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低酸素腫瘍細胞における

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 獣 医 学 ) 咼 橋 桃 子

学 位 論 文 題 名

低酸素腫瘍細胞における TRAIL による

放射線誘発アポトーシスの増強効果に関する研究 学位論文内容の要旨

  腫 瘍治 療 法の ー っ であるX線は、腫 瘍細胞内のDNA損傷を誘 発し、ミ トコンド リア を 仲介した シグナル を活性化し てアポト ーシスを誘導するとされる。しかしながら、

こ の よ うな 腫 瘍治 療 にお ける問題 点のーっに 低酸素影 響がある 。低酸素 状態は腫 瘍 の 成 長 過多 に より 腫 瘍内 部の酸素 供給量が低 下する事 により生 じるもの で、腫瘍 へ の 放 射 線治 療 や薬 剤 治療 への抵抗 性の一因で ある。低 酸素影響 下でも効 果のある 治 療 法 の 研 究 と 開 発 が 広 く 進 め ら れ て い る が 未 だ 解 決 さ れ て いな ぃ 事項 も 多 い。

  当 研究室の 以前の研 究結果から 、腫瘍細 胞へのX線 照射によ り、アポ トーシスを誘 導 す る デス レ セプ タ ーで あるDR5の細 胞膜上での 発現が上 昇する事 、ならび にDR5の り ガ ン ドで あ るTRAILとの 併 用に よ り 固形 腫 瘍 細胞 にアポ トーシス を誘導で きる事 が 明 ら かに な って い る。 この事を 踏まえて、 本研究で はTRAILとX線照 射の併用 によ る 腫 瘍 細胞 へ の放 射 線感 受性の変 化を検討す ると共に 、低酸素 状態でのTRAILとX線 照 射 を 併用 す る事 で 腫瘍 細胞への 放射線感受 性にどの ような影 響が与え られるか 、 加 え て 低 酸 素 条 件 下 で も ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る か に つ い て も 検 証 し た 。   ヒ ト肺腺が ん由来A549細 胞を用いたin vitro実験での結果、TRAILとX線照射の併用 処 置 で は、 無 処置 群 、単 独処置群 と比較して アポトー シス細胞 数の増加 が観察さ れ た 。 低 酸素 条 件下 で は併 用処置に よるアポト ーシス誘 導能は大 気条件と 比較して 減 少 し た が、 そ れで も 無処 置群、単 独処置群と 比較して アポトー シス細胞 数の増加 が 観 察 さ れた 。 また 、X線に よるDR5の発 現上昇は、 低酸素条 件下でも 観察され た。カ ス パ ー ゼ阻 害 剤を 用 いた 実験の結 果から、こ のアポト ーシス誘 導は、ミ トコンド リ ア を 仲 介し た スト レ ス誘 導性のシ グナル伝達 経路では なく、主 としてデ スレセプ タ ー を 仲 介し た シグ ナ ル伝 達経路で 誘導されて いること が明らか となった 。更にウ ェ ス タンブロ ット法の 結果から、 このシグ ナル伝達 経路にIAPフ ァミリー のーつである XIAPが 関 与す る こ とが 示 唆 され た 。コ ロ ニ ー形 成 法によ るX線照射 した腫瘍 細胞の 生 存率曲線 解析では 、大気条件 下ならぴ に低酸素 条件下の 両条件でTRAILの添加によ る 生 存 率の 有 意な 減 少が 見られた 。以上の結 果から、TRAILとX線照射 の併用処 置に よ る 腫 瘍細 胞 への 細 胞死 誘導は低 酸素条件下 において も有効で ある可能 性が示さ れ た 。 従 って 、 而wvo実 験系に おいて低 酸素領域を 有する固 形腫瘍に 対してもTRAILと X線 照射の併 用効果が 期待された 。

    ―1007―

(2)

  励vivo実験系では、確立されたマウス移植腫瘍モデルを用いて、ヒト胃腺がん由来 MKN45細胞(野生型Tp53)とMKN28細胞(変異型Tp53)の成長曲線の検討、腫瘍組織の 免疫組織化学染色等を行った。その結果、Tp53に依存せずTRAILとX線照射の併用 処置では無処置群と比べて有意に腫瘍成長を抑制した。さらにin vitro実験系で観察 されたX線によるDR5の発現の上昇が加vivo実験系でも確認された。また、腫瘍の成 長抑制はアポトーシスの誘導ならびにアポトーシス実行因子であるカスパーゼ3の 活性化と相関することが免疫組織化学の結果から明らかになった。低酸素マーカー であるピモニダゾールによる腫瘍組織内の低酸素領域の検討の結果、TRAILとX線照 射の併用処置群で低酸素領域の減少が生じた。又、螢光二重染色により併用処置群 では低酸素領域でのカスパーゼ3の活性化が誘導されることが明らかとなった。これ らの結果から、in vivo実験系においてもX線照射によりDR5の発現が上昇し、TRAIL との併用により固形腫瘍細胞にアポトーシスを誘導できる事が明らかになった。こ のアポトーシス誘導の結果と考えられる腫瘍成長の抑制がTp53の状態に関係なく生 じることから、多くの放射線抵抗性な腫瘍細胞に対して有効である可能性が考えら れる。また、TRAILとX線照射の併用処置により低酸素領域が減少すること、ならび に低酸素領域内でアポトーシスが誘導されることから、この処置法が放射線抵抗性 を示す低酸素領域を有する固形腫瘍に対しても有効である可能性が示唆された。

  以上の結果から、TRAILにより腫瘍細胞の放射線感受性が向上する事が明らかとな り、この放射線感受性の上昇は低酸素状態に大きく左右されなぃ事が示唆された。

本実験は低酸素条件下でのTRAILを使用した放射線感受性の増感に関して新しい知 見を示すものであり、腫瘍組織への新規の放射線治療法の基礎研究となるものであ る。

‑ 1008

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

低酸 素 腫 瘍細胞にお ける TRAIL による

放射線誘発アポトーシスの増強効果に関する研究

  固 形 腫瘍 の 放射 線 治 療や制が ん剤治療の 際、治療 効率を妨 げる大き な問題の ーつ に固 形 腫瘍 内 の 低酸 素 性腫瘍 細胞の存在 があげら れる。低 酸素細胞 は放射線 や制が ん剤 に 対し て 抵 抗性 を 示し、 生残した腫 瘍細胞は 再増殖、 転移等の 原因とな ること から、低 酸素細胞 にも効果の ある新た な治療法 の開発が強く求められている。最近、

アポ ト ーシ ス を 誘導 す る 受容 体DR5が 低 酸 素条 件 や放 射線照 射によっ て腫瘍の 細胞 膜上に高 発現する ということ が報告さ れた。申 請者はこ の報告に 着目し、DR5に対す るりガン ドTRAILを腫瘍 細胞に作用 させるこ とで、こ の低酸素 腫瘍細胞 の放射線抵抗 性を 向 上さ せ ら れる の ではな ぃかと考え 、培養細 胞系なら び移植腫 瘍系の実 験を行 った。

  ヒ ト 肺腺 が ん由 来A549細 胞にTRAILとX線 照射を大気 中で併用 処置をす ると、無 処 置群 や 単独 処 置 群と 比 較してDR5の細胞膜へ の発現上 昇とカス パーゼ8と カスパー ゼ 3を介した アポトー シス細胞の 増加を起 こすこと が示され た。さら に、低酸 素条件下 での 併 用処 置 で も無 処 置 群や 単 独処 置 群 と比 較 してDR5の発 現上昇と アポトー シス 細胞数の 有意な増 加が観察さ れた。コ ロニー形 成法によ るX線照射 した腫瘍 細胞の生 存率曲線 解析では 、大気条件 下・低酸 素条件下 の両条件 でTRAILの添加 による生存率 の有意な 減少が見 られた。次 に、ヒト 胃腺がん 由来MKN45細胞(野生型Tp53)とMKN28 細胞(変 異型Tp53)のマウス移植腫瘍モデルを用いて腫瘍成長曲線を検討したところ、

TRAILとX線 照 射 の 併 用 処 置 で は 無 処 置 群と 比 べて 有 意 にDR5発 現 上昇 と 腫瘍 成 長 を抑 制 した 。 腫 瘍組 織 の免疫 組織化学に よる解析 の結果、 アポトー シスの誘 導なら ぴに ア ポト ー シ ス実 行 因 子で あ るカ ス パ ーゼ3の 活 性化が 起きてい る事が明 らかに なっ た 。さ ら に 、低 酸 素マー カーである ピモニダ ゾールに よる腫瘍 組織内の 低酸素 領域の検 討の結果 、'TRAILとX線照射 の併用処 置群で全 体の腫瘍 に占める 低酸素領域 の面積の 減少が観 察された。 これらの 結果から 、大気条 件下でも 低酸素条 件下でもX 線照 射 によ り 腫 瘍のDR5発現上昇 が起こると ともに、TRAILと放射線 照射の併 用処置 によ り 固形 腫 瘍 細胞 に アポト ーシス誘導 と増殖遅 延を誘導 できる事 が明らか になっ た。 こ のア ポ ト ーシ ス 誘導と 腫瘍成長抑 制が腫瘍 細胞のTp53が 野生型か 変異型で あ

1009

修 寛

喜 敏

   

   

泰 満

   

授 授

授 授

   

   

(4)

るかに関係なく して有効である   以上の結果は 対しても放射線 発のための重要 提出者高橋桃子

起きることから、この併用処置が多くの放射線抵抗性腫瘍細胞に対 可能性を示している。

TRAILを照射時に併用することで放射線抵抗性の低酸素腫瘍細胞に 感受性を高める新しい方法を示すものであり、新規放射線治療法開 な基礎研究となるものである。よって審査員一同は、上記博士論文 の博士論文は、北海道大学大学院獣医学研究科規定第6条の規定によ る本研究科の行う博士論文の審査等に合格と認めた。

参照

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