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博士(工学)廣奥 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)廣奥 学位論文題名

喉頭付 近におけ る物理 現象の 3 次元 数値解析 に関す る研究

学位論文内容の要旨

  発声能カは人間にとって、基本的かつ重要な能カのーっである。人間の意思伝達の手 段である言語の主たる表現方法である「話す」とぃう動作はこの発声能カによって生成 される音声を介して行われる。従って音声は、人間にとって極めて重要で且つ基本的な 意思伝達路であると言える。さらに、人間は、音声によって相手を識別したり、音声を介 して、相手の性別、年齢や感情といった情報を得ることが可能である。このように人間 のさまざまな情報を伝達する媒介として重要な音声を時間や空間の隔たった点で再現す ることは、人間に実に様々な利益をもたらす。現在の我々は、その実例として電話や様々 な録音再生装置による恩恵を享受している。また、音声を機械によって作ったり、理解し たりすることも多くの利益を我々にもたらすであろう。実際にこれまで、このような技 術実現の努カがなされてきた。

  1960年代までに、音声の生成機構は、音源の生成、声道の形による調音、口唇または 鼻腔か らの放射 の3つの作用に分離して考えられることが明らかになった。1970年代に は、今 日の音声 処理技術 の基礎 となる2質量 モデルやPARCOR分析法 が提案された。前 者は、音源を生成する声帯の振動を説明する有カなモデルであり、.後者は、音声波形を 分析し声道の伝達特性を分析する有カな手法である。1980年代以降、これらの研究成果 の工学的応用として、音声合成、音声認識とぃった技術が可能となってきた。今日では、

計算機の性能の向上により、これらの技術は、小規模な個人向け計算機上でも実現可能 となっ ている。 しかしながら、現在、1970年代に行なわれた主に1次元の近似モデルに よる技術の成果は合成音の自然性や、音声認識の認識率に限界をもたらしていると考え られる。従来のモデルが近似のために切り捨ててきた部分にも、重要な要因が含まれて いると考えられるのである。今日、合成音の自然性や、音声認識の認識率の向上のため に、音声生成機構を解明し音声生成系のモデルを再構築することが求められていると言 える。

  従来、音声生成機構を解明するために、カメラなどにより発声の状態を観測する研究 が行なわれている。しかし、音声の生成は主に人体の内部で行なわれるために、直接観 測することは困難を伴う。現象を支配する方程式の解を計算機を用いて求め、その現象 を計算機上で模擬する数値シミュレーションは、このような観測に困難を伴う場合には、

有カな方法のーつである。このような試みの1っとして,声門部付近の空気の流れを,有 限要素 法を用い て数値解析する研究が行われている.しかし,この研究は2次元空間に ついて 行われた ものである.さらに実体に近い現象について知るためには,3次元空間 におけ る解析が 不可欠である。3次元解析は2次元解析jこ比ベ扱うデー夕量が増大し、

困難が予想される。従って、まず、有限要素法によって音声生成系、特に喉頭付近で生じ る声帯 の振動や 空気の流れとぃった物理現象を3次元解析するための基礎的な研究が期 待される。

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  本研究では,音声生成過程における物理現象を有限要素法によって解析するために,そ の前処理として必要な有限要素メッシュの作成方法について検討する.また、声帯付近の 空気の流れを解析するため のソルバ、声帯の挙動を解析するためのソルバの開発し、声 帯振動の3次元数値解析の可能性を探る。

  本 論 文 は 、 全7章 よ り 構 成 さ れ て い る 。 以 下 に 各 章 の 概 要 を 述 べ る 。   第2章では、本研究と関わ りの深い他の研究について触れ、本研究が果たす役割に つ いて検討する。音声の生成 過程を解明する研究は、さまざまな学問分野の複合的な領域 に属している。歴史的な経 緯から、音声生成過程は主に、1次元でモデル化され、特に、

電気回路的な取扱いが多く 行われている。しかしながら、音声の生成は、実際には空気 流体力学の問題などを含む複雑な現象である。より基礎的な音声科学といった立場から、

1次元モデルでは表現しきれ ない複雑な現象を解明しようとする研究が数多く行なわ れ ており、同様の立場に立つ 本研究の果たすべき役割や、期待される成果について議論さ れる。

  第3章で は、 音響 問題 を 想定した2次元問題を例として,有限要素法の基本的な扱 い 方を説明する.空気の粘性損失を無視し、密度や、音圧変化が微小であると仮定すると、

音響問題はHelmholz方程式 で表される。この方程式は、本論文で扱う他の方程式よりも 簡単であり、特に、1次元の場合の解はよく知られているので、例題としてここで扱う。

偏微分方程式の有限要素法 による近似方程式を導く。

  第4章に おい て, 新た に 提案する3次元形状を有限要素へ分割する方法について説 明 する.音声生成系の複雑な 形状について有限要素メッシュを作成する効率的な方法につ いて検討する。実際に、口 腔部のレプリカ形状に対して,この方法を適用して有限要素 に分割した結果、上記の要 件を満たす有限要素メッシュを作成法であることが確認でき た。ー方、形状が大きく変 化する部分の形状境界近くに、計算精度を劣化させる潰れた 要素が生じる可能性がある ことがわかった。

  第5章において,声帯付近 の空気流れを解析することを想定して開発した空気流れ に ついてのソルバについて検 討する。特に、採用したあるごりズムにおいて数値計算の収 束 を促す係数の定め方について検討を行っている。この 係数の定め方は2次元問題の 場 合 より難しく、数値計算を収束させることはできなかっ た。3次元における非定常非 圧 縮粘性流れ解析は難しく、 実現のためには様々な要素、計算法について検討する必要が ある。

  第6章では、声帯の振動現 象を再現することを想定して開発した、弾性体の挙動を 解 析 するソルパについて検討する。6面体要素を用いることにより計算を安定に行なえ る ことがわかった。簡単化した声帯形状についてのシミュレーションから、境界条件に設定 によって再現される現象 が変化し、その設定によっては、2次元問題では扱えない状況 がある可能性が示された。 また、声帯を押し上げるだけのカだけでは、声帯の周期的な 開閉は生じない、すなわち 、空気流から受けるカを考慮しなけれぱ、声帯の周期的な開 閉が導かれないということ がわかった。

    第7章では、これまでの章を総括し、本研究の成果について要約している。さらに残   された課題について述ぺ る。

    以上、本論文では、音声生成過程における物理現象を有限要素法による解析に,適し た有限要素メッシュの作成 方法について提案した,また、声帯付近の空気の流れを解析 す るためのソルバ、声帯の挙動を解析するためのソルバ の開発し、声帯振動の3次元 数 値解析を試みた結果につい て報告している。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

喉頭付近における物理現象の3 次元数値解析に関する研究

  音声は、人間にとって極めて重要で且つ基本的 な意思伝達路であると言える。人間は、

音声によって相手を識別したり、音声を介して、 相手の性別、年齢や感情とぃった情報を 得る こと が可 能で ある 。こ のよ うに人間のさまざま な情報を伝達する媒介として重要な 音声 を時 間や 空間 の隔 たっ た点 で再現すること、す なわち、音声の合成や認識の研究は 工学上重要であり、今日では、計算機の性能の向上により、.小規模な個人向け計算機上で も実 現可 能と なっ てい る。 しか しな がら 、 現在 、1970年 代に行なわれた主に1次元の近 似モ デル によ る技 術の 成果 は合 成音の自然性や、音 声認識の認識率に限界をもたらして いる と考 えら れる 。従 来の モデ ルが近似のために切 り捨ててきた部分にも、重要な要因 が考 えら れ、 今日 、合 成音 の自 然性や、音声認識の 認識率の向上のために、音声生成機 構 を 解 明 し 音 声 生 成 系 の モ デ ル を 再 構 築 す る こ と が 求 め ら れ て い る 。   著 者は 音声 生成 過程 解明 を目 的として、音声生成 過程における物理現象の有限要素法 に よ る3次 元 解 析 に つ い て 基 礎 的 な 研 究 を 行 な っ た 結 果 に つ い て 述 べ て い る 。   従 来、 音声 生成 機構 を解 明す るために、カメラな どにより発声の状態を観測する研究 が行なわれている。しかし、音声の生成は主に人 体の内部で行なわれるために、直接観測 する こと は困 難を 伴う 。現 象を 支配する方程式の解 を計算機を用いて求め、その現象を 計算機上で模擬する数値シミュレ―ションは、こ のような観測に困難を伴う場合には、有 カな 方法のーつである。 このような試みの1っとして ,声門部付近の空気の流れを,有限 要素 法を 用い て数 値解 析す る研 究が 行わ れ てい る. しか し,この研究は2次元空間につ いて 行わ れた もの であ る, さら に実 体に 近 い現 象に つい て知るためには,3次元空間に おけ る解 析が 不可 欠で ある 。3次 元解 析は2次元 解析 に比 べ扱 うデ ー夕 量が 増大 し、 困 難が予想される。従って、まず、有限要素法によ って音声生成系、特に喉頭付近で生じる 声帯 の振 動や 空気 の流 れと ぃっ た物 理現 象 を3次元 解析 する ための基礎的な研究が期待 され るて いる 。音 声生 成過 程に おけ る物 理 現象 の有 限要 素法による3次元解析はほとん ど例がないため、まず、前処理として必要な有限 要素メッシュの作成方法について検討が なさ れて いる 。ま た、 声帯 付近 の空気の流れを解析 するためのソルバ、声帯の挙動を解 析す るた めの ソル バを 開発 し、 声帯 振動 の3次 元数 値解 析の 可能性について議論してい

夫 彦

次 則

信 吉

香 正

永 小

栃 小

授 授

授 授

   

   

(4)

る。以下にこの3点について要約する。

  本論文では3次元形状を有限要素へ分割する方法について新たに提案し、音声生成系 の複雑な形状について有限要素メッシュを作成する効率的な方法について検討し実現し ている。実際に、口腔部のレプリカ形状に対して,この方法を適用して有限要素に分割 した結果、そ計算精度を劣化させる潰れた要素が生じる可能性があることを明らかにし ている。

  次に声帯付近の空気流れを解析することを想定して開発した空気流れについてのソル バについて検討がなされている。特に、採用したアルゴリズムにおいて数値計算の収束 を促す係数の定め方について検討を行っている。この係数の定め方は2次元問題の場合 より難しく、数値計算を収束させること困難であることが明らかにされている。3次元 における非定常非圧縮粘性流れ解析は難しく、実現のためには様々な要素、計算法につい て検討する必要があることを明らかにしている。

  声帯の振動現象を再現することを想定して開発した、弾性体の挙動を解析するソルバ について検討が行なわれている。6面体要素を用いることにより計算を安定に行なえる ことが実験により確認されている。簡単化した声帯形状についての3次元シミュレーショ ンが行なわれその結果から、境界条件の設定によって再現される現象が変化し、その設 定によっては、2次元問題では扱えない状況がある可能性が示されている。また、声帯を 押し上げるだけのカだけでは、声帯の周期的な開閉は生じない、すなわち、空気流から 受けるカを考慮しなければ、声帯の周期的な開閉が導かれないことを示している。

  以上のように、著者は、音声生成過程における物理現象の有限要素法による3次元解 析を試み、音声生成系の解析に適した有限要素メッシュ作成法を新たに提案し、さらに、

3次元形状が音声に与える影響について新知見を得るなど、音声信号処理および電子工 学に寄与するところが大きいらよって著者は、博士(工学)の学位を授与される資格ある ものと認める。

参照

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