博士(理学)岡田只士 学位論文題名
セリンノスレオニン残基特異的プロテインホスファターゼ 1 型 (PPl) お よ び 6 型 (PP6) 触 媒 サ ブ ユ ニ ッ ト の
細 胞 内 機 能 に 関 す る 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
本 論文 で は 、PP1触 媒サ ブ ュ ニツ 卜 ア イソ フ オー ムおよびPP6触媒サブ ユニットの 発現抑制 を行い、 細胞内に おけるこ れらの触 媒サブュニットの 機 能 を 検 討 し た 。 本 論 文 は 、 以 下 の3章 に よ り 構 成 さ れ て い る 。
第1章で は 、HeLa細 胞 に タグ を 付 加し たPPICアイ ソ フ オ― ム を一 過 性 に 発 現 させ 、 こ の発 現 を内 部 標 準と す るこ と で、細胞 内におけ るPPIC各 ア イ ソ フオ ― ム の相 対 的な 発 現 量を 検 討し た 。HeLa細胞に おけるPPIC各 ア イ ソフ オ ー ムの 相 対的 発 現 量はPPICaが 最 も多 く ( 約67%) 、 つ いで PPIC8( 約 17% ) 、 PPICyl( 約 16% ) で あ る こ と が 示 さ れ た 。 第2章 で は、PPICア イソ フオ― ムの発現 抑制と表 現型の解 析を行った 。 こ れ ま で のPP1研 究 に よ り 、(DPP1が 触 媒 サ ブ ュ ニッ ト(PPIC)と 調 節 サ ブュニッ トからな るホロ酵 素として 機能して いること、 @調節サ ブュニツ トがPP1の ホロ 酵 素の 活 性・ 細胞内局 在・基質 特異性の 制御に重要 な機能 を担 っ て いる こ と、 が 明 らかにさ れており 、PP1の生理 的調節は主 に調節 サブュニ ツ卜により営まれていると考えられている。―方、高等動物には、
ユ ビ キ タ ス に 発 現 す る3種 類 のPPICア イ ソ フ オ ―ム(a、yl、6) が存 在 し、(王)PPIC各アイソフオ―ムの遺伝子発現がそれぞれユニ―クなプロファ イルを示 すこと、 また、@ 各アイソ フオーム が異なる細 胞内局在 を示すこ とが報告 されてい る。これ らのこと から、PPIC各 アイソフオ ―ムが異なる 生理機能 を担い、 細胞内で 役割を分 担してい る可能性が 考えられ るが、そ のような 研究はほとんど成されていない。本研究ではこの点に焦点をあて、
PPICアイ ソ フ オー ム の役 割を 明らかに するため に、本章 では、siRNAを用 いてPPIC各 ア イソ フ オ― ム の 発現 抑 制と 表 現 型の 解 析を 行った。細 胞周 期や細胞 運動、細 胞のサイ ズ変化な ど、いく つかの表現 型を解析 した限り では、PPICア イソフオ ーム問で 大きな機 能的差異 を認めるこ とはできなか った。し かしなが ら、PPICaノッ クダウン 細胞における増殖抑制やviabil吋 の低下、 丸く盛り 上がった 形態や、PPlCY1ノックダ ウン細胞に おける細胞 周期G1期細 胞 の 減少 とS期 細胞 の 増 加と い う細 胞 周 期変 化、PPlC6ノック
ダウン細胞における運動能亢進や薄く扁平に広がった形態、多数の葉状仮 足様構造など、各ノックダウン細胞は、顕著ではないが再現性のある表現 型変化を示した。以上の結果は、PPIC各アイソフオームが互いに相補的に 機能するほかに、部分的には特異的な機能を担っている可能性を示してい る。
第3章では、哺乳類における細胞内機能がほとんど報告されていない、
プロテインホスファタ―ゼ6型(PP6)の細胞内機能を明らかにすること を目的に、第2章に準じ、PP6発現抑制と表現型の解析を行った。PP6ノ ックダウン細胞は、細胞増殖や細胞周期に変化は認められず、細胞の運動 能は1.2倍程度亢進した。細胞形態は大きな変化を示さなかったが、ノッ クダウン細胞の一部で明瞭なファイバ―状アクチンが観察されなくなると いう形態が観察された。このような細胞運動能の亢進と形態的変化に関連 があるかは現在のところ不明であるが、複数のsiRNAで同様な結果が得ら れていることから、意味のある表現型であると考えられる。以上の結果よ り、PP6がストレスフんイバーの形成に関与していることが考えられる。
しかし、すべてのノックダウン細胞でこのような形態的変化が確認されな いこ と か ら 、 こ の 機 能はPP6の 主要な 機能 では ないと 考え られ た。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査 教 授 菊池 九二 三 副 査 教 授 矢 澤 道 生 副 査 教 授 坂 口 和 靖 副 査 教 授 及 川 英 秋 副 査 教 授 畠 山 昌 則
学位論文題名
セリンノスレオニン残基特異的プロテインホスファターゼ 1 型 (PPl) お よ び 6 型 (PP6) 触 媒 サ ブ ユ ニ ッ ト の
細 胞 内 機 能 に 関 す る 研 究
本研究は、セリン/スレオニン残基特異的プロテインホスファターゼ1型(PP1) お よ び6型(PP6)触 媒 サ ブ ュニッ トの 細胞 内機 能を 明ら かに した もの で、 以下 の3点に要約される。
1. HeLa細 胞に タグ を付 加し たPPICア イソ フオ ―ムを一過性に発現させ、この 発 現を 内部 標準 とす るこ とで 、細 胞内 にお けるPPIC各アイソフオ―ムの相対的 な 発 現 量 を 検 討 し た 。HeLa細 胞 にお けるPPIC各ア イソ フオ ーム の相 対的 発現 量 はPPICaが最 も多 く( 約67% )、 つい でPPIC8(約17%)、PPICyl(約16%)
で ある こと が示 され た。
2.PPICア イ ソ フ オ ― ム の 発 現 抑 制 と表 現型 の解 析を 行っ た。 これ まで のPP1 研 究 に よ り 、ぐDPP1が 触 媒 サ ブ ュ ニ ツ 卜(PPIC)と 調節 サブ ュニ ット から なる ホ ロ 酵 素と して 機能し てい るこ と、 @調 節サ ブュ ニッ トがPP1の ホロ 酵素 の活 性・ 細胞 内局 在・ 基質 特異性 の制 御に 重要 な機 能を 担っていること、が明らか にさ れて おり 、PP1の生 理的調節は主に調節サブュニツ卜により営まれていると 考 え ら れて いる 。―方 、高 等動 物に は、 ユビ キタ スに 発現 する3種類 のPPICア イソ フオ ―ム (磁 、yl、6)が存在し、(PPIC各アイソフオ―ムの遺伝子発現が
それぞれユニ―クなプロファイルを示すこと、また、◎各アイソフオ―ムが異 なる細胞内局在を示すことが報告されている。これらの事実から、PPIC各アイ ソフオ―ムが異なる生理機能を担い、細胞内で役割を分担している可能性が考 えられるが、そのような研究はほとんど成されていない。本論文ではこの点に 焦点をあて、PPICアイソフオ―ムの役割を明らかにするために、siRNAを用い てPPIC各アイソフオ―ムの発現抑制と表現型の解析を行った。細胞周期や細胞 のサイズ変化など、いくっかの表現型を解析した限りでは、PPICアイソフオ―
ム間で大きな機能的差異を認めることはできなかった。しかし、PPICaノックダ ウン細胞における増殖抑制やviabiliけの低下、丸く盛り上がった形態や、PPlCY1 ノックダウン細胞における細胞周期G1期細胞の減少とS期細胞の増加という細 胞周期変化、PPlC6ノックダウン細胞における運動能亢進や薄く扁平に広がった 形態、多数の葉状仮足様構造の出現など、再現性のある表現型変化を示した。
以上の結果より、PPlC各アイソフオームが互いに相補的に機能するほかに、部 分 的 に は 特 異 的 な 機 能 を 担 っ て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。
3.プロテイ ンホスフん ターゼ6型(PP6)の細胞内機能を明らかにするため、
PP6発現抑制による表現型の解析を行った。PP6ノックダウン細胞は、細胞増殖 や細胞周期に変化は認められず、細胞の運動能は1.2倍程度亢進した。細胞形態 は大きな変化を示さなかったが、ノックダウン細胞の一部で明瞭なファイバ―
状アクチンが観察されなくなるという形態が観察された。以上の結果より、PP6 が ス ト レ ス フ ァ イ バ ー の 形 成 に 関 与 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。
これを要するに、著者は、セリン/スレオニン残基特異的プロテインホスファ ターゼ1型(PP1)および6型(PP6)触媒サブュニットの細胞内機能を解析し、
新しい知見を加えた。よって、著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与 させる資格あるものと認める。