3属4種の比較解剖を行い,カラマ`ソ亜科に属する樹種は,

長・短 枝芽を 形成す るな ど一致 した栄 養芽構 造を 示すが ,同時 に,Cedrus,Pseudolarix,Larix ヘと 移 行 的 に 変化 す る 傾 向 が 認め られ た。以 上のよ うな 解析結 果から ,突出 型樹 種は, 有鱗芽 形成に より, 裸芽を 持つ 温帯性 針葉樹 の突出 型の 体制を 固定化 させる と同時 に, 生態的欠点の修

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正 を行 う方 向に 進化 し て行 ったグループとして一 括することが可能であると推 論した。

  以上の解析結果から,北海道の高木類の適応戦略を,突出型樹種の示す非競合的・非定着的戦 略と沿下型樹種 の示す競合的・定着的戦略に類型区分し,それぞれPopulus―type,Ulmus ‑ typeと呼ぶことを提案し,この類型区分に従うことで,北海道の高木類や天然生林の構造や動 態 に関する事象が包括 的に説明できることを指摘し た。また亜寒帯林はPopulus〜typeが Ulmus―typeから自発的に回避したために生じたと考える方が,既存の考えかたに従うよりも 矛盾なくその成立を説明できるとしている。

  以上のように本研究は,実証的並びに理論的解析から,突出型樹種の示す非競合的・非定着的 戦略と沿下型樹種の示す競合的・定着的戦略に類型区分する考え方を示し,北海道の高木類を包 括的に認識する上で,重要な理論的枠組みを提示したものであり,今後の森林育成分野の研究発 展に寄与するところ大きいものがある。

  よって審査員一同は,別に行った学力確認試験及び試問の結果と合わせて,本論文提出者の藤 本 征 司 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 が あ る と 認 め た 。

参照

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