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博士(理学)黒田 茂 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(理学)黒田   茂 学位論文題名

Iterated Function Systems in the Hippocampal CA1

(海馬CA1 領域における反復縮小写像系について)

学位論文内容の要旨

  脳の海馬はエピソード記億を生成する為に必要不可欠な部位として知られているが、未だ不明な点も多い。

海馬 の 主要 な部 分 領域であ るCA3領域 とCA1領 域は互いに異なる解 剖学的特徴をもち 、前者から後者ヘ 一 方向結合が存 在する。CA3領域で生成され る時空間パターン系 列の有する情報が 、CA1領域にどのような形 で影響を与え ているのかを明らか にすることは、CA1領域の計 算論的役割を理解する上で重要である。我々 は最近の研究 において、CA1神経細胞の膜 電位が、入カパター ン系列の履歴に応じて階層的に分布している ことを見い出 した(Fukushima et al. 2007)。本論文では、このような階層的分布を生成する動的メカニズム について検討 する。ラット海馬ス ライスを用いて実 験を行ない、CA1錐体細胞からの記録データをりターン マップ解析によって調べる。また、多細胞からの同時記録データを仮想的に構成することにより、神経細胞集 団レベルの振 る舞いも検討する。 個々の神経細胞レ ペルおよび集団レペルの両方において、CA1領域におけ る応答膜電位のりターンマップは縮小的アフイン変換の組によって良く近似された。これらの変換は各時点の 入カパターンに応じて自己組織的に現れる応答ルールを表しており、入カパターン系列の符号化がこれら応答 ルールの系列 を介して実現されていることがわかった。以上の発見は、CA3領域で生成された時系列情報が、

CA1神 経 細 胞 の 膜 電 位 に 自 己 相 似 的 に 表 現 さ れ 得 る と い う 直 接 的 な 証 拠 を 与 え る 。

(2)

学位論文審査の要旨 主査

  

教授

  

津 田一郎 副査

  

教授

  

西 浦廉政 副査   教授   由利美智子 副査   准教授   松本健司

学 位 論 文 題 名

Iterated Function Systems in the Hippocampal CA1

(海馬CA1 領域における反復縮小写像系について)

  1950年代 にHMという 患者の 臨床研究 によっ て大脳辺 縁系の一 部である海馬がエピソード記憶の形 成に必 須の場 所である ことが 強く示唆 された。 その後1980年代になってRBという患者の臨床研究に よって 、海馬 の出力部 であるCA1領域 がエピソード記憶形成に必要な場所であることが確定した。た だし、CA1は エピソー ド記憶 形成に必 ずしも十分であるわけではなぃ。他方1970年代に海馬の入力部 である歯状回のニューロンに長期増強というシナプス学習の性質があることが発見された。この発見は 1960年代 後半のD.Marrによる海馬の数学モデルによる予言を実証したものでもある。Marrは海馬が連 想記憶形成の機能があると予想し、仮説を提唱した。その後記憶の理論研究、実験研究がこの理論の延 長線上に展開された。しかしながら、なおエピソード記憶の形成機構に関しては未解決のままであった。

津田は1987年以降連続連想記憶のモデルを提唱していたが、1995年から簡単な神経回路モデルにおい てカオ ス時系列のカントール集合上への埋め込みの可能性を研究し、2001年に本申請者の黒田茂氏と ともに 海馬CA1におけ るカン トールコ ーディン グ仮説 を提唱し た。さらに、山口裕と津田は海馬CA1 ニュー ロンの 生理学的 に認め られているモデルをもとにCA1ネットワークがカオス的時系列をカント ール集合上にコードすることを示した。

  本申請者の黒田茂氏はこれをさらに詳しく研究し、CA1ニューロンの膜電位変化の方程式から上記仮 説が正しいことを示した。さらに、玉川大学脳研究所の塚田、福島の両氏と共同実験を行い、上記カン トールコーディング仮説を実証した。すなわち、黒田氏はラット海馬のスライスを用いて、CA1領域に カオス的なパターン時系列を電気的に入カし、CA1ニューロンの膜電位応答を計測し、いくっかの確立 した数 学理論 と自身が 考案し た簡単な方程式を用いて詳しいデータ解析を行った。黒田氏はCA1ニュ ーロン がスパイクを出カするかしないかにかかわらずニューロンの膜電位は入力時系列の履歴に応じ た深さをもっクラスターを形成することを示し、カントール集合の形成を示唆した。さらに、黒田氏は カントール集合を生成するメカニズムとして反復写像系(IFS)に着目し、その存在を実験データの中に発 見した 。これ によって 黒田氏 は実際のCA1ニューロンにおいてもカオス的時系列が入カされたときに は カン ト ー ル集 合 が生成 され入力 時系列 がニュー ロンネッ ト上に 符号化さ れるこ とを実証 した。

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(3)

  これを要するに、著者は脳におけるエピソード記憶形成にっいてIFSとカントールコーディングの新 知 見 を得 たも ので あ り、 複雑 系数 理学 と応 用数 学に 対し て貢 献す ると ころ 大 なる もの があ る。

  よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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