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博士(工学)小塚心尋 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)小塚心尋 学位論文題名

置換ポリアセチレンを用いた 高分子半導体材料に関する研究

学位論文内容の要旨

  現在、半導体集積回路の高機能化と高性能化に寄せられる期待はますます大きく なっている。半導体集積回路の微細化を中心とした技術の核となっているのは、工ッ チングやりソグラフイ等のデバイス作製技術であり、ピーム応用、放射線・プラズ マの分野は、これらの半導体デバイス作製技術と密接に関わってきた。また、エッ チングやりソグラフイ技術といった、いわゆるトップダウン技術とは別に、近年の 盛んな研究により、ナノテクノロジーの代表である原子や分子の自己組織化を利用 したナノメートルオーダニの機能性分子素子の作成といった、ボトムアップ技術が 発展してきた。

  トップダウンからの観点では、半導体集積回路の微細加工技術は物理的限界へと 近づぃており、さらなる微細化を実現するには、新技術、新材料の開発が必要であ り、その中でもX線露光技術、電子線直接描画技術が注目されている。ボ卜ムアッ プの観点では、分子素子の多機能化を考えると、多様な機能を比較的容易に付加さ せ る 事 の 出 来 る 有 機 高 分 子 材 料 が 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。   本研究は、ボトムアップとトップダウンの融合を目指す立場から行っており、リ ソグラフイ技術に用いられる著名なポジ型電子線レジストであるポリメタクリル酸 メチルに類似した構造を持つ、新規の脂肪族の置換ポリアセチレンであるポリプ口 ピオール酸アルキルエステルに注目した。ポリアセチレンは、シス体と卜ランス体 のニつの幾何異性体を有する高分子で、トランス型ポリアセチレンは、最も単純な 一次元7共役系を有しており、ドーピング等の処理をすると、高い導電性を付与す る事が出来る機能性高分子として報告されている。また、ポリアセチレンの側鎖の 置換基に機能性官能基を導入した場合で、有望な非線形光学材料、磁性材料、有機 EL材料、分子認識等の機能が期待されている。ポリアセチレンの歴史は古いが、近 年 報告され たRh錯体触 媒による置換ポリアセチレンの合成では、これまでの重合 触媒とは異なり、Rh錯体触媒が立体規則性重合触媒として働くため、シス体とトラ ン ス 体 の ニ つ の 幾 何 異 性 体 を 選 択 的 に 重 合 す る 事 が 可 能 と な っ た 。   そこで本研究では、以下に示すような目的で行った。Rh錯体触媒を用いてシス体 構造を持つ絶縁性のポリプ口ピオール酸アルキルェステルを合成し、これに、電子 線等の照射を行う事でトランス体に幾何異性化させる。この時、照射によって側鎖 脱離反応や高分子鎖間架橋反応が起こると、最終的に非晶のグラファイトが形成さ れ、導電性、半導体特性を示す物質に転換できる可能性がある。この場合、従来の

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レジスト材料とは異なり、シリコン基板等を必要とせず、また、レジスト塗布、露 光、現像、エッチング、レジスト除去といったりソグラフイ工程を経る事無く、こ の高分子材料単独で電子線直接描画による分子レベルパターンの半導体回路を形成 する事が可能となる。また本研究において、らせん鎖のポリプ口ピオール酸アルキ ルエステルが自己組織能としてカラムナーを作る事が明らかになり、このようなら せん分子鎖が最密充填されてできた擬六方晶カラム構造を取っているならば、注入 工ネルギーが主鎖方向に散逸し、効率的に主鎖切断が起きることも期待される。

  本論文では、このような全く新しい概念のりソグラフイ工程を提案し、その基礎 的研究である、新規の脂肪族ポリアセチレンェステルの重合、立体構造の解析、放 射線照射に対する効果等を調べた結果について報告する。

  本論文は全7章から構成されており、その概略は以下の通りである。第1章は序 論であり、本研究の背景、目的、概要を記述した。第2章では、機能性高分子の設 計という観点から、7r共役系導電性高分子について記述した。また、現在行われて いるりソグラフイ工程及び感光性高分子材料であるレジスト材料について述べてお り、本研究の目指している工程との比較も行った。また、本研究に於いて期待され る化学反応について述べた。第3章では、機能性高分子材料としてポリプ口ピオー ル酸アルキルェステルの合成を行った結果について記述した。実際には、低分子化 合物であるモノマーの合成、蒸留を経て、Rh錯体触媒を用いた立体規則的重合を 行った結果と、得られた高分子化合物のキャラクタリゼーションを各種の分析機器 を用いて行った結果について記した。第4章では、合成したポリプ口ピオール酸ア ルキルエステルの立体構造に関する知見を得るために、半経験的量子化学計算、粉 末X線回折、原子間力顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて行った構造解析について の結果を示して、目的の置換ポリアセチレンエステルが自己組織能として擬六方晶 カラム構造を取る新規のナノ高分子材料である事を明らかにした。また、透過型電 子顕微鏡を用いて初めてポリプロピオール酸アルキルェステルのらせん状の単分子 鎖の観察に成功した結果について記述した。第5章では、イ線照射したポリプ口ピ オール酸アルキルェステルと加圧実験したそれを、詳しく比較し、1線照射によっ て、シス体からトランス体への異性化反応が起こる事、また、高分子鎖間架橋反応 が起こる事を明らかにした。第6章では、電子線形加速器を用いた電子線照射実験 を行い、1線照射と同様、シス体からトランス体への異性化反応が起こる事を明ら かにした。また、1線照射の結果とは異なり、電子線照射では主鎖切断が起こって いる事を見出した。第7章の結論では、本論文の総括を行い、絶縁性のシス体ポリ プ口ピオール酸アルキルエステルを、放射線の照射、即ち、露光によって、導電性 物質の前駆体構造であるトランス体へ転換できる事から、本研究で提案したシリコ ンを使用しない新しいタイプのりソグラフイ工程が具現できる可能性を示したと結 論づけた。

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学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

榎声 澤村 堤 田畑

学 位 論 文 題 名

武揚 貞史 耀広 昌祥

置換 ポリアセ チレンを用いた 高分子半 導体材 料に関する研究

  光 デ バ イ ス ・ シ ステ ム産 業や 次世 代半 導体 産 業に おけ る革 新的 な基 盤的 技術 を軸 に し た チ ャ レ ン ジ 型の 研究 開発 テー マは 、学 術 的だ けで なく 社会 的に も非 常に 重要 性 が あ る 。 中 で も 近年 の盛 んな 研究 によ って 、IT産 業を 支え るデ バイ ス分 野に おけ る 有 機 高 分 子 材 料 が占 める 役割 は重 要に なっ て 来て おり 、半 導体 集積 回路 の高 性能 化 と 高 機 能 化 に お いて もそ の可 能性 への 期待 は 大き い。 今後 は、 これ まで の半 導体 集 積 回 路 の 微 細 化 を中 心と した トッ プダ ウン 技 術と 原子 や分 子の 自己 組織 化を 利用 す る ポ ト ム ア ッ プ 技 術 の 融 合 は 必 須 と な る と 考 え ら れ る 。

  本 論 文 は 、 こ れ まで 半導 体集 積回 路の 微細 化 を支 えて 来た りソ グラ フイ 技術 に機 能 性 高 分 子 材 料 を 導入 する 事に よっ て、 シリ コ ン基 板を 用い ない 新し いタ イプ のり ソ グ ラ フ イ 工 程 を 提案 し、 その 材料 とし て放 射 線照 射に よる 置換 ポリ アセ チレ ンエ ス テ ル 単 独 で も 半 導体 素子 化が 可能 かど うか を 検討 した もの であ り、 その 基礎 的段 階 と し て 新 規 レ ジ スト 材料 とし て働 く可 能性 の ある ポリ プ口 ピオ ール 酸ア ルキ ルエ ス テ ル の 合 成 と そ の分 析を 行い 、生 成ポ リマ ー の自 己組 織能 に関 する 立体 構造 の解 析 及 び 放 射 線 照 射 に対 する 効果 につ いて 記述 さ れて いる 。そ の主 要な 成果 は次 のよ う に 要 約 さ れ る 。

  (1) Rh錯 体 触 媒 を用 いた 置換 ポリ アセ チレ ン の合 成に おい て、 新規 の脂 肪族 のポ ル プ 口 ピ オ ー ル 酸 アル キル エス テル の立 体規 則 的重 合に 成功 して いる 。さ らに 種々 の 機 器 分 析 に よ る キャ ラク タリ ゼー ショ ンか ら 生成 ポリ マー は規 則的 な頭 ―尾 構造 を 有 す る シ ス 体 の 高 分 子 材 料 で あ る 事 を 明 ら か に し て い る 。   (2)置 換 ポ リ ア セ チ レ ン の 幾 何 構 造 の 解 析 に おい て、 半経 験的 量子 化学 計算 から 求 め ら れ た ラ セ ン 状 の 高 分 子 の 直 径 と 粉 末X線 回折 で求 めら れた 擬六 方晶 構造 のカ

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ラムの直径が良く一致する事を示し、ポリプ口ピオール酸アルキルエステルは固相 で自己組織能としてラセン状の高分子が最密充填した擬六方晶カラム構造を取る事 を明らかにしている。また、原子聞力顕微鏡によりこの擬六方晶構造分子の集合組 織の観察にも成功したが、この結果はX線回折の結果を支持している。透過型電子 顕微鏡による置換ポリアセチレン薄膜の観察では、半経験的量子化学計算から求ま るラセン状高分子の単分子鎖と良く一致する像を得ており、置換ポリアセチレンの ラセン状単分子鎖の観察に世界で初めて成功している。

  (3)ポリプ口ピオール酸アルキルェステルを7線照射した場合、核磁気共鳴吸収 スベクトル法からシス体含有率の減少、電子スピン共鳴スベクトル法から卜ランス 共役鎖の生成、紫外・可視線吸収スベクトル法から汀共役系の成長を示す現象を見 出し、これ等種々の計測法によルシス体からトランス体への幾何異性化反応が起こ る事を明らかにしている。また、シス体の加圧によって幾何異性化したトランス体 との比較を行い、シス体を加圧した場合に生成したトランス体は平面的な構造を有 するのに対して、イ線照射によって生成したトランス体ではねじれた構造を取る事 を明らかにしている。さらに、イ線照射した場合、ポリプ口ピオール酸アルキルェ ステルの分子量増加が生じることから、新規のネガ型レジスト材料としての可能性 を見出している。

  (4)ポリプ口ピオール酸アルキルエステルに対する電子線照射の効果として、7線 照射の場合と同様に、電子線照射においてもシスートランス幾何異性化反応が起こ る事を明らかにしている。一方、イ線照射の場合と異なる点は、電子線照射ではポ リプ口ピオール酸アルキルエステルの主鎖切断が起き、分子量が大きく低下し、こ の 場 合 は 新 規 の ポ ジ 型 レ ジ ス 卜 材 料 と し て 機 能 す る 事 を 見 出 し て い る 。   これを要するに、著者は、Rh錯体触媒を用いて合成した置換ポリアセチレンェス テルの立体構造及び放射線照射による効果について、幾っかの新知見を得たもので あり、シス体構造を有する絶縁性高分子である置換ポリアセチレンェステルが放射 線の照射、即ち、露光により導電性物質の前駆体構造であるトランス体へ転換でき る事から、シリコンを使用しない新しいタイプのりソグラフイ工程が具現できる可 能性を示している。この成果は基礎的段階ではあるが、学術的に重要な結果を多く 導き出しており、量子エネルギー工学分野に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認 める。

参照

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