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術後大動脈弁狭窄に対して経食道心エコーによる術中診断が術式を変えた大動脈縮窄複合根治術後患児の1例

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Academic year: 2021

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(1)◇症 例 報 告◇. 術後大動脈弁狭窄に対して経食道心エコーによる術中診断が 術式を変えた大動脈縮窄複合根治術後患児の 1 例 あいち小児保健医療総合センター. 渡 北. 抄. 邉 文 村 佳. 雄 ,宮 奈. 津. 光. 範,石. 録. 田. 祐. 基. 症. 例. 大動脈縮窄複合根治術後に左室流出路狭窄を来し,大. 2 歳男児,身長 85 cm ,体重 11 kg 。 41 週 2 日 2,744. 動脈弁右冠尖半閉鎖から大動脈弁狭窄を生じた症例を経. g で出生。生後 75 日で咳嗽を契機に近医受診,心雑音. 験した。右冠尖半閉鎖は,心室中隔欠損閉鎖術後の瘢痕. を指摘され,精査の結果,大動脈縮窄複合と診断され. と考えられる突起物が,左室流出路血流を一部遮ること. た。生後 2 か月で心室中隔欠損閉鎖術,拡大大動脈弓. で生じたものと考えられた。経胸壁心エコーによる術前. 吻合術が施行された。術後,徐々に大動脈弁狭窄が進行. 評価では,これを指摘するのは困難であった。麻酔導入. し, 2 歳時に最大圧較差 90 mmHg となった。術前経胸. 後の経食道心エコーにより大動脈弁狭窄の機序が判明,. 壁心エコーでは,無冠尖と左冠尖が癒合した大動脈二尖. 左室流出路狭窄の原因となる突起物切除という適切な術. 弁が疑われ,これに伴う大動脈弁狭窄症の診断で,大動. 式を提案できた。術前経胸壁心エコーで診断が概ね網羅. 脈弁形成術が予定された。. される小児においても,麻酔導入直後の経食道心エコー. 笑気,酸素,セボフルランよる緩徐導入の後,プロポ. による再評価は極めて重要である。. フォール,フェンタニル,ロクロニウムを加え,セボフ. キーワード経食道心エコー,左室流出路狭窄,大動脈. ルラン,プロポフォール,フェンタニルで麻酔維持を行. 弁半閉鎖. った。麻酔導入後,経食道心エコーで観察すると大動脈. 緒. 弁は三尖で,心室中隔欠損修復部の左室流出路側に薄い. 言. 突起物を認めた(図 1 )。この突起物により血流が遮ら. 経食道心エコーの描出範囲に制限があり,小児先天性 心疾患の診断を,経食道心エコー単独で行うことは推奨. れ,右冠尖が収縮期に半閉鎖しているものと考えられた (図 2)。. されていない1)。小児先天性心疾患の術前診断において. 経食道心エコー画像を供覧し,心臓血管外科医と協議. は,経胸壁心エコーが主たる術前診断ツールとされてお. した結果,まず左室流出路の突起物を切除し,人工心肺. り,経食道心エコーは補助的な役割を果たす1) 。しか. を離脱,再評価を行う方針とした。突起物切除後,経食. し,麻酔導入直後の経食道心エコーによる左室流出路,. 道心エコーで突起物の消失が確認され(図 1),右冠尖. 大動脈弁,大動脈の再評価が,正しい診断および術式の. の可動域制限は解除された(図 2 )。しかし,大動脈弁. 変更へつながった症例を経験した。. 輪径が小さく( 78  of normal ),弁尖の肥厚も残存し たため,術後 25 mmHg の圧較差が残存した。大動脈弁 狭窄は大きく緩和されたため,追加介入はせず,手術終 了となった。突起物は,線維化した心筋組織と考えられ た。. あいち小児保健医療総合センター. 考. 〒4748710 愛知県大府市森岡町七丁目 426 番地. TEL: 0562430500 FAX: 0562430513 E-mail: fumio.bb@gmail.com. 察. 大動脈縮窄複合根治術後に左室流出路狭窄を来し,大 動脈弁半閉鎖(右冠尖半閉鎖)から大動脈弁狭窄を来し ― 75 ―.

(2) Cardiovascular Anesthesia VOL. 24 NO. 1 2020. 図1. 術前および術後の中部食道大動脈弁長軸像を示す。術前,左室流出路に心室中隔欠損閉鎖術後の瘢痕と思われる突起 物を認めた(矢印▼)。この突起物による血流制限により,右冠尖の半閉鎖が生じ,左室流出路狭窄を来したと考え られた。突起物切除術後,突起物は消失し,右冠尖半閉鎖が改善,左室流出路狭窄が緩和された。. 図2. 術前および術後の中部食道大動脈弁短軸像を示す。術前,左室流出路の血流制限に伴う右冠尖の半閉鎖を認めた。突 起物切除術後,血流制限が消失し,右冠尖半閉鎖は改善された。. たと考えられる症例を経験した。. 心エコーが主たる術前診断ツールとされており,経食道. 経食道心エコーでは,大動脈弓全体,大動脈狭部,左 肺動脈などの観察が困難なため,小児先天性心疾患の診. 心エコーは補助的な役割を果たす1)。しかし,本症例で は経食道心エコーによる再評価で診断が修正された。. 断を,経食道心エコー単独で行うことは推奨されていな. 大動脈縮窄複合は,大動脈二尖弁の合併が多く,大動. い1)。小児先天性心疾患の術前診断においては,経胸壁. 脈も低形成であることから,遠隔期に大動脈弁狭窄や大. ― 76 ―.

(3) 術後大動脈弁狭窄に対して経食道心エコーによる術中診断が術式を変えた大動脈縮窄複合根治術後患児の 1 例. 動脈縮窄の再燃を見ることがある2)。本症例では,術前. 本症例のような稀な病態では,麻酔導入後の経食道心. に大動脈弁の異常を検出したが,大動脈弁下の突起物と. エコーを詳細に行うことで,術前の経胸壁心エコーによ. 関連付けることはできなかった。大動脈縮窄複合術後の. る診断が修正され,術式の変更につながる重要な所見が. 大動脈弁狭窄と言えば大動脈二尖弁が原因といった先入. 得られることがある。大動脈弁狭窄の症例でも,弁以外. 観があった可能性がある。また,初回手術時に心室中隔. に原因がある可能性があり,周辺構造について観察を行. 欠損経由等で術野から大動脈弁を直接観察しておらず,. う必要がある。麻酔導入後の経食道心エコーは,術前診. 大動脈弁が三尖という確証が得られなかったことが誤診. 断を見直す最後の機会である。先入観を持たずに経食道. につながった可能性も指摘できる。. 心エコーを用いた観察を行うことが重要である。. 右冠尖半閉鎖の機序は,突起物が左室流出路血流を遮 ることで生じたものと考えられた。速い血流に組織が引. ※この投稿に関して利益相反なし。症例報告に関して,. き込まれるという点では,流出路型心室中隔欠損症で右. 十分な説明の後,患者家族から文書で承諾を得た。. 冠尖や無冠尖逸脱が生じるのと同様な機序と考えられ. 参. る 3) 。 本症例の執刀医は,切除した突起物は硬く線維化した. 考. 文. 献. 1 ) Ayres NA, Miller-Hance W, Fyfe DA, et al. Indications and. 心筋組織であろうと論評したが,病理検査は行われてお. guidelines. らず,詳細は不明である。本症例の経過中,感染性心内. echocardiography in the patient with pediatric acquired or. performance. of. transesophageal. congenital heart disease. J Am Soc Echocardiogr 2005; 18: 9198.. 膜炎を疑わせる有害事象はなく,疣贅等ではないと考え られる。. for. 2 ) Sugiura J, Nakano T, Kado H. Left ventricular out‰ow. 心室中隔欠損症に対するパッチ閉鎖術では,右心系に プレジェットや縫合糸の結び目が存在する。縫い方にも. tract obstruction in aortic arch anomalies with ventricular septal defect. Ann Thorac Surg 2016; 101: 23022308.. よるが,流出路型心室中隔欠損症では,心室中隔欠損閉. 3 ) Tweddell JS, Pelech AN, Frommelt PC. Ventricular septal. 鎖後のリークの補修を行う過程で,縫合糸の結び目や縫. defect and aortic valve regurgitation: pathophysiology and. 合部の組織が左室流出路へ翻転し,突出することも考え られる。. ― 77 ―. indications for surgery. Semin Thorac Cardiovasc Surg Pediatr Card Surg Annu 2006; 9: 147152..

(4) Cardiovascular Anesthesia VOL. 24 NO. 1 2020. Change in type of surgery for complex coarctation of the aorta due to diagnosis by transesophageal echocardiography during surgery. Fumio Watanabe, Mitsunori Miyazu, Yuki Ishida, Kana Kitamura. Department of Anesthesiology, Aichi Children's Health and Medical Center 7426 Morioka-Choh, Obu City, Aichi Prefecture 4748710. A 2-year-old boy had left ventricular tract obstruction and aortic valve stenosis due to semi-closure of the right. mechanism of aortic valve stenosis was detected by transesophageal. echocardiography. after. induction. of. coronary cusp after extended aortic arch anastomosis for. anesthesia; subsequently, an appropriate type of surgery. complex coarctation of the aorta. The semi-closure of the. ―i.e., resection of the scar―was proposed. Therefore,. right coronary cusp may have been caused by partial. re-evaluation of the pathology by transesophageal. blockage of the left ventricular tract blood ‰ow by a scar. echocardiography after induction of anesthesia is im-. obtained during patch closure of a ventricular septal. portant, even for pediatric patients with congenital heart. defect. It was di‹cult to detect this pathology by trans-. diseases who have been diagnosed mainly by trans-. thoracic echocardiography before the surgery. The. thoracic echocardiography.. Key Words: Transesophageal echocardiography, Left ventricular tract obstruction, semi-closure of aortic valve. ― 78 ―.

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