著者
砂田 崇広
学位授与機関
Tohoku University
東北大学修士学位論文
論文題目
歯髄活性診断用光ファイバ
プローブシステムに関する研究
東北大学大学院 医工学研究科
医工学専攻 松浦研究室
砂田 崇宏
目次
第1 章 緒言 ... - 1 - 1.1 歯髄活性度診断方法 ... - 1 - 1.2 本研究の目的 ... - 2 - 1.3 ファイバを用いる利点と酸素飽和度測定による利点 ... - 3 - 1.4 パルスオキシメトリの原理 ... - 4 - 1.5 用いる光源波長の選択 ... - 6 - 第2 章 透過型プローブを用いた歯髄活性診断システムの改善 ... - 7 - 2.1 測定系の改善 ... - 7 - 2.2 SN 比向上へ向けた測定系の検討 ... - 9 - 2.2.1 LED による直接光照射の検討 ... - 9 - 2.2.2 集光度の高いレンズを用いた検討 ... - 10 - 2.2.3 実験系の構築と測定結果 ... - 11 - 2.2.4 レンズ無し LED による照射光強度増加 ... - 13 - 2.2.5 集光度と最適光照射位置の関係 ... - 15 - 2.2.6 細径シリコンチューブを用いた疑似モデルの構築 ... - 17 - 2.3 生活歯での血流脈波測定 ... - 19 - 2.3.1 実験系と測定結果... - 19 - 2.3.2 レジンキャップの検討... - 20 - 2.4 まとめ ... - 21 - 第3 章 反射型プローブを用いた歯髄活性診断システムの検討 ... - 22 - 3.1 切歯疑似モデルに対する脈波測定 ... - 23 - 3.1.1 受光プローブの素線数増加による脈波検出の試み ... - 23 - 3.1.2 照射・受光一体型プローブに関する検討 ... - 25 - 3.1.3 プローブ間隔と反射深さの関係 ... - 29 - 3.1.4 人工肺の導入 ... - 30 - 3.1.5 プローブ配置の最適化に関する検討 ... - 33 - 3.1.6 受光プローブの改良 ... - 36 - 3.2 臼歯疑似モデルに対する脈波測定 ... - 37 - 3.3 生活歯の血流脈波測定 ... - 40 - 3.3.1 測定系構築 ... - 40 -3.3.2 反射型プローブ用レジンキャップの作製 ... - 41 - 3.3.3 指尖脈波が同時検出可能な生活歯脈波測定系構築 ... - 42 - 3.3.4 フーリエ変換による脈波解析 ... - 44 - 3.3.5 新たな照射受光一体型プローブを用いた測定 ... - 50 - 3.4 まとめ ... - 52 - 第4 章 結言 ... - 53 - 参考文献 ... - 55 - 謝辞 ... - 57 - 発表論文 ... - 59 - 付録A Hct と吸光度の関係 ... - 60 - 付録B プローブの滅菌について ... - 62 -
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第 1 章 緒言
小児期における歯の外傷では、正常な咬合育成のため乳歯をできるだけ良好な状態で 保ち、後継永久歯を健全な発育へ導くことが重要であり、歯髄の病態診断は歯の健康度 を知るうえで重要な判断材料となる。1.1 歯髄活性度診断方法
現在、臨床における歯髄活性度診断法として、主に電気刺激診断や打診といった方法 が行われている(図1.1)。これらの方法は、歯髄の神経に対して刺激を与えることで、 患者の反応を見て診断を行う方法である。しかし、これらの診断法は患者に苦痛を与え たり、患者の主観的な判断に依存するため、特に小児では信頼性に欠くことがある。特 に、神経が発展途上である幼若永久歯では正常であっても反応しないことがあるため、 これらの診断法に代わる客観的診断方法が求められている。 そこで、光を用いた非侵襲的かつ客観的な診断方法として、歯牙に光を照射し歯髄脈 波を検出することで歯髄動脈血酸素飽和度を測定する、パルスオキシメトリによる歯髄 活性度診断法を提案する。歯髄は神経線維に富み、血管も豊富に存在する組織である。 これらは互いに密接な関係にあり機能的にも相関しているため、歯牙活性度の診断が可 能となる。 図1.1 電気診断装置と電気診断の様子- 2 -
1.2 本研究の目的
本研究室では、歯髄動脈血酸素飽和度測定に対する検討が行われてきた。歯髄脈波を 検出するための測定系として、照射用プローブ・受光用プローブを用いて歯牙に LED 光を照射・受光し、歯髄脈波の検出を行う。同様のバンドルファイバを受光用プローブ として用いフォトダイオードに導光する系である。プローブの固定にはレジンキャップ を用いる。 この測定系で脈波検出を行い、酸素飽和度を導出すると、約 71~93%となった。こ の測定結果から、測定値にばらつきがあり、また正常な生活歯の酸素飽和度は 90%以 上であることから、測定精度の問題が明らかとなった。そこで、本研究では、より正確 な酸素飽和度測定を目指し、検出した脈波振幅のSN 比を向上させる検討を行う。 また、歯髄の透過光を検出する透過型検出法は、大きな信号は得られやすいが、プロ ーブの設置が困難であり、プローブを大きく曲げる必要がある。そこで、反射型プロー ブを用いた脈波検出法について検討を行う。反射型検出法は、唇側から光を照射し、歯 髄で散乱・反射した光を同様に唇側で受光する方法である。得られる信号が透過型と比 較して小さいものの、プローブの設置が容易であり、臨床において使用し易いといった 利点がある。 図1.3 透過型と反射型の違い 図1.2 生活歯での脈波測定系- 3 -
1.3 ファイバを用いる利点と酸素飽和度測定による利点
実験系にはフレキシブルなPMMA ファイバを用いることで、狭い口内での測定が容 易となり、口内へのプローブの導入も容易となる。 さらに、測定系にファイバを用いることで、ハイインピーダンスでノイズを受けやす いフォトダイオードを、ノイズを受けにくい場所へ隔離できるため、低ノイズでの測定 が可能となる。 PMMA ファイバには、三菱レイヨン製 Eska CK-10 を用いる。コア材料はポリメチ ルメタクリレート樹脂、クラッド材料はフッ素樹脂、コア屈折率は1.49、NA は 0.5、 コア直径は240μm、クラッド直径は 250μm となっている。また、測定に使用する際、 より大きな強度の光を歯牙に照射できるように、PMMA ファイバを 19 本束ねたバンド ルファイバを作製する。 バンドルファイバは、ポリカーボネートチューブに PMMA ファイバを 19 本差し込 みエポキシ樹脂で固め、固めた部分をダイヤモンドカッターで切断し、最後に研磨を行 い作製する。 また、現在臨床で使用されている、電気刺激診断や打診といった方法は、患者の痛み の有無により診断を行うため、生活歯が生きているか、死んでいるかといった2 つの診 断しかできなかったが、本研究のパルスオキシメトリによる歯髄動脈血酸素飽和度測定 を行うことで、歯牙の健康状態の程度を知ることができ、さらに長期的なモニタリング が可能になるという利点がある。ポリカーボネートチューブ
PMMA ファイバ
図1.4 バンドルファイバ端面- 4 -
1.4 パルスオキシメトリの原理
図1.4 に脈波の時間波形を表す。この脈波の時間波形から得られるパラメータとして、 動脈血以外の生体組織の影響V0と動脈血脈波成分Vp-pの2 種類が得られる。動脈血以 外の生体組織には静脈、筋肉、骨などがある。これらの組織は脈波の交流成分に影響を 与えないため、交流成分は動脈血のみの影響とみなすことが可能である。 入射した光が物質を透過し、散乱、吸収の影響を受ける現象はランバートベー ルの法則で表すことが可能である。 I は透過光、I0は入射光強度、μiは透過する各物質の減衰係数、ciは透過する 各物質の濃度、l は光路長である。 ここで、入射光強度Iθ、動脈以外の減衰定数a、動脈血以外の光路帳L、動 脈の減衰係数A、動脈の光路長 l と表す。 まず、動脈以外の組織について値を代入すると、 次に動脈血脈波成分について値を代入すると 図1.4 脈波の時間波形から得られるパラメータl
c
I
I
0exp(
i i)
)
exp(
0I
aL
V
)
exp( Al
I
V
pp
(1)
(2)
(3)
- 5 - したがって、(2)、(3)より (2)、(4)式から、 両辺に対数を取り、Vp-p/V0<<1 としてテイラー展開を行うと、左辺は したがって ここで、2 波長で Vp-p/V0を求め、その比率を求めた値をR と定義する。 この R は、歯牙の光路長や、歯牙の減衰係数の波長依存性に影響しない値として用い ることが可能である。 そして、酸素飽和度は R の関数として表すことが可能であるため、生活歯での脈波測 定により、Vp-p/V0を求めることで、生活歯の酸素飽和度測定が可能となる。
)
exp(
)
exp(
0V
I
Al
Al
V
pp
(4)
)
exp(
0 0Al
V
V
V
p p
(5)
0 0 0 0)
1
log(
log
V
V
V
V
V
V
V
pp pp pp
(6)
Al
V
V
p p
0(7)
2 1 2 0 2 1 0 1/
/
A
A
V
V
V
V
R
p p p p
(8)
)
(
2f
R
SpO
- 6 -
1.5 用いる光源波長の選択
一般的に指尖用パルスオキシメータに用いられている光源波長は、赤色光と赤外光で ある。これら2 つの波長が用いられる理由として、これらの波長域において生体の透過 性が良いことが挙げられる。しかし、図1.5 に示すように、その波長域では、血液の 吸光度が小さいため、歯髄脈波の交流成分への影響が小さく、大きな信号が得られにく い。 それに対し、歯牙用パルスオキシメトリでは、歯牙組織が可視光域の透過性が良いと いう特徴を利用し、比較的血液吸光度の高い可視光域の波長を光源に使用することがで きる。そのため、より大きな信号を得ることが可能となる。 また、光源には十分な光強度が照射できるようにパワーLED を使用する。パワーLED でも入手可能な波長として、今回、470nm 、525nm 、595nm の波長を使用する。こ れらの波長は最適波長とは言えないものの、少なくとも酸素飽和度による影響を受けや すい波長であるため、パルスオキシメトリに用いる波長としては問題ないと考えらえる。 図1.5 血液の吸光スペクトル- 7 -
第 2 章 透過型プローブを用いた歯髄活性診断
システムの改善
2.1 測定系の改善
本研究室では従来、図2.1 の測定系が用いられていた。しかし、この測定系では信号 のSN 比が小さく、正確な酸素飽和度測定には適していないと考えたことから、本研究 では、より明確な信号の取得へ向け、図2.2 の測定系を新たに構築した。新測定系では、 ロックインアンプの出力信号をローパスフィルタに入力し、さらにその出力信号に直流 電源を逆バイアスとして付加している。また、従来LED の駆動には LED コントローラを用いていたが、本研究では、LED の駆動に直流電源を使用する。この直流電源の導入により任意の電流・電圧をLED に 印加することが可能となった。これは、各波長のLED の光強度を統一することで、等 しい条件で波長の違いのみによる差異を測定できるようにするためである。 そして、検出される脈動時間波形は非常に多くの周波数のノイズが含まれているが、 脈波振幅のSN 比向上のためには可能な限りノイズを除去する必要がある。そこで、ロ ックインアンプの出力信号をローパスフィルタに通すことでノイズ除去を行った。 図2.1 従来の測定系 図2.2 本研究における測定系
- 8 - 次に逆バイアスとして用いる直流電源に関して述べる。 図2.2 の測定系で測定を行うと、オシロスコープには検出された脈波信号が出力され る。人の心拍周波数は約1 Hz であるため、脈波信号は約 1 Hz の時間波形として現れ る。 脈波信号をオシロスコープに出力する際、オシロスコープの設定により信号のDC 成 分とAC 成分を検出する設定か、信号の AC 成分のみを検出する設定かに選択可能であ る。 脈波信号は第一章でも述べたように交流として現れるため、オシロスコープの設定を AC とすることで、脈波信号を検出することが可能であるはずである。しかし、脈波信 号は周波数が1 Hz と小さいため、オシロスコープ上でその信号を交流と判断せず、直 流の変動と判断してしまい、AC で設定してしまうと脈波信号を検出することができず、 また検出できても大きな脈波信号として得ることができない。 そこで、設定をDC とし直流成分を交流成分と共に検出できる状態で脈波検出を行っ た。しかし、実験系にパワーLED を用いて歯牙に対して非常に大きな光強度を照射し ており、信号の直流成分が非常に大きいため、設定をDC とした場合、オシロスコープ の測定レンジに信号が収まらない。測定レンジに収めるためのオシロスコープの機能と して調節ねじも存在するが、そのレンジにも収めることが難しい。 そこで、オシロスコープの測定レンジに信号を収めるための解決策として、ロックイ ンアンプの後に直流電源を接続し、直流成分が大きい脈波信号に対して直接的に逆バイ アスを付加することで直流成分を減少させ、オシロスコープの測定レンジに収めること が可能となった。 しかし、この測定方法の欠点として、交流成分のみを検出しているわけではないため、 DC の変動を検出してしまい、信号に乱れが生じやすくなってしまう。そのため、外か らの光をできる限り遮断し光学的に安定した状態で測定を行う必要がある。
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2.2 SN 比向上へ向けた測定系の検討
本章では、切歯の疑似モデルを作製し、疑似血管の透過光から脈波の時間波形を検出 し、そのSN 比向上を目的とし行った検討について述べる。 歯髄動脈血酸素飽和度測定の測定精度改善へ向けて、脈波振幅のSN 比を向上させる ために、3 つの方法を考案した。1 つ目は LED による直接光照射の検討、2 つ目は集光 度の高いレンズを用いた検討、3 つ目は受光ファイバプローブの検討である。それぞれ の方法について行った検討について述べる。2.2.1 LED による直接光照射の検討
本研究室では従来、PMMA ファイバを 19 本束ねたバンドルファイバを、照射プロー ブとして使用し、LED の照射光を歯牙表面へ導くことで脈波検出を試みていた(図 2.3)。 しかし、この方法はLED とバンドルファイバの結合損失が非常に大きく、歯髄に対 して十分に光を照射出来ていないと考えた。そこで、従来のLED にバンドルファイバ をカップリングさせる光照射法から、LED にレンズをカップリングさせ、LED を歯牙 に直接密着させる光照射法に変更した。 この方法は、LED から出力された光をそのままの強度で歯髄に照射することが可能 となるため、従来法よりも脈波振幅のSN 比を向上させることが可能となると考えた。 図2.3 LED による直接光照射法- 10 -
2.2.2 集光度の高いレンズを用いた検討
パワーLED にはもともと樹脂性レンズが付属している。このパワーLED を歯牙表面 に配置し、脈波検出を行うと、樹脂性レンズの集光度が低いために、歯肉脈波の影響を 受け易く、歯髄の位置で光が十分に集光しないといったことが考えられる。そこで、よ り集光度の高いレンズを用いることでそれらの問題点を改善し、脈波信号のSN 比向上 が可能であると考えた。 集光度の高いレンズとして用いたのは、品名N-BK7、Edmund Optics 社、直径 5mm のガラス製半球レンズである。このレンズは、パワーLED に付属している樹脂性レン ズをカッターで切断し、切断面にエポキシ樹脂で固定することで使用した。エポキシ樹 脂は、LED とレンズのカップリングを妨げないように、切断面の縁のみに付着させた。 図2.4 には、LED に光ファイバをカップリングさせた場合、LED に樹脂性レンズを カップリングさせた場合、LED に N-BK7 レンズをカップリングさせた場合、それぞれ の集光度測定の結果を示す。 この集光度測定は、照射光を歯髄の位置で集光させることを想定しているため、歯髄 の位置が歯牙の唇側表面から約 2mm の位置に存在するものとして、LED とパワーメ ータの間隔を2mm に固定して測定を行った。 図2.4 各カップリング法よる集光度の違い- 11 -
2.2.3 実験系の構築と測定結果
疑似モデルでの脈波検出へ向けた実験系を図2.5 に示す。ダイヤフラムポンプで脈動 をつけた血液を、内径2 mm のシリコンチューブ内に流し、循環させる。ポンプの送液 周波数は、人の心拍とほぼ同様の1 Hz で行う。そして、約 3 mm の穴を空けた抜去歯 にシリコンチューブを通し貫通させることで、生活歯を想定した切歯疑似モデルを構築 した。抜去歯の穴はリューターを用いて加工を行った。 その抜去歯に対して3 つの方法で光を照射する。1 つ目は LED にファイバをカップ リングさせる方法、2 つ目は LED に樹脂性レンズを付属させる方法、3 つ目は LED に N-BK7 レンズを付属させる方法である。光の照射位置は、歯頸部から約 2 mm の地点 に照射する。透過光の受光には素線数19 本のバンドルファイバを用いた。また、照射 プローブと受光プローブは傾けず、一直線となるように配置した。 使用する血液は、仙台中央食肉卸売市場(株)業務部様にご協力いただき、新鮮な豚 血液を入手して実験を行った。血液の処理法に関しては、本研究室で行われてきた従来 の処理法で行う。また、豚血液は、歯髄腔中に存在する血管の割合を想定して、ヘマト クリット値3 %に希釈したものを使用した。LED は OptoSupply 社製、1W 出力長寿命 ハイパワーLED、波長 525 nm の品番 OSG5XME1C1E を光源に用いる。 図 2.5 各光照射法の脈波測定のための実験系- 12 - 実験結果を図2.6 に示す。各光照射法の脈波振幅の比較が可能となるように、全ての 光照射法において同様の感度設定で測定を行っている。また、LED 印加電圧も同様に 各光照射法で揃えている。この実験結果が示すように、LED にファイバを結合させ光 を照射した場合は、N-BK7 レンズを LED に結合させた場合と比較して、5.8 dB の SN 比向上が見られた。したがって、より正確なAC 成分を求めることが可能となり、歯牙 動脈血酸素飽和度測定の高精度化が見込まれる。 それに対して、LED に樹脂性レンズを結合させた場合と、N-BK7 レンズを結合させ た場合を比較すると、SN 比に大きな差が見られなかった。 図2.4 のように集光度に差異があるにも関わらず、SN 比に影響が現れなかった原因 は、歯牙の散乱係数が大きいために、入射した光が疑似歯髄の位置で十分に集光できな かったため、赤血球での吸収に大きな差異が生じなかったと考えられる。
図
2.6 実験結果
表2.1 各光照射法により得られた脈波振幅の SN 比- 13 -
2.2.4 レンズ無し LED による照射光強度増加
脈波振幅のSN 比向上のためには、さらに照射光強度を増加させることで大きな脈波 信号が得られると考えた。そこで、測定に使用しているパワーLED に予め付属してい る樹脂レンズをカッターで切断し、レンズ無しのパワーLED を作製した。そして、こ のレンズ無しパワーLED を用いて歯牙表面と光源の間隔を狭くすることで、照射光強 度の増加が可能であると考えた。 その2 つの光照射法による脈波振幅の違いを比較するために、図 2.7 の実験系を用い る。 光の照射法は、樹脂レンズ結合LED による方法と、レンズ無し LED による方法で ある。これらを、歯頸部から2 mm の位置に密着させて光を照射する。 光源には525 nm の波長を使用する。LED の出力は 120 mW であり、樹脂レンズは直 径5.4 mm のものを使用している。透過光の受光には、PMMA ファイバを 19 本束ねた バンドルファイバを受光用プローブとして使用している。シリコンチューブは内径 2mm のものを使用している。 図2.7 各照射法による脈波検出のための実験系- 14 - 実験結果を図2.8 と表 2.2 に示す。それぞれ感度は等しい状態で測定を行っている。 また、LED への印加電圧も同様に全ての場合で等しい。 この結果から、レンズ有りとレンズ無しの場合で、SN 比に 1dB の差が現れた。レン ズを切除し、光源をさらに歯牙に近付けることで微小ではあるが脈波振幅のSN 比向上 が可能となった。 しかし、LED を近づけることによる弊害として、熱の問題がある。パワーLED は一 般的なLED と比べ出力が大きく発熱量も多い。したがって、歯牙表面にパワーLED を 近づければ近づけるほど、LED の熱が歯牙に伝わり、測定中に熱を感じる。そのため、 LED からの発熱を抑えるために、材料や構造等の改善が必要になると考えられる。 図2.8 実験結果 表2.2 各照射法により得られた脈波振幅の SN 比
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2.2.5 集光度と最適光照射位置の関係
LED に用いるレンズの集光度を高めた場合、光の最適照射位置にずれが生じるので はないかと考えたことから、図2.7 の実験系を構築した。この実験系では、抜去歯の歯 髄の位置に穴を空け、その穴に血液を注入したシリコンチューブを挿入した。シリコン チューブ無しで、歯髄に直接血液を注入した場合は、注入口をユーティリティワックス で塞いだが、歯牙のひび等から血液が漏れ出してしまったため、今回のシリコンチュー ブを用いた方法を採用した。また、バックグラウンドとして生理食塩水を注入したシリ コンチューブの測定も行う。 光の照射法は、N-BK7 付レンズで照射する方法と、レンズ無し LED で照射する場合 の2 通りで、歯頸部を原点として照射位置を 1 mm ずつ歯牙先端方向へ変化させてい き、血液の透過光強度と、生理食塩水の透過光強度を測定し、以下の式により A を導 出する。生理食塩水の透光強度
血液の透過光強度
A
また、生活歯における歯肉の代わりに、樹脂で歯肉を再現した。受光プローブは素線 数19 本のバンドルファイバを用いる。 この実験系により、どの照射位置で最も歯髄の影響が現れるのか検討を行った。 図 2.9 光照射位置の検討- 16 - 図2.8 に示すように、N-BK7 レンズを結合させた場合と、レンズ無しの場合で、集 光度に違いがあるものの、図2.9 に示すように各集光度における光照射位置と A の関係 に違いは現れなかった この原因として、N-BK7 が歯髄の位置で十分に集光できていないことが原因と考え た。N-BK7 の集光度に関して測定を行うと図 2.10 に示すように N-BK7 レンズの集光 特性は末広がりになっており、十分に集光できていないことが判明した。したがって、 より集光度を高めるために、ボールレンズの使用や、ガラスより屈折率の高いサファイ アレンズの使用が考えられる。 しかし、光照射位置とA の関係が異ならない主な原因は、2.1.4 章で前述したように 歯牙の散乱係数が大きいためであると考えられる。そのため、LED をレンズで集光し ても歯牙内部で光が散乱してしまうため、集光度が異なっていてもほぼ同じ結果になっ てしまうと考えられる。 図2.10 集光度の違い 図2.11 集光度と光照射位置による関係 図2.12 N-BK7 レンズの集光特性
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2.2.6 細径シリコンチューブを用いた疑似モデルの構築
従来の研究では、歯牙疑似モデルに内径 2 mm のシリコンチューブを用いていた。 これは内径1mm のシリコンチューブでは脈動を検出することができなかったため、や むを得ず使用していた。 しかし、切歯の構造は図2.13 のようになっており、光の照射位置において歯髄腔の 大きさは約1 mm であることが判明している。したがって、疑似モデルに内径 2 mm のシリコンチューブを用いる実験系では、生活歯のモデルとして適当ではないと考えら れる。 そこで、本研究において2.1 章で述べたように測定系を改善し、さらに LED を歯牙 に直接密着させる実験系を考案し、構築したことから、内径1 mm のシリコンチューブ を用いた疑似モデルで脈波測定が可能となるのではないかと考えた。 実験系は図2.3 に示した系をもとに、変更点としてシリコンチューブの内径を 2 mm のものから内径1 mm 外径 2mm のものに変更した。シリコンチューブの外径は 3 mm から2 mm と小さくなったが、抜去歯に空いている穴は、今まで通りの抜去歯を用いた ため、直径3 mm の穴に外径 2mm のシリコンチューブを貫通させることで疑似モデル を構築している。歯牙に対する光の照射方法は2.2.3 節の実験結果より最も大きな SN 比が得られたN-BK7 レンズ結合 LED により歯牙表面に直接密着させる方法を用いた。 図2.13 マイクロ CT による切歯断面図- 18 - 実験結果を図2.14 に示す。このように、初めて内径 1 mm のシリコンチューブを用 いた疑似モデルにおいて脈波の検出に成功した。この実験結果から、より生活歯に近い 疑似モデルの構築に成功した。 この成果により、特に生活歯の酸素飽和度測定において、酸素飽和度とR の関係をグ ラフに表す場合、疑似モデルを使用してグラフを作成し、生活歯の測定結果と照らし合 わせなければならないが、疑似モデルの系を生活歯に近付けることができたため、より 正確な酸素飽和度測定が見込まれる。 検出した脈波振幅はやや乱れているためSN 比の正確な算出は難しいが、内径 1 mm のシリコンチューブを用いた疑似モデルでの初めての測定成功ということで、今後の足 がかりの一つとなる実験結果であると考えている。 図2.14 内径 0.79mm のシリコンチューブでの脈動時間波形
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2.3 生活歯での血流脈波測定
2.3.1 実験系と測定結果
前述したように、抜去歯疑似モデルにおいては、光源を歯牙表面に密着させる方法に よりSN 比の向上、また内径 1 mm のシリコンチューブを用いた疑似血管モデルによる 脈波検出等に成功した。 そこで、次に同様の手法により生活歯の血流脈波測定を試みた。生活歯での脈波測定 には新たにレジンキャップが必要となる。生活歯の石膏モデルを作製し、それを型とし てレジンキャップを作製する。レジンキャップについて詳細は後述する。このレジンキ ャップを用いて照射側の光源と、受光側のファイバプローブを固定し、光照射位置・受 光位置を定める。また、測定系を図2.15 に示す。 また、その実験結果を図2.16 に示す。脈波振幅から得られた SN 比は 3 dB であった。 このように脈波検出には成功したが、SN 比が小さく十分に信号が得られない結果とな った。また、LED の照射位置等によって脈波が得られない場合もあり、安定して一定 の脈波を検出することはできなかった。 疑似モデルでの測定においては、シリコンチューブが歯牙を貫通していたため、 血流 脈波の測定が比較的容易であったが、生活歯において歯髄は歯根部に集中しているため、 歯髄からの信号が非常に得られにくいことが、疑似血管モデルで脈波信号が得られるの に、生活歯では脈波信号が得られにくい原因であると考えられる。さらに、光源を密着 させたことで、信号の直流成分が増加し、ロックインアンプでの信号増幅が困難になっ ていると考えられる。 図2.15 生活歯での脈波測定系 図2.16 生活歯の脈波測定結果- 20 -
2.3.2 レジンキャップの検討
生活歯の測定を行う際に必要となるレジンキャップについて述べる。レジンキャップ はメタファストパウダーとメタファストリキッドを混合し、石膏モデルに塗り付けるこ とで作製する。そのため自由に形を作製可能であり、リューターを用いることで細かい 構造も作製することができる。 従来の19 本のバンドルファイバを用いた歯牙に対する光照射法では、ユーティリテ ィワックスを用いて穴を空けたレジンキャップに金属管を固定し、そこにバンドルファ イバを通して固定していた。しかし、本研究のLED を密着させる場合は、LED をレジ ンキャップにうまく固定させることが重要となる。そこで、LED のレンズ・基板と同 じ径の穴を空け、LED をしっかりと固定可能な構造を作製した(図 2.17)。 また、バンドルファイバは軽いため問題とならなかったが、LED は適度な重みがあ るためレジンキャップがLED の重みで外れたり、ずれてしまうことがあった。そこで レジンキャップのずれを防ぐためにキャップ下部に L 字の構造を作製した。測定中は この部分を下顎の歯で支えた。 また、測定中に唇に LED が触れることもずれの原因となってしまったため、唇が LED に直接接触しないように LED の上部をレジンで覆うような構造を作製した。 図2.17 レジンキャップ外観- 21 -
2.4 まとめ
・実験系 SN 比を向上させるために、実験系にローパスフィルタ、直流電源(逆バイアス)を 導入し、さらに従来LED の駆動に LED コントローラを使用していたが、各波長で 出力光強度を同じに調整可能となるようにLED 駆動用直流電源を導入した。 ・SN 比向上のための改善点 改善点は主に2 つあり、1 つ目は歯牙表面に光源を配置し、歯髄に対して直接光を照 射することで、得られる脈波信号の増加を試みた方法、2 つ目は LED のレンズに集 光度の高いレンズを使用することで、歯髄の位置で光を集光させることで脈波信号の 増加を試みた方法である。その結果、光源を歯牙表面に配置した場合は、SN 比を 5.8 dB 向上させることに成功した。しかし、集光度の高いレンズを用いても、歯牙の散 乱係数が高いことから、光を歯髄の位置で十分に集光できず脈波信号に大きな影響を 与えることはなかった。 ・生活歯に近い疑似モデルの構築 生活歯に存在する歯髄の大きさを想定して、内径1mm のシリコンチューブを用いて 疑似モデルを構築した。従来の測定方法では脈波の検出ができなかったが、今回光源 を歯牙表面に配置することで初めて脈波の検出に成功した。 ・生活歯での脈波測定 生活歯での脈波測定は、安定して脈波を得ることができなかった。その理由としては、 光の照射位置の問題や、光源を歯牙表面に配置したことによる信号の直流成分増加に よってロックインアンプでの増幅が困難となってしまったことが原因と考えられる。- 22 -
第 3 章 反射型プローブを用いた歯髄活性診断
システムの検討
第2 章では透過型プローブに対する検討を行ってきたが、透過型による脈波測定法は、 臨床においてプローブの設置が困難であるため測定が容易でない。そこで、第3 章では 反射型プローブに対する検討を行う。反射型プローブは照射プローブ受光プローブの両 方を唇側に配置するためプローブの設置が容易である。 本研究室では過去に、反射型に対する検討が行われている。 まず、測定対象は臼歯で、プローブにはガラスファイバを用いて入射・受光プローブ を6mm の間隔を空けて平行に配置する。臼歯内にヘモグロビン溶液を注入し、ヘモグ ロビン濃度を変化させた時の受光強度を測定した結果、受光強度の低下は小さかったこ とから、このプローブの配置は脈波検出に向かないと結論付けられた。 また、測定対象には生活歯を用い、プローブにはPMMA ファイババンドルを用いて、 プローブ間隔を1 mm として配置する。この測定系で生活歯の血流脈波を測定したと ころ、脈波の検出には至らなかった。 このように、反射型に対する検討が行われてきたものの、脈波信号の検出に至った例 は今まで無い。 そこで、本研究では、入射・受光プローブの改善を行うことで反射型プローブによる脈 波検出を試みる。- 23 -
3.1 切歯疑似モデルに対する脈波測定
3.1.1 受光プローブの素線数増加による脈波検出の試み
まず、反射型で脈波を検出するために、用いるプローブの改善を検討した。従来、透 過型に用いていたプローブにはPMMA ファイバを 19 本束ねたバンドルファイバが用 いられていたが、このバンドルファイバでは、歯髄で反射した光を十分に受光しきれて いないと考えた。 そこで、新たなプローブとして、図3.1 に示す受光プローブを作製した。このバンド ルファイバは、PMMA ファイバを 123 本束ねて作製されたものである。PMMA ファ イバをポリカチューブ内で密に詰めると127 本となるはずだが、作製の際、ポリカチ ューブ内に収まる最大数が123 本であったため、素線数 123 本となっている。 このバンドルファイバを受光プローブとして用いることで、より多くの脈波信号を持 った光を検出することが可能となると考えた。 照射プローブと受光プローブはビニールテープでお互いを固定してある。 図3.1 素線数を増加させた受光プローブと照射プローブ- 24 - 実験系を図3.2 に示す。疑似切歯モデルは透過型で検討した際のものと同様のものを 使用する。その疑似モデルに、3.1.1 で示したプローブを用いて光を照射、受光する。 光源には波長525 nm の LED を使用する。 実験結果を図3.3 に示す。このように、初めて切歯疑似モデルにおいて、反射型プロー ブを用いて、脈波の検出に成功した。得られた脈波信号は振幅にやや乱れがあり、SN 比が正確に算出できる程ではないが、この結果は、生活歯での脈波検出のための足掛か りとして反射型プローブの可能性を示すことができたと考えている。 図3.3 測定結果 図3.2 反射型プローブを用いた実験系
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3.1.2 照射・受光一体型プローブに関する検討
3.1.1 に示したように、反射型プローブにより切歯疑似モデルにおいて、脈波の検出 に成功した。しかし、臨床での応用を考えた際、照射プローブと受光プローブが独立し ているとプローブが大型化してしまい、さらに歯牙表面への設置も手間がかかる。そこ で、照射プローブと受光プローブを一本のバンドルファイバに実装した照射・受光一体 型プローブを提案する。 まず、素線数228 本のバンドルファイバを作製する。その一端を二股に分け一方は LED 光を入射させるための送光用、もう一方は反射光を受光するための受光用とする。 まずは、反射した光が十分に受光しやすいと考えられる、図3.4 の送光部、受光部のよ うに素線ファイバを分ける。送光部の素線数は107 本、受光部の素線数は 121 本とな っている。 このプローブを用いて疑似切歯モデルで脈波測定を行ってみたところ、脈波の検出は出 来なかった。 図3.4 照射・受光一体型プローブ- 26 - 脈波の検出ができなかった理由として、このプローブでは図3.5 に示すように送光部 から照射された光が受光部に届かず、送光部に多くの脈波信号を持った光が入射してい るのではないかと考えた。 したがって、脈波信号を持った光が十分に受光部に入射するように、図3.6 の送光面、 受光面のように素線ファイバを分けた。この分け方であれば前述した問題点を解決でき ると考えた。 このプローブを用いて疑似切歯モデルで脈波測定を行ったところ、このプローブでも 脈波を検出することが出来なかった。 図3.6 改良を行ったプローブ端面 図3.5 歯牙内部での光の挙動
- 27 - このような結果から、バンドルファイバを2 本束ねたプローブでは脈波の検出が可能 であるのに、なぜ1 本にまとめたプローブで脈波が検出できなくなってしまうのかとい う疑問が生じた。 その理由として、プローブを一体化させてしまうと、送光部と受光部が隣接している ことから、歯の表面で反射する光を多く受光してしまい、無駄な直流成分が増加してし まうということが考えられた。 無駄な直流成分が増加してしまうと、ロックインアンプ上で測定値が飽和してしまい、 適切なゲインに設定することができず、信号の増幅が困難となってしまう。 そこで、無駄な直流成分をカットするために、プローブに犠牲部を組み込む方法を考 案した。送光部付近では歯牙表面反射光を多く受光してしまうと考えられたため、図 3.7 のように送光部、犠牲部、受光部を配置した。 このプローブを用いて疑似切歯モデルで脈波測定を行ったところ、このプローブでも 脈波を検出することが出来なかった。 図3.7 犠牲部を導入し、改良を加えたプローブ端面
- 28 - また、それぞれのプローブを用いて生活歯での血流脈波測定も行った。疑似血管モデ ルと生活歯では構造が異なるため、疑似血管モデルで脈波を検出できなくても、生活歯 で脈波を検出できる可能性があると考えたためである。 レジンキャップを作製し、プローブを固定しても良かったが、受光・照射プローブを 一体化させた利点としてプローブの歯牙表面への配置が容易となったことから、ゴムキ ャップをプローブ先端に取り付けて滑り止めとして使用する方法を採用した。 ゴムキャップを使用して生活歯での脈波測定を行ったところ、血流脈波の検出はでき なかったが、ゴムキャップ無しの時と比較して、ゴムキャップ有りの場合ではやや滑り にくくなった。しかし、ゴムキャップの厚み分だけ光照射位置が歯頸部から離れてしま うことにより、歯髄の信号が検出しにくくなってしまう欠点が生じた。 このように照射・受光ファイバ一体型プローブを用いて、疑似モデル、生活歯共に脈 波測定を行ったが、脈波の検出は出来なかった。しかし、抜去歯なしの疑似血管モデル や、指尖における脈波検出は可能であったことから、反射型プローブとして機能は果た しているが、歯の散乱係数が大きく、また歯の表面反射光による信号の直流成分増加に より、脈波の検出が困難になってしまっていると考えられる。 図3.8 滑り止めのゴムキャップ外観
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3.1.3 プローブ間隔と反射深さの関係
プローブ間隔が狭いと、歯牙表面反射光を多く検出してしまい、ロックインアンプで の増幅が困難となってしまうことについては前述したが、照射・受光一体型プローブか ら、新たに得られた知見として、プローブ間隔と反射深さの関係が脈波検出に起因して いることがある。 図3.9 に示すように歯牙表面に光を照射した場合、照射プローブと受光プローブの間 隔が狭いと、歯牙内部で反射した光は浅い位置、象牙質付近の反射光を多く検出してし まい、またプローブ間隔を広くするほど歯牙内部の深部で反射した光を受光プローブで 検出できるため、歯髄の大きな信号を検出するためには適切なプローブ間隔を決めるこ とが重要になると考えた。 ただし、歯牙の大きさや、形、色などはかなり個人差があるため、予め最適と決めら れたプローブ間隔を全ての人に対して適用することはおそらく不可能である。しかし、 どのプローブ間隔付近で最も脈波が得られやすいのかを測定することで、一つの目安と して用いることができると考えている。 臨床の測定においては、プローブの位置が可変となる構造、もしくは予め数本配置し たプローブから適当なものを選択する方式によって臨機応変にプローブ間隔を決める 必要がある。図
3.9 プローブ間隔と反射深さの関係
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3.1.4 人工肺の導入
ここで、東京医科歯科大学柿野氏の御協力のもと人工肺を入手することができたので、 実験系への導入を検討する。人工肺とは一般的に心臓手術の際に血液のガス交換を行う ものとして使用される。一般的な人工臓器は患者の体内に埋め込むものが多いが、人工 肺は体内に埋め込んで使用するものではない。 従来、血液の酸化還元には血液に直接窒素や酸素を吹き込むバブリング法により行っ ていた。その手法に代わり人工肺を使用することで、バブリング法と比較して血液の酸 化還元が容易となり、気泡の衝撃を受けないため血液にダメージを与えにくくなる。さ らに実験系を外気の影響を全く受けない完全閉鎖系にできるため、酸素飽和度の経時変 化を排除できる。この利点は非常に大きく、正確な酸素飽和度-R グラフ作製のために は必要不可欠であると考えられる。 図3.10 に酸素飽和度変化に伴う人工肺内の血液変化を示す。酸素飽和度が 18 %と 90 %の場合で血液の色に変化が生じていることが見て分かる。酸素飽和度の酸化還元 は、二酸化炭素を窒素と酸素に96 : 4 の比率で混合したガスを人工肺に流し込むことで 行う。酸化還元にはある程度の時間がかかるが、特に30 %以下と 70 %以上に変化させ る場合は時間がかかることが体感的に判明した。 図3.10 酸素飽和度変化に伴う人工肺内の血液変化- 31 - 従来の切歯疑似モデルを用いた実験系に、新たに人工肺を組み込むことで、図 3.11 のような実験系を構築した。 血液リザーバー、人工肺をシリコンチューブでダイヤフラムポンプに接続する。ダイ ヤフラムの出射口、入射口の径とリザーバー、人工肺の接続口の径は異なるため、適し たシリコンチューブの径を選択し、それぞれコネクタで接続している。また、リザーバ ーは人工肺より高い位置に配置する必要がある。 系に血液を入れるには、シリコンチューブのつなぎ目を一か所外し、血液の入ったビ ーカーに外したシリコンチューブを入れ、ダイヤフラムポンプで血液をチューブ内に満 たす。外したつなぎ目をもとに戻し、さらにリザーバーの口から血液を注入し、チュー ブ内に十分に血液を満たす。 この時、チューブ内や人工肺内に気泡が混入しているが、全ての気泡を人工肺かリザ ーバーまで移動させる。人工肺内の気泡を取り除くためには、人工肺上部に配置してあ るチューブの鉗子を外し完全に気泡を取り除く。この際、気泡と共に血液も出てきてし まうため、リザーバーに十分血液が入っていなければ血液を足す必要がある。 最後にリザーバー内の気泡を、血液を注入した口から手で圧迫して押し出す。 図3.11 実験系への人工肺の導入
- 32 - 次に、血液の酸化還元の方法について述べる。系に血液を循環させながら、ガス注入口 から、ガスを注入する。血液を酸化させる場合は、二酸化炭素と酸素の混合ガスを注入 し、血液を還元させる場合は二酸化炭素と窒素の混合ガスを注入する。 実験系に循環させている血液の酸素飽和度を測定する場合、人工肺下部の三方活栓に シリンジをはめ込み、その後三方活栓を開いてシリンジに血液を注入する。シリンジを はめ込む前に三方活栓を開き、溜まっている古い血液を流してからシリンジをはめ込ん だ方が望ましい。そして、光路長1.4mm のスライドガラスのセルに血液を注入し、白 色光源を照射する従来の酸素飽和度測定法により酸素飽和度の導出を行う。 図3.12 人工肺外観
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3.1.5 プローブ配置の最適化に関する検討
歯髄位置の反射光を検出するために、最適なプローブ間隔を検討する必要があると考 えた。そこで、図3.14 のように人工肺を実験系に組み込んだ抜去歯モデルを用いて、 抜去歯唇側表面にプローブを5 本配置する。この 5 本のプローブは全て素線数 37 本の バンドルファイバである。そして歯頸部に最も近いプローブを照射用プローブとし、残 りの4 本を受光用プローブとした。また便宜上歯頸部に近い受光用プローブから①~④ の番号を付ける。用いる光源は波長470 nm、525 nm、595 nm の 3 つを検討する。5 本のプローブはそれぞれ密着させて配置しているため、ファイバ同士の間隔は0 として 扱う。 循環させる血液は酸素飽和度約82 %に維持した。3 時間血液を循環させながら酸素 飽和度を測定した結果、図3.13 に示すように酸素飽和度が維持できていることを確認 した。 図3.14 最適プローブ位置検討のための実験系 図3.13 酸素飽和度の経時変化- 34 - その実験結果を図3.15 に示す。3 つの波長において、595 nm と 525 nm では③のプ ローブで最もSN 比が大きい脈波が得られることが判明した。つまり、プローブ間隔は 5.7 mm である。それ以上プローブ間隔を広げてしまうと、歯牙内部の光の減衰が大き く脈波信号が減少してしまうため、振幅に乱れが生じてしまい測定不能となってしまっ た。 それに対して波長470 nm では同様のプローブ間隔 5.7 mm では脈波に乱れが現れて しまい、測定ができなかった。そのため、プローブが①の地点、間隔は1.9 mm が最も SN 比の高い振幅が得られるという結果が得られた。 また、プローブの間隔が1.9 mm、3.8 mm では、3 つの波長全てにおいて、3.4 dB 以上のSN 比が得られる結果となった。したがって、プローブ間隔 5.7 mm 付近で最も SN 比の大きい脈波が得られやすいが、それより狭いプローブ間隔でも脈波を検出する ことは可能であることが判明した。 図3.15 実験結果
- 35 - 波長470 nm においてプローブ間隔 5.7 mm の時、脈波の振幅が乱れてしまった原因 として、歯牙の減衰値の波長依存性が考えられた。図3.16 に示すように、歯牙の減衰 値は光の波長によって値が異なる。この図から今回実験に用いた3 つの波長 470 nm、 525 nm、595 nm では、歯牙の減衰値は波長が短くなるほど増加する傾向にあることが わかる。 つまり、波長470 nm でプローブ間隔が 5.7 mm の場合脈波測定が不可となってしま った原因は、470 nm の波長において他の 2 波長よりも歯牙の減衰値が大きいため、光 が他の2 波長よりも大きく減衰してしまい、安定した脈波が得られなかったと考えられ る。 図3.16 各波長に対する歯牙の減衰値
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3.1.6 受光プローブの改良
先の実験では、素線数37 本のファイババンドルを受光ファイバとして使用していた が、より大きな信号を得るために受光プローブの素線数を123 本にする検討を試みた。 プローブ間隔は3.1.5 で最適と判断した 5.7 mm で、光源波長は 525 nm を用いる。 その結果、図3.17 に示すように素線数 37 本の受光プローブでは SN 比 5.1 dB であ ったが、素線数123 本の受光プローブでは SN 比 5.9 dB となり、0.8 dB の信号増幅に 成功した。 さらに、受光面積が広がったことにより、図3.18 に示すようにプローブの微小ずれ による脈波振幅への影響が小さくなった。 図3.17 測定結果 図3.18 プローブ位置のずれによる SN 比変動- 37 -
3.2 臼歯疑似モデルに対する脈波測定
臼歯の構造を図3.19 に示す。臼歯の歯髄は切歯と比較して大きいが、歯髄の位置は 深い位置に存在するため、信号が得られにくいという問題点が存在する。 臼歯に対して光を照射する場合、照射面は2 つ考えられる。1 つ目は咬合面、2 つめ は側面である。 咬合面から光を照射する場合を考えると、歯髄が照射光の真正面に存在し、光の当た る面積も大きいため、歯髄の影響を受けやすい。しかし、歯牙表面から歯髄の距離が遠 いため、歯の減衰値の影響を受けやすく、信号が得にくい。 それに対し、側面から光を照射する場合を考えると、咬合面からの光照射と比較して 歯髄が浅い位置に存在するため、歯の減衰値の影響を受けにくく、信号が得られやすい。 しかし、歯髄が照射光の真正面に存在しないため、歯髄の影響を受けにくいという欠点 も存在する。 本研究では臨床での応用を考え、プローブの配置が容易である咬合面からの光照射に ついて検討を行う。 図3.19 臼歯の構造側面
咬合面
- 38 - 臼歯疑似モデルを図3.20 のように構築した。実験系は人工肺を用いた完全閉鎖系と し、切歯疑似モデルと同様に素線数37 本のバンドルファイバを臼歯咬合面に 5 本配置 し、端の1 本を照射用プローブとして使用、残りの 4 本を受光プローブとして使用した。 光源の波長は525 nm のパワーLED を使用する。 また、切歯疑似モデルでは、切歯の歯髄腔を想定して内径1mm のシリコンチューブ を抜去歯に貫通させていたが、臼歯疑似モデルにおいては、臼歯の歯髄腔が切歯の歯髄 腔より大きいため、今回は内径2 mm のシリコンチューブを臼歯側面に空けた穴に貫通 させる。また、照射プローブに近い方から受光プローブに①~④の番号を付ける。 図3.21 に実験結果を示す。図のように全ての受光プローブで脈波を得ることが出来 なかった。 図3.20 実験系 図3.21 実験結果
- 39 - 図3.20 の実験系で脈波信号が得られなかった原因として、臼歯内の歯髄の位置が切 歯の歯髄位置よりも深くなったことにより歯牙での減衰が増大し、歯髄位置に届く光量 が少なくなり、それに伴い反射光も受光プローブに届きにくくなったと考えられた。 そこで、解決策として照射プローブの素線数を37 本から 123 本に増加させ、照射光 強度を増大させることで脈波信号の検出を試みた。 実験結果を図3.22 に示す。このように、照射光強度を増大させたことで、臼歯疑似 モデルにおいて脈波信号の検出に初めて成功した。また、3 つの波長全てで③の位置で 脈波SN 比が最大となることを確認した。つまり最適プローブ間隔は 6.5 mm であるこ とが判明した。 切歯疑似モデルの測定では、波長470 nm で③の位置において脈波に乱れが生じ、測 定不能となってしまったが、本実験では照射光強度を増大させたために、波長による歯 牙減衰値の差が現れず、脈波信号の検出が可能になったと考えられる。 図3.22 3 つの波長でのプローブ間隔と SN 比の関係
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3.3 生活歯の血流脈波測定
3.3.1 測定系構築
疑似モデルにおいて、脈波信号の検出に成功し、最適プローブ間隔も判明したことか ら、次に生活歯での血流脈波測定を試みた。 実験系を図3.23 に示す。測定系は疑似モデルと変わらず、プローブには疑似モデル において最も大きく安定した脈波が得られた、照射プローブ素線数37 本、受光プロー ブ素線数123 本を使用する。また、プローブ間隔も疑似モデルで最適と判明した 5.7 mm で測定を行う。プローブの固定はレジンキャップを用いる。レジンキャップについては 後述する。 この実験系で血流脈波を測定したところ、脈波検出には至らなかった。また、プロー ブ間隔を変えて測定を行ってみたが、それでも脈波検出には至らなかった。 図3.23 測定系- 41 -
3.3.2 反射型プローブ用レジンキャップの作製
反射型プローブでの生活歯測定で用いるレジンキャップについて述べる。図3.24 に作 製したレジンキャップの外観を示す。このレジンキャップの構造の一番のポイントは、 プローブからの照射光が口蓋側のレジンキャップに当たって反射することを避ける構 造を考慮した点である。口蓋側にレジンキャップが存在すると、照射光がレジンキャッ プにより反射してしまうため、単純な生活歯での測定と比べて条件に差異が生じてしま う。そこで、プローブを設置する歯牙の口蓋側にはレジンキャップが存在しないように リューターで除去する必要がある。 口蓋側のレジンを除去したため、歯牙へのレジンキャップの固定はプローブを設置す る歯牙の両サイドの歯牙で固定している。また、プローブの固定にはユーティリティワ ックスを用いる。 図3.24 反射型プローブ用レジンキャップ- 42 -
3.3.3 指尖脈波が同時検出可能な生活歯脈波測定系構築
前述した実験系では脈波の検出ができなかった。そこで、生活歯での脈波測定と同時 に指尖脈波の測定を行うことができる実験系を構築した。この利点として、オシロスコ ープで脈波を観察する際に脈動のタイミングが分かりやすいという点、さらにそれぞれ の脈波データをフーリエ解析することで脈波が検出できているかどうかの判断が可能 となる点である。指尖脈波検出にロックインアンプを使用することでSN 比の大きな脈 波信号の検出が可能であるが、ロックインアンプは歯牙脈波信号検出に使用しているた め、指尖ではロックインアンプ無しで脈波検出を行った。当然得られる脈波信号はSN 比の小さいものであったが、指尖脈波の信号は脈動のタイミングを見るためと、フーリ エ解析による信号比較が目的であるため、SN 比が小さくても脈動が確認でき、かつフ ーリエ解析によるピークが見られれば、目的は達成しているため、大きなSN 比を得る 必要性は無い。 指尖脈波検出には、図3.7 のプローブを用いる。そのプローブには図 3.8 のゴムキャ ップを取り付け、安定した脈波検出を行っている。また、指尖脈波検出には、疑似モデ ルで安定して大きなSN 比の脈波を検出できた素線数 37 本の照射プローブ、素線数 123 本の受光プローブを用いる。 図3.25 歯牙脈波、指尖脈波同時検出のための系- 43 - 上記の実験系を用いて、オシロスコープに生活歯脈波と指尖脈波を同時に表示させた。 その結果、図3.26 のように同時に脈波を表示させることに成功した。指尖脈波検出に はロックインアンプを使用しなかったが、脈動のタイミングが一目瞭然であり、また後 述するがフーリエ解析のピーク検出も可能であったため、十分な脈波が得られたと考え ている。 しかし、生活歯において脈波が検出していないように見える。そこで、指尖脈波と生 活歯脈波をそれぞれフーリエ変換し、ピークの比較を行うことで、本当に生活歯の脈波 が検出できていないのか確認を行った。 図3.26 生活歯、指尖脈波を同時に表示したオシロスコープ画面
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3.3.4 フーリエ変換による脈波解析
実験結果を図3.27 と図 3.28 に示す。再現性を得るために測定を 3 回行い、それぞれ の結果に対してフーリエ解析を行い、ピーク位置の比較を行う。 図3.27 に示すように得られた指尖脈波の振幅は毎回少し異なるが、これは指尖に対 するプローブの当て方や照射位置が大きく関与しており、可能な限り大きなSN 比を得 ることが望ましい。 歯牙脈波検出を3 回行ったが、全てにおいて脈波らしき信号を確認することはできな かった。そして、フーリエ解析を行った結果、指尖脈波では3 回測定の全てにおいて、 心拍周波数と同じ約1 Hz の位置でピークを確認することが出来た。これを生活歯のフ ーリエ解析結果と比較すると、1 回目の測定結果ではピークが重なっているように見え るが、2 回目、3 回目の測定結果ではピークが重なっていないことから、1 回目の測定 結果は偶然ピークが重なったものと考えられ、結果として歯牙脈波は検出できていなか ったと結論付けた。 つまり、疑似モデルでは3.1.6 節の実験系により脈波が検出可能であったが、生活歯 においては同じ実験系で脈波が検出不可であった。この原因として考えられたのは疑似 モデルではシリコンチューブの疑似血管が歯牙を貫通しているため、上記のプローブの 配置でも脈波の検出が可能であったと考えられた。しかし、生活歯では血管は歯頸部か らおよそ2 ,3 mm 程度の位置に多く存在するため、上記のプローブ配置では脈波の検 出ができなかったと考えた。- 45 -
図3.27 検出された生活歯脈波と指尖脈波
- 46 - そこで、図3.29 のように歯頸部から同じ距離で光照射、受光の両方を行うことで、 十分なプローブ間隔を取ることはできないものの、脈波の検出が可能となるのではない かと考えた。 実験結果を図3.30、図 3.31 に示す。今回は測定を 2 回行った。その結果、検出され た信号は脈波が確認できなかった。フーリエ解析を行ってみると、指尖脈波のピークは 非常に大きく出ているが、生活歯ではピークが見られず、指尖脈波のピークと比較して も位置が重なっているとは言えない。 このように、プローブの配置を変更して生活歯での脈波検出を試みたが、結果として 脈波の検出には至らなかった。 図3.29 歯牙照射位置と作製したレジンキャップ外観
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図3.31 フーリエ解析によるピーク比較 図3.30 検出された生活歯脈波と指尖脈波
- 48 - そこで、次にプローブを口蓋側に設置する系を考案した。これは透過型プローブを用 いた測定においても、口蓋側から光を照射した方が歯髄の位置で光が集光しやすいとい う傾向が出ていたことを考慮した。しかし、口蓋側へのプローブ設置は、唇側に比べ設 置がやや困難であるため、反射型プローブとしての利点を活かすためにも可能な限り避 けたいが、唇側からの照射による脈波検出が困難であったためやむを得ず検討を行った。 実験結果を図3.33、図 3.34 に示す。このように、生活歯では脈波信号が確認できな い。フーリエ解析を行っても、指尖のピーク位置で生活歯のピークが重なっていないこ とが確認できる。2 回目の測定ではプローブを指尖に当てる位置が悪く、脈波があまり 検出できていない状態でフーリエ変換を行ったが、ピークは見えたため、比較には問題 はないと判断した。また、この程度脈波のSN 比があればピークとして現れることも同 時に確認できた。 このようにプローブの配置を変更して脈波検出を試みたが、いずれの方法でも生活歯 脈波を検出することはできなかった。 図3.32 口蓋側光照射位置
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図3.33 検出された生活歯脈波と指尖脈波
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3.3.5 新たな照射受光一体型プローブを用いた測定
以前製作した照射受光一体型プローブは、図3.7 に示すように中心部に照射部が存在 し、その周りに受光部が存在するものであったが、照射部を中心に配置してしまうと、 プローブ間隔を広くとることができないことから、出来る限りプローブ間隔を広くとる ために照射部を端に配置することで検討を行った。また、歯頸部付近に2、3mm 程度 存在する歯髄に対して光を照射するため、中心から端にかけて照射部を配置することで、 歯髄に対して十分に光を照射することが出来ると考えた。 そこで作製を行ったプローブの端面を図3.35 に示す。このプローブを使用して測定 を行ったところ、図3.36 に示すように脈波の検出には至らなかった。 図3.35 一体型プローブ端面 図3.36 測定結果- 51 - 脈波の検出に至らなかった原因として考えられたのは、このプローブ受光部のさらに 外側に脈波信号がのった光が入射しているためと考えた。そこで、図3.37 に示すよう に、一体型プローブに素線数123 本の受光プローブを束ねてプローブを構築した。 ここで、プローブの固定には今までレジンキャップを作製して固定を行ってきたが、 手でプローブを固定した場合も測定を行った。手でプローブを固定した場合、手の振動 が信号に影響してしまうことが考えられるが、プローブ位置の微調整が可能であるとい う利点がある。実験を行う際に心拍に連動した手の振動は確かにあるが、体感的にそれ が信号に大きく影響を与えてはいないと考えている。 測定結果を図3.38 に示す。このようにプローブを手で固定した場合は脈波と思われ る信号の検出に成功した。しかし、レジンキャップで固定した場合は信号の検出には至 らなかった。この結果からプローブ位置の微調整をすることで、生活歯での脈波検出が 可能となると考えている。そこで今後は、より確実に脈波の検出を行い、さらに図3.38 に示した結果が、本当に歯髄の脈波であることを確かめるためにも、プローブ位置の微 調整が可能な構造をもつレジンキャップの作製が必要となると考えられる。 図 3.37 一体型プローブと受光プローブ 図 3.38 二つのプローブ固定法による脈波測定
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