Title
金属粉末射出成形法により成形された金属間化合物TiAlの
力学的特性に関する研究( 本文(FULLTEXT) )
Author(s)
柴田, 英明
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第032号
Issue Date
1996-03-25
Type
博士論文
Version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1753
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。金属粉末射出成形法により成形された
金属問化合物TiAlの力学的特性に関する研究
1996年
1月
柴
田
英
明
目
次
序 論 金属間化合物の開発の時代的背景 TiAl金属間化合物... 金属間化合物の成形プロセス 金属粉末射出成形法 ‥‥.‥‥. 金属間化合物の力学的特性 ‥‥ 研究の目的および論文の概要 1 4 5 7 10 12 第1章 純Alを用いた金属粉末射出成形に関する基本的特性の検討と金属同 化合物TiAlへの応用 1. 1 緒 言 ‥‥‥‥ 1. 2 実験(加工)方法 1. 2. 1 供試粉末 1. 2. 2 供試バインダー.‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 15 1. 2. 3 混練工程 1. 2. 4 射出成形工程 1. 2. 5 脱脂工程 1. 2. 6 焼結工程 1. 2. 7 TiAlの成形 1. 3 結果および考察 ‥ 1. 3. 1 1. 3. 2 1. 3. 3 1. 3. 4 1. 3. 5 1. 3. 6 バインダー特性 混練工程 ‥‥ 射出成形工程 脱脂工程 焼結工程 TiAlの射出成形 1. 3. 6. 1 射出成形条件 1. 3. 6. 2 射出成形の結果と考察 1. 4 結 言.‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥. 17 18 20 21 22 22 22 24 29 30 34 37 37 37 43第2章 金属問化合物TiAl牛造材および射出成形材の室温および800℃にお ける引張特性 2. 1 緒 言 ‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥.‥.‥.‥‥ 2. 2 材料および試験片.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥ 2. 2. 1 射出成形材 ‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥.‖‥‥.‥‥‥‥‥‥‥ 2. 2. 2 鋳造材 ‥‥.‥‥.‖‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥ 2. 2. 3 射出成形材および鋳造材の組織,硬さおよび密度 2. 2. 4 引張試験 ‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥..‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 2. 3 引張特性.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥ 2. 3. 1 引張強さ ‥‥.‖‥‥.‥.‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥.‥.‥‥ 2. 3. 2 伸 び ‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 2. 3. 3 破面観察 ‥.‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 2. 4 考 察 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥ 2. 5 結 言 ‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥.‥.‖‥‥.‥‥‥‥.‥. 第3章 金属同化合物TiAl鈷造材の疲労強度および疲労き裂進展特性 3. 1 緒 言 ‥.‥.‥‥‥..‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥..‥‥.‥ 3. 2 材料および実験方法 ‥.‥‥.‥‥.‥‥.‥..‥‥‥‥‥‥‥. 3. 2. 1 材料および試験片形状と採取方法 3. 2. 2 機械的性質 ‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥. 3. 2. 3 実験方法 ‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥.‥‥. 3. 3 実験結果および考察.‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥.‥ 3. 3. 1 疲労強度特性.‥‥.‖‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥. 3. 3. 1. 1 疲労強度と組織.‖‥‥.‖‥‥.‥‥‥‥.‥‥. 3. 3. 1. 2 疲労過程.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥ 3. 3. 1. 3 破面様相 3. 3. 2 疲労き裂進展特性 ‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥..‥‥. 3. 3. 2. 1 き裂進展挙動の組織依存性 ‥‥‥.‖‥‥.‥.‥ 3. 3. 2. 2 き裂開閉口挙動 ‥.‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥‥ 3. 3. 2. 3 破壊機構.‖‥‥.‥.‥‥.‥.‥‥‥‥.‥‥.‥ 3. 3. 2. 4 他の材料との比較 ‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥ 45 46 46 47 47 49 51 51 51 53 58 63 65 66 66 69 69 70 70 70 72 73 75 75 78 82 84
3. 3. 2. 5 ラメラ層に平行な方向におけるき裂進展特性 3. 4 結 言 ‥‥..‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‖‥‥.‥. 第4章 金属問化合物TiAl射出成形材の疲労強度および疲労き裂進展特性 4. 1 緒 言 ‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4. 2 材料および実験方法 ‥.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥ 4. 2. 1 射出成形材および焼結温度と熱処理条件 ‥.‥‥.‥.‥.‥. 4. 2. 2 試験片 ‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥ 4. 2. 3 組織および密度.‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥. 4. 2. 4 機械的性質 ‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥ 4. 2. 5 実験方法 ‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥.‥‥ 4. 3 実験結果および考察 ‥.‥.‥.‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥ 4. 3. 1 疲労強度特性 ‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥ 4. 3. 1. 1 S-N曲線...∴‥‥..‥...…‥‥‥...‥. 4. 3. 1. 2 疲労強度に及ぼす組織とポアの影響 89 90 90 90 92 94 94 95 95 95 96 4. 3. 1. 3 疲労破面様相 ‥‥‥‥.‖‥‥.‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥ 99 4. 3. 2 疲労き裂進展特性 4. 3. 4. 3. 4. 3. 4. 3. 4. 3. 4. 4 結 2. 1 き裂進展速度と応力拡大係数範囲の関係 2. 2 き裂進展における組織の役割 2. 3 弾性係数で基準化したき裂進展挙動 2. 4 破面様相.‥‥‥.‥‥..‥‥.‥.‥‥ 2. 5 HⅣ処理した成形材のき裂進展特性 ‥. 口 ・ ・ ・ ・ ● 。 。 ● 。 ● 。 。 ● 。 ■ ● 。 ● ● 。 。 ● ● 。 ● ● 。 。 ● 。 ● 。 。 I 。 ● ● 。 ● 。 100 100 103 105 107 109 112 結 論.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥‥. 113 参考文献 各章構成論文リスト 謝 辞 119 129 131
序
論
金属問化合物の開発の時代的背景 産業の進歩とともに材料,とりわけ金属材料は構造材料として,様々な仕様や環境 に対応するペく,開発が繰り広げられてきた.すなわち,銅器・青銅器・鉄器時代と いった古代から,新しい多くの種類の金属元素が発見されるに伴い,新金属材料の開 発や有用な合金の創製にたゆまない努力と経験を重ねてきた.とりわけ, 18世紀の 産業革命は金属工業にも大きな転機をもたらし,様々な機械工作技術の発展とともに 金属材料も大きな進歩を遂げた.さらに,その後の電気文明により,アルミニウムや マグネシウムおよびチタンなどの各種金属材料が精製できるようになった.試行錯誤 で模索しながら,自然界から抽出した金属元素を配合し,実用合金の開発が進められ た.これら金属材料はその時代の技術進歩の必要性により誕生し,また,一方では人 類文明の発展に責献するべく誕生し,実際に貢献してきた.そして,開発は現在も絶 え間なく続けられている. さて,近年における科学技術の進歩はめざましいものがあり,それに伴い材料も広 範囲に及ぶ開発・研究が進められている.その背景には,一般機械,輸送用機械,電 子電気および家庭用器具などに至る産業が高度に発達し,たゆまない新しい製品開発 がなされていることにある.たとえば,自動車産業においては操縦性,動力,燃費, 静粛性などの基本性能の向上はもとより,高性能,安全性,排ガス規制などの課題が 課せられ,そのために車体を小型・軽量化させる方向で新しい素材が求められている. 航空・宇宙から機械電子など幅広い産業分野においても同様であり,新素材は先端技 術の基礎として重要視されている. このように材料開発が進められているなかで,現在注目されている新素材として金 属間化合物(1)が挙げられる.その発見は古く,合金開発過程で化合物としてその存 在は知られていたが,無能な材料と'して疎外さ・れてきた.この理由として,金属間化 合物の実体に不明な点が多く残されていること,また結晶構造が一般に複雑であるた め組成範囲が限定されること,さらには複雑な結晶構造のため変形できない,あるい - 1-は比較的単純な結晶構造でも原子結合様式が普通の合金と異なるため結晶粒界に欠陥 を生じて弱くなり,簡単に粒界破壊を引き起こすことなどが挙げられる.したがって, その性質は一般に硬くて脆く,成形加工が困難である.そのため,これまで学問的興 味の立場から,冶金学的な研究が主として行われてきた.また,各種合金が開発され る過程において,金属間化合物の微細な分散析出を知らずに合金として利用していた 一面がある.その例として, 1910年頃 昭血(2)はAl-Cu合金の研究の過程で自然に 硬くなっていく現象(時効硬化)を発見した.しかし,この現象が金属間化合物 CuAl2の微細な分散析出に起因するとわかったのは,発見後10年も経てからのこと である.以来,この合金は有名なジュラルミンと発展し,軽量で高い強度を有するこ とから航空機に利用され,今日の航空機全盛時代を到来させた.また,歴史的に古い 黄銅(cu-zn合金)においては, 1839年 atstem(3)がCu:Zn=1:1の組成比で不連 続性を示すことを見い出し,化合物が形成されているのではないかと考えていた.し かし,これはZnが40%を越えるとβ相(cuzn) ,すなわち金属間化合物が混在す るためで,このことがわかったのも後になってからのことである.金属間化合物のβ 相により成形加工には支障をきたすが, 40%Znで強度は著しい向上を示すなどの特 徴を示す.その他に高力耐食合金のPHステンレス鋼や超強靭鋼のマルエージング鋼 (2)においても,金属間化合物が構成相として優れた特性に関わっている.このよう に試行錯誤の結果,掘り出された実用合金には金属間化合物が構成相として寄与して いるものは少なくなく,金属間化合物として同定されたのは合金が開発されてしばら くしてからである.また,結果として金属間化合物が存在したのであり,当初から金 属間化合物をベースとして開発されたものはない.しかし,最近多くの金属間化合物 が化学的・電気的・磁気的・機械的性質に不連続な変化を示すことが観察されたり, または従来の合金にはみられないような特異な,また優れた性質を示すことが知られ るようになり,金属間化合物をベースとした研究がなされるようになった. 金属間化合物の構造材料(4)・ (5)としての特徴は大別して次の2点が挙げられる. 一つは軽量で,ある程度の高温下で使用できる軽量耐熱性である.たとえば,金属間 化合物TiAlの場合, 800℃程度における使用が考慮されている.軽金属材料のAl合 金の使用限度が250℃, ¶合金が500℃であることを考えれば,はるかに優れた耐 - 2
-熟特性を有する.他のひとつは融点がきわめて高い点であり, Ni基耐熱合金の使用 限度が1050℃であり,またほとんどの金属は1500℃にもなれば溶融してしまうのに 対して,金属間化合物のなかには1200℃以上で使用できる材料もある.また,耐熱 材料としての特徴を挙げるならば,温度の上昇とともに強くなるという普通の合金と は逆の挙動(強度の逆温度依存性)を示す金属間化合物があることである.この優れ た軽量耐熱特性はジェトエンジンやタービン部材料(6),地熱や核融合などの新エネ ルギー開発のための構造材料として期待されている.さらに,航空・宇宙産業分野の みならず,今後民政用品に至る産業においても大きな変革をもたらすと考えられる. その例として,最近では自動車用排気バルブなどへの検討および試作が行われている. 機能材料(4)I (7)としても金属間化合物は多彩な能力を有するものが存在する.超 電導材料として高温超電導特性を有するもの,エレクトロニクス文明にとって欠かせ ない半導体特性を有するもの,および磁性材料として高透磁率特性や高磁気エネルギ ーの永久磁気特性を有するものなどである.また,形状記憶合金として常温近傍に熟 弾性型マルテンサイト変態を示すものもある. これら金属間化合物を応用するためには前述した常温下における延性,靭性が乏し いという欠点を克服すること-が不可欠である.そのために,金属間化合物に関する研 究(8)の多くがこの課題に集中している.金属間化合物の変形は通常の金属および合 金と同様に転位の運動によるものであり,その点においてセラミックスとは大きく異 なる.したがって,侵入型および置換型の第三元素の添加による粒界構造の改質… (15)や組成比の変化による性質への影響(16) (19),加工熱処理による組織制御(18)I (19'および水素や酸素などの環境効果による脆化対策(20'など,常温延性の改善のた めの様々な研究が行われている.これら研究は未だ十分とは言えないが,金属間化合 物単体,もしくはそれをベースとした材料の実用化への期待が高まってきている. -- 3
--TiAl金属開化合物
構造材料として期待されている金属間化合物にTi-Al系金属間化合物がある.
Ti-Al二元系(21)で出現するTi,AJ (D Ol,壁), TiAl(Ll.壁),Al,Ti (DO22型)はいずれも軽量で比強度が高く,しかも耐食性に優れるために実用軽量 耐熱材料として期待が高まっている.Ti3Al(DOl,壁)は桐密六方晶のため塑性 其方性が大きく, Nb, Ⅴなどの添加によりβ相とα2相を共存させる形で加工性を 改善し, 600℃近傍までの耐熱材料として期待されている. TiAl(Ll.型)は面心 立方晶を基礎格子とし,結晶学的には十分変形可能と考えられるが,現実にはγ単相 の場合はきわめて脆く,少量のα2相を含む複合相として使用することが考えられて いる.Al3Ti(DO22型)はAl含有量が多いため,高温大気中においてAl203保護 皮膜を形成し,優れた耐酸化性を示す.しかし,変形は望めず,きわめてぜい性的で
耐酸化性保護皮膜として鹿討されている.
以上の3種類の金属間化合物のなかで, TiAl(Ll.壁) (22)I(26)は比較的広い 組成幅を有し,融点1460℃まで面心立方晶系Ll。型で規則化しており,また川端ら (27)によりTiAl γ単結晶において900℃近傍で強度のピークを示す異常現象,すなわ ち顕著な逆温度依存性が発見され,優れた耐食性や密度が3800kg巾l 3と軽量なことか ら軽量耐熱材料としての期待が高まった.しかも, TiAlの常温および高温下におけ る力学的特性と破壊靭性は同じ高温材料であるセラミックスとNi基超合金の中間で あり,またⅥ合金と比べると破壊靭性は小さいが,強度は800-900℃程度まで低 下しない. さて,前述したようにγ単相の場合は本質的に塑性に欠けるため,常温延性改善の ための様々な研究がなされている.組成に関する研究(16)・ (17)として,ややTiリッ チ側にTiとAlの化学組成を変化させ,少量のa2相を含む2相(γ+a2)化にする ことにより延性を改善する試みがなされ,実際にこの組織が実用性の高い組織として 注目されている.また,この組織はγ相とα2相の層状組織(ラメラ組織)であるが, わずかなAl組成によってラメラ粒の粒界形状やγとa2相の体積率は変化し,それに 伴いクリープ特性や破壊靭性値が変化するという報告(17)・ (18)・ (28卜(33)がある. さらに,この2相合金は加工熱処理により様々に組織が変化することから,組織制御 - 4-による力学的特性への影響に関する研究(18)I (19)・ (28)が行われている.微細化やラ メラ組織とγ等軸粒の体積率などの組織の変化による常温延性の改善の可能性が指摘 されている.また,第三元素の添加による研究(11卜(15)においては,主に延性の改 善を目的とする場合Ⅴ, Mn, Crの添加が,高温における耐酸化性の向上を目的と する場合Nb, Si, Mo, Pの添加が有効であるという報告がある. 以上のような様々な方向から常温延性の改善に対する研究がなされているが,依然 として多くの金属間化合物と同様に, TiAl金属間化合物も実用化に向けてデータの 蓄積を図っているのが現状である. 金属同化合物の成形プロセス 金属間化合物を応用するためには常温下における延性,靭性が乏しいという性質を 克服することが不可欠であるが,一方において構造部材として製品や部品に形状化す るための成形プロセス技術の開発も欠かせない.精密鋳造法(26)I (34)I (35)や塑性加 工技術(38)-(46),粉末冶金法(52)などの既存技術を応用した成形加工の研究が行わ れている. 精密鋳造法は元来難加工材の複雑形状部品の成形加工技術としての利点があり,ま た自動車や航空機のエンジン部品の製造として比較的合理的であると考えられている ため, 1980年代初頭から米国(36)において難加工材である金属間化合物の成形にも 応用された. TiAlについては米国でタービンプレートの開発に成功(37)し,これに よりTiAlの実用化への気運が高まった. 鍛造加工を含む塑性加工技術は,引き抜き,押し出し成形などの圧延や薄板プレス 成形加工に対して均質性,製造コスト等の点で優位性がある.さらに,塑性加工と熱 処理を組み合わせること(恒温鍛造(18)I (19)・ (47)I(52))により,金属間化合物の 組織制御も可能となる.すなわち,組織を変化させたり,微細化することが可能とな り,前述したように金属間化合物の延性および靭性の改善に対しても期待できる. また,セラミックスや金属などを粉末化する粉体技術のめざましい発展に伴い,粉 末冶金法による新素材の開発や工業部品および機能性材料の成形が試みられている. 超硬合金やサーメットなど古くから応用されている例があるが,金属間化合物に対し - 5
-ても,金属間化合物がきわめて脆いのであれば,粉末状のものを製品寸法・形状に圧 粉すれば成形可能であるという考えから,粉末冶金法による成形が試みられている. 金属間化合物の粉末(53)は,従来はバルク材をボールミルなどで機械的に粉砕して製 造していたが,遠心噴霧法として回転電極法や回転ディスク法,およびガスアトマイ ズ法などの粉体技術の発展により,粉末化できるようになった.そのほかに, 2種類 以上の金属粉末を混合させて,燃焼反応や機械的エネルギーにより金属間化合物を生 成させようとする燃焼合成法(53)-(68)やメカニカルアロイング法(53)I (69)-(77)な どの研究が進められている.このような粉体技術の進歩により,高純度で球形状・超 微粉の金属間化合物粉末を製造できるようになってきた.したがって,粉末冶金によ る成形加工の期待も高まった. ところで,粉末冶金法の利点は,実際に金属間化合物の物作りを考える場合におい て重要であるニアネットシェイプ成形が可能な点にある.プレス機による冷間押し出 し成形法,スリップ・キャスティング法およびCⅣ処理等により粉末の圧縮成形を行 う.次に,焼結炉による加熱やHⅣ処理(57)-(61)I (78) (=)および熟間押し出し成 形法(57)-(61)・ (66)などにより焼結する.さらに,粉末の粒度および焼結体を恒温鍛 造することにより,焼結体の撤密化や組織の微細化などの変化を与えることも可能と されている. 以上のように,金属間化合物に対して種々の成形加工方法の考案が現在なされてい る.本論文で取り上げた金属粉末射出成形法もこうした新しい粉末冶金法による成形 のひとつである.詳細については次に述べるが,このプロセスの特徴はニアネットシ ェイプで寸法精度の高い最終焼結品が得られることにあり,加えて複雑三次元形状も 可能な成形性および量産性にある. - 6
-金属粉末射出成形法
前述した粉末冶金法のなかで注目されている方法に金属粉末射出成形法(MIM
: MetalInjecdon Molding Method) '82'-'"'がある.セラミックス粉末を用いた射出成
形法(CIM) (85'-`89'がこの手法よりわずかに先行していたが,金属の粉体技術の向 上に伴いMIM (90卜(95)に関心が移行してきた経緯がある.このプロセスの最大の特 徴は,射出成形機を用いてプラスチックの成形と同様の方法で金属粉末を成形するこ とである.一般的な粉末冶金法では前述したように圧縮成形のため,比較的単純な形 状に対してのみ適用できる.一方,このプロセスは形状に対する制約が大きく緩和さ れ,金型構造上可能な限りの三次元で複雑形状の部品や横穴,アンダーカットのある 精密な部品の成形が可能である.また,粉体技術の進歩による微細粉や種々の金属粉 末が開発されるに伴い,様々な材質に関して成形が可能になった.金属粉末射出成形 法は微細粉(10JLm以下) (94)を用いるため,コスト上の問題はあるが,焼結材の 相対密度も従来の粉末冶金による焼結材よりも優れ,また従来の粉末冶金焼結材より も機械的特性や表面粗度の点においても優れていると言われている.しかも,ニアネ ットシェイプ成形といわれるゆえんである焼結部品の寸法精度が高いため,後加工が 少なくて済み,これによる加ユ工程の削減や,射出成形機を用いるため大量生産が可 能であることなどから,トータルコストの低減が期待できるとされ,従来の粉末冶金 法と比べて数多くの利点を有している.また,精密鋳造と応用範囲を比較する(1=)I く101)と,利点として生産性が挙げられるが,射出成形法が比較的小物の部品を対象 としているのに対して,精密鋳造はそれより大物の部品の成形に適しており,威形対 象が異なっている.また,ダイカスト(1=)I(101)と比較すると,精密鋳造と同様に 対象成形品の大きさが異なるが,それよりも射出成形法が様々な材料に応用できるの に対して,ダイカストは低融点金属材料においのみ応用できるという大きな違いがあ る.射出成形法の特徴を各種の加工方法と比較して図1に示す(1=) 射出成形法は上述のような特徴を有するが,.新しい加工技術のため数多くの製造上 の問題点を残している.また,実際に商品として応用された例が少ないのも事実であ る.商品化されているものとしては,ステンレス粉末による時計部品(='がある.し かし,射出成形性,収縮率および寸法・形状に大きな影響を及ぼす粉末の粒度・形状 7
-の改善を目的とした射出成形に適した粉末製造技術および各種粉末の製造に関する研 究(102'・ (103'もなされ,それに伴いステンレス粉末(1='-(l='をはじめとして,秩 系粉末(109'-(117),超高硬度材料粉末(たとえば高速度鋼(118卜(121') ,銅・銅合 金粉末(122)-(12一),チタン・チタン合金粉末(125) (129)などの射出成形法による成 形に関する応用研究が進められている. 図2は射出成形法による成形に影響を及ぼすと考えられている因子を各工程ごとに まとめたものである(130).図に示すように,それぞれの加工工程でいくつかの因子 が挙げられるが,原材料である粉末に関する因子を除くと,粉末の種類に適したバイ ンダーの選択,バインダーの脱脂条件および焼結条件の設定の3点に集約される(12粥 このことから,射出成形法の多くの研究はバインダーに関する研究(131卜(136)に費 やされてきた.事実,バインダーに関する研究はひとつの分野としてノウハウや特許 となっている.射出成形性向上に主眼をおいたバインダーの研究やバインダーの脱脂 性の研究はもとより,加熱分解法,溶剤抽出法などの脱脂処理方法の研究も行われて いる・また,焼結条件は脱脂状態にもよるが,焼結体の物性,収縮率および寸法・形 状に大きな影響を与える.このような問題点が解決されてはじめて,様々な種類の粉 末による良好な焼結体を得ることができるが,射出成形法は製造に関するノウハウの 部分が多く,未だ確立された最適条件はなく,様々な研究が独白になされているのが 実状である. さて,金属間化合物に関しても粉末化技術が進み,容易に入手できるようになりつ つある・期待されているTiAlに関しても例外ではない.したがって,金属粉末射出 成形法は成形上の問題は残っているものの,そのメリットを考慮すると難加工材であ る金属間化合物の成形に関してもきわめて魅力的な方法といえる.しかし, TiAlを はじめ,金属間化合物の成形に射出成形を適用した研究は少ない(137)-(140) - 8
-Degree of freedo皿in shape
=-i:--7ti*=r:7_=__:-I
Value of manufactured goods InJ'ect・ion nolding--Precision casting -Cutting machine york Powder net・allurgy
・---Die casting
図1 各種加工法の比較(1=)
図2 金属粉末射出成形法による成形に影草を与える各工程の離国子(130)
-金属同化合物の力学的特性 破壊は,特に構造材料として利用される場合,材料にとって宿命的に遭遇する大き な問題である(=り.したがって,破壊を招かないような設計が求められるが,設計 にあたり次のような検討がなされている.まず,基本的な設計として引張強さや降伏 点などの機械的性質に安全率を加味した許容応力を基礎とする静荷重設計(142)I (1=)である.これは外力によって機械や構造部材に生じる応力およびひずみを求め る材料力学の立場からの設計であり,求められた応力やひずみのもとで部材が破壊し ないかどうかを材料の強度に照らして検討する,あるいは与えられた部材強度から機 械や構造物がどれだけの外力に耐えられるかを検討する.そのためには材料強度など, 機械的性質のデータの蓄積が必要である.次に,動的な変動荷重に対する設計がある. 実際にほとんどの破壊は動的な変動荷重,応力を受けて起こる疲労という現象に起因 している(141)I (143卜(145).構造材料として使用されている以上,このような変動 荷重,応力は必然的に負荷されるため,ほとんどの部材においてこのような疲労現象 を避けることはできない.疲労破壊はき裂発生過程とき裂進展過程に分けられるが, 初期き裂およびその他の欠陥が発生して,成長や合体を繰り返して,き裂は拡大する 経緯をたどる.したがって,ひとたびき裂が発生すると,その後は早期に破壊に至る 場合もある.しかも,疲労破壊の多くは突然に起こるため歴史的に見ても大きな事故 を招いている.このことからも疲労を考慮した設計がいかに重要かがわかる.さらに, 疲労破壊は静的強度より低いレベルでの変動荷重,応力で起こるため,前述の静荷重 設計では安全とはいえない.また,材料は素材や機械などの加工工程において,き裂 を表面や内部に含んでいる場合があり,このような場合は疲労強度を著しく低下させ ることになる.現在では,材料内部にき裂が存在することを前提にした上で,材料の 強度評価を行う破壊力学(Ill)I (142)・ (146)の発展により,より安全な設計が可能に なってきた.しかし,このような破壊機構の研究や豊富なデータの蓄積は,構造材料 として長い歴史を持つ鉄鋼材料を中心に行われてきた.確かに,鉄鋼材料に関しては 組織・損傷・きず・力学的拘束および使用環境などを考慮した破壊の解析がほぼ完成 の域に達し,データベースの蓄積も高度かつ豊富になっている.したがって,条件喜 与えれば破壊応力はかなりよい精度で求まり,機器の設計,製造,検査,保守条件を - H3]
-確立することが可能になっている. しかし,著しい社会・経済の発展に伴い,新しい構造物の出現や構造物の大型化・ 軽量化,強度の向上,使用環境などの技術的な要求を満たすために,新しい材料の研 究・開発が活発に行われている.このように絶え間なく生まれる新素材についても, 疲労強度などの力学的特性を把握することはきわめて重要であるが,新素材の特性を 客観的に評価する技術が確立されていなかったり,研究がなされているとしても着手 されたばかりで,データの蓄積量は十分とは言えない状況である(=り・ (=り.しか も,軽量化することにより常に疲労が問題となる.その例として,自動車産業などに 広まった高降伏強度材料である高張力鋼(=2)I (l=)が挙げられる.この材料のよう に降伏応力が高い材料は塑性変形が起きにくいため,ひとたびき裂が発生すると降伏 応力よりはるかに低い荷重でぜい性破壊が起こり,疲労寿命がきわめて短くなる場合 がある. さて,新素材である金属間化合物の力学的特性についても同様であり, TiAlなど
金属間化合物の特異な特性への要求が先行し,基本的な材料強度である機械的性愛の
データさえも希少であり,いわんや,重要な疲労に関する研究は始まったばかりと言 える.また,本論文で取り上げた金属粉末射出成形法による焼結材の力学的特性に関 する研究も抗折試験や引張試験によるデータが散見される程度である.これら射出成 形材の試験の評価についての標準化は,本プロセスが注目され始めた1990年の粉末 冶金に関する調査研究において,従来の粉末冶金材の引張試験規格を基に試験片形状 (1=)について検討されたにすぎない.疲労に関する研究は,歴史のある粉末冶金焼 結材料についても少なく,古くは徳永ら(149)による焼結鉄の機械的性質の評価,最 近では三浦ら(150)-(152)による鉄系焼結材料の疲労き裂進展に関する研究などが挙 げられる.その他に,ステンレス鋼のような射出成形材として普及している材料を用 いた黒田ら(105)-(107)の研究が挙げられるが,射出成形材の疲労に関する研究は緒 についた段階であると言える・射出成形されf{金属間化合物については行われていな いのが現状である. - ll--研究の目的および沓文の概要 本論文では射出成形法および射出成形材の実用化を図ることを目的として,まず金 属粉末射出成形法の成形過程について検討を行い,次に得られた成形材の力学的特性 を把握するために引張試験,疲労強度試験および疲労き裂進展試験を行った.射出成 形材TiAlの強度評価と破壊メカニズムを鋳造材と比較,検討する. 本論文は次の4葺から構成される. 第1章では,純Al粉末を用いて加工工程ごとに金属粉末射出成形法の成形性につ いて検討し,得られた成形条件によりTiAl金属間化合物の成形を行う.成形に影響 を与える加工因子を工程別に考察するとともに,成形された材料の基礎的な物性を明 らかにし,さらに三次元形状のサンプル部品の成形を試みる. 第2章では,射出成形法で得られたTiAl金属間化合物の基礎的な機械的性質を把 握するために引張試験を行う. TiAl金属間化合物は軽量で高温強度を有することが 最大の特性である.そこで,常温ならびに800℃における試験を行い,高温特性も明 らかにする.さらに,比較材として鋳造材の試験も行い,射出成形材の焼結温度に伴 う組織やポアの含有率の相違,および鋳造材と射出成形材の組織や密度の相違の引張 特性に及ぼす影響について検討する. 第3章では,射出成形材TiAl金属間化合物の疲労特性を評価するにあたり,一般 的な製造方法である鋳造材の常温下における疲労特性について検討する. TiAlの疲
労特性に閲し七は最近になって着手され始めた段階である.このことから,この章で
はTiAlの常温下における疲労強度および疲労き裂進展特性について実験を行い,組 織の点から考泰を行う. TiAlの基礎的な疲労特性を把握するとともに,次章の射出 成形材の疲労特性を考察するための貴重な知見となる. 第4章では,射出成形材TiAl金属間化合物の常温下における疲労強度および疲労 き裂進展特性について検討する.き裂発生過程や進展過程および破面様相の検討を行 い,焼結温度によって異なる組織およびポアの含有率の疲労強度およびき裂進展に及 ぼす役割について考察する.さらに,第3章で得られた鋳造材の疲労強度および疲労 き裂進展特性との比較を行い,射出成形材TiAlの組織や密度が疲労強度および疲労 き裂進展にどのような影響を与えているかを明らかにする. 一12-第1章純Alを用いた金属粉末射出成形に関する基本
的特性の検討と金属問化合物TiAlへの応用
第1章
純Alを用いた金属粉末射出成形に関する基本的特性の検
討と金属問化合物TiAlへの応用
1. 1 括 言 新素材は航空・宇宙から機械電子などの広い産業分野における先端技術の基盤の一 役を担っている.これら新素材の構造材料や機能性材料の開発のための一つの手法と して,セラミックスや金属材料を粉末化する粉体技術の発展に伴う粉末冶金法が注目 されている.それら粉末の用途および製品化のため,従来の粉末冶金技術の応用から 全く新しい手法に至る,様々な成形加工技術の開発が現在進められている.そのよう な粉末冶金法の中で,脚光を浴びている新しい手法に金属粉末射出成形法がある.こ のプロセスのメリットはニアネットシェイプで寸法精度の高い最終焼結品が得られる ことにあり,加えて複雑三次元形状も可能な成形性および量産性にある.したがって, 難加工材をはじめとする新素材・複合材料の成形にとってはきわめて魅力的な成形法 といえる.そこで,このプロセスを用いて,軽量耐熱構造材料として航空・宇宙産業 などで期待されている金属間化合物TiAlの成形を試みた. 本章ではTiAlの成形に際して,最初に代替材料として純Al粉末を用いて成形の基 本的特性を検討した.純Alは軽量な非鉄系金属材料として一般的な材料であるにも かかわらず,柔らかいために成形時において射出成形機のシリンダー内や金型内でか じりを生じやすいなどの問題から成形が困難とされており,実際の成形例もほとんど みあたらない.これらの理由から,純Al粉末を選択し,これを用いた最適射出成形 条件を確立した.続いて,得られた成形条件をもとに金属間化合物TiAlの成形を試 みた. - 13 一1. 2 突放(加工)方法 図1-1に金属粉末射出成形法の加工工程を示す.主な工程は混練,射出,脱脂, 焼結の4工程から成っている.射出成形機へ投入するペレット材を製造する混練工程, 続いて,混練材を粉砕したペレット材を用いて射出成形加工を行い,グリーン体を得 る.脱脂工程では,不要となったグリーン体中のバインダーの除去を行い,グレイ体 を得る.最後に,焼結により焼結体(シルバー体)を得る.以下にそれぞれの工程の 加工条件を詳細に述べる. 国1-1金属粉末射出成形法の加工工程 1. 2. 1 供試粉末 加工実験に用いた金属粉末は, TiAl粉末の代替材料として純Al粉末を用い,その 結果,得られた加工条件でTiAl粉末を用いた成形を行った.射出成形法では,原材 料の粉末の粒度および形状は成形性や寸法精度に対して,大きな影響を与える因子 (102)I (103)と言われており,結果的に最終焼結品の強度特性にも影響を与えること になる.したがって,使用粉末の粒度分布等を把握することは重要である.また,粉 末は原材料として受動的であり,購入するほかに手段はない.本研究においで購入し た両粉末の粒度分布を表1-1に示す.また,図ト2に両粉末のSEM写真を示す. 平均粒径は純Alが10.3FEm, TiAl粉末は10.6FEmである.平均粒径はほぼ同じで あるが,図1-2から明らかなように,両粉末の形状はそれぞれの生成法が異なるこ とによる違いがある.純Al粉末がエアアトマイズ法によって製造された楕円形状の 丸みを帯びたフレーク状に対して, TiAl粉末は燃焼合成法によっており,純Ti粉末 と純Al粉末を反応焼結後,粉砕しているため,角張った形状をしている.このよう に,それぞれの粉末粒形に差異があるため,単純に純Al粉末の成形条件をTiAl粉末 ー14
-表1-1耗AlおよびTiAl粉末の牡鹿分布
Al: #500M 地mfWddesize:10.3JLm
〝m -5.19 -7.07 -8.68 -10.6 -13.0 -16.0 -19.7 -24.2
% 2.8 13.9 15.8 20.0 20.2 16.7 85 2.1
TiAl Mean pardde size : 10.6 p m
EZⅠ:a -3.9 -5.5 -7.8 -ll.0 -16.0 -22.0 -31.0 -44.0 % A.1 10.3 15.5 18_7 22.4 14.6 7_2 3.2
F]
-_L‥I-一至去
囲1-2 粉末のSEM写真 に応用することは問題があるが,TiA)の成形に際して,それぞれの工程で得られた 結果を純Alの場合と比較して,粉末形状の差異を検討している.また,両材料の融 点は異なることから,焼結温度の設定はそれぞれの粉末に対して行った. 1. 2. 2 供試バインダー 混練工程に続く射出成形工程において成形を可能とするために,金属粉末に流動性 を持たせる必要がある.また,得られた射出成形体(グリーン体)を保形するために, 金属粉未聞の結合力が求められる.これらの要求を満たすために,バインダーを介在 させる必要がある.バインダーの役割を模式的に国1-3 (131)I (132)に示す.結合剤 ー15-Binding addition (Floa血g )
Binding addition (Debinding )
- Decomposition AcrylC regln
Polypropylene
Lubdcating addition
〔
PartingSliding betweenfrom dieparticles- Injection
molding
0 Plastic - Rheology
addition Plasticty ----・ WAX
Softness __-. pop WAX Stearic acid 図1-3 バインダー類の軌合せ用三角座標(131)I (132) はグリーン体の強度保持,滑剤は離塑性と粒子間すべりを良好にして成形性を向上さ せる,可塑剤はレオロジー性の付与と可塑性・柔軟性を与えるなどの役割がある.さ らに,最終焼結材にとっては,これらバインダーは不要な存在であり,脱月旨時におい て除去性(脱脂性)の良いことが求められる.図1-3における中心の点1は上記の 特性を均等に満たしている場合であり,点2は射出成形性に,また点3は脱脂性にそ れぞれ主体を持たせた場合のバインダー選択ということになる.このように金属粉末 射出成形では成形性と脱脂性の相反する特性を兼ね備えたバインダーでなければなら ない. 以上の諸点を考慮して,熱分解型のバインダーを選択した.また,脱脂時の加熱に よる金属粉末への酸化等の影響を小さくするために,できるだけ低い温度で完全分解 する脱月旨性のよいバインダーの選択を行った.供試バインダーは,主なバインダーと してアクリル系樹脂(AR),オレフィン系樹脂伊P),炭化水素ワックス(WAX)である. いずれのバインダーも単体の組成ではないため,いずれもいくつかの役割を果たすと - 16
-考えられる.役割を分離することは難しいが, ARは主に流動性主体の結合剤として, ppは脱脂性主体の結合剤として, WAXは分散剤・可塑剤および滑剤としての役割が 主体となっている.また,さらに助剤として,滑剤にステアリン酸(ST),可塑剤に
DOPを使用した.なお, AR, WAXは野崎ら(90'・ '137'-'139'が, PPは瀬野ら(136' が使用しているものを参考にした.助剤は一般的に添加されているものである(136' 使用したバインダーの可塑性・流動性の評価は,後述するように混練時に測定された 混練トルク値や実際の射出成形における成形性で行った.また,脱脂性は熱分解の挙 動として,熱分解特性を測定して評価した.熱分解特性の測定は示差熟天秤を用い, その測定条件は昇温速度5℃/m血,窒素ガス20且/minである. 1. 2. 3 混練工程 射出成形性はバインダーの種類やバインダーの体積比が大きく関与する.成形性に 関しては,バインダー体積比は多いほどよいが,その後の脱脂を考えると少ないほう がよい.一般に,最低バインダー添加量は体積比で金属粉末:バインダー-60:40程
皮(94)I (95)I (99)I (101)I (132)が限界とされているが,予備実験(156)において35,
40, 45%のバインダー体積比の水準で実際に加工を行ったところ,体積比の低い 35%の場合,混練材は金属粉末がバインダーに濡れず,ぱさついた状態で,また後工 程の射出成形も流動性不良が起因して不可能であった.一方,体積比の高い45%の 混練材は粘性が低く,また射出成形されたグリーン体は柔らかすぎるため,保形性に 問題があった.そこで,バインダー体積比40%を中心として39, 40, 41% (表1-2) 表1-2 鈍Alの成形加工条件 Vo1umeradoofpowderandbinder 59:4160:4061:39 Bindercomposition(AP:PP:WAX) 6:2:46:3:36:4:2 hj∝tionspeedX10-6m3/s 212937 InjationpressureMPa 202944 Temperaturensmgspeedofdebinding℃A1 357 Sinteringatmosphere Vacuum,Ar 一 Hri ‥
に変化させて実験を行った.また,使用バインダーの特性を把握するために,バイン ダー組成を因子として,衰1-2に示すように主バインダーであるAR, PP, WAXの 組成比を変化させた.なお,助剤のDOP, STはそれぞれ全バインダー体積比の10% および5%添加した(135) 混練に使用した加工機は容量o.5且のロータ回転式の加圧型ニーダで,駆動部内部 に設定されたトルクメータおよび混練槽内に取り付けられた熟電対により,加工中の せん断トルク(混練トルク)や樹脂温度の変化を記録できる.混練手順はバインダー をWAX, PP, AR, ST, DOPの順に槽内に投入し揖拝,相溶させてから,金属粉
末を少量ずつ投入し,その後加圧蓋を閉めて1時間の加工を行う.加工条件は混練設 定温度140℃,加圧力588kPa,ロータ回転数o.92s11である. 1. 2. 4 射出成形工程 混練された純Alの材料を冷却後,粉砕してペレット化し,射出成形材料とした. 使用した成形機は最大射出圧力147MPa,最大型締め力51kN,スクリュー径¢ 32mm, ノズル径¢3mの性能の縦型の射出成形機である.成形体は第2章で用いる引張試 験片を想定したもので,金型キャビティ寸法を図1-4に示す. TiAlについては,引 張疲労試験片用の幅20Ⅱ皿,長さ120Ⅱ皿,厚さ5mmの板材,およびCT試験片用の 38Ⅱ皿角,厚さ6mの板材の成形も行った.各試験片の体積およびひとつの成形に 要するペレットの計量設定値を衰1-3に示す.体積はこれら金型で作成されたポリ プロピレン伊P)成形体を用いてアルキメデス法によって測定した.また,それぞれ の成形体に対する計量値は,これら成形体の体積にスクリュー先端から金型キャビテ R20LL, ● t-5 亡、 E= ー■一 30 Ld 60 30 rr120r'-図1-4 引張試換片用金型キャビティ寸法(グ])-ン体寸法) - 18
-ィ入口までのランナーなとの体積を加算した体積よりも3×10 6Ⅱ皿3程度多めに設 定している. 射出成形工程の条件を前出の表1-2に示す.成形機がペレットに与える速度と圧 力を変化させて成形性の検討を行った.それぞれの成形体の体積はわずかに異なるこ とから,それぞれの成形体の射出成形条件を完全に同一にすることは難しいが,いず れの成形休も小さい体積の成形品であるので,体積の違いによる成形性に及ばす影響 は小さく,設定した射出速度および射出圧力の条件の範囲内で成形できた.その他の 主な条件である射出時間は3s,冷却時間は40sで一定である.また,温度パラメー タも樹月旨の流動性,すなわち成形性に大きな影響を与える因子である.後述する使用 バインダーの特性から樹脂温度は流動性を持たせるには最低130℃,またバインダー の熱分解を考慮すると200℃が限界であるため,ペレット材が流動性,粘性ともに備 わった状態と考えられる130℃と200℃の中心温度160℃に設定した.また,金型温 度が低い場合,ペレットが早期に冷却されるために流動性は低下し,固化するため不 完全なグリーン体(ショート)しか得られない.一方,金型にはグリーン体の冷却能 の役割もあり,グリーン体を固化させ形状を安定させることにより,結果として容易 に金型から取り出せる.実際に予備実験(157)から,金型温度が30℃より低い場合, グリーン体にショートなどの成形不可の場合が現れ,その温度より高い場合は金型の 冷却能力の不足によりグリーン体の型くずれが発生する場合が現れた.以上より,こ れら温度パラメータについては金型温度30℃,樹脂温度160℃ (ノズル先端部)と した. 表1-3 射出成形体(グT)-ン体)の体墳と射出計量(体積量)
x10-6m3 Tensnespecmen● Fatiguespecimen CTspecimen
Vo1umeofspecimen (greenh}dy) Ru血er 5.93 3.8 ll.96 3.8 8.51 4.0 Sum 9.73 15.76 12.51 Injectionvolume 12.85 18.87 15.65 (Settingvalue:mm) 16 23.5 19.5 - HB:
-1. 2. 5 脱l旨工程 バインダー除去は使用バインダーが熱分解型であるので,大気炉による加熱で行っ た.脱脂体のふくれや割れなどの欠陥は焼結体の欠陥として残るため(97)・ (101)I (129)I (158卜(161),昇温はきわめてゆるやかに行い,バインダーを徐々に抜く必要 がある.しかし,このような脱脂工程に多大な時間を要することば,金属射出成形法 の欠点でもある.そこで,脱脂時間の短縮可能な限度を調べるために,表112に示 した条件で脱脂昇温速度を変化させた.脱脂昇温パターンを図1-5(a)に示す.最終 脱脂温度の保持時間は3bである.さて,金属粉末に与える酸化などの問題から,脱 月旨雰囲気も重要な因子(97)・ (101)I (110) (l13)である.しかし,不活性ガス下では装 置や作業性およびコスト高にもつながる.また,予備実験(166)でArガス下で脱脂を 試みたところ,原因は不明であるが,ふくれ等の欠陥が現れやすい結果となった.こ のことはバインダーの種類は異なるものの,同じ熱分解型バインダーを用いた飴山ら (127'のTiの射出成形の場合にも認められている.以上の理由から,脱脂雰囲気は大 気下とした.また,脱脂温度は金属粉末への熱影響の点からは低いほうがよいが,脱 脂温度と脱月旨率には明らかな相関性があり,温度が高いほど脱脂率は大きくなる.一 般に,脱脂率は80%以上必要(120)・ (127)I (129)I (158)と言われており,後述するバ Temperaturerising speed l. 3℃血 2. 5oCA1 3. 7oCAl (a)腹筋昇温パターン Atmosphere A : DebindinginAr vacuum B : 1・ SinteringinArqcuum 2. Sinteringinvacuum(1.333 X 10 -3 pa) O))焼結昇温パターン 図1-5 脱厨・焼結昇温パターン (耗Al) ー 20
-インダーの熱分解特性の結果をもとに,脱脂温度を350℃に設定した.また,脱脂・ 焼結ではグリーン体の置き方も大きな影響を与える要因である.脱脂においては成形 体の全表面から均一なバインダーの分解が望まれる.そのため,プレートは通気性が 求められ,海綿状のセラミックス板が有効である.また,脱脂率が低い場合などにお いて脱月旨工程終了後,温度の低下に伴い分解中のバインダーが固化し,それによりプ レートと脱脂体が接着し離形できない場合が現れる.これらの点から通気性のあるプ レートを使用するとともに,プレートに粗粒のアルミナ粉末を薄く敷いた.なお,莱 際にグレイ体の脱脂率を算出し,バインダー体積比,組成比および脱脂昇温速度と脱 脂率との関係について考察した. 1. 2. 6 焼結工程 純Alの焼結昇温パターンを図1-5(b)に示す.表1-2に示した高真空下(1.3332Pa) , および血ガス減圧下の2種類の雰囲気条件で焼結を行った.なお,脱月旨体にはバイ ンダーがわずかに残留しているため,バインダーが完全に分解すると考えられる温度 (後述する熱分解曲線よりWAXの完全分解温度480℃)以上の550℃までを血減圧 脱脂パターンで行った.焼結温度は665℃である.この温度は純Alの融点である660 ℃を超えているが,予備実験において670℃では表面に粒状の溶融物等の液相が現れ たが, 665℃では液相は現れなかった. 665℃で液相が現れなかった理由として粉末 の酸化皮膜形成などの障害が考えられる.また,この酸化皮膜は焼結反応をも阻害さ せる(1`2)I (1=)要因になることが考えられる.昇温速度は焼結体の変形に影響を与 える(174)と言われているが,Alの場合,焼結温度が低いので, 550℃までが50℃ Al,それ以降は200℃Alに設定した.使用した真空炉は真空度1.333×10-3pa以上, 最大加熱温度2000℃,均熱性±10℃,炉内寸法¢200rrmX200rrmの炉である.な お,焼結には収縮を伴うため,研削された多孔質のプレートがよいとする文献(174) もあるように,その置き方は様々に工夫されており,ノウハウとなっている.ここで は粗粒のアルミナ粉を薄く敷き,この粉末にコロの役割を持たせ割れの防止を図った. 得られた焼結体の収縮率などを測定して,バインダー体積比,組成比および焼結雰囲 気との関係について考察した. -- 21
-1. 2. 7 TiAlの成形 純Al粉末を用いた実験より得られた条件で, TiAl粉末を用いて射出成形加工を行 った.実際の加工条件については1. 3. 6で述べる. 1. 3 結果および考察 1. 3. 1 バインダー特性 図1-6に各バインダーの熱分解曲線を示す.また,使用したバインダーの熱分解 過程を表1-4に示す.軟化点もしくは融点はPPが200℃と高いが,実際の混練工程 においてすべてのバインダーは混練温度140℃で相溶し,さらに金属粉末が加わった 状態でも十分に軟化していることを確認している.また,ほとんどのバインダーが 200℃で熱分解が始まっている.これらより,混練温度および射出成形の樹脂温度は 140-200℃の範囲が適切と考えられる. 熱分解曲線から,熱分解(脱脂)はいずれのバインダーも温度の上昇に伴い,連続 狗(90)I (167)に起こっていることがわかる. WAXは200℃より分解し始め,完全熱 分解する480℃まで,徐々に分解していく過程をたどっている.他のバインダーは分 解温度範囲が狭く,約400℃で完全分解している.その温度範囲はAP, PPが250-330℃であり, DOP, STが200-250℃である.このようにいずれのバインダーも 比較的低い温度で分解している.さて,脱脂体(グレイ体)は焼結工程まで形くずれ しないように,バインダーをわずかに残留させる必要がある.また,残留バインダー が多すぎると,焼結でふくれなどの欠陥が発生する恐れがある.一般に,脱脂率は 80-90%程度が妥当(120)I (127)I (129)I
(1S8)とされているので,以上から使用した バインダーの脱月旨温度は350℃以上が必要である.
-表1-4 バインダー熟分解特性 Binder So丘e血g (Me1血g) pointoC Vapounng pointcC Rateofthermaldecompsition% 200250300350400450oC 100% WAX 75 300 210536880 480℃ AP 170 330 29095100 400oC PP 200 75 280 8.392100 400℃ DOP 270 6.790100 400℃ ST 270 47588100 400oC @ 亡 ○
:i
O A ∈ (⊃ U.c?
I-ldg
q)卓
the 4)貞
0 0 200 Temperature oC 400 図1-6 バインダー熟分解曲簸 -23-1. 3. 2 混練工程 混練トルクに関しては,図1-7に示すような斉藤ら(132)I (168)によるラボブラス トミルによる混練挙動に関する経験的な見解がある. A曲線はもっとも標準的な場 合で,バインダーが粉体によく濡れており,粉体形状も球状に近い場合である・ B 曲線は時間とともにトルク値が低下する場合で,バインダーが分解されて低分子量に なるときにみられる. C曲線はバインダーが温度上昇に伴う化学反応によって硬化 した場合,もしくはバインダーと粉体が反応した場合であり,混練時においてバイン ダーの分解が進んだものと考えられることから,バインダーの選択に問題がある・ D 曲線は粉体が非常に微粉で角張った形状やひょうたん状の場合,もしくはバインダー の濡れが悪い場合で,ある時間後にはトルクは低下する.このようにA, ち, D曲 線の場合はトルクは低下して一定となり,バインダー添加量は十分であると考えられ る.一方, E曲線の場合はバインダー添加量が少ないために,一応見掛け上の混練 はなされているが,粉末一粒一粒にバインダーが十分にコーティングされず,粉末同 士の摩擦が生じるため,時間が経過してもトルク借は低下せず,わずかに上昇する挙 Sped血血ぬr ′■ヽ
暑
\_′ I) ヨぎ
†
→ T払e(皿血) leJZZLXmtZLte AC 囲1-7 ラボブラストミルによる混練挙動(132'・ (168) - 24-動を示したものと考えられる.このように,混練トルクの測定は粉末のバインダー中 の分散性や粉末のバインダーによるコーティング状態の判断基準となる.また,ペレ ットの混練状態は流動性と深く関与するため,射出成形性の判断基準ともなる一 純Al粉末の混練挙動を示す混練トルクデータを図1-8に示す.なお,本研究で使 用した混練機は上述したラボブラストミルと同一ではないが,基本的な構造は同じと 考えられる.図1-8(a)はバインダー組成をAP:PP:WAX-6:3:3に固定して,バイン ダー体積比を変化させた場合である.また,図1-8(切はバインダー体積比を粉末: バインダー-00:40 に固定して,バインダー組成を変化させた場合である.バインダ ー体積比および組成比の相違により,最大トルクや初期の段階におけるトルクの減衰 過程がわずかに異なっているが,いずれの場合も蓋を閉めた直後に大きなピークが現 れ,その後急速に減衰し,時間の経過とともに最終的にはほとんど無負荷の状態とな る.このように,図1-7におけるBもしくはD曲線に近い傾向を示し,一応の混練 がなされたと判断される.また,混練温度もいずれの場合も時間の経過とともにわず かに上昇する傾向を示すが,加工時間(1b)内において著しい上昇は示していない. 表1-5に各条件下の加工時間内における最大,最低トルク値および最高,最低温度 を示す.この裏からも明らかなように,いずれの条件においても最高温度は設定温度 140℃に対して150℃とわずかな上昇はあるものの異常な発熱状態を示さず,バイン ダーの分解や化学反応および粉末同士の摩擦による発熱のような現象は発生していな いと考えられる.なお,いずれの場合も最低温度が設定温度140℃より低い理由は次 のとおりである.材料投入時は蓋を開けているため,設定温度よりも温度は低下する. 蓋を閉めて混練データの測定は開始しており,蓋を閉めた直後はすぐには設定温度に 戻らず,このときの温度が最低温度となる.また,混練トルクについては,予備実験 (156)で使用した混練機において,最大値196N・mがひとつの安当な混練基準とするこ とができた.すなわち,バインダー体積比が著しく低い場合,この値を大幅に上回り, 混練材はばさついており,バインダーと粉末の濡れ状態が悪く,流動性も乏しい状態 であった.また,トルク借が大きいのみではなく,異常なトルクの変動過程を示す場 合もある.表からも196N・mを越える条件がバインダー体積比の少ない場合であり, バインダー体積比が混練状態に大きな影響を及ぼしていることを示している.最低ト - 25
--ルク値はいずれの条件もほとんど無負荷で,しかも図1-8からわかるように,この 状態が混練時間のほとんどを占めることから,バインダーの分解も少なく,時間の経 過とともに粉末とバインダーが十分に練り込まれていると考えられる.図1-9に混 練トルク借とバインダー体積比(図1-9(a))および組成比(図1-9(切)の関係を示 す.混練トルクはバインダー体積比の増加に伴い低下する傾向を示しており,バイン ダー体積比のわずかな相違でも大きく流動性に影響を与えることがわかる.また,バ インダー組成AP:PP:WAX-6:3:3の場合は,バインダー体積比の相違による混練ト ルクの変化は小さいが, AP:PP:WAX=6:2:4と6:4:2を比較すると, PPはトルクを 低下させる効果を示している.なお,バインダー組成AP:PP:WAX=6:3:3において 混練トルクの変化が他の組成の場合と異なった理由は明らかではないが,バインダー 組成の割合による相溶性が異なったことが考えられる.また,このバインダー組成条 件はバインダーの体積比を少なくできる可能性がある.以上のように,バインダー体 積比および組成比により混練トルクは異なるが,いずれの条件でもほぼ妥当な混練が なされていると考えられる. 表1-5 バインダー体葡此および軌成による混練計甜データ(耗Al)
Vo1umeratio Binder Mimi.temp. Max.temp. M拡.torque Mini.torque
ofbinder% ●‖= ℃ ℃ N.m N.m 39 a 123 150 204 4.9 b 120 150 147 4.9 C 110 150 170 4.9 40 a 126 150 157 4.9 b 130 150 147 4.9 C 126 150 142 4.9 41 a 126 150 122 4.9 b 124 150 127 4.9 C 126 150 98 4.9
Bhder compsition (AP : PP : WAX )
a, 6 : 2 : 4
b, 6 : 3 : 3
∈ え q)
a
l■ a首
= ∈ え 4)a.
a b4貞
∈ え 4)邑
h a 叫貞
0 川 20 Mixingtime min. Poder:Binder - 61 : 39 川 20 Mixingtime min. Poder:Binder - 60 : 40 30 10 20 Mi*ingtime min. Poder:Binder - 59 : 41 0 0 0 oO 4)a
蛋
P<a
首
= .O 4)竜
Aa
首
= oO 4)召
Aa
叫貞
図118 混練トルクおよび温度の変化(耗Al)(a) AP:PP :WAX- 6 :3:3
-∈ え q)
さ
l■ a署
∈ え A)邑
h a署
∈ え 4)ヨ
ト」 a首
= 川 20 M血g血e m血 AP : PP : WAX- 6 : 2 : 4 10 20 Mixingtime min. AP : PP : WAX- 6 : 3 : 3 10 20 Mixingtime m血 30 0 0 oO 4)竜
Aa
kq
= .O 4)竜
A宕
+J:kg
= oO q)Bs
Aa
首
= AP : PP : WÅⅩ- 6 : 4 : 2 図118 混練トルクおよび温度の変化(耗Al) 0) PoⅥlcr : Bhdq- 60 : 40 -- 28-∈ ● 2: A) ヨ ど a b4 fj
:弓
=Volume ratio of binder %
図1-9 混練トルクとバインダー体積比および執成の関係(耗Al) 1. 3. 3 射出成形工程 ペレット材の流動性は射出成形性にとって重要な要素である.前項により作成した 各条件のペレットを用いて射出成形を行った. 50mg精度の上皿電子天秤により引張 試験片のグリーン体の質量を測定した.その結果を表1-6に示す.また,表1-3で 示したグリーン体の体積で個々のグリーン体の質量を徐し,グリーン体の密度を求め た.さらに,使用したバインダーの密度と粉末密度から,それぞれのバインダー体積 比および組成比条件における計算上のペレット密度を示す.成形できなかったバイン ダー条件はバインダー体積比 粉末:バインダー=61:39,バインダー組成AP:PP: WAX-6:4:2である・これを除くほかの条件では, 1.2×1012kg前後の質量のグリ ーン体を得ることができた・密度の結果にばらつきはあるが, 200Okdm3前後であり, ペレットの理論密度とほぼ一致している.なお,ペレットの計算密度のほうがグリー ン体密度より低い傾向にあるが,これは混練時のバインダーの流出や混練時および射 出成形時の熟によるバインダーの分解がわずかに生じていることが原因と考えられる. また,成形可能であったすぺての成形体において,ショート現象や外観欠陥もなく, ばりなどの発生も少なく,良好な成形が行われたと考えられる.さて,成形できなか った条件は,前述の混練トルク借が比較的高い条件である.しかし,最も高いトルク - 29
-値を示したバインダー体積比 粉末:バインダー-61:39,バインダー組成AP:PP: WAX-6:2::4のペレットによる成形は可能であった.このように混練トルクと成形性 の結果が完全には一致していないが,バインダー体積比に関しては40%が限界のよ うである.また,バインダー組成に関してはWAXの流動性を含めた滑性や可塑性の 役割により, PPよりもWAXのほうが成形性に寄与したと考えられる. 射出成形速度や圧力による相違は質量の測定結果や外観検査からは認められず,本 実験内の射出速度および圧力で一部を除き十分な成形が可能であった.なお,威形で きなかったバインダー条件において,射出成形条件をさらに変化させたが成形はでき なかった.このことから,射出成形工程では射出成形条件よりも,バインダー体積比 や組成比が成形性における重要な因子であるといえる.また,樹脂温度や金型温度は 流動性を向上させる効果があるが,予備実験において樹脂温度を180℃と高くしたと ころ,バインダーの分解が進むために,かえってバインダー体積比を低下させること になり,結果的に流動性に欠け成形が不可能となった.また,金型温度を50℃と高 くしたところ,十分な冷却がなされないために保形性および離塑性が悪くなり,取り 出し時にグリーン体が変形した.このように,射出成形工程では流動性のある混練材 料を得ることが重要であり,射出圧力や速度の射出条件はグリーン体寸法をさらに向 上させる最終的な調整因子として有効になると考えられる. 以上の検討から,ペレット材が十分な流動性を持つならば,いずれの射出成形条件 でも相違のないグリーン体を得ることができることが明らかとなった. 1. 3. 4 脱府工程 いずれの条件においてもふくれ,割れ等の外観上の欠陥の発生はなかったが,昇温 速度7℃Alの条件では,三次元形状のサンプルにおいて大きな変形が生じた.バイ ンダーの分解速度が速いことによる形くずれと思われる.三次元形状部品の成形が可 能なことは射出成形のメリットであり,変形・形くずれは重大な問題であることから, 脱脂昇温速度にも限界があると考えられる.また,脱脂体の質量測定を行い,得られ た脱脂率を平均値で表1-7に示す.脱脂率は,グリーン体質量から脱脂後のグレイ 体質量を減算した質量(脱脂減量)に対する各成形条件下で成形されたグリーン体に → 聖3:
-表1-6
バインダーと射出成形圧力および速度の関係(純Al)
Volume ratioof binder % Ⅰnjectionmolding Bindercomposition(AP:PP:WAX) ∩ H usxToe95i
iPressurem3/siMPa
6:2:4 6:3:3 ー6:4:2 Green-rnaSS ×ー0-2kg 至Green-H Edensity ‖ rkg巾13 Pe皿et-densitykdm3
Green-rnaSS ×川-2kgiGreen-ーpelleト
Fdensityldensity
!kg/m3貞kdm3
I en-.Green-mass㌻density 2kgkg/m3ipellet-≡density
H ∃kg血3 39 n 21120 H 1.210 .2040 2004 29‡29
川 Ll壬j2001
1.215 2050 u E2002 I * 37 44 1.200 1 】∃*
40 21 29 1.220 2050 1990 ‖ ‖ F Hー ni1.2302070
1993 29 i 44 1.210 2040 1.230 2070 37 20 u 1.220 2050 】J ii1.220:2050 41 21 44 1979 1.200 1.220.2050 1983 29 H巨20
1.225 2060 u 37≡29 1.230 ヲ2070 1.210 Hl .2040 * : Greenbodycouldn'tbemolded.含まれるバインダーの計算上の質量の比で算出している.国1-10に脱脂率とバイン ダー体積比および組成の関係を示す.バインダー体積比の脱脂率に及ぼす明確な影響 は認められない.また,バインダー組成については, AP:PP:WAX=6:2:4と6:4:2を 比較すると, PPは脱脂性を考慮して選択したバインダーであるが,結果はWAXの ほうがPPよりも脱脂性がよいようである.しかし, AP:PP:WAX=6:3:3の組成が最 も高い脱脂率を示している.このような結果となった理由は明らかではないが,これ らのバインダー組成比での混合状態におけるバインダー間の相互作用が脱脂率に影響 を及ぼしていると考えられる.図ト11に脱脂率と脱脂昇温速度の関係を示す.脱胎 率は脱脂速度の上昇に伴い,わずかに低下する傾向を示すが,いずれの条件において も脱脂率は一般に必要とされている80%以上の値を得ることができた.脱脂工程では, 前述したようにグレイ体の形くずれを起こさず,しかも焼結の際に残留バインダーが 欠陥を引き起こさない程度の高い脱脂率を求められるが,さらに脱脂時間の短縮を図 ることを求めるならば,脱脂昇温速度は5℃Alが妥当である. 表1-7 脱脂速度と脱勝率の関係(鈍Al)
Temp.nslngSpeed Vo1umeratio Binder Debindingrate
indebindingoCA1 ofbinder% composition %
3 39 a C 86.48 40 b b 90.95 91.51 41 a C 88.24 87.08 5 39 a b 89.66 87.55 40 C C 85.28 88.23 41 a b 84.08 86.25 7 39 b C 88.85 40 a a 88.07 88.75 41 b C 88.99 85.32 Bindercomposition a, 6:2:4 b, 6:3:3 c, 6:4:2 (AP:PP:WAX) -32
-/一一CL-㌔ Binder composi也on (AP:PP:WAX) ● 6:2:4 0 6:3:3 ◇6:4:2 、■ー i=::ヨ 令-I----一---I--◇ 39 40
Volume ratio of binder %
41 図1-10 脱勝率とバインダー体積比および親戚の関係(鈍Al) * 4)
i
ぎ
90 ;召 l] こ己 4) 〔⊃ 3 5 7 Temperaturerising speed oC / h 図1-11脱勝率と脱J旨昇温速度の関係(鈍Al) - 33-1. 3. 5 焼結工程 図1-12は焼結体の全長の金型キャビティ寸法に対する線収縮率の平均値とバイン ダー体積比および組成比の関係を示している.原因は明らかではないが,バインダー 体積比40%,バインダー組成AP:PP:WAX-6:3:3の収縮率が他の組成より著しく高 い・これを除くと,収縮率に及ぼすバインダー組成の影響は小さく,またバインダー 体積比が大きくなるに伴い微増する傾向がある.これはバインダー体積比の増加に伴 い,粉末の体積比が少なくなることに起因していると思われる. 次に,線収縮率と焼結雰囲気の関係を図ト13に示す.この図から明らかなように, 真空下のほうが血減圧下より収縮率は高い.アルミニウムは酸素との親和力が高く, 常温下でも酸化皮膜が形成されやすく,粉末になるとさらに促進される(162卜(166)I `169'と推測される・この酸化皮膜は焼結を阻害する原因(163'-'165'となるが,真空 雰囲気下では還元作用が働き(127'・ (lS7'・ '169'・ '170',焼結性が向上し,線収縮率 も高くなったと考えられる.表1-8に密度,硬さ,引張強さの結果(170'を示す.な お,バインダー配合はバインダー体積比40%,バインダー組成AP:PP:WAX=6:3:3 である・いずれの特性も線収縮率の結果と同様に,真空雰囲気下のほうが優れており, 真空雰囲気は焼結性を向上させると考えられる.このことばSUS (132)I (135)・ (171) やTi '127'およびCu '122'・ '123'の射出成形においても指摘されている.図1-14に 得られたAl焼結体および焼結部品の一例(170)を示す. - 34
-5 悶 q)
i
bD ;]召
●口 .A∽ 4) ロ コ 4 3 2 1 39 40Volume ratio of binder %
41 図1-12 簸収縮率とバインダー体積比および軌成此の関係(耗Al) * 4)