4. 1 括 言
第1章において,金属粉末射出成形によってTiAlの成形が可能であることを示し た・射出成形材の実用化に際しては,構造材料としての信頼性を保証するために,力 学的特性を評価する必要がある.そこで,第2章では射出成形材の引張特性を常温お よび800℃で評価し,一般に粉末冶金材料で指摘されている(197)ように,引張特性 はボアの存在のためにほぼ同組成の鋳造材より劣ることを明らかにした.本章ではさ
らに,成形材の力学的特性のなかでも極めて重要である疲労特性の評価を行った.射
出成形材の疲労特性に関する報告(105卜(107)はきわめて少なく, TiAlにおいてはほ とんどみあたらないのが現状である.そこで,第1章で得られた条件で射出成形され
たTiAl成形材の疲労強度および疲労き裂進展特性を調べた.また,第3章で得られ
たほぼ同組成のTiAl鋳造材の疲労強度および疲労き裂進展特性の結果(198)I (199)と 比較した・これらの結果から, TiAl射出成形材の疲労特性に影響を及ぼす因子につ
いて検討した.
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4. 2 材料および突放方法
4. 2. 1 射出成形材および境括温度と熟処理条件
使用した粉末材料および射出成形法は第1章で述べたとおりである.焼結は
1.333×10 3paの真空雰囲気中, 1350℃および1400℃の温度で行った.また,組織
の影響を調べるため, 1400℃焼結材に対して真空雰囲気中1200℃, 24b保持後炉冷 の熱処理(以後,均質化処理)を施した均質化処理材も準備した.
4. 2. 2 試故片
疲労強度( sL‑N特性)の評価に用いた疲労試験片およびき裂進展特性の評価に用
いた1βインチCT試験片の寸法を図4‑1に示す.疲労試験片については約20 × 120
×5Ⅱ皿, CT試験片については約38×38×6Ⅱ皿の( )内に示す寸法の板状のグリ
ーン体を成形した後,脱脂,焼結した.焼結温度により収縮率に差があるため,焼結
後の板材の寸法は若干ばらつく.そこで, #400ダイヤモンド砥石により焼結材の表
・裏および側面の平面研削をしたのち,ワイヤカット加工により,図に示す所定の形 状の試験片を得た・疲労試験片の試験部は幅6m,板厚4mmであるが,破壊箇所を 限定するために曲率半径40mmでワイヤカット加工を施し,最小断面厚さを3mmと
した.この応力集中係数は1.023であり,ほぼ平滑とみなしうるものである. CT試 験片は1ノ2インチCT試験片(幅25mm,板厚5mm)である.さらに,両試験片の試
験部を研磨した後,試験に供した.
‑ 90 ‑
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(a)疲労試験片
0)き裂進展用試験片(1J2インチCT試験片)
図4‑1試験片の形状寸法
‑‑ 91
‑
4. 2. 3 親裁および密度
それぞれの焼結温度および熱処理条件の疲労強度試験片の組織を図4‑2に示す.
1400℃焼結材の組織はTi3Al (α2)とTiAl(†)から成るラメラ組織と微細なγ等 軸粒の混合組織である.なお,ラメラ層の方向は各コロニーで異なり,ランダムであ る.また,均質化処理材と1400℃焼結材との組織の違いは小さく,ほぼ同様の組織 である.一方, 1350℃焼結材の組織は,これらと異なり,わずかなラメラ組織を含 む微細なγ等軸粒から成っている.なお,射出成形材との比較に用いた鋳造材の組織 は第3章で述べたように,鋳造のままの材料はほぼ全面ラメラ組織であり,均質化処 理材ではラメラ組織とγ等軸粒の混合組織であった.また,ラメラ組織のコロニー寸 法およびγ粒径は,射出成形材に比べてかなり大きかった(198)I (199)
図4‑2では組織を現出させるためのエッチングの影響により,ポアが大きくなっ ているが,エッチング前の材料表面の写真,あるいは後述する破面観察から,いずれ の材料も数〝m程度の多くの微小ポアを含んでいることがわかった.また,その面 積率は1350℃焼結材において最も大きい.ポアの含有率は材料の密度に反映される
と考えられるので,個々の試験片の密度/oを測定した.その結果をそれぞれの材料に ついて表4‑1に示す・なお,表にはTiAl鋳造材の密度(3870kgb3)に対する射出
成形材の密度の比,すなわち相対密度も示してある.射出成形材の密度は鋳造材に比 べて低く, 1350℃焼結材が最も低い密度を示す.これは,図4‑2の組織観察から判 断される結果と一致している.なお,疲労試験片とCT試験片および第2章で用いた 引張試験片の密度の差異は,グリーン体の板厚や体積の違いによるものと考えられる.
射出成形や脱脂および焼結において,肉厚や体積に応じた加工性や加工条件を検討す
ることが重要であり,それらは焼結体の性質にも影響を及ぼす(193)I (203)ことが知 られている.しかし,ここでは試験片の形状にかかわらず,同一の成形条件で成形を
行っている.
‑‑ 92 ‑
国4‑2 射出成形材の敷浪 (疲労強度試故片)
表4‑1疲労試換片およぴCT試食片の密度と相対車度
Specimen Treatment Density
pk如13
RehBve density%
Tensile 軸c
SinteFedat1400℃ 3530 91.61
llonogenized 3480 90.09
Sinteredat1350℃ 3360 87.09
CT
Sintqedat1400℃ 3430 88.62
Hcnogenized 3520 90.82
SintcredzLt1350℃ 3290 85.19
‑ 冨Fl
‑
4. 2. 4 境域的性質
表4‑2に第2章で得られた常温における射出成形材(194)および鋳造材(194)I (198), (199)の引張試験結果を示す.いずれも2‑3本の試験片から得られた結果の平均値
である.第2章で述べたように,射出成形材では, 1400℃焼結材と均質化処理材の 引張強さはほぼ同程度であるが, 1350℃焼結材は最も低い.また,それらの引張強 さば鋳造材の約1β程度である.なお,いずれの材料においても破壊ひずみはきわめ て小さく,ほとんど延性を示さない.
表4‑2 射出成形材および鋳造材の引張試験結果
M如erial Treatment Tensile
strength
EZZ]
MPa
Elongadon
¢
%
Injecdon
mold血g
Sinteredat1400℃ 188 0.039
Homogenized 196 0.043
Sinteredat1350℃ 147 0.012
Cast
As‑Gist 438 0.127
Homogenized 379 0.073
4. 2. 5 実験方法
疲労強度試験には容量19.6kNの電気油圧式疲労試験機を用い,軸荷重下,室温大 気中,応力比丘ニー1,繰返し速度10Hzで実験を行った.また,き裂進展試験は同一 の試験機を用い,室温大気中,月‑0.05,繰返し速度10Hzで行った.き裂長さの測定 には,最小目盛り10〝mの移動読取り顕微鏡を用いた.き裂開閉口挙動の測定は, 背面ひずみ除荷弾性コンプライアンス法によった.また,破面観察には走査型電子顕 微鏡(SEM)を用いた.
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4. 3 突放結果および考察
4. 3. 1 疲労強度特性
4. 3. 1. 1 S‑N曲簸
図4‑3に射出成形材のSL‑N曲線を鋳造材(198)・ (199)と比較して示す.なお,読 験応力まで静的に負荷する過程で破断した試験片については,破壊までの繰返し数
Ⅳ′‑1としてプロットしてある.この図から,まず鋳造材と比較して,射出成形材
のSIN曲線の傾きは小さく,疲労強度は著しく低いことがわかる.射出成形材にお
いて, 1400℃焼結材の疲労強度は1350℃焼結材より高い.また,均質化処理材では,
疲労による破壊データが得られていないが, 107回の疲労強度の結果から, 1400℃
焼結材とほぼ同程度の疲労強度を示すようである.
ところで,図413と表4‑2を比較すると,疲労強度に比べて引張強度がかなり低 いことがわかる.この理由として,次のような両試験片の成形上の相違が考えられる.
第一に,疲労試験片は前述したように板材として成形されるのに対して,引張試験片 はほぼ最終的な形状寸法として成形されるため,ペレット材の流動性に違いがある.
引張試験片の場合,平行部では断面積が狭くなるため,暖められたペレット材に加わ る抵抗は高くなり,流動性は低下してフローラインが不安定となり,また大きなポア の巻き込みや粉末の分布に粗密が現れやすい可能性がある.また,この射出成形時に ポアを巻き込む確率は試験平行部の長い引張試験片のほうが高い.これらは射出成形 における試験片の寸法効果であり,両試験片の密度にわずかな差異をもたらした原因
(193)・
(203)にもなっていると考えられる.第二に,試験に供する際,疲労試験片は 試験部をほぼ鏡面に研磨しているのに対して,引張試験片は研削のままである.この ため,引張試験片は加工傷などの表面欠陥を含んでいることが考えられる.これらの ことに起因して,疲労強度に比べて引張強度が低くなったものと思われ,図413に 示されたⅣ′‑1の強度が実際の疲労試験片の引張強度に近いと考えられる.
一 B]旦‑
4. 3. 1. 2 疲労強度に及ぼす叙裁とボアの影草
疲労強度に影響を及ぼす因子として,組織(ラメラ組織とγ等軸粒の体積率)およ び密度(ポアの含有率)の相違が考えられる.
射出成形材では,図4‑2に示したように, 1400℃焼結材と均質化処理材はほぼ同 様の混合組織であるのに対して, 1350℃焼結材はこれらと異なり,ほとんどがγ等
軸粒から成る組織である.また,鋳造材の組織と比較すると,射出成形材はいずれも γ等軸粒を多く含み,ラメラ組織のコロニー寸法も小さい.前章の鋳造材の結果によ れば,ラメラ組織とγ等軸粒の混合組織よりも,全面ラメラ組織のほうが疲労強度に
優れていた(198)・ (199).また,混合組織においては, γ粒の体積率の増加に伴い疲 労強度は低下することが指摘されている(184)・ (190).これらのことから, 1350℃焼
400
htermetal1ic 00mp olmd
TiAl
(【⊃ R=‑1
a
P<
=
ら
14) ヨ
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冒
め め 4)l」
+J
ZE
∇ ∇
∇
0 0
△
Cast
o As‑cast
∇ Homogenized
0
o o>
o‑>
∇ 0 ∇ 0
0
v‑>
晶 口与△宴ち
△>
hjectionmolding
o Sintered at 1400oC ロ Homogenized
△ Sintered at 1350oC
100 101 102 103 104 105 106 107 108
Number of cycles to hilure Nf 図4‑3 射出成形材および鋳造材のS‑N簸図
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結材と1400℃焼結材,および射出成形材と鋳造材の間の疲労強度の差は,それらの 組織の相違に起因していることが示唆される.
表4‑1に示したように,最も低い疲労強度を示した1350℃焼結材の密度が最も小 さい.さらに,鋳造材と射出成形材を比較すると,後者のほうが疲労強度はかなり低 く,密度も小さい.したがって,一般の焼結材料にみられるように(197),TiAlにお いても第1章の引張特性と同様,疲労強度の低下にポアの含有率が影響を及ぼしてい
ることが考えられる.そこで,疲労強度とポアの含有率を反映すると考えられる密度 との関係を図4‑4に示す.前述したように,焼結温度の高いほうが密度は高く,均 質化処理による影響は小さいことがわかる.また,同一処理条件でも個々の試験片の 密度にばらつきがある.白抜きの疲労強度(疲労限度に至った結果も含む)
,および 黒塗りの静的破壊した両試験応力ともに密度との相関を示している.すなわち,同一
条件(例えば, 1400℃焼結材の応力240MPaの3本と1350℃焼結材の応力220MPaの 2本)の結果は,密度の増加に伴い疲労寿命が増加する傾向を示している.以上のこ
とから,ポアの含有率が疲労強度に影響を与えていることが推測される.次に,同じ 処理条件においても個々の試験片の密度にばらつきがあることから,個々の試験片の 応力振幅をそれぞれの密度で除し,疲労寿命との関係で整理した.その結果を図4‑5
に示す.図から明らかなように, 1350℃焼結材と1400℃焼結材の5トN曲線は近づ き,それらの疲労強度のばらつきは小さくなる傾向にある.この整理によっても,ポ アの疲労強度に及ぼす影響をすべて表わしうるわけではないが,この結果はTiAl射 出成形材の疲労強度にポアの含有率が影響を及ぼしていることを示す傍証になると思 われる.しかし,鋳造材と比較すると射出成形材の疲労強度は鋳造材よりも依然とし て低い.このことば,疲労強度の相違がポアの存在そのものだけによるのではなく, ポアが疲労強度を低下させる要因として働くこと,および前述した組織の相違に起因
していることを示唆している.
図4‑3に示したように, S‑N曲線の勾配が小さく,疲労強度のばらつきが大きい ため,き裂の発生および成長などに関する観察結果を得ることはできなかった.第3 章の鋳造材の疲労試験において,き裂は疲労寿命の90%を超える繰返し数で発生し,
その後急速に進展したのち,試験片は破断した(198)・ (199).射出成形材がこれと同
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