第
129 回 北海道整形外科外傷研究会
抄 録
平成
26 年 2 月 22 日(土) 14:15~
於:札幌医科大学 記念ホール
会長:
札幌徳洲会病院 辻 英樹 先生
共催:
北海道整形外科外傷研究会
帝人ファーマ株式会社
帝人在宅医療株式会社
第
129 回北海道整形外科外傷研究会
【一般演題】14:30~14:45 座長:札幌徳洲会病院 辻 英樹先生 (1)左下腿遠位部開放骨折GustiloⅡを受傷し、長期間の創外固定が施行された 症例の理学療法介入 札幌徳洲会病院 理学療法士 村田 聡 先生 【主題1:橈骨遠位端骨折】14:45~15:30 座長:札幌徳洲会病院 辻 英樹 先生 (1) Galeazzi骨折、Galeazzi類似骨折の小経験 札幌医科大学 入船 秀仁 先生 (2) 橈骨遠位端骨折変形治癒に対して自家骨移植なしで矯正骨切り術を施行した1例 ~Extended FCR approachの有用性~ 協立病院 津村 敬 先生 (3) 掌側ロッキングプレート固定後掌尺側骨片の転位を来した橈骨遠位端骨折の1 例 札幌徳洲会病院 二村 謙太郎 先生 【主題2:手根骨外傷ほか】15:45~16:45 座長:札幌徳洲会病院 辻 英樹 先生 (1) 採血後に発生した手指機能障害の1例 市立病院前整形外科クリニック 佐久間 隆 先生 (2) 月状骨周囲脱臼の3例 札幌医科大学 齋藤 憲 先生 (3) 小菱形骨背側脱臼骨折を合併した第2-5CM関節脱臼の反省すべき1症例 釧路労災病院 本宮 真 先生 (4) 尺骨短縮術の手技 市立札幌病院 平地 一彦 先生 【教育研修講演】17:00~18:00 座長:札幌徳洲会病院 辻 英樹 先生 『 TFCC損傷の診断と治療戦略 』 北海道大学大学院 医学研究科 整形外科学分野 教授 岩崎 倫政 先生一般演題
左下腿遠位部開放骨折GustiloⅡを受傷し、長期間の創外固
定が施行された症例の理学療法介入
札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター 村田 聡 小野寺 智亮 梅田 健太郎 荒木 浩二郎 菅原 亮太 瀬戸川 美香 阿部 裕希 谷口 達也 【はじめに】左下腿遠位開放骨折に対しTaylor Spatial Frame(以下 TSF)による創外固定術を施行し た症例を経験した。Foot ring 除去後の足関節 ROM は継時的に回復し、良好な機能成績を 得たので報告する。
【症例紹介】
50 代男性,高所から転落し左下腿開放骨折(AO 分類 43-C3.2)Gustilo 分類 typeⅡを受 傷。当日にHoffmann 創外固定術を施行。受傷 5 日に腓骨 plating、開放創に VAF を施行。 受傷24 日に創外固定を TSF へ変更した。
【治療経過】
Hoffmann 創外固定術後の足趾 ROM に制限を認めた。足関節不動が予測されたため、 Hoffmann 創外固定術後から足趾屈曲,伸展筋腱の滑走練習を実施。TSF 術後から Foot ring 除去までの18 週は足関節底背屈等尺性運動も実施し、足関節周囲筋腱の滑走を促した。
Foot ring 除去時の足関節 ROM(他動)は背屈-15、底屈 35 で、背屈時の距骨後方滑りの低 下が顕著であった。足関節ROMex や荷重位での背屈持続伸張を開始し,距骨の後方押し込 み操作は24 週の TSF 除去後から積極的に促した。TSF 除去後 4 週から 1/3PWB,10 週で FWB を開始した。 FWB 開始後 9 週で足関節 ROM は背屈 15、底屈 50、独歩での跛行は消失し、階段昇降 1 足 1 段動作を獲得。JSSF scale は 79/100 点となった。 【考察】
Foot ring 除去時は足関節拘縮を認めたが、関節包や筋に対する持続伸張で、足関節 ROM は大きく改善した。早期から足趾や足関節の屈曲、伸展筋腱の積極的な滑走練習を実施し たことで、癒着は最小限に留まり、継時的なROM 改善に繋がったと考える。TSF の利点 である荷重を利用したストレッチ開始までに足関節周囲筋腱の癒着を予防することが、足 関節機能再獲得に重要であった。
主題1 橈骨遠位端骨折 (1)
Galeazzi骨折、Galeazzi類似骨折の小経験
札幌医科大学 高度救命救急センター 入船 秀仁 平山 傑 札幌医科大学 整形外科 高橋 信行 【はじめに】 比較的稀なGaleazzi骨折、Galeazzi類似骨折を経験したので、若干の考 察を加えて報告する。 【症例】 症例1、34歳男性。自動車運転中、ハンドル操作を誤り、路外へ逸脱し、電柱に衝突し 受傷した。受傷時の肢位は不明である。右前腕部の疼痛とガラスによる多数の開放創をみ とめ、X線上、橈骨骨幹部骨折と遠位橈尺関節の掌側脱臼を認め、Galeazzi骨折 と診断した。即日創部の洗浄デブリと経皮pinning、人工真皮による開放創部の一 時被覆を行い、受傷後5日目にデブリ、橈骨plating、全層植皮を行った。 症例2、16歳男性。自転車にて坂道を下っている際に転倒し右手をついて受傷した。X 線上、橈骨遠位骨幹部の骨折と茎状突起骨折を伴うDRUJの背側脱臼を認め、Gale azzi骨折と診断した。受傷後4日目に橈骨plating、尺骨茎状突起screw 固定に加え、TFCC修復を行ったが、DRUJの不安定性が残存していたため、回外位 にて回旋固定pinを追加刺入した。 症例3、13歳男性。高所墜落にて受傷。外観上、前腕遠位部の屈曲変形を認め、X線上、 橈骨遠位端骨折と尺骨骨端線離開を伴う背側脱臼を認め、Galeazzi-equiv alent lesionと診断した。他部位の開放骨折もあったため、即日全身麻酔下 に徒手整復を行い、ギブス固定を行った。 【考察】 Galeazzi骨折は前腕骨骨折の6%とされている。Galeazzi類似骨折は小 児橈骨遠位端骨折の3%にみられるとされている。これらは適切な治療が行われなければ、 前者ではDRUJの障害を残すこととなり、後者では骨端線早期閉鎖による成長障害を来 すこととなる。いずれも、前腕骨骨折を診療する際には常に本損傷を念頭に置いて治療す ることが肝要と考えられる。主題1 橈骨遠位端骨折 (2)
橈骨遠位端骨折変形治癒に対して自家骨移植なしで矯正骨切り術を
施行した1例
~Extended FCR approachの有用性~
刀圭会協立病院 津村 敬 【はじめに】 橈骨遠位端骨折変形治癒に対する矯正骨切り術には背側アプローチの使用が一般的だが、 複雑な作図と自家骨移植が必須である。我々はObayのExtended FCR approachを用い、自家骨移植なしで矯正し得た症例を経験したので報告する。 【症例】 症例は66才女性である。転倒して右橈骨遠位端骨折を受傷し、翌日に徒手整復・ギプス 固定を施行した。しかし、変形治癒による機能障害残存のため、受傷後20週で矯正骨切 り術を施行した。術直前の可動域は掌屈40度・背屈50度・回内20度・回外80度、 握力6kg(健側比24%)、Mayo wrist score50点であった。X線検 査ではVolar tilt(VT)-14度・Radial inclination (RI)11度・Ulnar variance(UV)4mmであり、骨癒合は得られ ていた。手術にはExtended FCR approachを用いた。まず骨折線に 一致した骨切りを全周性に行い、元の骨折を再現した。次いで橈側の支持プレートで正面 像のアライメントを獲得し、condylar stabilizing法で背屈変形を 整復した。整復により生じた空隙に人工骨を挿入したが、骨皮質の欠損は生じなかったた め自家骨移植は不要であった。術直後から可動域訓練を開始し、LIPUSを併用した。 術後25週の可動域は掌屈60度・背屈60度・回内60度・回外80度、握力15kg (健側比63%)、Mayo wrist score80点である。X線検査ではVT1 0度・RI25度・UV1mmであり、骨癒合は完成している。 【考察】 Extended FCR approachは掌側皮切から背側の展開も可能なアプロ ーチである。骨癒合例においても、本アプローチから骨折線に一致した骨切りを全周性に 行い、元の骨折を再現出来れば、自家骨移植なしで矯正骨切り術を行える可能性がある。主題1 橈骨遠位端骨折 (3)
掌側ロッキングプレート固定後掌尺側骨片の転位を来した橈骨遠位
端骨折の
1 例
札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター 二村謙太郎 辻英樹 斉藤丈太 倉田佳明 安藤卓 上田泰久 松井裕帝 佐藤和生 士反唯衣 順天堂大学医学部附属順天堂医院 整形外科 金子和夫 【はじめに】 橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートで固定し、術後掌尺側骨片の転位を来たし 2回の骨接合術を要した1例を経験したので報告する。 【症例】 54歳女性、転倒し受傷。診断は掌側転位型橈骨遠位端骨折(AO 分類23-C3.1) で受傷から4日目に掌側ロッキングプレートにて骨接合術を施行した。術後2週で掌 尺側骨片の転位を認めた。橈骨手根関節の亜脱臼位と遠位橈尺関節の適合不良ありと 判断し、より遠位設置が可能で尺側骨片に3本のスクリューを挿入しえる掌側ロッキ ングプレートにて再度骨接合術を施行した。再骨接合後5日目のX 線で掌尺側骨片 の再転位を認めたため、再々骨接合術を施行した。3回目の手術は掌尺側骨片をDual window approach の ulnar window からバットレスプレートにて固定した。橈骨手根 関節の亜脱臼位を予防するため術中に装着した創外固定を術後約4 週間留置した。術 後CT で掌尺側骨片は整復されていたが,遠位橈尺関節は若干の適合不良を認めた。 再々手術後6 ヶ月の時点で、背屈:自動 55°他動 75°、掌屈:自動 40°他動 60°、 尺屈:自他動30°、橈屈:自他動 15°、回内:自動 55°他動 70°、回外:自動 35° 他動40°、Mayo wrist score65 点であるが、元職の新聞配達に復帰している。【考察】 遠位橈尺関節を含む掌尺側骨片を掌側よりロッキングスクリューで固定できない場 合、より確実な固定法としては以下の方法が考えられる。転位骨片自体をK-wire 数 本で多方向から固定するか、バットレスプレート固定するかである。前者は骨質に依 存する固定法であり、後者の固定法の信頼性が高い。渉猟し得た範囲では掌尺側骨片 にバットレス固定を要した報告はない。どのような掌尺側骨片がロッキングスクリュ ーで固定できないかを明らかにする必要がある。 【結語】 橈骨遠位端骨折の掌尺側骨片の固定にバットレスプレート固定を要した1例を経験した。
主題2 手根骨外傷ほか (1)
採血後に発生した手指機能障害の1例
市立病院前整形外科クリニック 佐久間 隆 特異な経過を辿った採血後末梢神経障害の1例を報告する。 33歳女性:職業、医療事務。既往歴、難聴・身障6級。 健康診断目的で左肘窩部から採血時、時間を要し、途中で小指球部に放散痛を自覚した。 同日、勤務先の整形外科を受診。一過性の尺骨神経障害の診断でVit.B12を処方さ れた。症状改善せず、正中神経刺激症状も出現したため、受傷後2週で、神経伝導速度検 査施行。肘部管症候群、手根管症候群の診断でリハビリ治療を指示されたが症状改善なく、 受傷後6週の時点で手術治療を勧められた。セカンドオピニオンを希望し当クリニックを 受診した。 初診時所見:左鷲手変形、フルグリップ不能、関節拘縮なし。採血部圧痕なし、Tine l±。 鑑別診断:①採血により発生した神経麻痺。②心因反応などを考え、手術治療の必要性を 否定した。1週ごとに通院治療。生活指導、労災治療機間の延長などを行い、受傷後7ヶ 月で完治、労災終了となった。 近年、採血に伴う医療トラブルが時々問題になる。多くの場合、一過性の皮神経刺激症 状であるが、初期対応が不適切であると予想に反した経緯を辿ることがあり、注意が必要 である。主題2 手根骨外傷ほか (2)
月状骨周囲脱臼の3例
札幌医科大学 高度救急救命センター 齋藤 憲 入船 秀仁 平山 傑 【はじめに】比較的まれな月状骨周囲脱臼の3例を経験し、それぞれに手術加療を行った ので、若干の考察を加えて報告する。 【症例1】30歳男性。約5mの高さから転落し受傷。右開放性月状骨周囲脱臼、左Es sex-Lopresti脱臼骨折と診断された。即日徒手整復し、経皮ピンニング、屈 筋腱縫合、創外固定を施行した。受傷後6週で創外固定・c-wireを抜去し、月状骨 舟状骨間と三角骨月状骨間をCCSにて内固定した。 【症例2】22歳男性。約10mの高さから転落し受傷。出血性ショック、右脛・腓骨骨 幹部骨折、右下腿コンパートメント症候群、胸腰椎多発骨折と脊髄損傷、仙骨骨折、両肺 挫傷、両側気胸、右腎損傷、脳挫傷と診断された。受傷後7日に抜管されたのちに、右手 関節・左肘関節痛を訴え、右月状骨周囲脱臼骨折、左肘関節脱臼骨折(terrible triad)と診断された。受傷後12日目に右手根骨骨折観血的手術を施行した。 【症例3】65歳男性。約10mの高さから転落し受傷。左月状骨周囲脱臼、尺骨茎状突 起骨折、右気胸、左坐骨骨折と診断された。徒手整復は不可能であった。受傷後5日目に 右手根骨観血的靭帯修復術を施行した。 【考察】月状骨周囲損傷(脱臼、脱臼骨折)は手根骨損傷の7%と比較的まれな外傷であ り、見逃されることも少なくない。その症状は疼痛・腫脹・可動域制限・正中神経領域の 知覚障害などが主である。受傷後数日であれば非観血的整復術を行い、その後に観血的整 復術(内固定)を追加する。慢性化すると整復不能となり手根不安定症発症などへ進行す るため、早期発見・早期加療が重要である。主題2 手根骨外傷ほか (3)
小菱形骨背側脱臼骨折を合併した第2-5CM関節脱臼の反省すべ
き1症例
釧路労災病院 本宮 真 岩見沢市立総合病院 田崎 悌史 北海道大学医学部 岩崎 倫政 【はじめに】小菱形骨の脱臼骨折を合併したCM関節背側脱臼骨折に関しての報告は極め て稀である。今回我々は、初期加療を誤ったため陳旧化し治療に難渋した、右手の小菱形 骨背側脱臼骨折を含む第2-5CM関節背側脱臼骨折の一例を経験したので、反省も含め て報告する。 【症例】47歳男性。主訴:両手の激痛。船上にてガスバーナーで加熱したドラム缶が爆 発し、飛んできたドラム缶の蓋を両手に受けて受傷した。右手の第5中手骨骨幹部骨折お よび左手の前腕コンパートメント症候群、橈尺骨多発骨折などに対して、同日緊急手術を 行った。手術後1週目のX線写真にて、右手第2-5CM関節が脱臼位であることに気づ き、徒手整復および経皮的鋼線固定を施行した。鋼線固定後5週目に鋼線を抜去したとこ ろ、再度CM関節の脱臼を認めた。再度の整復および鋼線固定を施行したが、術後のCT にて小菱形骨が脱臼位にあることが判明した。手指の拘縮改善を目的にリハビリをそのま ま継続し、受傷後約100日目に観血的手術を施行した。脱臼した小菱形骨が長短橈側手 根伸筋腱間に陥頓し、手関節伸展時痛に関与していると考えられた。また、橈骨遠位端背 側とぶつかり骨性の伸展制限をきたしていた。手術は、小菱形骨を摘出した後、腸骨移植 を併用して第2第3中手骨-有頭骨間の固定を行った。術後約2年4か月を経過した現在、 手関節可動域は伸展30度屈曲50度と制限が残存したが、幸い手指関節の疼痛は認めず、 漁業の第一線に復帰した。 【考察】小菱形骨背側脱臼骨折は、CM関節脱臼を伴った場合通常のX線検査のみでは判 断が難しく、見逃さないよう注意が必要である。整復位の獲得には閉鎖性の整復が困難で あり、観血的に整復を行うべきであった。陳旧化した症例に対しては、確立された治療方 法は認めないが、第2第3中手骨および有頭骨の関節固定術は治療法の選択肢の1つと考 える。主題2 手根骨外傷ほか (4)