一方,焼結温度の相違は図2‑2に示したように異なる組織を生じ, 1400℃焼結材 ではラメラ組織, 1350℃焼結材ではγ等軸粒とラメラ組織の混合組織である.また,
破面もそれに伴い異なっており,特に特筆すべきこととして,後者は広範囲なγ相の 粒内へき開破壊を生じている(図2‑7).このような組織の相違が引張特性に影響 を及ぼしていることは十分に考えられる.
TiAlの強度特性に及ぼす組織の影響は複雑であるが,組織の微細化は引張強さおよ
び延性を向上させることが指摘されている(18)・ (19)I (177).射出成形ではコロニー 寸法の小さい組織が得られる(図2‑2)にもかかわらず,同一のラメラ組織に対し
て射出成形材の引張強さおよび伸びは鋳造材よりもかなり小さくなった.両者の組織 はほぼ同一のラメラ組織ではあるが,射出成形材ではラメラの向きがランダムである のに対して,鋳造材(試験片A)ではラメラの向きが試験片軸方向に揃っている.敬 面のSEM観察から,ラメラ層を横切って生じた筋状の破壊形態は両者で同様であっ たが,射出成形材ではラメラ層に沿うへき開破壊が観察されている(図2‑6および
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図2‑11引張強さと相対密度の関係
‑ 59 ‑
図2‑7)
・また,鋳造材でも荷重軸がラメラ層に平行な試験片cの破面(図2‑9) においてもラメラ層間を横切ったと考えられる平坦なへき開破面が観察されている.
したがって,射出成形材の低い強度および延性には,前述のポアの影響に加えてこう したラメラ層に沿うへき開破壊も関与していることが考えられる.確かに,鋳造材に おいてラメラ層の方向によって引張特性は大きく異なっており,ラメラ層に対して垂
直な方向の強さ(試験片B)は平行な方向(試験片C)の1J2程度になった. Chn や血̀201'およびDav7・dsomやCampbeH'192'らによるラメラ層の向きがランダムで
あるラメラ組織を持つ鋳造材の引張強さを本研究結果と比較して図2‑㍑に示す.図 から明らかなように,本章の鋳造のままの材料のラメラ層に平行な方向の引張強さ (試験片A, B)とラメラ層に垂直な方向の引張強さ(試験片C)の間に位置して いる・このことは,TiAlの引張強さがラメラ層の方向に影響されることを示してい る・しかし,常温下においては,これらの結果はラメラ層がランダムである射出成形 材よりも明らかに高い.このことば射出成形材の低い引張強さの原因は,組織が異な ることよりも,鋳造材と異なるポアの存在に起因していることを示唆している.さら
に, TiAlは酸素の含有率が機械的性質に大きな影響を及ぼすと言われており,微量 の酸素の含有でも大きく低下する̀202'.射出成形材の場合,粉末および射出成形工 程において微量酸素や炭素などの侵入を防ぐことは困難であり,それらによって化合 物̀127'が焼結により形成される・このような酸素などの含有による影響が鋳造材よ
りもはるかに大きいことが推測され,このことも引張特性を低下させる一因となって いることが考えられる.
また,微細なγ等軸粒とラメラ組織の混合組織は常温延性に優れると言われている
(18'・ '19'・ '175'・
1400℃焼結材に均質化処理を施すとわずかに微細なγ相が析出し た組織となり,引張特性は1400℃焼結材よりも優れる結果となった.一方,鋳造材
では, γ等軸粒とラメラ組織の混合組織はラメラ組織よりも低い強度を示している.
このように,必ずしも†相の析出が強度,延性の向上に寄与したとは結論できないよ うに思われる・なぜならば,破面観察から,室温ではγ相はへき開破壊を起こすから
である・ 1350℃焼結材(図2‑7)および鋳造均質化処理材(図2‑8)の破面から明 らかなように,室温ではγ相はほとんど例外なくへき開破壊を示している.すなわち,
‑ 60 ‑
これらの材料の低い強度および延性はγ相のへき開に起因すると考えられる.下平と
山口(178)は強度特性に及ぼすγ相の体積率の影響を調べ, γ相の増加に伴って0.2%
耐力が低下することを示している.また, Do威喝ら(I")はγ相の高い体積率の組織
の材料は低い強度と延性を示すことを報告している.これらのことから, γ相の析出 を抑制したラメラ組織が強度,延性に優れることが考えられるが,今後さらに系統的
な研究が必要である.
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図2‑12 射出成形材,鈷造材および他の文献における引張強さの比較
ー 61 ‑
以上の検討から,射出成形材と鋳造材の引張特性における差異は,ポアの体積含有 率と組織の相違に起因すると考えられる.また,射出成形材の引張特性も密度と組織
に影響されることは明らかである.これらの因子の影響を完全に分離して評価するこ とは困難であり,今後の課題である.
本章の結果から,高い相対密度とラメラ組織が得られる1400℃が焼結温度として 適当と考えられる.しかし,さらに射出成形材の強度および延性の向上をはかるため
には,組織制御による改善を考慮する前に,まずより一層の撤密化を達成することが 必要である.これは微粉末を用いることや成形条件の改善により可能と思われる.莱 際,前述したように野崎(137)‑(139)は微粉末を用いて高い引張強さを得ている.し かし,撤密化には限界が存在すると考えられるので,ニアネットシェイプ成形が可能
とする射出成形の利点に反するが,成形後ⅢP処理を施こすことも射出成形材の強 度特性を改善する有効な対策のひとつと考えられる.
‑ 62
‑
2. 5 括 i3
金属間化合物TiAlの射出成形を行った後,得られた成形材について常温および800
℃において引張試験を実施し,機械的性質および破壊機構を鋳造材の結果と比較,検 討した.主な結果は以下のとおりである.
(1)平均粒径約11 〟 mの粉末を用いて,焼結温度1400℃で相対密度95%の焼結体 が得られた.
(2)射出成形材の引張強さは鋳造材の約1β程度であったが,鋳造材と同様に高温ま で室温の強度が維持された.
(3)射出成形材の引張強さは焼結温度に依存し, 1400℃焼結材のほうが1350℃焼結 材よりも高い強度を示した.
(4)射出成形材および鋳造材の常温の伸びはきわめて小さく,ほとんど延性を示さな
かったが,射出成形材のほうがさらに小さくなる傾向を示した. 800℃ではいず れもわずかに延性を示したが,常温と同様に射出成形材の伸びは小さかった.
(5)射出成形材および鋳造材とも, γ等軸粒とラメラ組織との混合組織はラメラ組織 よりも引張特性に劣っていた.これはγ相の粒内へき開破壊に起因していた.
(6)鋳造材に比べて劣る射出成形材の引張特性,および射出成形材の引張特性の焼結 温度依存性は,含まれるボアの体積含有率および組織の相違に起因していた.
(7)鋳造材において,引張特性はラメラ層の方向に依存した.すなわち,荷重軸がラ メラ層に平行な方向の引張強さは,垂直な方向よりも優れていた.
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