2. 1 溝 口
金属間化合物TiAlは軽量で高温強度に優れており,耐熱構造材料として期待され ている.しかし,常温延性にきわめて乏しく,また加工性に劣る欠点がある.これら
は実用化に際して解決されなければならない問題であり,前者については第三元素の
添加(13)や熱処理等による組織制御方法(18)I (19)などの研究が行われており,後者 については種々の成形法(47)・ (48)I (57)・ (79)が試みられている.
ところで,成形法のなかで現在注目されている方法に金属粉末射出成形法
(105卜(107)I(127)I
(129)がある.この方法により寸法精度の高いニアネットシェイ
プで,三次元的に複雑な形状の部品を大量に製造できる.すでに, SUSなどいくつ かの金属に適用されており,さらに金属粉末の開発次第で様々な素材の成形が可能と
言われている.特に, TiAlのような難加工性材料の成形にきわめて魅力的な方法で あるが,適用例は少ない(137)‑(140) したがって,実用に際して重要な成形材の強 度特性に関する報告は,実用化がなされているSUSなど一部の材料に限定されてお
り, TiAlについてはほとんど明らかにされていない.
第1章において純Al粉末を用いて,ひとつの最適な射出成形条件を確立した.さ
らに,その条件による金属間化合物TiAlの成形を行い, TiAl焼結体を安定に得るこ とができた.そこで本章では,得られた成形材の力学的特性を評価することを目的に,
基礎的な機械的性質を得るIf=めに引張試験を実施した.なお,金属間化合物TiAlの 魅力的な特性である高温特性を評価するために,常温および800℃において実験を行 い,両温度下における破壊機構を明らかにした.さらに,鋳造材についても同様の実 験を行い,得られた両材料の引張特性の結果を比較,検討した.
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2. 2 材料および試験片
2. 2. 1 射出成形材
射出成形に使用した粉末は燃焼合成法により製造された東洋アルミニウム㈱製で, その化学成分を表2‑1に示す.成分は常温延性に最も優れると言われている¶‑33.3 mass%Alとした(175), (176).粉末の平均粒径は11 LLmである.
試験片は第1章で述べた射出成形条件により得られた引張試験用の焼結体である.
機械的性質に及ぼす影響因子として,射出成形工程中で最も影響が大きいと考えられ る焼結温度1350, 1400℃の2種類,および熱処理として1400℃焼結材に真空雰囲気 中1200℃, 24hの均質化処理を施した試験片を準備した.射出成形材は焼結により 収縮を生じるが,収縮率は焼結温度によって異なるため,最終焼結体の寸法にばらつ きを生じる.しかし,ほぼ図2‑1に示す寸法の焼結体(シルバー体)を得ることがで きた.なお, ( )内に示す数字は焼結前のグリーン体寸法を示している.最終的な 仕上げ加工として,両面に#400のダイヤモンド砥石にて平面研削を施したが,側面 は射出成形のままとした.
蓑2‑1材料の化学成分(mass%)
hhterial Al Si Mム Fe Ni Cr Cu Zn Mg N 0 H Ti
Powder 33.3 0.04 <0.01 0.04 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.02 0.95 hal.
Cast 33.5 0.01 0.03 0.02 <0.01 0.005 0.250 0.0024
図2‑1試験片の形状寸法
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2. 2. 2 鈷造材
比較材として用いた鋳造材は,血ガス雰囲気中でプラズマスカル溶解によって製 造された直径100mm,高さ210mmの円柱状の鋳造インゴットである.その化学成分 は射出成形材とほぼ同組成のTi‑33.5rruss%Alである(表2‑1参照).インゴットを 高さ方向にスライスした板から引張試験片をワイヤーカットにより採取した.なお,
機械的性質に及ぼす組織の影響を調べるために,鋳造のままと射出成形材と同様の真 空雰囲気中1200℃, 24hの均質化処理を施した試験片を準備した.
2. 2. 3 射出成形材および鈷造材の軌歳,梗さおよび密度
射出成形材の組織写真を図2‑2に示す. 1400℃焼結材の場合,Ti,Al(a2) + TiAl(γ)から成るラメラ組織と幾分γ等軸粒を含む混合組織である.ラメラ組織の
コロニー(結晶粒)寸法は約100〝m,また,各コロニーのラメラの向きはランダ
ムである. γ粒径は10‑20〝m程度である.均質化処理材の組織は, 1400℃焼結 材と基本的には同じγ等軸粒とラメラ組織(α2+γ)の混合組織であるが,この処
理によってわずかにγ相の体積率が増加している. 1350℃焼結材の場合, γ相の析 出が顕著なγ等軸粒とラメラ組織の混合組織である. γ粒径は10‑30〝m,ラメ
ラ組織のコロニー寸法は50p m程度である.また,図から明らかなように,いずれ の射出成形材においても多くの微小ポアが点在している.ポアの大きさは2‑13
〝mであるが,その量は焼結温度に依存しており,焼結温度の上昇に伴ってポアが 少なくなる傾向にある.
衰2‑1に密度および硬さを示す.比較のため,鋳造材の結果も併記した.まず, いずれの射出成形材の密度および硬さも鋳造材よりも小さい.これは主として射出成 形材に含まれるポアの存在に起因していると考えられる.表から明らかなように,
1400℃焼結材および均質化処理材の密度は3500 ‑3600k如n 3,相対密度は93 ‑ 95%
である・一方, 1350℃焼結材の密度は約3400kgh3,相対密度は約89%であり,
1400℃焼結材および均質化処理材と比較するとかなり小さい.このように,焼結温 度の上昇に伴い密度,または相対密度は増加するく1=).この結果から,組織で観察
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囲2‑2 射出成形材の叔J&
表2‑2 射出成形材および鋳造材の密度と梗さ
hbtedal
Density
垣血13
Rehdve density
%
Vickers hardness HV
h3ection
molding
Sintered at1400℃
3610 95.0 336
Homogenizadon a丘ersintered
at1480℃
3530 92.9 328
Sintered at1350℃
3370 舶.7 304
Cast
As‑cast 3800 100 414
Homgenization Shoo 100 he皿ar:402
EqLdaxedr:342
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されたように, 1350℃焼結材では1400℃焼結材に比べてポアの体積含有率が大きい ことが推察される.硬さも焼結温度の低いほうが小さいが,これは高いポアの含有率 と組織の相違(γ相の存在)の両者に起因するものと思われる.
一方,鋳造材の円柱状のインゴットの各位置における組織を図2‑3に示す.図か ら明らかなように,鋳造のままの組織は基本的にほぼ全面ラメラ組織であり,また顕 著な其方性を示す.インゴット断面では外周部から中心に向かって柱状晶が成長し, その成長方向と各コロニーのラメラの向きはほぼ垂直となっている.コロニー寸法は
大きくぼらつくが,平均534JJⅢ (インゴット半径方向) ×111〝m (円周方向) で射出成形材に比べて粗大な組織である.一方,均質化処理材の組織を図2‑3(d),
(e)に示す. γ等軸粒とラメラ組織の混合組織であり, γ相の体積率は約23%,粒径 は約67〟mである.
このように鋳造材の組織は其方性が大きいので,円柱の高さ方向が荷重軸方向と一 致する試験片,すなわちラメラの向きが荷重軸とほぼ平行に揃うような図2‑1に示
した形状寸法の試験片(試験片A)と,円柱の高さ方向に対して垂直な方向が荷重 軸となる試験片,すなわちラメラの向きが荷重軸とほぼ垂直となる試験片(試験片C) を採取した.なお,インゴットの直径は100mmで,しかも中央はラメラの向きが一
様でないため,最大半径の長さの試験片しか採取できない.したがって,試験片平行 部は15Ⅱlmである.なお,試験片寸法の影響を考慮して,ラメラの向きが荷重軸とほ
ぼ平行に揃った同寸法の試験片(試験片B)も採取した.また,均質化処理は試験 片Aのみ施した.
2. 2. 4 引張試験
引張試験はクロスヘッド速度1m血血で大気中,常温および800℃で行った.後
者の場合, 800℃まで1.5hで昇温後, 10min保持したのち試験を行った.温度の精度 は±1℃である.
引張試験終了後,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて破面観察を行った.
一 49 ‑
Growthdirection oE cohrnar crystal
MicmshlCture after homogenizing
(4)皿d (e)cozzespod b (a)and O)).z也PeCdvdy・
(Dtdex: γ + (a2+γ )・・‑‑Equiad γ :23%vol.) 国213 集造材のインゴット中の各壌所における軌♯
および均質化処理後の敷浪
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2. 3 引張特性
2. 3. 1 引張強さ
射出成形材の引張試験結果を鋳造材と比較して図2‑4に示す.図2‑4は2本また は3本の試験片の平均値である.なお,射出成形材は各試験片ごとのばらつきが鋳造 材よりも大きかった.常温においては,同一のラメラ組織を有する1400℃焼結材と 鋳造のまま(試験片A)の材料の比較から明らかなように,射出成形材の引張強さ ば鋳造材よりもかなり低く約1ノ2程度となる.また,他の処理材(均質化処理材およ び1350℃焼結材)も同様である.均質化処理による影響は鋳造材では低下している のに対して,射出成形材は向上しているが,その差は小さく,結果のばらつきの範囲 と考えられる.射出成形材間では焼結温度の低下に伴い引張強さば低くなっている.
一方, 800℃においても,射出成形材の引張強さは常温と同様に鋳造材よりもかなり 低い.しかし,射出成形材では常温の強度が高温まで維持され,また鋳造材では高温
のほうが高くなる傾向があり(強度の逆温度依存性) , TiAlの優れた高温強度が理 解される.
また,鋳造材の各試験片の結果から,組織の其方性による強度の組織依存性が明ら かである.ラメラ層に平行な方向の引張強さが最も大きく,垂直方向はそれに比べて ほぼ1ノ2である.試験片Aの荷重方向は試験片Bと同様のラメラに平行であるが,前 者の引張り強さは後者より低い.これは試験片Aの長い平行部に起因したラメラ層 の方向におけるばらつきによるものと考えられる.
2. 3. 2 伸 び
本研究で用いたAl組成のTiAlは最も高い延性を示すと言われている(175) (176) しかし,常温においては,射出成形材および鋳造材とも伸びはきわめて小さく,事実
上延性を示さない.射出成形材の伸びが鋳造材よりもさらに小さくなる傾向にある.
高温においては,鋳造材は2%程度の伸びを示すようになるが,射出成形材の伸びは 鋳造材よりも小さく,また焼結温度の低下とともに小さくなる.なお,鋳造材の試験 片B, Cについては平行部が短いため,伸びは測定していない.しかし,巨視的な 観察から,試験片Cの伸びはほとんどみられなかった.すなわち,ラメラに対して 垂直な方向においては延性をほとんど示さない.
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