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家鶏喉頭軟骨の催骨現象に関する実験的餅究

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(1)

家鶏喉頭軟骨の催骨現象に関する実験的餅究  

金沢大学医学部耳鼻咽喉科学数量(主任 抵田竜一教授)  

専攻生 小    森   弘  

月「言γ0βカ言動肌0}・言  

(昭和30年9月8日受附)  

(本論文の一部は昭和28牢10月日本耳鼻咽喉科学会笥1匝仲部地方連合会,昭和29牢5月日本耳  

鼻咽喉科学会第55回総会,昭和29年6月第17回十全医学会集会において発表した.)  

次   

第5葦 家鶏喉頭軟骨化骨現象の組織学的特徴   第6葦 家鶏喉頭軟骨の化骨現象に関する逐年的  

変化  

文 献  

日   

舞1章 喉兢軟骨化骨現象に関する諸政   第2章 家報の発育と去勢のこれに及ぼす影蜜   第3章 家親喉頭・下喉筑軟骨の解剖学的構造   第4車 間田氏硬組級特殊生体染色法とその検討  

第1章 喉頭軟骨化骨現象に関する諸説   

を,J.Chievitzは20−22歳を奉げ,M.Scheier   ほ18−19歳を,E.Franlくel,中村は15歳を,  

Dreifussは20蔵前に化骨が開始されるものであ  

ると述べている.M・Pascherは例外的に11歳  

の男見に化骨を見たが,一般に22歳迄ほこれを   認めることを得なかったとして化骨開始時期を   身体の長軸成長が終末に近ずく時期としてい  

る・SchumacherはDenkeトt(ahlerの綜菩の中  

で,爾余の骨の成長が停止した時期とし,Wulト  

SOn,GiT−Sl)l−rgは性の成熟期迄は石衣化も化骨  

も見る与とが出来なかったと述べ,叉,CllalT卜   berlinやYoungほ成熟期に入る前に化骨が開   始されるとしている.   

次に化骨の開始時期に関する男女の差異につ   いても諸説がある.即ち女性が早いとするもの  

に保利,三上,湯浅,稗臥手 r孟nkelがあり,叉   逆に男性が早いとするものにChievitz,Dreifuss,  

中山,奥山,Marshallがあり,男女の問に大差  

なしとするものにZim111ermann ありて,全く  

喉頭軟骨が年齢と共に種々なる組織学的変化  

を示すことは古来多くの学者が認めておる所で   あるが,蓋し人類及び多くの動物においては,  

男女両性の音声に著しい相異があるので,発声  

器たる喉頭の形態学的並びに組織学的変化と発  

声機能との問に何らかの関係を見出さんとした  

ものであろう.   

これらの組織学約諾変化のうち喉頭軟骨の化   骨現象に関しては,その変化が最も著明である   関係上,旧くから研究の対象とされているが,  

それにも拘わらず次に述べるように,その化骨   の開始・完了の時期,化骨進捗状況,或は去勢   の化骨に及ぼす影響その他組織学的特徴等詳細   の点ではその成績に帰一する研がない.  

(1)喉頭軟骨の化骨開始時期に関する諸説    比較的詳細な研究をなした最初の人は,ⅠⅠ.  

Rheinerであるが,彼は骨組織が初めて喉頭軟  

骨に出現するのは人では20年代の初期であると  

している.叉M.Schotteliusは思春期の経り  

(2)

家箋烏喉頭軟骨の化骨現象に関する実験的研究 1855

いずれの説を安当とすべきやに苦しむ現状であ

る.

 (2)化骨進捗歌話に関する諸説

 上述の如くにして出現した化骨核は次第に軟 骨内において拡がって行くのであるが,その化 骨核の出現部位及びその拡大方式については男 女の間に老 明な差異ありとするScheier,保利,

三上,湯浅,稗田等の読もあり,一方大差なし とする:Fr三inl{e1, Zimme;mann等の説もある.

 叉化骨の進捗六度については一般に男性は女 性より速度大であるとされているようである が,その詳細については検索方法の不備のため に不明の点が多い.

 (3) 去勢ダ)喉頭軟骨化骨に及ぼす:影響に関 する諸読

 去勢が人類及び動物に大なる影響を及ぼし,

その第2次性徴は勿論精示朝犬態に迄も顕著な変 化を与えることはよく知られた事実である.喉 頭も亦その影響をまぬがれず,発声機能に変化 を生ずると共に形態学的乃至組織学的変化を受 けるものであるが,今日迄の文献を見るに多く は人類に関するものであって,議官叉は類法官 症について観察されている.而してこれら諸変 化のうち特に喉頭軟骨の化骨現象に及ぼす影 響について論及している報告を拾うに,先ず DuPuytrenは去勢者の喉頭は正常男子の↓念小さ くその形1伏は少年のそれと同程度で,化骨機転 は相当高年に入って始めて開始されると述べ,

M611erは完全な仮性宇陰陽の患者の一例に女 性型の化骨を見たといい,M. Scheierは43歳 の宣官の喉頭についてレントゲン学的検索を行 い,高年に達すれば化骨し,それは女性に近い 型を示すものであるとしている.一一方Gruberは 65歳の若年去勢者について,Talldler, Grossは 28歳の宣官について全く化骨を認めなかった一一 例を夫々報告し,Gruber, Huschka, M重iller等 は宛官の喉頭軟骨は石油沈着及び化骨を認め ず,全く幼年者の喉頭と同じであったと述べて

いる.

 次に去勢動物による実験的研究をなしたもの に:Ferreri,細谷,鈴木,橋本等があるが,化骨 現象に及ぼす影響について観察したものは,極 めて少なく且つ詳細を欠いている.

 即ち:Ferreriは家鶏について観察し,去勢鶏 でもなおよく化骨し,喉頭口後縁横断面では大 なる骨髄を有する骨質を認めたと述べ,一方細 谷は去勢後9−10ヵ月のものを検索し全く化骨 を見なかったと記載している.

 鈴木も亦家鶏について比較的詳細な検索をな し,生後6ヵ月(去勢後3ヵ月)では殆んど化 骨を認めないが,生後10−12ヵ月(去勢後7−

9カ月)では雄鶏に比すれば狭小で略ζ雌鶏に 類似する化骨を示し,生後20カ月(去勢後17カ

月)に至れば対照に比し狭小なるも骨質緻密に して大なる骨髄腔を有する骨組織を認めたと記 載している.

 橋本は家兎について去勢実験を行い,多少の 石友沈着を認めた他一例も化骨を見なかったと 述べている.

 このように去勢の喉頭軟骨化骨現象に及ぼす 影響については,或は幼若型を示すとし,或は 女性型を示すとし,或は全く化骨を見ずとして

帰一・する所がない.

 (4)以上の如き現状に鑑み,これらの関係 を明らかにする目的を以て,私は雌雄において 第2次性徴の顕著なる,特にその昔声に顕著な 相異を示す所の家鶏を試鰍として選定し,これ を正しい飼育法によって正常なる発育をとげさ せたるもの,及び生後3ヵ月目に去勢術を施し たる雄鶏について,この喉頭(上喉頭及び下喉 頭)に対して岡田によって考案せられた硬組織 特殊生体染色法を施して,石次沈着像を確実に 把握し,家鶏の発育と化骨との関係,雌雄難の 相異,去勢の化骨現象に及ぼす影響について検 索し,いささか興味ある成績を得たので,御批 判を乞う次第である.

【137】

(3)

第2章 家鶏の発育と去勢のこれに及ぼす影響  〔緒言〕

 私は家鶏の喉頭軟骨の化骨現象が身体一般の 発育及び第2次性徴の発達と如何なる関係にあ るかについて考察するため,先ずその予備的実 験として家鶏の発育について計測を試みた.従 来この点に関する研究は主として性ホルモンの 検定,治療効果の判定について行われている が,予想外に少なく,その上文献によってその 成績に大差がある.

 なお家鶏は養鶏家によって家鶏の産卵能力と 食肉的立場より常に品種:の改良に努められてい るから,同一品種の家鶏であっても,その系に よっては発育欣態を異にする上,飼育方法が不 完全なる場合は個体差が著しい.従来諸家の成 績の不一致は一にこの点にかかっているのであ って,私の実験目的も亦ここにある.

 なお去勢の化骨現象に及ぼす影響を検索する ため幼時去勢鶏の身体発育の駄況をも併せ計測

した.

 〔実験方法〕

 (1)家出の選定とその無始方法

 家箋烏は同一系に属する白色レグホン種で,養鶏業者 によって,その年の2月に入三二化しその後2カ月間 二三された健康な幼雛即ち春雛を4月に購入し,爾後 次に述べる如く,濃境及び嗣料を可及的同一条件にし て飼育した.一一般に家鶏は飼育方法によっては,その 発育に数上月の差を示すものであるから,若し実験者 が自身で飼育せず業者よりその月々の家後を指定購入 して実験に供する場合は,例えば7カ月と称するもの の申に6ヵ月叉は8ヵ月の家鶏が混入する危陰があ

り,その成績に大なる誤りを来たすことが多い.

 飼育方法としては,日当りよき南向きの乾燥地を選 び,東西南の三面を金網で囲み,北面を板壁とした土 庇の鶏舎を建て,ここに1易につき1m振方の面積を 与えるように4〜5羽宛,雌雄別々に銅溢した.雌雄 を混合すると雌は雄に敗けて充分に飼料を弓取出来な いのみでなく,その寝所も不良の場所に邉いやられる からである.叉時として同性の間でも孚宿して一睡鳥は 強鶴に敗けてこれ反充分の飼料,生活環境を得られず 栄養不良に陥ることがあるので,かかる場合は一応別

の鶉舎に隔離することを要した.

 飼料としては小米,小変,魚粉,貝殼粉,米糠,ふ すま及び少量の食塩を練餌として与え又新鮮な野菜及 び水を補給した.飼料の量は成鶏には1日1509前後 でこれより幼若なものに対しては月齢に応じて50−

1CO9を,朝昼,夕の3回に分割して与えた.

 以上のような飼育方法によって家鶏は先ず一応順調 な発育をなすが,屡汝ビタミン欠乏症,下痢その他の 疾病に罹り,叉羽蚕,南京虫が発生し,或いは不明の 原因で発育の急激な低下を来たし易く,その都度治療 及び伝染の予防を行う必要が多い.

 このような注意によってもな痴且つ発育の良否に多 少の差が生ずるので,私は当月の最も発育良好なもの を選定し,これについて計測,観察した.

 (2)去勢実験

 上記の如くにして嗣育した家鶏のうち生後3カ月の 雄鶏に対し次のよ弓に去勢術を施し実験に供した.

 去勢術には種々の方法がある.例えば腹部の前壁に 縦切開を施す法,腹部の側壁に縦切開を施す法,背部 で最律の肋間に斜切開を施す法があるが,家鶴の睾丸 は腹腔内の上部で,肺臓の後方,腎臓の前端に位する ため,最後の術式は両側の睾丸摘出のために両側に切 開を加える不利があるが,皐丸に到達するに最も近 く,幼鶏の如き睾丸の小なる場合の去勢に適してい

る.

 術前1日間は絶食せしめ水のみを与えて腸管を可及 的空歴にしておく.

 :Fisher式日定器に腹臥位に固定し,第4肋間附近 より後肢附着部迄で背部正中線より側胸部迄の羽毛を 取り除き,沃度丁幾消毒後半麻醇で:最後の国軍におい て脊椎より斜方向に約3cmの皮膚切開を置く.術野 下孚に現われる縫続騰を下方に圧排し,肋間の軟部組 織を腹膜と共に切る.以上の操作中血管に大なるもの はないが,なるべく出血を防止する.次に乳檬突起削 開術用の開創器を用いて広く腹腔を開く.南帯鏡下に 腹腔をうかがう時は腸管室虚なる場合は正中部の背柱 の両側で,肺臓の後方,腎臓の前端に腕豆形白黄色に して薄い被膜に包まれた畢丸が搏動性に前後方向に運 動しているのが見られる.

 有鈎撮子と下甲介二刀とを以って被膜を破り注意深     まく剥離し,柄部が残ったならば睾丸を2〜3回ねじて 摘出するか叉は鼻皇霊断器にて絞断ずる.この際直下

(4)

家鶏喉頭軟骨の化骨現象に関する実験的研究 1857

を走る大灘脈を破らぬよう注意すべきで,この二二よ りの出血は大きく術を困難にするばかりでなく,出血 死を来たし易い.開創器をはずし,腹膜も皮膚も一緒 に数糸縫合し,沃度丁幾を塗布して術を終る.次に他 側を同檬に施衡する.

 ここに注意すべきは二期の睾丸は脆弱で壊れ易いこ とで,たとえ小片なりとも腹:腔内に残す時は容易に再 生して去勢の目的を達し得ない.私は20朋の雄鶏に去 勢術を施し,約孚数は術申術後の出血死及び不完全去 勢によって不成功に終ったが,成功例は術後の経過良 好で正常なる発育をとげた.

 (3) 計測方法

 身体一般の発育の指標として,体重と爆管寮長とを 毎月末に測定した,長歯骨の代表として後肢の闘瞭骨

についてその最遠端より最近端的を体外表より測定し たが,附鋤骨は鳥類では道管骨の一つであり,且つ朋 毛に喪われないため計測に便なるためである.

 第2…欠性徴の発蓮の指標としては先ず第一に鶏冠の 面濱を後述する如き方法で毎月末に測定した他,胴…毛 の変化。行動,性質の変化について観察し記録した.

 鶏冠測定法:家鶏を固定器に固定し,白紙の上に 鶏冠を横たえ,注意して鉛筆にてその全形を写しと

り,これをプラニメーターにて10回その面積を計測 し,計測値の算術李均を以って鶉冠の全面積とした.

 由来期冠の測定法については,性ホルモンの作用を 観察する目的で,多くの方法が案出されている.

 即ちMc Gee及びP6zard等は鶏冠の前端より後 方最尖端迄の長さと,眼の上部に相当する部における 高さとを測定して,噛そのi乗積を以って表示し,Gall−

agher等はその和を以って表示し, Doddsは長さの みで表示する方法を採用している.かかる方法を直線 的測定法とすれば,次に述べる面積測定法もある.

工aquer等は全面磧をプラニメーターで測定し,緒 方等は底心面積(下図B)で,:叉は基底部面稜(下図 A+:B+C)で表示する方法を推熱している.

8   c

B

A十:B十C:

中心面積 基底部面漬

 以上の各種測定法についてその優劣を考えて見る に,直線的測定法はいずれも眞の鶴冠の大きさを表示 することと著しい距たりがあるのみならず,鶏冠の長 さ叉は高さの測定に当り,その基点は家鶴の成長と共 に移動する故その決定が困難で,いずれも要当な測定 法とはいい難い.

 一方面積測定法にも夫々優劣がある.即ち全面積測 定法は理論上:最も優れているわけであるが,実際はこ れをプラニメーター法叉は重量法で計測する必要があ るため,家戸々冠の如き複雑な形をなす面漬測定に当 っては誤差が大きい.これに反し基底部面積や遠心面 積測定法は,全面積をいくつかの≡i角形に分割して幾 何学的に測定することが出来るので誤差が少ない.最 近緒方及び原はこれら各種測定法を比較検討して全面 積測定法及び中心面積測定法がホルモンによる鶏冠の 生長率を比較するには最も増大率が大で,僅少の差異 をも見出し易いことを報告している.

 以上の理由により私は本実験において全面積をプラ ニメーターで測定したのであるが,性ホルモンの作用 を見る場合の如く鶏冠の極小の生長率をも見遙し得な いのと異なり,且別の生長率を比較するためにはこの 方法で充分であると思われる.

 (4) 実験家呼数

 飼育した家鶏は100羽を越すが,或いは銅育途中に 擁死し,或いは疾病その他不明の原因で栄養不良に陪 つたので,実験に供し得た家鶏数は下表(第1表)の 通りである.

 叉去勢実験に関しては最初20羽について施行した が,その孚数は出血死又は不完全去勢に終り,結局実 験に供し得た家鶴数は第1表の如くである.

第1 表実験家鶏数

雄 箋烏

雌 鶏 去勢鶏

2 10 10

3 10 10

4 5

・・ P・・

10 10

10 10

6 10 10 8

7

10 10 8

8 10 10 8

9 10 10 5

10

ユ0

10 5

11

7 6 5

ユ2

4 4 2

101 100 61

総 計

262

【139】

(5)

:第2表 体重表 (軍位9)

月訳

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

雄  鶏 452.0 980.0 1325.8 1540.0 2082.5 2125.2 2360.0 2615.5 2537.5 2737.0 2648.0

雌  鶏 453.5 978.5 1162.5 1304.5 1615.5 1736.5 1960.0 2100.0 1987.6 1923.5 2081.0

去勢鶏

1311.0 1482.0 1725.5 1935.2 2108.7 2371.2 2364.4 2387.3 2410.0

備考1数値は顎脚均を示す

医9

25 20 15

10 09 08

0,7

06 05

第1図 体

        04

       2   5  4   5   6 し雌鶏は20009に過ぎない.

 去勢鶏ではその体重常に正常雌雄鶏の中間値 を占め,体重増加の停止は正常鶏と同様生後9 カ月である.

 (2)鮒蹟骨長

 正常雌雄鶏及び去勢鶏の鮒心骨の長さを毎月 末に測定した成績は第3表の如く,これを牛対 数曲線にて示せば第2図の如くである.

 即ち正常家鶏では生後3−4カ月迄は比較的 急速に長径を増すが,爾後徐々にその増加率を 減少し,生後9カ月で略ぐその増加は停止す る.雌鶏は雄鶏に比し僅かに短かく,叉去勢鶏 は常に正常雌雄鶏の中間値をとる.

  〔実験成績〕

  (1)体重

 正常家鶏の雌雄及び去勢鶏(生後3カ月去勢)

の体重を毎月末に測定した成績は第2表の如 く,これを牛対数曲線で示せば第1図の如くで

ある.

 即ち雌雄鶏共に正常鶏では生後3−4カ月迄 は急速にその体重:を増し,次に次第にその増加 率を減ずるが,生後9カ月に至って最高値に達

し,爾後は略ヒー定値を以て推移する.

 雌雄別についていえば,雄鶏は常に雌鶏より 体重が大である.生後2カ月迄は大差なく4509 前後であるが次第にその差を増し,生後9ヵ月 以後に至れば雄鶏は早均26009前後であるに対 重 曲 線

雄鶏

 ,/D!

@ ,  一 〇 一・

噤@馬

・ 一 り 一〇一 噂一 9 去勢鶏

,/

  .ノ@,

P.  9 一 ■ 曽 .

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C

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一 一 隔 ● . 一脚 り 一● , 騨.ロー 雌 鶏

/二

  !@ρ!

^ , 

C ρ

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@,

C

7 8 9 10 11 12月

    第3表附踪骨面

(軍位cm)

訳雄鶏

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

  3.2 4.8 5.5 6.2 6.5 7.0 7.0 7.3 7.0 7.3 7.3

雌  鶏

3.2 4.5 5.0 5.5 6.0 5.8 6.0 6.5 5.8 6.2 6.5

去勢鶏

5.8 6。1 6.2 6.5 6.9 7.0 6.7 7.1 7.0

備考隊齢算解均を示す

(6)

家鶴喉頭軟骨の化骨現象に関する実験的研究 1859

第2図鮒臆骨 長

Cm 8 7 6

5

4

3

一  曹   一 .j 一 幽

.〆rノ_ ■  一   「

@ 一 @,  P

@一

㍉1、   一@一 .

@ 一

一 一   ,  P  一  冒

諮ィ鶴雄鶏 刀@鶏

卿!,

 !9I  , 

@    一 響

  @ 

@

@

@

一  一 噛  「  一 ・一ρ 一 一 ,  9

  〆

@ り  

@,

C 

25456189101112月

 (3)鶏冠の癸脊一……一

 正常雌雄鶏及び去勢鶏の鶏冠全面積を毎月末 に測定した成績は第4表の如く,これを牛対数 曲線で示せば第3図の如くである.

 即ち雄鶏鶏冠は生後2カ月頃より急速に増大 し,生後4−5カ月頃より増大率徐々に減少し て生後9ヵ月を申心とする1−2カ月聞に略ζ 一定値に達し,爾後は更に増大の傾向を示すが 極めて逞々たる盛況を示す.

 雌鶏々冠はこれに反し,生後4カ月頃迄は雄 鶏々冠に比し徐々に,爾後生後9ヵ月頃迄は比 較的速かにその増大率を増すも,その後は急に 増大率減少して略ミー・定値に達する.

 次に鶏冠全面積の雌雄の比を月別に観察する

第4表鶏冠面積(軍位・m2)

月;課

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

雄 箋烏

2.32 5.48 15.60 32.00 43.00 57.15 68.89 80.00 76.52 82.18 79.81

雌 鶏 2.16 2.86 3.26 7.16 9.13 11.90 33.43 31.05 28.63 29.76 29.04

去勢鶏

4.37 4.58 4.85 4.92 5.07 5.06 5.43 6.21 6.16

雄/雌x100申

107 192 479 447 482 480 206 258 267 276 275

備考隊値は算欝均を示す

第3図鶏冠面積

cm2 8G

60

40

30

20

10 8 8

4

5

2

雄鶏

一 一  〇  9  一 一

 「

亀 り  隔 噂 舳  騨 一  9 , 璽 「 曹r 層一 A 雌鶏

ρ

 σ

@

 , C 

9  1 ,1

去勢鶏

\、

黶謌黶f    .

f 曾 一 ■ 一

, 

  , 

@,C f

 , 

23456789101112月

【141】

(7)

と,生後2ヵ月迄は大差はないが,生後3ヵ月 の絡りには雄鶏は雌鶏の2倍,生後4ヵ月より 7カ月の間には平均約4.7倍に達し,爾後雌鶏 々冠の二大率大となって約2.5倍とな:る.

 以上は正常家鶏についての雌雄鶏冠の全面積 の比較であるが,他方鶏冠の形態についても著

しい相異が見られる.即ち雄鶏々冠の特徴とし ては厚さ厚く,色調は鮮紅色を呈し,辺縁の切 れ込み深く,見るからに端然と聾立するが,雌 鶏々冠は肉の厚さ薄く,ためによく一方に折れ 易く,色調は淡紅乃至榿紅色を呈し,切れ込み 浅く,雄鶏々冠に比較して,一見弱々しい感を 与えるのであるが,かかる性的特徴の差異明確 となるのは生後4ヵ月頃からであって,一応完 成の歌を呈するのは雌雄二二に生後9ヵ月頃で

ある.

 去勢鶏の鶏冠面積の推移については,去勢直 後一時僅かに減少するが再び旧に復し,爾後検 索期間を通じ著しい増大縮小を示さず,略ζ一 定して5−6cm2を示す.叉その形態は正常家 鶏の雌雄いずれに比較するも肉薄く,色調弱く 二品萎縮状を呈し,表面は恰かも白粉を播いた 如ぎ状を呈し,この点正常幼鶏の鶏冠とも全く 異なる形態色調を示す.換言すれば去勢鶏鶏冠 はその大きさは去勢当時そのままであって,形 態色調は全く萎縮状を呈しているということが

出来る.

 (4)その他の第2次性徴

 羽毛:一般に雄鶏は普通羽毛の他に一段長い 羽毛を先ず背部に次に頸部,腰部及び尾部に生 ずるものである.私の観察した所によれば生後 4カ月前後に背羽毛を生じ,約1ヵ月遅れて頸 羽毛を,次に尾及び腰羽毛発来して,夫々の部 に雄性特徴を現わし,生後8−9ヵ月にして完 成する.雌鶏はこれに反しこれら羽毛上の雄性 特徴を全く欠いている.

 次に去勢鶏についてはこの羽毛の発生は正常 雄鶏と殆んど同檬の時期に同様の順序と程度と を以て発来する.従って外見上去勢鶏は鶏冠の 相異を除いては一見正常雄鶏と同じ外貌を呈し

ている.

 性質,行動:正常雄鶏は生後4ヵ月頃に至り 先ず二三を出し頻りに雌を呼び,少しく乱れて 不完全であるが鶏鳴を発し始め,互いに争闘す るようになるが,完全なる雄性特徴を示すのは 生後8−9ヵ月であって,この時期に至れば良 く鶏鳴を発し,警戒昔を出し,争闘,呈媚の蓮 動乱となる.一方雌鶏では鶏鳴を発することな

く性質二品で行動受動的であり,叉このためこ れらの発達の経過を見ることは困難である.又 雌鶏では生後6ヵ月頃より産卵を開始する.

 去勢鶏では鶏鳴を発しないのは勿論,雄鶏特 有の警戒音,誘音,二二晋を全く欠き,二二に 一調なる雑晋を出し,捕えんとすると叫音を出 すに過ぎず,性質行動共に雌鶏よりも穏順にし て受動的である.

 〔総括及び考按〕

 私は次章以下に述べんとする喉頭軟骨の化骨 現象の推移をその身体の発育歌態と比較するた め,予備的実験として試獣たる家鶏の体重,長 管骨長,鶏冠面積を毎月末に測定すると共に,

第2次性徴として彼等の鼠毛及び性質行動の変 化を観察し,以て家鶏の思春期,長鳥骨発育停 止期,成熟期を定めんとしたのである.

 家鶏の発育駅況については旧くからi養鶏家の 熟知しておる所であるが,養鶏家の目標とする 所は産卵能力及び食肉的立場より雌雄の良否を 鑑別せんとする所たあり,従ってその調査方法

も粗雑の点をまぬがれない.

 比較的精密な報告をしているのは主として性 ホルモン実験に関して行われたものであるが,

調査期間短かく幼若期に限られており,且つそ の成績は区々であっていずれの成績を正しとす るかに迷うナ伏況である.

 これは或は家鶏の品種:や系統を異にし,或は 飼育方法が不備であることによる一方,家鶏は 常に養藁家によって品種の改良に努められてい ることによるのであって,各報告者の成績を以 て直ちに私の実験の参考とするわけにはいかな

い.

(8)

家鶏喉頭軟骨の化骨現象に関する実験酌珊究 1861

 以上のような理由から,私は品種並びにその 系の選定,飼育方法に特に意を用いた次第であ㌔

る.

 (1) 正常家鶏について  (a)思春期

 鶏冠の癸育の点から考察すると,雌雄鶏冠の 大きさに著差を生じ始めるのは生後3ヵ月の絡 りであ・?て雄鶏は雌の約2倍,生後4カ月以降 になると4倍以上に達し,この頃より鶏冠の形 態色調も亦夫々の性的特徴を明瞭にする.その 他の性徴としては雄鶏は生後4ヵ月前後に背羽 毛に雄特徴を示し,且つこの頃から誘昔を発 し,不完全ながら鶏鳴を発来し,互いによく争 闘する等,雌雄の闇に劃然たる性徴の差が現わ れ始める.

 次に体重曲線から考察すると,牛対数グラフ 上において生後3−4カ月迄は上に向う凹曲線 を,その後は凸曲線を描くことから,正常家鶏 は生後4ヵ月前後にして幼鶏の域を脱するもの

と考えられる.

 以上によって私は生後4ヵ月前後より思春期 に入るものとした.

 従来本邦における文献によれば,阪本は白色 レグホン種として雄7羽雌3羽,名古屋種5羽 計15羽について観察し,結論として家鶏の第2 次性徴の発育は非常に不調和であって,例えば 鶏冠の急劇な増大を示すのは生後170日目であ るのに雄性行動をとるのは250日目であるとし,

叉雄特徴たる背朋毛発現時期は個体により生後 94日より170日の大差ありとして,いずれの時 期を目して思春期とするや制断に苦しむと述べ ているが,その計測成績を見るに個体差著し く,且つ1羽についての計測は生後8−9ヵ月 迄のもの多く,2カ月より満1年に亘る一環せ る計測をなしたるは僅かに1羽に過ぎない.こ のことを以てしても彼の実験方法が不備である といわざるを得ない.

 原等は飼育方法を嚴重にし,家鶏の正常発育 について嚴密な注意をなして,これに対して観 察しているが,精密な計測をなしあるは生後4

ヵ月迄の幼心についてのみである.しかしなが ら結論として,家鶏の第2次性徴は形態の発育 と行動の出現とが一致しないため思春期を確然 と一定の時期に限定するのは安当ではないが,

概ね雄鶏では生後4−5カ月と見徹し得ると思 考すと述べていて,私の成績と略ヒー致して

いる.

 (b)成熟期         1

 正常家鶏では生後9カ月頃になると,雌雄血 温に体重,附蹟骨長及び鶏冠面積が一応一定値 を示し,その後の増加率は極めて小さくなる.

 第2次性徴については,雌鶏はその性質行動 共に受動的であるので,鶏冠の大きさ,形態の 発育を除く他如何なる時期を成熟期と見徴すべ きやに苦しむのであるが,雄鶏では生後9カ月 頃に第2次性徴は一応完成され,背羽毛,頸羽 毛,腰羽毛,尾羽毛共に立派な羽並を呈すると 共に完全なる鶏鳴を発し,誘音,警戒昔,呈媚 音を出し,しきりに雌を呼んで呈媚運動を起

し,互いによく孚闘するに至る.

 以上の諸点から考えて,家鶏の成熟期は生後 9カ月前後と考えるを応当とするものと思う.

 本邦産家鶏の成熟期に関する問題について論 及したものに原油の報告があるが,私の成績と 略ζ一一致し,大体生後10カ月を過ぎれば成鶏と 見倣すを至当とすと述べている.

 (c)長管骨発育停止期

 長管骨発育晶出の観察は多く人類について主 として四肢長骨が用いられているが,鳥類にお いては:未だかかる観察は少ないようである.私 は後肢の一蹴骨を対象としたが,これは鳥類で は長面骨に属し,且つ羽毛を詰むらないため計 測に便であるからである.

 私Q成績では生後9カ月の末頃に略ヒその長 径成長を停止するもののようである.

 (2)幼時去勢鶏について

 家鶏の幼時去勢が第2次性徴に及ぼす:影響に 関する実験は古来極めて多い.

 先ず去勢の鶏冠発育に及ぼす影響については すべての学者が,正常発育を止め萎縮すると述

【143】

(9)

べているが,その他の第2次性徴即ち音声,行 動,性質叉は羽毛歌態の変化についてはその成 績が区々である.

 音声に関してはYare11, Berthold, Rieger,

:pirsche,阪本,原等多くの学者は,箪調な楽音 を出すのみとか,嗅声となるとか或いは鳴くこ とを止めるとかの表現をなしているが,Se11−

helmは去勢鶏も鶏鳴を発すると述べている.

 鼠毛に関してはYare11, Riegerは頸羽毛及び 腰羽毛は短くなるといい,その他の学者は影響 せずといい,Goodale,阪本は尾羽毛の如きは 反って発育己妻であるとすらいっている.

 行動に関しては一般に争闘性を失い,交尾蓮 動を欠くとするも,Sellheimは交尾作用全くは 浩失せず,勇敢に争闘すると述べている.

 体重に関しては文献が少ないが,増井は早期 去勢では去勢後3−4週より成長次第に逞延

し,5−8週後においてその差最大となり,再 び著しく体:重を増し,正常雄鶏と全く同一とな

るとし,叉正常雄鶏,去勢鶏共に生後35週に 至れば発育略ζ完成し,前者は体重増加著しく 減退するも,後者はなお増加の傾向を有すとい い,叉身体の外見的大きさについて,発育完全 後の両者を比較して著差を認めない故睾丸の内 分泌は身体の大きさに対しては大なる影響を及 ぼさずとなしている.

 私が生後3カ月目に去勢術を施した雄鶏につ いての成績は次の通りである.

 成熟期は体重曲線,長管骨発育曲線から見て 正常雄鶏と同じく生後9ヵ月であって,月別の 測定値はすべて正常雌雄鶏の中間値をとる.

 第2次性徴については,鶏冠面積は去勢当時 より殆んど増大せず,その形歌は雄鶏にも非ら ず雌鶏にも非らず,云いていえば幼雛型である

が,萎縮貧血状を呈し,乾燥してその表面に白 き鱗屑を生じ,幼鶏の如き生き生きとした感を 欠除している・叉行動は活気を欠き争闘心少な くなり,鶏鳴を発せず,その他の哺鳴をも殆ん ど溝失する.但し羽毛に関しては一見全く同月 齢の正常雄鶏と同様である.即ちその性質行動 及び鶏冠を除外すれば全く正常雄鶏と異なる所

がない.

 以上の諸点を併せ考察すると,細田,阪本等 のいう如く,幼時去勢鶏は島巡にも非らず,雌 型にも非らず,二叉幼雛型にも非らず,全く申 性島山は去i勢型を示すということが出来る.

 〔結論〕

 同一系に属する白色レグホン種の家鶏につい て飼育方法に嚴密な注意を払い,正常雌雄鶏の 身体一般の発育,第2次性徴の発達について検 索し,且つ生後3カ月目に去勢した雄鶏につい て,去勢のこれらに及ぼす:影響を観察して次の 如き成績を得た.

 (1)正常家鶏は生後4ヵ月の絡り頃に思春 期に達し,生後9カ月の絡り頃に成鶏期に達す

る.

 (2)気管骨発育停止期は生後9ヵ月の終り

頃である.

 (3)去勢鶏の成鶏期,長武骨発育停止期は 正常鶏と同じく生後9ヵ月の認り頃であり,身 体発育は常に正常雌雄鶏の中位をとる.第:2次 性徴に関しては,鶏冠は萎縮し,性質行動共に 活気を欠き,鶏鳴を発せず,その他の哺鳴も殆 んどなく,雌鶏に対する興味を欠くが,羽毛に 雄特徴を残存する.よって去勢鶏は雄武にも非 らず雌型にも非らず詔命幼雛型にも非らず,全 く中性型叉は去勢型を示すということが出来

る.

第3章 家鶏喉頭,下喉頭軟骨の解剖学的構造

 〔緒言〕

 家鶏の喉頭は気管の上部に位置し,呼吸及び 嚥下作用に関係するが発声機能を欠いている.

この発声機能は気管分岐部にあって,この部は 特に下喉頭叉は鳴器なる名称が附せられてい る.これに対し本来の喉頭は上喉頭とも称せら

(10)

家鶏喉頭軟骨の化骨現象に関する実験的研究 1863

れる.

 私は喉頭軟骨の化骨現象を検索するに当り,

かくして下喉頭を構成する軟骨をも実験の対象 としたのであるが,これら喉頭,下喉頭におけ る軟骨骨子の解剖学的関係について従来の文献 を妬いて見る時余りにもその記載が区々である のに驚くのである.

 私がここに一章をもうけてその解剖学的構造 につき詳蓮せんと・した目的・も亦ここにある.

 〔実験動物及び実験方法〕

 前章に述べた同じく,同一系に属する白色レグホン 種の家鶏で,生後10カ月を経たる成鶏について,解剖 学的手段によってその全貌を把握すると共に,蓮続切 片を作製し,ヘマトキシリソ・エオジン染色法を施し た標本によって確かめた.

 〔実験成績〕

 (1) 家鶏喉頭軟骨(附図)

 家鶏の喉頭は環歌軟骨,前環ナ伏軟骨及び一対 の披裂軟骨よりなり,互いに結合織性若くは関 節性に密に結合して,背面前方に楕円形の問隙

(喉頭口と称せられる)を有する牛楕円管を形成

する.

 環状軟骨:

 喉頭骨子の主体をなすもので,喉頭の腹壁と,

喉頭の後部]/勧こおいては側,背壁とを形成す る.即ち前方三輪は全く軟骨性で菲薄板歌を 呈し,後方に進むに従い漸次環歌を呈し,後部

%では喉頭腔を全く囲擁するのであるが,なお その背側縁は左右の間に若干の距離あり,ここ に後述する前環状軟骨の尾部を挾んでこれと関 節性に結合している.

 環朕軟骨はよく化骨しているが・前部の約%

は絡始軟骨性に止まり,屈曲性に富む 酬犬を呈 し,学者によっては会厭突起(Processus epiglo−

ttiCuS)と呼ばれているが,人類における会厭軟 骨、とはその起原を異にする.叉腹壁が畑鼠に移 行する部も亦軟骨性である.

 披裂軟骨:

 左右一対あり,並列して環歌軟骨の背面にの り,喉頭口の両側縁をなす.

 体部とこの後端より後方に出る二突起(腹側 突起及び背側突起)とに区別することが出来る・

体部はその殆んどが軟骨性で細桿歌を呈する が,後端膨大して良く化骨し,その外側面に前 後に走る溝を有し,二の突起はこの後端より後 方に突出している.背側突起は休部の前部過牛 と同様に全く軟骨性で六一状をなすが,腹側突 起は良く化骨し,張大で卒板欣を呈し,この後 端は左右の間に前環状軟骨の頭部を描んで,こ れと関節性に結合する.叉体部側縁及び腹側突 起側縁は環1伏軟骨高話と懸粗な結台織性結合を なしている.

 前謎歌軟骨(叉は聞軟骨):

 喉頭軟骨中最小の軟骨で,張大なる頭部と細 桿朕をなす尾部とよりなり,両者は少しく屈曲

して,側方より見る時は鈍角をなす.

 頭部は左右披裂軟骨腹側突起の間に,尾部は 環歌軟骨背側板の聞に挾まれて,夫々共に関節 性に結合し,ために闇軟骨(ZwischeDknorpe】)

とも呼称されている.

 尾部後端の極小部を除く他よく化骨してい

る.

 (2) 家鶏下喉頭軟骨(附図)

 家鶏の下喉頭は橋軟骨と下位気管軟骨輪と左 右の第1・2気管枝軟骨輪(4≧輪にしてその正中 側を欠除す)とからなっている.下位気管軟骨輪 と第1気管枝軟骨輪との間には下喉頭の外側に おいて左右一対の外藩檬膜なる薄膜を伸張し,

橋軟骨底面の回縁より第2気管枝軟骨輪の尖端 に至る間には,気管分岐部の下方正中面におい て左右一対の内言様膜なる薄膜を伸張する.

 内外清気膜は発声に与かり,:左右外山様膜の 上牛痘は互いに相接近して気管分岐部の上方に おいて一狭窄部を形成し,府側の外鼓様膜の下 賦払とその側の内記檬膜との間にも夫々一一狭窄 部を形成して,この3狭窄部は強き呼気によっ て互いに振動して発声に与るのであって声門の 名がある.

 橋軟骨:

 気管分岐部の角頂をなすもので,腹背方向に

【145】

(11)

走る桿部と,これの腹側端及び背側端におい て,直角に立つ三稜錐形の軟骨片とから成る・

腹側に立つものは背側に立つものより著しく張 大で,これを外面より見る時は共に三角形をな すため,腹側三角,背側三角と呼ばれる.桿部 は三稜柱状をなして背腹方向に走りその頂角を 気管腔(下喉頭腔)内に高く聾立せしめ,その 底面の両側縁には内出様膜が附着している.共 によく化骨する.

 下位気管軟骨輪:

 橋軟骨腹背両三角上端の上方においては十数 箇の気管軟骨が互いに癒着し且つよく化骨して 硬固となり,これは更に左右より圧雫されて前 後に長い楕円面を形成している.この楕円面の 後端両側縁には外鼓様膜が附着し,背面両端は 橋軟骨背屈両三角上端と結合織性の強い伸展性 に富む間膜によりゆるく結合している.なお外 鼓様膜の上牛には前後径に走る4条の軟骨輪の 痕跡を面諭セこ認める.

 第1・2気管枝軟骨輪:

 第1気管枝軟骨輪は牛輪をなし,下方に向っ て弓状を描き,その背腹両端は夫々橋軟骨の背 油画三角の下端と結合織性に硬く結合してい る.第2気管枝軟骨輪は第1気管枝軟骨輪と間 膜をへだててこれと『二行にあり,その尖端には 内細面膜が附着している.第1気管枝軟骨の雨 意両端のみ小範囲の化骨が見られる.第1気管 誌面骨壷の上縁には外鼓様膜が附着する.

 〔考按〕

 (1)喉頭軟骨について         1  家鶏の喉頭軟骨について比較的詳細な記載を

なしたのはHeidrich(1908)であるが,彼以前 の文献には,唯軍に数箇の軟骨よりなるとしか 記載されていない.

 Heidrjchは喉頭軟骨は環状軟骨と一対の披 裂軟骨よりなるとし,更に環歌軟骨を各々独立

した4骨片に区分している.即ち腹側片,背側 片及び一対の側片とに分かち,腹側片と側片と は結合油性の可動性結合を,背側片と側片とは 結合織性,一部軟骨性の可動1生結合をなし,一

片は叉披裂軟骨腹側突起とも関節性結合をなし ているという.披裂軟骨は腹側及び背側の2突 起よりなり,前方において鋭角をなして合一

し,前者はその後端で環朕軟骨背側片と関節性 結合をなし,前部の側縁で環歌軟骨腹側片と髪 粗な結合織性結合をなすと記載し下図の如き略 図を揚げている.

   Ar=d

一一・一一一一フ ②

  C_一_蟹P

(後端附近横断面)

 C3環朕軟骨腹:側片  C =環朕軟骨側片

C ・環状軟骨背側片

(縦断面)   (前端横断面)

Ar.d.:披裂軟骨背側突起 Ar.v.:披裂軟骨腹側突起  (斜線は軟骨部を示す)

 岡村はその著書「動物実験の指針」の中で,

喉頭軟骨は,甲歌軟骨,環欣軟骨及び一対の披 裂軟骨よりなるとし,Heidrichのいう披裂軟骨 と環状軟骨背側片とを合して一箇の馬蹄形をな す甲1伏軟骨となし,i環状軟骨腹側片の後部約%

を左右2箇の披裂軟骨に区分し,前部を環状軟 骨となし,環月日軟骨骨片はこれを第1気管軟骨 なりと記載し,下図の如き略図を揚げている.

B A

B

 CD   D

(背面図)

D B

A

B

(丸面図)

D

A:環朕軟骨

:B:披裂軟骨 C・甲賦軟骨 D:第1気管軟骨

 以上Hejdrichと岡村との説を私の成績と比 較すれば次のようである.

  (Heidrich)   (岡村)   (小森)

翻腹側昭瀦譜蔽購骨

判響月謝=野騰軟書∠前騰骨

       /

披裂軟骨(一対)        一披裂軟骨        く一・対)

 上記の表に示すように私の成績によれば,

(12)

家鶏喉頭軟骨の化骨現象に関する実験的研究 1865

 Heidrichのいう如く.環歌軟骨を夫々独立した  4骨片とは認め難く,腹側片と側片とは最初よ  り合一した三三をなす軟骨であり,背側片はこ

ρ

 れらと全く別個の軟骨であって,この両軟骨の  聞には常に関節性結合をなすのが認められた.

 又披裂軟骨についてはHeidrlchの記載と大差  がない.

  一方岡村の記載は私の成績と全く異なるもの  で,思うに環1伏軟骨の会厭突起を一個の独立し  た軟骨と誤認し,叉その腹側板に左右対称的に  夫々一箇の化骨核が生ずる(後章に詳述)こと  からこれを一対の軟骨と誤認し,披裂軟骨と前  環歌軟骨とを合して一個の独立した軟骨と誤認  し,環歌軟骨背側板を一個の独立した軟骨と誤  黙したものであろうと思われる.「

  牧野は家鶏の喉頭を発生学的に検索した詳細  な論文を発表しているが,些少の点を除き略ミ  私の成績と同一の成績を挙げている.

  (2)下喉頭軟骨について

  岡村は家鶏の下喉頭を構成するものは最下端  の2気管軟骨で,最後のものは左右両面におい  て下方に彊く弓封犬に轡配し,その直上のものは  軽く上方に弓封犬に轡卜して,この2軟骨間に鼓  様膜が伸展しているとし,細谷は下喉頭は下位  気管軟骨と第1気管枝軟骨とからなり,この間  に鼓様膜が伸展するとし,橋軟骨については記  載なく叉内鼓様膜も認められないとしている.

 牧野は下位気管軟骨と上位気管枝軟骨に加うる

に橋軟骨よりなり,内外鼓三三の存在を認めて

いる.

 WuDderlichは鳥類の下喉頭を比較検討し,

これを気管のみよりなる所の気管性下喉頭

(tarynx lnferior trachealis),気管と気管枝とよ りなる所の気管気管枝嚥下喉頭(Larynx inf・

tracheobroDchialis),及び気管枝のみよりなる所 の気管枝性下喉頭(:Larγnx inf・bronchialis)の 三つに区別されるとし℃いるが,岡村は気管性,

細谷及び牧野は気管気管枝性下喉頭であるとし ているわけである.

 私の検索では略ζ牧野の報告と一致している が,第2気管枝軟骨尖端と第1気管枝軟骨との 癒着はこれを認めることが出来なかった。

 内外鼓様膜の振動運動は呼気によって生じ,

その振動によって音声を発するのであるが,こ の音声の高低は両三三三の緊張度に左右され る.下喉頭は気管枝によって下方肺臓に固定さ れ,上方は第16下位気管軟骨附近に附着する胸 骨気管筋によって固定されるのであるが,鼓様 膜の緊張度はこの胸骨気管筋の牧縮により下喉 頭が上方に引き上げられて惹起されるのであっ て,第2気管枝軟骨と第1気管枝軟骨とが癒着 していないこ、とこそ発声機能上合目的的である と思考される.

 〔結論〕

 生後10カ月の雄鶏について,その喉頭・下喉 頭軟骨を解=剖学的手段及び蓮続切片による組織

頭喚 軟

全 景  背 面

披 裂 軟 骨

前罪 環

歌骨

ノヘロ

背 厘

【コ47】

(13)

環 状

尋 厘

披 裂前

軟環:

骨歌 と軟  骨

腹 面

下 喉 頭  腹

、驚多

画野珍

下 喉 頭

藩馨1

   喬    嵩    毒

臨部

霞..

学的検査方法によって検i難し次の成績を得た.

 (1)家鶏の喉頭は環歌軟骨・前回歌軟骨及 び一対の披裂軟骨よりなり,呼吸及び嚥下作用 に与かる.

 (2) 家鶏の下喉頭は下位気管軟骨輪,橋軟 骨及び第1,第2気管枝軟骨輪よりなり,所謂気 管気管枝性下喉頭である.発声作用に与かり,

内外鼓弓膜の間に3ヵ所の声門部を形成する.

第4章 岡田氏硬組織特殊生体染色法とその検討

 〔緒言〕

 私は家鶏の喉頭軟骨化骨現象を追求する目的 で,岡田が1934年に発表した硬組織特殊生体染 色法を応用したのであるが,実施上幾多の困難

に遭遇したので,これを検討すると共に,標本 切片中に現われる黒色顯粒乃至線条が果して鉛

に由来するものであるかどうかについて一・吟味 方法を考案したので,その成績を述べたいと思

う.

 〔岡田氏法の理論と原法〕

 1%酷酸鉛水溶液を動物に六脈注射すると,

血中に入った鉛イオ・ンは蛋白と結合しゴこれに 燐酸イオンが附加して可溶性の形態をとり硬組 織に達する.そして硬組織の中の現在石友沈着 の進行している部位に到達するならば,この部 位は本来アルカリフォスファターゼ多く含有さ れ,従って燐酸イオン濃度大なるため,鉛イオ ンは上述の如き不安定な化合物より遊離iして燐

(14)

家鶏喉頭軟骨の化骨現象に関する実験的研究 1867

酸鉛を生ずる.叉この二二友沈着部はアルカリ 性でその周囲は酸性であるため,この境界に溶 解積の関係から鉛がカルシウムと置換して沈澱

する.

 かくの如くにして沈澱した燐酸鉛を含む硬組 織を,硫化水素で飽和した1%塩酸に浸漬し,

脱友と同時に燐酸鉛を更に安定なる硫化鉛に還 元する.なお硫化鉛は黒色であるため顕微:鏡下 に他組織との鑑別が更に容易となる.以上が岡 田氏法の理論であるが,以下実施上の細部につ いて岡田氏法の原法を述べる.

 (1)動物の体重1kgに対し1−2m9の酪酸 鉛を1%水溶液として静脈内注射する.

 (2)麗殺し,組織を切り出し,フォルマリ ン固定

 (3) 硫化水素にて飽和した1%:塩酸にて脱 友

 (4)包;埋は如何なる方法でも良いが,酒精 やエーテル等を度々通す方法は染色が弱まるの で凍結法が最も適している.

 (4)塩化金にて鍍金.染色像は更に鮮明と なり永久標本としての耐久性も強い.ツェロイ ジン標本では特に鍍金が大切である.

 (5)後染色

 (6) 脱水,バルサム封入  〔岡田三法の検討〕

 私が検索した家鶏の喉頭軟骨の場合には次の ような諸点に検討を要する所があった.

 (1)酪酸鉛水溶液の濃度及び注射量に関す る検討

 原法によれば1%水溶液を動物の体重1kgに っき1−2m9となっているが,私の家鶏におけ る実験では明瞭な像を呈しないこと多く,3−5 m9を注射 して漸くその目的を達した.

 次に濃度については,1%,2%,3%及び 5%の水溶液について実験した結果は線条の現 われ:方に著明な差異を認めなかったが,注射液 の量から考えて1%水溶液が最も好都合であっ

た.

 (2)注射三二についての検討

 骨3ぐは歯牙の成長或は軟骨の化骨叉は三友沈 着のガ犬山を追求するのに本法を応用することは 至極好都合である.即ち静脈に注射された塩酸 鉛中の鉛イオンはその時化骨乃至石刀沈着が行 われている部位に沈着するので,このことによ って生体染色法と呼ばれているわけであるが,

この酷酸鉛注射を一定期間をへだてて実施すれ ば,標本上には一定闇隔をおいて2条の硫化鉛 による黒色線条が生ずるから,この間隔をミク

ロメーターその他で測定する時は,その期間内 の化骨進行速度を知り得るのである.

 しかし乍らこの方法を実施するに当っては注 射間隔を適当に考慮しなければならぬ.

 即ち若し化骨進行速度が極く逞い場合は,上 る程度注射間隔を永くしなければ,黒色線条が 重り合い,叉離れていても間隔小なるために測 定し難い.かくして実験目的に従ってその時の 化骨速度を予測し,種々の注射間隔によって予 備的実験を行い,至適間隔を決定しなければな

らない.

 次には歯牙の象牙質の場合の如くその成長が 石友の添加のみによって行われる部位では問題 はないが,私の検索した喉頭軟骨における軟骨 内化骨の場合の如く骨質の新生と同時に破壌機 転が骨内到る所に種々の程度に起っている時 は,酷酸鉛注射の聞隔に特別の考慮を払う必要 がある.即ち一定二二をおいて注射しても或る 部位では前回に生じた鉛線条は骨破壊機転によ って浩失し,部位によってはその間隔が一定で ない等その様相は極めて複雑である.

 家鶏の喉頭軟骨についての実験では予備的に 種々の期間をおいて実験し,各時期における至 適注射聞隔を定めた.即ち2時間,12時間,1

日,2日,3日,5日,7日に実施して次の結

果を得た.

 化骨機転の旺盛な時期たる生後5−7カ月で は2日闇隔,爾後は4日間隔,極めて逞い生後 10カ月以降の家鶏では7日間隔が計測に最も便 であった.

 なお以上の如き濃度,量,間隔によって3一

【149】

(15)

4回注射したのであるが,家鶏の一般状態には 何らの影響をも認めなかった.

 (3)固定についての検討

 中性フォルマリンによる固定がよい.

 (4)脱友及び鉛還元操作についての検討.

 原法によれば,硫化水素で飽和した1%塩酸 で脱友すると記載されているが,ここに注意す べきは,塩酸が常に硫化水素で飽和の状態を保 っていることであって,このためには予め硫化 水素を飽和せしめた塩酸の中に,キップ氏装置 を用いて更に常に硫化水素を通じでおく必要が あった.私はかくして漸く本法に成功した.

 (5)包埋についての検討

 岡田も述べているように,ツエロイジンやパ ラフィンによる包埋では度々酒精やエーテルを 通し,且つ長時聞を要するため染色性が弱ま る.この点ゲラチン包埋も同誌であるが,家鶏 の喉頭は中言の薄い謡歌組織であるため薄切に 際して原型を保ち難いため,止むを得ずゲラチ

ン包埋を行った.

 (6)鍍金操作についての検討

 塩化金によって鍍金しない標本では顕微:鏡下 に時に褐色を呈し鑑別に困難を感ずる場合があ るが,これを鍍金する時は美麗な眞黒色となる 故,如何なる包埋による場合も鍍金操作が望ま

しい.

 (7)黒色穎粒が果して硫化鉛に由来するも のかどうかについての検討

 生体内においては正常歌態でも極めて微:量な がら鉛を含んでおり,所謂 normales Blei と 呼ばれ,体内の石友含有組織特に骨に対して謡 い親和性を持つとされている(Timm等).一方 石弓含有組織には鉛の他に亜鉛,鉄,銅,極め て稀にはアルミニウム,銀,バリウム等の金属 が含まれていることが化学的微量定量法によっ て確められている(Gerlach等).これら金属の 申で鉛と同様に硫化水素によって酸に不溶性の 硫化物を作るものは重金属たる銀,銅,亜鉛で あって共に黒色を呈するので,鉛を証明せんと する組織化学的方法の中で,硫化鉛を見んとす

る方法では,これら重金属との鑑別法が縄対に 必要であり,この点岡田氏法も亦同檬である.

 岡田はこの鑑別について記載しておらない が,Timmは30%蟻酸に硫化水素を飽和せるも ので硫化鉛を作り,これによって組織中の鉛証 明法としているが,この際同時に生ずべき銅,

亜鉛の硫化物との鑑別に論及し,銅はシアン加 里に,亜鉛は黄色硫化アンモンに溶解する反応 を応用している.

 岩橋は1%硝酸に硫化水素を飽和せるもので 硫化鉛を作る方法によって鉛の組織化学的証明 法としているが,この際他種金属との鑑別に過 酸化水素による方法を用いている.

 私は岡田氏法によって生ずる黒色穎粒が硫化 鉛に由来するかどうかについてこの過酸化水素 法を検討するため次の如く試験管内実験及び組 織内実験を試みた.

 試験管内実験:試薬としては硫化水素で黒 色の硫化物を作るもので生体に最:も屡々現われ ると考えられるもの,即ち鉛,銀,蒼鉛,水銀,

銅,鉄,亜鉛,砒素について実験した.即ち酷 酸鉛,硝酸銀,次硝酸蒼鉛,昇莱,硫酸銅,酸 化鉄,硫酸亜鉛,亜砒酸の稀薄溶液を作り,夫 々試験管にとり,これに硫化水素を飽和した1

%塩酸を滴下すると,鉄を除き黒色沈澱を生ず る.この二二は溶液のままで止まる.この沈澱 を水洗して申性反応を呈するに至って,これに 過酸化水素水を滴下すると鉛は白色に変ずるに 反し,他はすべて黒色のままで止まることを知

った.

 組織内実験:予め酷酸鉛を静注した家鶏の 喉頭軟骨を切り出し,フォルマリン固定後水洗

して,硫化水素を飽和した1%塩酸に浸漬し,

更にこれにキ。プ氏装置を用いて硫化水素を通 ずること3日の後軽く水洗して凍結法により薄 切標本を作製し,顕微鏡下に黒色線条の見える のを確めた後,この標本に過酸化水素:水を滴下 すると盛んに標本上に気泡が発生する.気泡発 生が止んで後これを顕微鏡にて見ると黒色穎粒 が脱色しているのを見ることが出来た.

(16)

家鶏喉頭軟骨の化骨現象に関する実験的研究 エ869

 即ち岡田民法によって生じた黒色穎粒は明ら かに鉛に由来するものであって,品種金属では ないことを知ることが出来たのである.

 なお所謂 norm ales:Blei,,とは酷酸鉛を静注 しない所の対照をおいて鑑別した,

 〔私の標本作製法〕

 以上各種の検討事項によって,私の実施した 方法を述べれば次のようである.

 (1) 酷酸鉛注射  1%酷酸鉛水溶液を家鶏 の体重1kgにっき3−5mgを翼下静脈に注射す る.注射聞隔は生後5−7ヵ月の化骨機転旺盛 なるものには2日,爾余の場合は4−7日聞隔 で3−4回注射する.

 (2)油凪後直ちに喉頭,下喉頭を切り出 し,周囲軟部組織を可及的除去し,10%中性フ ォルマリン液にて固定すること1−2日  (3)水洗後,硫化水素を飽和した1%塩酸

に投入,これにキップ氏装置を用いて応えず硫 化水素を補給する.原液は勿論屡々交換する.

3日聞  (4)水洗

 (5) ゲラチン包埋

 (6)凍結法により10μ,20μ:或は30μに薄 切し,出来るだけ連続標本を作製する.

 (7)薄切標本をデッキグラスに卵白グリセ リンにて張り付ける.

 (8)型の如く5000倍塩化金にて鍍金  (9)後染色 なるべく簡易な方法が望まし い.ヘマトキシリン・エオジン染色,カルミン 染色

 (10)脱水,バルサム封入  〔鏡検所見〕

 弱拡大で鏡検すると軟骨内の骨髄腔壁,海綿 状を呈する骨梁縁,骨質の軟骨に面する辺縁,

或は軟骨膜下に明瞭な縞欣をなす黒色線条を見 ることが出来る.これを彊拡大で見ると黒色顯 粒の集まりから成ることがわかる,

 今若し化骨機転旺盛なる時期の軟骨に対し2 日準準で3回注射したものでは,部位により1 条2条又は3条の線条を見,叉その間隔は色々 である.かくして標本中に現われる黒色線条を 全体として眺める時は極めて複雑な縞模様を呈 する.これは上述のように骨の新生と同時に追 回も起り,且つその程度が部位によって異なる

ことを示すものである.

 次に化骨部に隣接する軟骨内にも黒色頴粒が 認められるが,骨面に見る如き明瞭な線条を呈 せず,比較的広い幅において軟骨細胞叉は基質 に散在するのが認められた.

 〔結語〕

 岡田氏硬組織特殊生体染色法を家鶏の喉頭・

下喉頭軟骨に実施し,実施上の注意事項を述べ た.       ・

 即ち固定に申性フォルマリンを用いること,

三友並びに鉛還元操作中はキ。プ氏装置を用い て経えず硫化水素を通じ飽和せしめおくこと,

包埋薄切は凍結切片作製法によること,塩化金 にて鍍金すること,後染色は簡易な方法を選ぶ

ことがこの染色法を成功せしめる要点である.

 酷酸鉛注射については家鶏の喉頭軟骨化骨を 追求する場合は,1%水溶液を体重1kgにっき 3−5m9を,化骨機転旺盛なる生後5−7ヵ月 のものでは2日間隔,爾余の場合は4−7日間 隔に注射して好結果を得た.

 最後に岡田氏法によって現われた黒色温存:宮 室線条が鉛によるものであって,他種重金属に

よらないことを過酸化水素によって鑑別する方 法について述べた.

第5章家鶏喉頭軟骨化骨現象の組織学的特徴

 〔緒言〕

 喉頭軟骨の化骨現象に関する組織学的検索 については,主として人類について行われ,

Pascher, Scha脆r, Chievitz,稗田等の業績があ るもすべて屍体についての検索であるため正常 化骨状態の成績とは言い難く,叉その検索方法

【151】

参照

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