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博士(工学)金子学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 工 学 ) 金 子 学 位 論 文 題 名

Zn ―Mg ーSc 及びCu −Ga −rvig ―Sc 正二十面体準結晶の      形成と構造に関する研究

学位論文内容の要旨

正二十面体準結晶は鋭い回折点を示すにもかかわらず、結晶では許されない回折対称性を示す。

これは正二十面体準結晶が持つ準周期性と配向秩序に起因している。原子配列のフーリエ変換が 6関数のセットからなり、それら6関数の位置を指数付けするための基本ベクトルが空間次元数 よりも多いという性質を準周期性と呼ぶ(Levine 1986)。準周期性を満たす格子は準格子と呼ば れている(Mackay 1981)。正二十面体回折対称性を示す準格子として、2種類の菱面体単位胞が 準周期性と配向秩序を保ちながら空間を充填した3次元ペンローズ準格子が考えられている。正 二十面体準結晶の構造モデルは、ベン口一ズ準格子とその内部に原子を装飾したものとして考え られ、6次元超立方格子と関連付けることにより理解する事ができる(Elser 1985)。6次元超立 方格子の格子定数は準結晶の6次元格子定数と呼ばれている。結晶と同様に準結晶においても、

特定の原子が特定の原子位置を占める傾向がある。特に、P型(単純型)準格子を2つのF型準 格子に分解して、それらが区別されている構造を規則格子型と呼ぷ。このような準周期構造が実 現される条件を調べる事は、準結晶研究における中心課題である。

準結晶の組成近傍に正二十面体対称クラスター(原子クラスター)が周期的に並んだ特別な結 晶相が存在することが知られており、それは近似結晶と呼ばれている。準結晶の6次元格子定数 と近似立方結晶の格子定数は、隣接する2つのフィボナッチ数を使って関係付けられる(Jaric 19901。これまで正二十面体準結晶は、含まれる原子クラスターの違いからMackay型とBergman 型の構造夕イプに分類されてきた。原子クラスターと基となる元素には対応関係がある。すなわ ち、Mackay型準結晶はAl基合金系で、Bergman型準結晶はZn基合金系で形成するとされてき た。このように構造夕イプと準結晶の形成を支配する因子(構成元素、組成、原子半径比、平均 価 電 子 濃 度e/a)の 間 に は 関 連 が あ り 、 こ れ ら の 関 連 性 を 調 べ る 事 は 重 要 で あ る 。   本研究では、Mackay型ともBergman型とも異なる正二十面体対称クラスターを含む2n85Sc15 立方晶(Andrusyak 1989)をもとに、新しい準結晶を探索した。その結果、新しい構造夕イプと 考えられる正二十面体準結晶を発見する事ができたので、形成条件(組成、温度)、安定性、構 造について実験的に調べた。その結果をもとに準結晶の形成を支配する因子に関して他の準結晶 系 と 比 較 し 、 準 結 晶 の 形 成 条 件 に 関 す る 新 た な 知 見 を 得 る 事 を 目 的 と し た 。   本論文は全8章から構成されている。

  第1章では研究の背景と目的を述べた。

  第2章では正二十面体準結晶と近似結晶の構造について解説した後、正二十面体準結晶が平衡 相として形成する合金系を概観した。次に、射影法により6次元超立方結晶から3次元準結晶と 近似結晶の構造モデルを得る方法について述べた。ZD85Sc15立方晶とCd系準結晶の近似結晶で

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あ るCd6Yb立 方 晶 に 含 ま れ る 原 子 ク ラ ス タ ー の 関 連 性 に っ い て 説 明 し た 。 第3章 で は 実 験 方 法 と し て 試 料 作 製 及 び 試 料 の 構 造 と 組 成 の 評 価 方 法 つ い て 説 明 し た 。 第4章では 、Zn‑Mg‑Sc正二 十面体 準結晶の 形成と 構造の特 徴につ いて述べ た。2r185Sc15立方晶 にMg元 素 を 添 加 し たZn‑Mg‑Sc合 金 を 作 製 し 、 粉 末X線 回 折 実験 、 電 子線 回 折 実験 、EPMA組 成分 析を行 った結果 、焼鈍温 度650〜  750℃、組成領域ZnlOO̲x̲yMgxScy (3<x<12,10<y<16)でP 型正 二十面 体準結晶 が形成す る事が 分かった 。準結 晶の粉末X線回 折ピークは鋭く、この準結晶 の構 造完全 性が高い 事が分か った。 長時間焼鈍により回折ピークの半値幅が減少した事は、この 準結晶が平衡相である事を示していた。また、高分解能電子顕微鏡観察で得られた格子像からも、

準周期的構造の形成を確認した。この準結晶の組成は2n80.5Mg4.2Sc15.3付近であり、Mgが減少す ると2r185Sclエ型立方晶と共存する事が分かった。準結晶と立方晶の組成は近く、回折パターンの 強度 分布が 類似して いた。更 に準結 晶の6次元格 子定数と 近似立方 結晶の 格子定数 は2つの隣接 する フィボ ナッチ数(舮1,q=l)を用いて関係付けられた。以上の結果から2n85Sc15立方晶が本研 究 で 発 見 さ れ たZn‑Mg‑Sc準 結 晶 の1/1近 似 結 晶 で ある 事 が 分か っ た 。こ の 事 はZn基 であ る Zn‑Mg‑Sc準 結 晶がBergman型と は異なる タイプ のクラス ターを 含む新し い準結 晶である 事を示 している。

第5章ではZn‑Mg‑Sc単準結 晶の形 成につい て述べ た。組成 が2n80.5Mg4.2Sc15.3の合金を835℃ で 溶 解後 、 焼 鈍温 度750℃ まで徐冷 した試料 中にmmサ イズの単 準結晶 が形成し た事か ら、この 準結 晶がコ ングルエ ントヌル トかそ れに近い 状態でZn‑Mg‑Sc合金系 の状態図 中に存 在する事が 分かった。  ´

  第6章 で は、ZnをCuとGaで置換 したCu‑Ga‑Mg−Sc正二十 面体準結 晶の形成 につい て述べた 。 CL148Ga34Mg3Sc15の組成においてP型正二十面体準結晶がほぼ単相で形成する事が分かった。また 長時 間焼鈍 により準 結晶の割 合が増 加し構造完全性も改善したことから、この準結晶も箪衡相で あると考えられた。更に、CU53Ga33Sc14立方晶(Markiv 1985)がCu‑Ga‑Mg‑Sc準結晶Iの1/1近似結晶 であ り、2n85Sc15近 似結晶 と類似構 造である ことを 電子線回 折実験、粉末X線回折実験の結果か ら示した。

第7章で は 、Zn‑Mg‑Scと 類似構造 を持つ一 連の正 二十面体 準結晶 について 、形成 を支配し てい る 因 子に つ い て考 察 し た。 始めにZn‑Mg‑Sc及びCu‑Ga‑Mg‑Sc準結晶 が類似構 造であ ることを 、 回 折 パ タ ー ン の 強 度 分 布 の 類 似 と 近 似 結 晶 の 構 造 の 類 似 か ら 示 し た 。 次 にZn‑Mg‑Sc、 Cu‑Ga‑Mg−Sc、Cd基及びAg−In基準 結晶の近似結晶の構造が類似している事と形成を支配する因 子に 共通性 が見られ る事から 、これ らの準結晶が新しい構造夕イプの一群を成している事が分か っ た 。更 に 、 これ ら の 準結 晶がsp金属 を基と し、1個ないし2個 のd電 子をもつ 遷移金 属を15% 程度含むという共通点を見出した。

  本 研 究 で は 、Mackay型 と もBergman型 と も 異 な る 原 子 ク ラ ス タ ー を 含む2ri85Sc15及 び CU53Ga33Sc14近似結晶を出発点として、Mg元素の添加によりZn‑Mg‐Sc及びCu‐Ga‐Mg‐Sc正二十面 体準結晶を発見した。特に、Cu‐Ga−Mg_Sc準結晶は初めてのCu基準結晶である。粉末X線回折法、

電子 線回折 法、高分 解能電子 顕微鏡 法、EPMA組 成分析法 を用いて 詳細に 調べた結 果、こ れらの 準結 晶がP型に属 し、高い 構造完 全性を有 するこ とが判明 した。ま た、組成と焼鈍温度を組織的 に変 化させ た準結晶 形成条件 に関す る実験結果は、両準結晶が平衡相として形成することを示し ていた。構造完全性が高く、平衡相として形成するZn−Mg−Sc及びCu‐Ga−Mg―Sc準結晶の発見によ り確 立され た一群の 新しいタ イプの 準結晶の存在は、準結晶の形成条件と原子構造の解明の手が か り を 与 え る の み な ら ず 、 物 性 研 究 の 分 野 に 新 た な 舞 台 を 与 え る も の と 考 え ら れ る 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Zn ―IVIg ―Sc 及びCu 一Ga ―Mg ―Sc 正二十面体準結晶の      形成と構造に関する研究

  1984年 に 発見 さ れ た準 結 晶 は、 結 晶と も ア モル フ んス と も 異な る 固体 状 態 であ り 、

「規 則的では あるが周 期的では ない特別の 原子配置 」を持っ ている。このような構造特異 性 は 、固 有 の物 理 的 ・化 学 的 性質を導 くと期待 されたの で、新準 結晶合金 の探索、 合成 法、 形成条件 と安定化 機構の解 明、構造解 析・構造 評価、機 械的及び電気・磁気的性質な ど の 研究 が 精力 的 に 行わ れ て きた。そ の過程で 、Al基合金 やZn基合金 の平衡相 準結晶が 発見 され、そ れらの準 結晶試料 に基づいて 構造の枠 組みと原 子配置の概略や、フェイゾン の自 由度´、フェルミエネルギ一近傍の擬ギャップ、金属としては異常に大きな電気抵抗な どの 基礎物性 が認識さ れるに至 った。実用 化をめざ した今後 の研究においては、準結晶の 持つ 構造特異 性と構成 元素の個 性を結びつ ける事が キーポイ ントになると考えられる。そ の意 味そ、さ らなる準 結晶合金 の探索と形 成条件の 研究は重 要性を増してくると考えられ る。 本研究は 、局所原 子配置の 観点におい て準結晶 と類似性 を持う結晶(近似結晶)から 出 発 して 、 微少 量 のMg金 属 の添 加によっ て新しい 構造夕イ プに属す る準結晶 を発見し た もの である。

  第1章 では、本 研究の背 景と目的 を述べた。

  第2章で は 、正 二 十 面体 準 結 晶の 構 造の 特 徴 と形 成 条件 に 関する 従来の知 識を整理 し た 。 準結 晶 構造 を 高 次元 周 期 構造と関 連付ける 方法(高 次元解析 法)につ いて述ぺ た後 に、 正二十面 体準結晶 と近似結 晶の構造関 連性を説 明した。 また、両者に構造単位として 含ま れている 正二十面 体対称の 原子クラス タ―につ いて述べ た。次に、正二十面体準結晶 が 平 衡相 と して 形 成 する 合 金 系を 概 観し 、 正 二十 面 体準 結 晶の 形成条件 としてのHume‑

Rothery則に ついて述 べた。

  第3章で は 、Zn−Mg―Sc及 びCu―Ga−Mg―Sc合金試料の 作製方法 、熱処理 方法、X線 ・ 電 子 線 回 折 及 び 電 子 顕 微 鏡 観 察 に よ る 構 造 評 価 法 に つ い て 述 べ た 。   第4章では 、Zn―Mg―Sc正 二十面体 準結晶の発 見と、合 金組成と 温度領域 の観点か ら調 べた 安定性に 関する実 験結果、 回折実験に よる構造 評価の結 果について述べた。Zn―Mg― Sc準結 晶 は 、特 定 の組 成 ・ 温度 領域で安 定に存在 する平衡 相である こと、単 純型の構 造 を有 すること 、高い構 造完全性 を持つこと が明らか となった 。さらに、Zn−Sc近似結晶と のX線 回 折強 度 の比 較 か ら、 こ の準結晶 はMackay型ともBergman型とも異 なる原子 ク、ラ

勉広 彦       耀和 政   谷 石堤 山 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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スタ―を持つことを示した。これは、2000 年に Guo らが見つけた一連のCd 基準結晶と同 型 で あ る こ と 、 す な わ ち 新 し い 構 造 夕 イ プ に 属 す る こ と を 意 味 し て い る 。    第5 章ではZn −Mg ―Sc 単準結晶の合成法、および得られた単準結晶の構造評価の結果に ついて述べた。

   第6 章では、Cu ― Ga ―Mg ― Sc 正二十面体準結晶の発見、合金組成と温度領域の観点から 調ぺた安定性に関する実験結果、X 線回折・電子線回折実験による構造評価の結果につい て述ぺたォCu ―Ga ―Mg ―Sc 準結晶も平衡相であり、構造的にZn ―Mg −Sc 準結晶と非常に類 似していること、すなわちZn ―Mg −Sc 準結晶のZn をCu と Ga で置換したものとみなすこと がで きる 事を示 した 。こ の準 結晶は Cu を べ― ス金属 とす る初 めて の合金 である。

   第7 章では、新しい構造タイプに属する一連の準結晶の形成条件を整理した。これらの 準結晶は、共通の近似結晶をべ―スとしていて同種の原子クラス夕―を構造単位として含 むこと、構成元素の観点ではSp 金属を基としd 電子を1 個含む遷移金属を15 at. %含む合金 であること、さらに平均荷電子濃度がほぼ一定のHume −Rothery 化合物であることなどの 共通点を指摘した。

   第8 章では、結論を述べた;

   本研究では、正二十面体対称の原子クラス夕一を含む結晶相を出発点として準結晶を探 索し、Zn ―Mg −Sc 合金とCu −Ga −Mg ―Sc 合金において新しい構造夕イプに属する準結晶を 発見した。次に、これらの準結晶が平衡相であり、高い構造完全性を持っていることを実 験的に明らかにした。これらの結果は、準結晶の形成条件に関する新たな知見を与えただ けでなく、今後の物性研究にも寄与するものであり、金属結晶学および固体物理学の進展 に貢献するものである。よって著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あ      ー

るものと認める。

参照

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