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二次元検出器方式 X 線応力測定法の 工業的応用に関する研究

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(1)二次元検出器方式X線応力測定法の工業的応用に関 する研究 著者 著者別表示 雑誌名 学位授与番号 学位名 学位授与年月日 URL. 嘉村 直哉 Kamura Naoya 博士論文本文Full 13301甲第4937号 博士(工学) 2019‑03‑22 http://hdl.handle.net/2297/00054714. Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja.

(2) 博. 士. 論. 文. 二次元検出器方式 X 線応力測定法の 工業的応用に関する研究. 金沢大学大学院自然科学研究科 機械科学専攻. 学 籍 番 号 氏. 名. 1624032005 嘉村 直哉. 主任指導教員. 佐々木 敏彦. 提 出 年 月. 2019年1月.

(3) 目. 次. 1 章 緒論 1.1 はじめに. 1. 1.2 X 線応力測定の歴史. 2. 1.3 X 線回折を利用した転動疲労評価の歴史. 4. 1.4 本論文の目的と構成. 7. 1 章の参考文献. 8. 2 章 X 線応力測定理論 2.1 はじめに. 13. 2.2 X 線の回折. 13. 2.3 X 線応力測定法. 15. 2. 2.3.1 sin 𝜓法. 15. 2.3.2 Dölle-Hauk 法. 18. 2.3.3 cosα 法. 20. 2.3.4 cosα 法による三軸応力解析(佐々木―廣瀬法). 22. 2.3.5 フーリエ解析法. 24. 2 章の参考文献. 26. 3 章 アルミニウム合金の応力測定 3.1 はじめに. 28. 3.2 実験. 29. 3.2.1 試験片. 29. 3.2.2 X 線測定条件. 30. 3.2.3 四点曲げ試験. 31. 3.2.4 測定精度の改善. 32. 3.3 実験結果および考察. 33. 3.3.1 X 線回折環. 33. 3.3.2 四点曲げ試験. 35. 3.3.3 In-plane averaging による測定精度の改善. 37. 3.3 おわりに. 40. 3 章の参考文献. 41. 4 章 軸受鋼の X 線応力測定 4.1 はじめに. 43. 4.2 実験. 43 -i-.

(4) 4.2.1 試験片. 43. 4.2.2 X 線測定条件. 46. 4.2.3 四点曲げ試験. 46. 4.3 実験結果および考察. 47. 4.3.1 X 線回折環. 47. 4.3.2 四点曲げ試験. 49. 4.3.3 In-plane averaging による測定精度の改善. 56. 4.4 おわりに. 59. 4 章の参考文献. 60. 5 章 希薄潤滑条件下で生じる転動接触疲労の評価に関する研究 5.1 はじめに. 61. 5.2 実験. 65. 5.2.1 実験条件. 65. 5.2.2 X 線測定条件. 67. 5.3 実験結果. 71. 5.3.1 表面の損傷状態. 71. 5.3.2 X 線回折環. 73. 5.3.3 残留応力. 76. 5.3.4 残留オーステナイト. 78. 5.3.5 残留オーステナイト定量性の評価. 78. 5.4 考察. 81. 5.4.1 残留応力の変化. 81. 5.4.2 残留オーステナイトの変化. 81. 5.4.3 X 線回折環の不均一さ(S/S0)の変化. 81. 5.5 おわりに. 82. 5 章の参考文献. 83. 6 章 総括. 85. 謝 辞. 88. 研究業績. 89. 付録 真実接触部の応力計算. 91. -ii-.

(5) 1章 緒論 1.1 はじめに さまざまな産業で生産される製品は,原料からその完成形が出来上がるまでに多くの工 程を経る.金属製品の場合,鋳造や塑性加工などの成型加工,旋削や研削などの切削加工, 溶接やろう付けなどの接合加工などによって製品形状が形作られる 1).また,熱処理や表面 コーティングを施すことで製品機能に必要な性状を与え,強度や疲労寿命の向上が図られ る 2).金属材料にこれらの加工や熱処理が加えられた後には,多尐なりとも残留応力が生じ ることは広く知られた事実である 3).残留応力の存在は,製品の機能にさまざまな功罪をも たらす.例えば,歯車や回転軸,バネなどの繰り返し荷重を受ける製品には,その疲労強 度を向上させる目的でショットピーニングなどにより意図的に圧縮残留応力を付与する場 合がある 4).これは,圧縮残留応力には疲労き裂を閉口させ,き裂の進展を抑制する効果が あるためである 5).一方で,引張残留応力が存在する場合には疲労の進行を加速させ,製品 の寿命を減尐させる原因となる.また,引張・圧縮を問わず,残留応力が存在すると製品 の寸法が経時的に変化する 6)ことがあり,熱処理により残留応力を除去することもある 7). このように,残留応力の効果を積極的に利用することもあれば,悪影響を懸念して取り除 くこともあるが,その良否を判断するためには製品に生じている残留応力の大きさを正確 に把握する必要がある. 残留応力の測定方法には破壊試験法と非破壊試験法がある.破壊試験法は,測定対象物 を切断や穴あけした際に開放されるひずみを測定する方法 8), 9)である.一方,非破壊試験法 は磁気 10), 11)や X 線回折 12)などを利用することで測定対象物の形状を維持したまま残留応力 を測定でき,測定対象物は再使用可能な状態を維持できることが長所である.この中で,X 線回折を利用した応力測定(以下,X 線応力測定法)は残留応力の大きさを定量的に得るこ とができ,今日では産業界に広く普及している. X 線応力測定法にはいくつかの測定理論があり,それぞれの測定理論に対応した X 線応 力測定装置が存在する.その中でも,1950 年代に測定理論が確立され,現在では最も一般. 1.

(6) 的な X 線応力測定法となっている sin2𝜓法 13)には理論が成り立つための前提条件がある.そ の前提条件とは, ①被測定物が等方均質で X 線照射領域内に十分な結晶粒が存在すること, ②平面応力状態であること,③深さ方向に応力勾配が存在しないこと,の 3 点である. 14). .. この 3 つの条件のうち,いずれかを満足しない場合は sin2𝜓法では応力測定ができないとい うことになる.しかし,実際の機械構造物では上記の 3 条件を満足しない場合がある.例 えば,溶接部近傍. 15). やアルミニウム合金の圧延材. 16). などでは集合組織が存在する場合があ. り,①の条件を満たさない.また,転動疲労を受けた軸受. 17). や鉄道レール. 18). などでは塑性. 流動の発生が観察され,また残留応力が三軸応力状態になることがあり,①,②の条件を 満たさない.したがって,これらの機械構造物の残留応力を正確に把握し,強度設計や精 度の高い疲労度推定をするためには,上記 3 条件の制約を受けない,または影響が尐ない 応力測定法を適用する必要がある. 近年,二次元 X 線検出器を使用する応力測定装置が開発され,普及が進んでいる.これ らの装置では sin2ψ 法とは異なる測定理論を用いるものがあり,前述の集合組織や三軸応力 状態となっている被測定物に対しても適用可能な測定法もある.1.2 節では,近年の応力測 定装置の発展も踏まえて X 線応力測定法の歴史について説明する.また,X 線応力測定法 の産業利用の一例として,X 線回折を利用した転動疲労の評価の歴史について 1.3 節で説明 する.. 1.2 X 線応力測定の歴史 X 線が 1895 年に Röntgen によって発見されて以降,20 年も経たないうちに X 線回折現象 の発見(Laue,1912 年) ,Bragg の法則の発見(Bragg,1913 年)がなされた.その後,Sachs19) や Glocker20)らによって X 線回折を用いた応力測定(ひずみ測定)の研究が行われた.1959 年には Macherauch21), 22)によって sin2𝜓法が定式化され,現在に至るまで非破壊検査の分野で 広く使用されている. sin2𝜓法が適用できる場合、すなわち前節の条件①,②,③を満たす場合には直線になる. 2.

(7) はずの 2θ-sin2𝜓線図が曲線を描く,いわゆる「𝜓スプリット現象」が Fucks ら 23)によって 1967 年に報告されている.𝜓スプリット現象が起こる原因は面外せん断応力の存在であり,それ は X 線照射領域が三軸応力状態となっていることを意味し,通常の sin2𝜓法では正しい応力 値が得られない.しかし,1976 年には Dölle ら 24)によって sin2𝜓法を基にした三軸応力解析 法が確立され,𝜓スプリット現象が生じている場合でも応力測定が可能となった.日本国内 での𝜓スプリット現象に関する代表的な研究報告としては,英ら 25)による研究例が挙げられ る. 一方,平ら 26)は X 線回折環全周を用いることで単一入射での応力解析を可能とした cosα 法を 1978 年に発表した.cosα 法も平面応力状態を前提とした応力測定理論であるが,1995 年には佐々木ら 27)によって cosα 法を基にした三軸応力解析法(佐々木-廣瀬法)が確立さ れた.その後の佐々木らの研究. 28). によって,測定時間および測定精度の観点で最も効率よ. く三軸応力を取得できるのは 3 方向から X 線を入射した場合であることが確認された.He ら 29)は,1998 年に X 線回折環の一部を利用する応力解析法を発表した.この方法は日本国 内では 2D 法などと呼称され,2D 法での応力測定を利用した研究報告例 30), 31)が近年では増 加してきている. Miyazaki ら 32)は,2014 年にフーリエ解析法という応力解析法を発表した.この方法は X 線回折環のひずみの周期性を利用した応力解析法である.フーリエ解析法を応用すること で,集合組織の影響や被測定物の形状の影響で X 線回折環全周が取得できない状態(X 線 回折環の一部が欠けた状態)でも,cosα 法と同等の精度で応力測定が可能であることが確 認されている 33). 上記の X 線応力測定法の発展と共に, X 線検出器や応力測定装置の開発も行われてきた. 当初,回折 X 線は写真フィルムによって取得されていた 34)が,ディフラクトメータの登場 によって検出器にガイガーミュラー計数管(GM 管)やシンチレーション計数管(SC)が用い られるようになった 35).GM 管や SC は 0 次元検出器とも呼ばれ,回折 X 線を「点」で検出 する.そのため,X 線回折環には粗大粒による斑点化や配向による回折強度のばらつきがあ. 3.

(8) ってはならない.1975 年頃には Cohen37) が位置敏感型比例計数管(Position Sensitive Proportional Counter,PSPC)を応力測定に応用した.PSPC は一次元検出器の一種で,計数 管の有感領域に入射する X 線を同時に検出できるため 0 次元検出器のような角度走査が不 要となる.そのため,0 次元検出器と比較して短時間で回折プロファイルを取得できる. 1984 年には二次元検出器の一種であるイメージングプレート(Imaging Plate,IP)が開発 された 38).当初は医療分野で使用されていた検出器だが,1989 年に吉岡ら 39)によって応力 測定にも使用可能であることが示された.2012 年には X 線検出器に IP を使用した cosα 法 用 X 線応力測定装置が市販化されており 40), 41),本論文における研究にも使用している. IP は X 線を露光した後に読み取り作業をする必要があり,回折プロファイルの取得に最 低でも数分を要する.そこで,さらなる測定時間短縮を目指して半導体検出器の適用が始 まっている 42), 43).半導体検出器も回折 X 線を二次元で取得することができるうえ,IP より 高速測定が可能である.近年では,Silicon on Insulator(SOI)と呼ばれる方式の半導体検出器 を使用することで,被測定物の材質によってはほぼリアルタイムでの応力測定が可能とな っている 44).. 1.3 X 線回折を利用した転動疲労評価の歴史 転がり軸受等の転動接触面には数 GPa の接触応力が繰り返し作用する.また,潤滑油膜 の形成が不十分な場合には,図 1.1 のように表面粗さの突起が接触する部分(真実接触部) ではさらに高い接触応力が発生する.これらの接触応力が繰り返し作用することで,転動 接触部の表面あるいは内部には残留応力の生成や組織変化が発生する.45), 46). 4.

(9) 図 1.1 表面粗さの突起が接触するときの真実接触部直下での内部応力【出典:参考文献 46】. X 線回折を用いた転がり軸受の転動疲労の評価は,1961 年に Bush ら 47)によって初めて報 告された.Bush らは,転動疲労試験後の転がり軸受の転動接触面下の残留応力分布を X 線 回折と切断法で測定し比較した.このとき,ある閾値以上の接触応力で転動した場合には, 接触応力のせん断応力成分(転動方向に対して 45°傾いた面に作用する成分)が最大となる 深さ付近をピークとする残留応力分布が形成されることを報告している.一方,Reichard ら 48). は残留応力分布のピークは交番せん断応力の最大深さ付近に生じるとし,負荷回数と残留. 応力の大きさには明瞭な相関が見られないことを報告している. 1962 年には下田ら 49)が鋼材圧延用ローラ表面の転動疲労部における X 線回折環の変化を 報告している.当時は X 線検出器に写真フィルムを使用していたため,取得された X 線回 折環は不鮮明ではあるが,転動疲労によって配向が生じていることが確認できる.また, 電解研磨によって深さ方向に測定をしていくと配向の方位が変化することを確認している. 1978 年,前田ら. 50). はピーリング損傷が生じた転動接触面の残留応力の主応力を求め,ピ. ーリングき裂の形状と主軸の傾きに関係があることに言及した.さらに,ピーリングき裂 の発生は転動接触面の半価幅,進展は残留応力とそれぞれ相関があるとした 51). Voskamp は 1980 年からの一連の研究 52), 53)で,転がり軸受内部の残留応力分布,残留オー. 5.

(10) ステナイト分布,半価幅分布や組織変化を系統的に調べた.その結果,軸受内部の疲労は 負荷回数に対して三段階に変化することを明らかにした.また,組織変化部の極点図を取 得して配向の形成を詳細に調べている. 広田ら 54)は,転がり軸受表面の X 線回折で得られる情報と内部疲労の関係を 1987 年に報 告しており,転動接触表面の各種測定値と内部疲労に相関は無いが,最大せん断応力深さ での半価幅変化量や残留応力の最大値とは相関があるとの結論に至っている.転動接触面 の最表面の X 線回折で得られる情報から内部の疲労度評価をすることは不可能という知見 については,小熊 55)からも同様の報告がある. 2000 年代に入ってからは X 線回折を利用した転がり軸受の転動疲労評価の研究報告は尐 なくなり,上記の小熊 55)の報告や阿野ら 56),57)による軸受用鋼球の残留応力に関する報告が ある.また,長谷川ら 58), 59)は X 線で測定した三軸残留応力と,境界要素法解析で得た真実 接触部の接触応力を足し合わせた応力値を利用し,転がり軸受が希薄潤滑条件で使用され る場合の余寿命を予測する方法を提案している. 鉄道レールや炭素鋼焼鈍材の転動疲労の評価については,転がり軸受と比較して研究報 告が多い.鉄道レールの転動疲労で形成される集合組織については,井上ら. 60). や長嶋ら. 61). が詳細に調べている.また,佐々木ら 62)は損傷が発生したレール表面の X 線測定を実施し ており,損傷(シェリングき裂)発生部位の残留応力の面外せん断成分や半価幅などから 損傷発生の予測を試みている. 以上のように,X 線回折を利用した転動疲労の評価は X 線応力測定法が確立されてから 間もなく始まり,数多くの研究報告がなされたが,前述のように 2000 年ごろから報告数が 減尐している.この理由は,sin2ψ 法などの従来の X 線応力測定法や測定装置で得られる情 報量に限りがあり,新たな知見が得られづらくなったためであろう.ところが,1.2 節で述 べたように,ここ数年で二次元 X 線検出器を有する X 線応力測定装置が普及し始め,測定 で得られる情報量が増加したうえ,測定時間も大幅に短縮された.二次元検出器方式の装 置の普及は,転動疲労のみならず,従来法では困難であった集合組織を有する被測定材料. 6.

(11) の分析を容易にする可能性があるが,まだ研究報告が尐ない.そのため,転動疲労や集合 組織を有する材料に対する二次元検出器の有用性を示し,その適用可能範囲を示す必要が ある.. 1.4 本論文の目的と構成 本論文の目的は,従来法では評価困難であった測定対象物に対する二次元検出器方式 X 線応力測定法の適用可否を明らかにし,その工業的な利用価値を見出すことで,機械構造 物の安全性や性能の向上につなげることである.. 1 章では本研究の目的を明確にするために,研究の背景と X 線応力測定及び転動疲労評価 の歴史を概説した. 2 章では本研究に関連する X 線応力測定法の測定理論を説明する. 従来法である sin2𝜓法, sin2𝜓法を基にした三軸応力解析法である Dölle-Hauk 法,二次元検出器方式の X 線応力測定 法である cosα 法およびフーリエ解析法,cosα 法を基にした三軸応力測定法である佐々木- 廣瀬法について説明する. 3 章ではアルミニウム合金の応力測定について説明する.本章では,集合組織を有するア ルミニウム合金を用いて四点曲げ試験を実施し,sin2𝜓法,cosα 法,フーリエ解析法でそれ ぞれ応力解析をし,測定値の妥当性を検証する.また,測定精度の向上方法についても検 討する. 4 章では軸受鋼の応力測定について説明する.本章では,焼入焼戻した軸受鋼を四点曲げ 試験に供し, 3 章と同様に cosα 法とフーリエ解析法で得られる応力値の妥当性を確認する. 5 章では,二次元検出器方式の X 線応力測定装置を用いて転動疲労を評価した結果につい て説明する.従来の希薄潤滑条件下での転動接触疲労の研究では検討が不十分であった三 軸応力や結晶配向を分析し,疲労の進行と関連付けて考察する. 6 章では,2 章から 5 章で得られた主要な結論を示し,本論文を総括する.. 7.

(12) 1 章の参考文献 1) 日本機械学会,JSME テキストシリーズ 加工学 I -除去加工-,日本機械学会,2006, p. 1-7 2) 日本機械学会,JSME テキストシリーズ 加工学 I -除去加工-,日本機械学会,2006, p. 113-126 3) 日本機械学会,JSME テキストシリーズ 加工学 I -除去加工-,日本機械学会,2006, p. 137-138 4) 原田 泰典,ショットピーニング,表面技術,2010,vol.67,No.1,p. 2-7 5) 俊野 英男,重野 公彦,高木 伸雄,多段ショットピーニングによる疲れ強さの向上, ばね論文集,1987,vol. 32,p. 31-34 6) 市川 正, 永井 善和,アルミニウム合金の熱処理,精密機械,1980,vol. 46,No. 10 7) 不二越熱処理研究会,新・知りたい熱処理,ジャパンマシニスト社,2001,p. 112 8) 中代 雅士,残留応力の基礎(その 2)残留応力計測方法の紹介,IIC Review,2008,vol. 39,p. 2-10 9) 磯村 良蔵,鋼の熱処理と残留応力 -三次元的測定とその解析-,アグネ技術センター, 1996,p. 7-38 10)岩柳 順二,安福 精一,磁気的方法による残留応力の測定,応用物理,1978,vol. 47, No. 2,p. 161-166 11)境 禎明,卯西 裕之,磁気ひずみ法を利用した鋼管の曲げ応力測定・評価技術,非破 壊検査,2004,vol. 53,No. 12,p. 767-771 12)例えば:田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養 賢堂,2006 13)I. C. Noyan,Residual stress -Measurement by Diffraction and Interpretation-,Springer,1987 14)田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 123-141. 8.

(13) 15)平 修二,松木 健次,X 線による溶接部残留応力の測定について,材料,1968,vol. 17, No. 183,p. 1053-1058 16)今井 克哉,米谷 茂,冷間圧延したアルミニウム板の残留応力,軽金属,1990,vol.40, No.2,p.109-115 17)前田 喜久男,高清浄度転がり軸受用鋼の転がり疲れ発生機構と長寿命軸受用鋼の開発, 学位論文,1994,p.27-83 18)柏谷 賢治,井上 靖雄,佐藤 幸雄,松山 晋作,レール頭頂面変形層における集合組 織の発達について,材料,1987,vol. 36,No.407,p.786-791 19)G. Sachs & J. Weerts,Elastizitätsmessungen mit Röntgenstrahlen,Zeitschrift für technische Physik,1930,vol. 64,p.344-358 20)R. Glocker & E. Osswald , Einzelbestimmungen der elastischen Hauptspannungen mit Röntgenstrahlen,Zeitschrift für technische Physik,1935,vol. 16,p. 237-242 21)E. Macherauch & P. Muller,Evaluation of X-ray Elastic Constants of Cold-strained Armco-iron and CrMo-steel,Arch. Eisenhuttenwes,1958,vol. 29,p. 257-260 22)E. Macherauch,Principles and Problems of the X-ray Determination of Elastic Stresses, Materialpruefung,1963,vol. 5,p. 14-25 23)M. Ya. Fucks & L. I. Gladkith,On Some Distinctive Features of the X-ray Method of Measuring Elastic Stresses,Zavodskaya Laboratoriya,1965,vol. 31,No. 8,p. 978-982 24)H. Doelle & V. Hauk,X-Ray Stress Determination for Internal Stress Systems of Ordinary Orientation,Haerterei-Technische Mitteilungen,1976,vol. 31,No. 3,p. 165-168 25)英 崇夫,加工層における X 線残留応力解析に関する研究,学位論文,1982 26)平 修二,田中 啓介,山崎 利春,細束 X 線応力測定の一方法とその疲労き裂伝ぱ問題 への応用,材料,1978,vol. 27,No. 294,p. 251-256 27)佐々木 敏彦,広瀬 幸雄,二次元的 X 線検出器イメージングプレートを用いた全平面 応力成分の単一入射 X 線応力測定,材料,vol. 44,No. 504,p. 1138-1143. 9.

(14) 28)佐々木 敏彦,高橋 俊一,佐々木 勝成,小林 裕一,エリアディテクタ方式の X 線三 軸応力測定法の改良に関する研究,日本機械学会論文集 A 編,2009,vol. 75,No. 750p. 219-227 29)B. B. He,U. Preckwinkel,K. L. Smith,Advantages of using 2D detectors for residual stress measurements,Advances in X-ray analysis,1998,vol. 42,p. 429-438 30)伊原 涼平,橋本 匡史,望月 正人,オーステナイト系ステンレス鋼製配管の溶接施工 過程に伴う残留応力分布の変化挙動,材料,2012,vol. 61,No. 12,p. 961-966 31)中島 俊司,永坂 一成,杉田 寿一,X 線 2D 法によるステンレスばねの残留応力評価, ばね論文集,2015,vol. 60,p. 23-28 32)T. Miyazaki & T. Sasaki,X-ray stress measurement eith two-dimensional detector based on Fourier analysis,Int. J. Mater. Res (formerly Z. Metallkd.),2015,vol. 109,No. 9,p.922-927 33)T. Miyazaki & T. Sasaki,X-ray stress measurement from an imperfect Debye-Scherrer ring,Int. J. Mater. Res (formerly Z. Metallkd.),2015,vol. 106,No. 3,p.237-241 34)林 紘三郎,X 線応力測定法とその応用(I) ,材料,1972,vol.21,No. 224,p. 486-492 35)B. D. Cullity(松村 源太郎 訳) ,新版 X 線回折要論,アグネ承風社,1980,p. 169-179 36)B. D. Cullity(松村 源太郎 訳) ,新版 X 線回折要論,アグネ承風社,1980,p. 179-188 37)M. R. James & J. B. Cohen,The Application of a Position-Sensitive X-Ray Detector to the Measurement of Residual Stresses,Advances in X-ray analysis,1975,vol. 195,p. 695 38)宮原 諄二, 加藤 久豊,輝尽性蛍光材料を用いたコンピューテッド・ラジオグラフィ ー,応用物理,1984,vol. 53,No. 10,p. 884-890 39)吉岡 靖夫,大谷 真一,新開 毅,イメージングプレートの細束 X 線解析への適用,非 破壊検査,1990,vol. 39,No. 8,p.666-671 40)パルステック工業株式会社製品カタログ「ポータブル型 X 線残留応力測定装置 μ-X360s」,https://www.pulstec.co.jp/pdf/micro-x360s.pdf (参照:2018 年 9 月 28 日). 10.

(15) 41)丸山 洋一,宮崎 利行,佐々木 敏彦,イメージングプレートを用い cosα 法に適した X 線応力測定装置の開発と検証,材料,2015,vol. 64,No. 7,p. 560-566 42)安川 昇一,誤差項による d0 の最適化を組み込んだX線応力解析手法 Direct Refinement Solution(DRS)法,リガクジャーナル,2016,vol. 47,No.1,p.12-18 43)株式会社リガク製品カタログ「ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000」, https://www.rigaku.co.jp/products/xrd/HyPix-3000/pdf/HyPixCJD632A.pdf (参照:2018 年 9 月 28 日) 44)三井 真吾,西村 龍太郎,三好 敏喜,新井 康夫,佐々木 敏彦,一体型 SOI ピクセル 検出器による工業材料の背面反射デバイリング計測に関する研究,第 49 回 X 線材料強 度に関するシンポジウム講演論文集,2015,p. 18-21 45)藤田 工,低ラムダ条件での転動疲労のメカニズムと転動疲労試験の寿命データの解析 に関する研究,学位論文,2015 46)E. Ioannides,G. Bergling & A. Gabelli,An Analytical Formulation for the Life of Rolling Bearings,Acta Polytechnica Scandinavica,1999,vol. 137 47)J. Bush,W. Grube & G. Robinson,Microstructural and Residual Stress Changes in Hardened Steel Due to Rolling Contact,Transactions of the ASM,1961,vol. 54,p. 390-412 48)D. Reichard,R. Parker & E. Zaretsky,Residual Stress and Subsurface Hardness Changes Induced,NASA TECHNICAL NOTE,1968 49)下田 秀夫,荒木田 豊,柴崎 鶴雄,冷間圧延用補強ロールスリーブにおける転動疲労 被害の X 線的観察,材料試験,1962,vol. 11,No. 110,p. 693-698 50)前田 喜久男,対馬 全之,軸受のピーリング損傷における接触残留応力の主応力の傾 きについて,ベアリングエンジニア,1980,vol. 47,p. 3-21 51)前田 喜久男,対馬 全之,軸受のピーリング損傷におよぼす表層残留応力の影響,第 19 回 X 線材料強度に関するシンポジウム講演論文集,1982,p. 115-120. 11.

(16) 52)A. P. Voskamp,R. Österlund,P. C. Becker & O. Vingsbo,Gradual Changes in Residual Stress and Microstructure During Contact Fatigue,Journal of Metals Technology,1980,vol. 7,p. 14-21 53)A. P. Voskamp,Microstructural Changes During Rolling Contact Fatigue,Ph. D thesis,1997 54)広田 忠雄 ,清水 健一,X 線回折法による転がり軸受の疲労度の計測について,第 24 回 X 線材料強度に関するシンポジウム講演論文集,1987,p. 82-87 55)小熊 規泰,軸受の残存疲労寿命予測 第 1 報 X 線回折法の適用,KOYO Engineering Journal,2002,vol. 161,p. 26-31 56)阿野 亮介,藤井 正浩,大﨑 浩志,鋼球の転がり疲労に及ぼす熱処理と残留応力の影 響,トライボロジスト,2015,vol. 60,No. 2,p. 136-143 57)阿野 亮介,藤井 正浩,大﨑 浩志,鋼球の転がり疲労過程における残留応力変化の観 察,トライボロジスト,2016,vol. 61,No. 6,p. 393-400 58)長谷川 直哉,藤田 工,内舘 道正,阿保 政義,転がり接触によるピーリングの発生 メカニズムとピーリング抑制に及ぼす黒染処理の影響(第 1 報),トライボロジスト, 2018,vol. 63,No. 8,p. 551-562 59)長谷川 直哉,藤田 工,内舘 道正,阿保 政義,転がり接触によるピーリングの発生 メカニズムとピーリング抑制に及ぼす黒染処理の影響(第 2 報),トライボロジスト, 2018,vol. 63,No. 9,p. 618-628 60)井上 靖雄,佐藤 幸雄,柏谷 賢治,レール鋼の転がり接触疲労過程における集合組織 の発達,材料,1989,vol. 38,No. 429,p. 601-606 61)長嶋 晋一,田中 方孝,大坪 稔典,秋元 勝司,転がり接触に伴う炭素鋼の塑性流動 と残留応力に関する研究,材料,1983,vol. 32,No. 363,p. 1314-1320 62)佐々木 敏彦,青木 宣頼,竹橋 知希,高橋 俊一,鷹合 滋樹,シェリング損傷レール の X 線三軸応力測定,第 43 回 X 線材料強度に関するシンポジウム講演論文集,2008, p. 167-172. 12.

(17) 2章 X 線応力測定理論 2.1 はじめに 1 章で述べたように,1950 年代に sin2 𝜓法の測定理論が確立されて以降,X 線応力測定装 置の発達と共に応力測定理論も検討・改良されてきた.本章では,本研究での実験に用い た各種 X 線応力測定法の測定理論を説明する.. 2.2 X 線の回折 W. H. Bragg と W. L. Bragg は,規則的に配列した原子で構成される格子面に X 線が入射す る場合について,Bragg の法則として知られる以下に示す式を導いた.. 𝑛𝜆 = 2𝑑 sin 𝜃. (2.1). λ:波長,𝑑:格子面間隔,θ:Bragg 角,𝑛:回折次数(正の整数). 式 (2.1) より,波長 λ と Bragg 角 θ が既知であれば,格子面間隔 𝑑 を求められるこ とがわかる.図 2.1 は単結晶での X 線回折を示した模式図である.. Normal of Specimen Plane. Incident X-ray. 0. η η. θ θ : Bragg angle : Lattice Spacing. Diffraction Plane. 図 2.1 単結晶での X 線回折[参考文献 1)の図 6.1 を基に作成] 13.

(18) 工業的に使用される金属材料の多くは,方位が異なる結晶が集まった多結晶体である. 図 2.2 は多結晶体に引張応力が作用した場合の 𝑑 の変化を表した模式図である.𝜓=0 deg の状態では,𝑑は引張応力によって収縮する.𝜓を次第に大きくしていくと,格子面法線と 引張応力作用方向の差が小さくなるので𝑑も次第に大きくなる.この性質を利用した測定理 論が後述する sin2𝜓法である.また,その他の応力測定理論も基本的には θ の変化を測定し, ひずみ ε を求める.以下で ε と θ の関係を表す式を導出する 1).. ε を𝑑と θ で表すために,式 (2.1)を X 線の波長 λ で微分することで次式が得られる. 𝑛=. 2 sin 𝜃 × ∆𝑑 2 cos 𝜃 × ∆𝜃 + ∆𝜆 ∆𝜆. (2.2). 式 (2.2)に式 (2.1)を代入して整理すると, ∆𝜃 ∆𝜆 ∆𝑑 = + tan 𝜃 𝜆 𝑑. (2.3). λ は一定なので𝛥λ=0 として整理すると, ∆𝑑 = − cot 𝜃 × ∆𝜃 𝑑. (2.4). と書ける.式 (2.4)は格子面間隔の変化率𝛥d/d が θ の変化量𝛥θ から求められることを示して いる. 式 (2.4)において,無ひずみ状態での格子面間隔を𝑑 0,その状態での Bragg 角を θ0 とすれ ば,回折面法線と試料面法線のなす角が𝜓0 のとき(図 2.1 の状態のとき)の回折面法線方向 のひずみ𝜀𝜙𝜓は次式で近似される. 𝑑𝜙𝜓 − 𝑑0 ∆𝑑 𝜀𝜙𝜓 = ( ) = ( ) = − cot 𝜃0 (𝜃𝜙𝜓 − 𝜃0 ) 𝑑0 𝜙𝜓 𝑑0 𝜙𝜓. (2.5). 式 (2.5)より,Bragg 角の変化量を測定すれば,ひずみが得られることがわかる.また, 式 (2.5)を変形すると,. 14.

(19) (𝜃𝜙𝜓 − 𝜃0 ) = − tan 𝜃0 ∙ 𝜀𝜙𝜓. (2.6). となる.式 (2.6)より,tanθ0 の値が大きいほど,すなわち θ0 が 90deg に近いほどひずみに対 して角度変化が大きくなるため,ひずみの検出感度が高くなることがわかる.. =0°. →90°. : Large. : Small Stress. 図 2.2 引張応力による格子面間隔の変化[参考文献 2)の図 6.2 を基に作成]. 2.3 X 線応力測定法 2.3.1 sin2𝜓法 sin2𝜓法 3),4)では,X 線の侵入深さが 10 数 μm であることから平面応力状態(σ3=0)を仮定す る.図 2.3 に示すように,試料表面の点 O を測定位置とし,OP 方向のひずみ𝜀𝜙𝜓を測定する ものとする.フックの法則により,主応力 σ1,σ2 と主ひずみ ε1,ε2,ε3 の関係は次式で表 せる. 1 (𝜎 − 𝜈𝜎2 ) 𝐸 1 1 𝜀2 = (𝜎2 − 𝜈𝜎1 ) 𝐸 𝜈 𝜀3 = − (𝜎1 + 𝜎2 ) 𝐸 𝜀1 =. 15. (2.7).

(20) また,𝑥軸,𝑦軸方向の応力 σ𝑥,σ𝑦とひずみ ε𝑥,ε𝑦,ε𝑧の関係は次式で表せる. 1 (𝜎 − 𝜈𝜎𝑦 ) 𝐸 𝑥 1 𝜀𝑦 = (𝜎𝑦 − 𝜈𝜎𝑥 ) 𝐸 𝜈 𝜀𝑧 = − (𝜎𝑥 + 𝜎𝑦 ) 𝐸 𝜀𝑥 =. (2.8). 一方,𝜀𝜙𝜓は主ひずみを用いることで以下のように表せる.ここでは,σ1 の方向から𝜙だ け回転した方向に𝑥軸をとる. 𝜀𝜙𝜓 = 𝜀1 cos 2𝜙sin2 𝜓 + 𝜀2 sin2 𝜙sin2 𝜓 + 𝜀3 cos 2𝜓. (2.9). また,𝑥方向のひずみ ε𝑥は主ひずみと角度𝜙を用いると以下のように表せる. 𝜀𝑥 = 𝜀1 cos2 𝜙 + 𝜀2 sin2 𝜙. (2.10). 𝜀𝜙𝜓 = 𝜀𝑥 sin2 𝜓 + 𝜀3 cos2 𝜓. (2.11). 式 (2.9),(2.10)より,. 式(2.8),(2.11)より,𝜀𝜙𝜓は σ𝑥,σ𝑦,𝜓を用いて次式のように表せる. 𝜀𝜙𝜓 =. 1+𝜈 𝜈 𝜎𝑥 sin2 𝜓 − (𝜎𝑥 + 𝜎𝑦 ) 𝐸 𝐸. (2.12). 式(2.12)は,平面応力状態において𝜀𝜙𝜓が sin2𝜓に対して直線的に変化することを意味する. さらに,式(2.5) を用いれば式(2.12)は次式のようになる.. 2𝜃 = −. 2(1 + 𝜈) 2𝜈 tan 𝜃0 ∙ 𝜎𝑥 sin2 𝜓 + tan 𝜃0 ∙ (𝜎𝑥 + 𝜎𝑦 ) + 2𝜃0 𝐸 𝐸. (2.13). 式(2.13)は,sin2𝜓に対して回折角 2θ が直線的に変化することを意味する.つまり,複数 の𝜓で X 線を入射し,それぞれの𝜓に対する 2θ を測定してプロットすれば,図 2.3 のような 16.

(21) 直線が得られる.図 2.3 のような線図を 2θ- sin2𝜓線図と呼ぶ.式(2.13)において𝐸,𝜈が既知 なら次式によって応力 σ𝑥が求められる. 𝜎𝑥 = −. 2(1 + 𝜈) 180 𝜕(2𝜃) cot 𝜃0 𝐸 𝜋 𝜕(sin2 𝜓). (2.14). ここで,𝐸,𝜈 は X 線的弾性定数と呼ばれる値で,機械的弾性定数とは異なる値である. 以降,X 線弾性定数と機械的弾性定数を区別するために,X 線的弾性定数には添え字𝑥を, 機械的弾性定数には添え字𝑚をそれぞれ付す.このルールに従って,式(2.14)を以下のよう に書き換える. 𝜎𝑥 = −. 2(1 + 𝜈𝑥 ) 180 𝜕(2𝜃) cot 𝜃0 𝐸𝑥 𝜋 𝜕(sin2 𝜓). (2.15). 式(2.15)が sin2𝜓法の基礎式で,2θ- sin2𝜓線図の傾きと材料定数の積で応力が求められる. 無応力状態の回折角 2θ0 は係数の部分に含まれるのみであり,応力値の決定精度に大きな影 響は与えず,0.1deg 程度の精度の値でも十分である.ただし,後述する三軸応力測定時には 正確な 2θ0 の値が必要となる.. 𝜀𝜙𝜓. 𝑧. Compressive stress. 𝜎3 𝜀3 P. 𝑦. O. 2𝜃. 𝜓. 𝜎2 𝜀2 𝜙. 𝑥. Tensile stress. 𝜎1 𝜀1. sin2 𝜓 図 2.3 試料表面の応力,ひずみと測定座標系. 図 2.4 2θ- sin2𝜓線図の例. [参考文献 5)の図 6.3 を基に作成]. [参考文献 6)の図 6.4 を基に作成]. 17.

(22) 2.3.2 Dölle-Hauk 法 前節で述べた 2θ-sin2𝜓線図が直線になるのは被測定部が平面応力状態かつ集合組織や応 力勾配がない場合である.これらの条件が満たされない場合,すなわち三軸応力状態や応 力勾配が存在する場合などでは, 図 2.5 のように 2θ-sin2𝜓線図が非線形になることがある 7). 例えば,一方向のせん断応力が生じるような旋削や研削などが施された面では,図 2.5(a)の ように𝜓の正負によって 2θ(あるいは𝜀𝜙𝜓)の値が異なる𝜓スプリット現象が観察される. また,応力勾配が存在する場合は図 2.5(b),集合組織が存在する場合は図 2.5(c)のような 2θ-sin2𝜓線図がそれぞれ観察される. 8). .また,図 2.5(a)~(c)が重畳した線図が観察される場. 合もある.これらの 2θ-sin2𝜓線図に対して sin2𝜓法をそのまま適用すると応力値の測定誤差 が大きくなるのは明らかである.以下では,三軸応力状態での応力測定理論の一つである Dölle-Hauk 法 10)について述べる. 被測定部を平面応力状態と仮定できない場合の𝜀𝜙𝜓は次式となる. 1 1 𝜀𝜙𝜓 = 𝑆2 (𝜎𝑥 cos 2𝜙 + 𝜏𝑥𝑦 sin 2𝜙 + 𝜎𝑦 sin2 𝜙 − 𝜎𝑧 )sin2 𝜓 + 𝑆2 𝜎𝑧 2 2 1 + 𝑆1 (𝜎𝑥 + 𝜎𝑦 + 𝜎𝑧 ) + 𝑆2 (𝜎𝑧𝑥 cos𝜙 + 𝜎𝑦𝑧 sin 𝜙) sin 2𝜓 2. (2.16). ただし, 1 1 + 𝜈𝑥 𝜈𝑥 𝑆2 = , 𝑆1 = − 2 𝐸𝑥 𝐸𝑥. Dölle-Hauk 法では,𝜓>0 で得られるひずみ𝜀𝜙𝜓+と,𝜓 <0 で得られるひずみ𝜀𝜙𝜓-を用いて 以下のパラメータを定義する. 1 𝑎1 ≡ (𝜀𝜙𝜓+ + 𝜀𝜙𝜓− ) 2 2. (2.17) 2. 2. = 𝜀𝑧 + (𝜀𝑥 cos 𝜙 +𝛾𝑥𝑦 sin 2𝜙 + 𝜀𝑦 sin 𝜙 − 𝜀𝑧 )sin 𝜓 1 𝑎2 ≡ (𝜀𝜙𝜓+ − 𝜀𝜙𝜓− ) 2. (2.18). = (𝛾𝑧𝑥 cos 𝜙 +𝛾𝑦𝑧 sin 𝜙) sin|2𝜓|. 18.

(23) なお,三軸応力状態でのフックの法則は次式の通りである. 𝜀𝑥 = 𝛾𝑥𝑦. 1 1 1 [𝜎𝑥 − 𝜈(𝜎𝑦 − 𝜎𝑧 )],𝜀𝑦 = [𝜎𝑦 − 𝜈(𝜎𝑧 − 𝜎𝑥 )],𝜀𝑧 = [𝜎𝑧 − 𝜈(𝜎𝑥 − 𝜎𝑦 )] 𝐸 𝐸 𝐸. 2(1 + 𝜈) 2(1 + 𝜈) 2(1 + 𝜈) = 𝜏𝑥𝑦 ,𝛾𝑦𝑧 = 𝜏𝑦𝑧 ,𝛾𝑥𝑧 = 𝜏𝑥𝑧 𝐸 𝐸 𝐸. (2.19). 式(2.17),(2.18)より,𝑎1 は sin2𝜓に対して,また𝑎2 は sin∣2𝜓∣に対して線形であることがわ かる.また,𝜙=0deg,45deg,90deg のそれぞれについて±𝜓の測定をすることで 6 個のひ ずみを求めることができ,さらにフックの法則を用いることで 6 成分の応力値を得ること. 2𝜃. 2𝜃. ができる.. 𝜓 𝜓. 𝜓 𝜓. 0 0. 0 0. sin2 𝜓. sin2 𝜓. (b) 材料内部に集合組織を有する場合. 2𝜃. (a) せん断力を伴う有向性加工を施した場合 (𝜓スプリット現象). 𝜓 𝜓. 0 0. sin2 𝜓 (c) 深さ方向の応力勾配を有する場合 図 2.5 非線形な sin2𝜓線図の例[参考文献 10)の図 7.2 を基に作成]. 19.

(24) 2.3.3 cosα法 本節では二次元 X 線検出器を利用する応力測定理論である cosα 法による平面応力測定 11),12). について説明する.まず,図 2.6 のように座標系を定義する.X 線回折環の-𝜂側から. とった中心角 α の位置におけるひずみ𝜀α を,試料座標系におけるひずみ εx,εy,εz,γxy,γxz,. γyz を用いて表すと次式のようになる. 𝜀𝛼 = 𝑛1 2 𝜀𝑥 + 𝑛2 2 𝜀𝑦 + 𝑛3 2 𝜀𝑧 + 𝑛1 𝑛2 𝛾𝑥𝑦 + 𝑛2 𝑛3 𝛾𝑦𝑧 + 𝑛3 𝑛1 𝛾𝑥𝑧. (2.20). ここで,𝑛1,𝑛2,𝑛3 は以下の式で表される.. 𝑛1 = cos 𝜂 sin 𝜓0 cos 𝜙0 − sin 𝜂 cos 𝜓0 cos 𝜙0 cos 𝛼 + sin 𝜂 sin 𝜙0 sin 𝛼 𝑛2 = cos 𝜂 sin 𝜓0 sin 𝜙0 − sin 𝜂 cos 𝜓0 sin 𝜙0 cos 𝛼 + sin 𝜂 cos 𝜙0 sin 𝛼. (2.21). 𝑛3 = cos 𝜂 cos 𝜓0 + sin 𝜂 sin 𝜓0 cos 𝛼. 式(2.19)はひずみ成分表示をした cosα 法の基礎式である.試料座標系の応力成分を σ𝑥,σ𝑦,. σ𝑧,τ𝑥𝑦,τ𝑦𝑧,τ𝑥𝑧とし,平面応力状態を仮定した上で式(2.19)のフックの法則を用いると次式 が得られる. 𝜀𝛼 = 𝜎𝑥. 1 1 2(1 + 𝜈) ,𝑛1 2 − 𝜐(𝑛2 2 + 𝑛3 2 )- + 𝜎𝑦 ,𝑛2 2 − 𝜈(𝑛3 2 + 𝑛1 2 )- + 𝜏𝑥𝑦 𝑛1 𝑛2 (2.22) 𝐸 𝐸 𝐸. 式(2.22)が応力成分表示をした cosα 法の基礎式である. 入射 X 線が𝑥𝑧平面上にある場合, 𝜙0 = 0 deg であるので,式(2.21)は次式となる 𝑛1 = cos 𝜂 sin 𝜓0 − sin 𝜂 cos 𝜓0 cos 𝛼 𝑛2 = sin 𝜂 sin 𝛼. (2.23). 𝑛3 = cos 𝜂 cos 𝜓0 + sin 𝜂 sin 𝜓0 cos 𝛼 cosα 法では図 2.6 のように回折環上の 4 か所から得られるひずみを基に応力を計算する ため,回折環のひずみを表すパラメータとして𝑎1,𝑎2 を以下のように定義する. 20.

(25) 1 𝑎1 (𝜙0) ≡ ,(𝜀𝛼 − 𝜀𝜋+𝛼 ) + (𝜀−𝛼 − 𝜀𝜋−𝛼 )2 1 𝑎2 (𝜙0) ≡ ,(𝜀𝛼 − 𝜀𝜋+𝛼 ) − (𝜀−𝛼 − 𝜀𝜋−𝛼 )2. (2.24) (2.25). 平面応力状態で𝜙0=0 deg の場合,式(2.22)および式(2.23)を用いると次式のようになる. ただし,弾性定数には X 線的弾性定数を用いる. 1 + 𝜈𝑥 sin 2𝜓0 sin 2𝜂 cos 𝛼 ∙ 𝜎𝑥 𝐸𝑥 2(1 + 𝜈𝑥 ) 𝑎2 (0) = sin 𝜓0 sin 2𝜂 sin 𝛼 ∙ 𝜏𝑥𝑦 𝐸𝑥 𝑎1 (0) = −. (2.26) (2.27). 式(2.26)および式(2.27)より,𝑎1 は cos α に対して,また𝑎2 は sinα に対してそれぞれ直 線的に変化することがわかる.これらの性質を利用すれば,次式により応力値を求めるこ とができる. 𝐸𝑥 1 𝜕𝑎1 [ ] 1 + 𝜈𝑥 sin 2𝜂 sin 2𝜓0 𝜕 cos 𝛼 𝐸𝑥 1 𝜕𝑎2 = [ ] 2(1 + 𝜈𝑥 ) sin 2𝜂 sin 𝜓0 𝜕 sin 𝛼. 𝜎𝑥 = −. (2.28). 𝜏𝑥𝑦. (2.29). −𝜂. 𝑧. Incident X-ray. Detector (IP). ε-α. εα. α. Rα 𝜓0 𝑦. επ+α +𝜂. Specimen. 𝑥. 𝜙0. επ-α. Diffraction ring. 図 2.6 回折環上に得られる X 線的ひずみと光学系の模式図 [参考文献 13)の Fig.1 を基に作成] 21.

(26) 2.3.4 cosα法による三軸応力解析(佐々木―廣瀬法) 前節では平面応力状態を仮定した場合の cosα 法の基礎式について述べた.本節では三軸 応力状態における cosα 法による応力解析について説明する.なお,本論文で用いる三軸応 力解析法は佐々木ら. 14). の研究に基づくものであり,その中でも「第三法」と呼ばれる方法. を用いる. 式(2.24),(2.25)に加えて,三軸応力解析に使用するパラメータ𝑎3 を新たに定義する. 1 𝑎3 (𝜙0) ≡ ,(𝜀𝛼 + 𝜀𝜋+𝛼 ) + (𝜀−𝛼 + 𝜀𝜋−𝛼 )2. (2.30). 三軸応力状態を仮定する場合,式(2.20),(2.21)および式(2.24),(2.25),(2.26)より以下が 得られる. 𝜙0= 0 deg かつ𝜓0 > 0deg の場合, 1 + 𝜈𝑥 ,(𝜎𝑥 − 𝜎𝑧 ) sin 2𝜓0 + 2𝜏𝑥𝑧 cos 2𝜓0 - sin 2𝜂 cos 𝛼 𝐸𝑥 2(1 + 𝜈𝑥 ) = [𝜏𝑥𝑦 sin 𝜓0 + 𝜏𝑦𝑧 cos 𝜓0 ] sin 2𝜂 sin 𝛼 𝐸𝑥. 𝑎1 (0)𝜓0>0 = −. (2.31). 𝑎2 (0)𝜓0>0. (2.32). 𝑎3 (0)𝜓0>0 = 𝛷cos2 𝛼 + 𝛹. (2.33). 式(2.33)の𝛷および𝛹は以下の通りである. 𝛷=. 2(1 + 𝜈𝑥 ) [(𝜎𝑥 − 𝜎𝑧 )cos2 𝜓0 − (𝜎𝑦 − 𝜎𝑧 ) − 𝜏𝑥𝑧 sin 2𝜓0 ]sin2 𝜂 𝐸𝑥 2 𝛹 = 𝜎𝑥 ( ) ,cos2 𝜂sin2 𝜓0 − 𝜈(sin2 𝜂 + cos2 𝜂cos2 𝜓0 )𝐸𝑥 2 + 𝜎𝑦 ( ) (sin2 𝜂 − νcos2 𝜂) 𝐸𝑥 4(1 + 𝜈𝑥 ) + 𝜏𝑥𝑧 cos 2 𝜂 sin 2𝜓0 𝐸𝑥 2 + 𝜎𝑧 ( ) ,cos2 𝜂cos2 𝜓0 − 𝜈(sin2 𝜂 + cos2 𝜂sin2 𝜓0 )𝐸𝑥. 22. (2.34). (2.35).

(27) 𝜙0= 90 deg かつ𝜓0 > 0deg の場合, 1 + 𝜈𝑥 [(𝜎𝑦 − 𝜎𝑧 ) sin 2𝜓0 + 2𝜏𝑦𝑧 cos 2𝜓0 ] sin 2𝜂 cos 𝛼 𝐸𝑥 2(1 + 𝜈𝑥 ) =− [𝜏𝑥𝑦 sin 𝜓0 + 𝜏𝑥𝑧 cos 𝜓0 ] sin 2𝜂 sin 𝛼 𝐸𝑥. 𝑎1 (90)𝜓0>0 = −. (2.36). 𝑎2 (90)𝜓0>0. (2.37). 式(2.31)において𝜓0= 0 deg(試料面の法線方向からの X 線入射)とすれば, 2(1 + 𝜈𝑥 ) 𝜏𝑥𝑧 sin 2𝜂 cos 𝛼 𝐸𝑥 2(1 + 𝜈𝑥 ) = 𝜏𝑦𝑧 sin 2𝜂 sin 𝛼 𝐸𝑥. 𝑎1 (0)𝜓0=0 = −. (2.38). 𝑎2 (0)𝜓0=0. (2.39). 式(2.31)~式(2.33),および式(2.36)~式(2.39)において,左辺は測定で得られる値であるの で,垂直応力の差(σ𝑥-σ𝑧),(σ𝑦-σ𝑧)および各せん断応力成分はこれらの式を利用すれば算出 することができる.なお,τ𝑥𝑦は式(2.32)および式(2.37)の両方から得られるが,両者の値は 等価 14)なので本論文では両者の算術平均を以って τ𝑥𝑦の値とする.. σ𝑧の値を単独で求める場合,式(2.20),式(2.21)およびフックの法則から導出される以下の 式を利用する. 𝜎𝑧 =. 𝐸𝑥 (𝜀 − 𝑋) 1 − 2𝜈 𝛼. (2.40). なお,X は次式の通りである. 𝑋=. 2(1 + 𝜈𝑥 ) (𝜏𝑥𝑦 𝑛1 𝑛2 + 𝜏𝑦𝑧 𝑛2 𝑛3 +𝜏𝑥𝑧 𝑛3 𝑛1 ) 𝐸𝑥. 1 (𝜎 − 𝜎𝑧 ),𝑛1 2 − 𝜈(𝑛2 2 + 𝑛3 2 )𝐸𝑥 𝑥 1 + (𝜎𝑦 − 𝜎𝑧 ),𝑛2 2 − 𝜈(𝑛3 2 + 𝑛1 2 )𝐸𝑥 +. (2.41). X は σ𝑧以外の応力値と材料定数,測定条件によって決まる値によって構成されるため, 計算により σ𝑧の値を得ることができる.式(2.40)に𝜀α の項が含まれているため,σ𝑥は回折環 全体から得られる.本研究では回折環 1 周を 500 分割して計算しているため,1 回の測定に つき σ𝑧の値は 500 個得られる.この 500 個を算術平均した値をその測定での σ𝑧とする 14). 23.

(28) 2.3.5 フーリエ解析法 フーリエ解析法 15)では,回折環から得られるひずみ εα と回折環の中心角 α の関係を式(1)のよう なフーリエ級数で表したときのフーリエ係数から応力 σ𝑥を計算する. ∞. 𝜀𝛼 = 𝐴0 + ∑(𝐴𝑘 cos 𝑘𝛼 + 𝐵𝑘 sin 𝑘𝛼). (2.42). 𝑘=1. cosα 法と同じく,図 2.6 の座標系で X 線を照射したときに発生する回折環のひずみは,平面応 力状態の場合は次式で表せる. 𝜀𝛼 = 𝑛12 𝜀𝑥 + 𝑛22 𝜀𝑦 + 𝑛32 𝜀𝑧 + 𝑛1 𝑛2 𝛾𝑥𝑦. (2.43). ここで,𝑛1,𝑛2,𝑛3 は εα の方向余弦であり,𝜂,𝜓0,𝛼を用いると, 𝑛1 = cos 𝜂 sin 𝜓0 − sin 𝜂 cos 𝜓0 cos 𝛼 𝑛2 = sin 𝜂 sin 𝛼. (2.44). 𝑛3 = cos 𝜂 cos 𝜓0 + sin 𝜂 sin 𝜓0 cos 𝛼. と表すことができる. 式(2.43),(2.44)およびフックの法則から,式(2.42)中の各係数𝐴0,𝐴𝑘,𝐵𝑘は次式となる.なお,平 面応力状態の場合, 𝑘 ≧ 3 の係数は 0 となる.. 𝐴0 =. 𝜎𝑥 ,2cos2 𝜂 sin2 𝜓0 + sin2 𝜂 cos2 𝜓0 2𝐸𝑥. − 𝜐𝑥 *2cos2 𝜂 cos2 𝜓0 + sin2 (1 + sin2 𝜓0 )++. (2.45). 𝜎𝑦 *(1 − cos 2𝜂) − 𝜐𝑥 (3 + cos 2𝜂)+ 4𝐸𝑥 1 + 𝜐𝑥 sin 2𝜂 sin 2𝜓0 ∙ 𝜎𝑥 2𝐸𝑥 1 + 𝜐𝑥 𝐵1 = sin 2𝜂 sin 𝜓0 ∙ 𝜏𝑥𝑦 𝐸𝑥 𝐴1 = −. 24. (2.46) (2.47).

(29) 1 + 𝜐𝑥 2 sin 𝜂 cos2 𝜓0 ∙ (𝜎𝑥 − 𝜎𝑦 ) 2𝐸𝑥 1 + 𝜐𝑥 2 𝐵2 = − sin 𝜂 cos 𝜓0 ∙ 𝜏𝑥𝑦 𝐸𝑥 𝐴2 =. (2.48) (2.49). σ𝑥については,式(2.46)を変形することで得られる次式で応力値を得ることができる. 𝜎𝑥 = −. 2𝐸𝑥 1 ∙𝐴 1 + 𝜐𝑥 sin 2𝜂 sin 2𝜓0 1. (2.50). 式(2.50)から,材料定数と測定条件で決定される定数とフーリエ係数𝐴1 の積で σ𝑥が求めら れることがわかる.なお,平面応力状態で粗大結晶粒や集合組織が無い場合,フーリエ解 析法で得られる σ𝑥の値は cosα 法で得られる σ𝑥の値と等価であることが藤本ら 16)によって確 認されている.本研究では,測定で得られた εα を市販の表計算ソフトを用いてフーリエ変 換することで𝐴1 の値を決定する.. 25.

(30) 2 章の参考文献 1) 田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 99 2) 田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 101 3) I. C. Noyan,Residual stress -Measurement by Diffraction and Interpretation-,Springer,1987 4) 田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 99-120 5) 田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 102 6) 田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 104 7) 英 崇夫,加工層における X 線残留応力解析に関する研究,学位論文,1982 8) 田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 121-144 9) H. Doelle & V. Hauk,X-Ray Stress Determination for Internal Stress Systems of Ordinary Orientation,Haerterei-Technische Mitteilungen,1976,vol. 31,No. 3,p. 165-168 10)田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 124 11)平 修二,田中 啓介,山崎 利春,細束 X 線応力測定の一方法とその疲労き裂伝ぱ問題 への応用,材料,1978,vol. 27,No. 294,p. 251-256 12)鈴木 賢治,西川 聡,秋葉 義明,内山 宗久,大城戸 忍,橋本 匡史,三浦 靖史,湯 村 友亮,二次元検出器によるX線応力測定,養賢堂,2015,p. 11-27. 26.

(31) 13)佐々木 敏彦,高橋 俊一,佐々木 勝成,小林 裕一,エリアディテクタ方式の X 線三 軸応力測定法の改良に関する研究,日本機械学会論文集 A 編,2009,vol. 75,No. 750, p. 219-227 14)嘉村 直哉,宮崎 利行,佐々木 敏彦,X 線回折環のフーリエ解析によるアルミニウム 合金の応力測定,非破壊検査,2017,vol. 66,No. 10,p. 492-497 15)T. Miyazaki & T. Sasaki,X-ray stress measurement with two-dimensional detector based on Fourier analysis,Int. J. Mater. Res (formerly Z. Metallkd.),2015,vol. 109,No. 9,p.922-927 16)藤本 洋平, 宮崎 利行, 佐々木 敏彦,デバイリングのフーリエ解析による鉄鋼材料の X 線応力測定,材料,2015,vol. 64,No.7,p.567-572. 27.

(32) 3章 アルミニウム合金の応力測定 3.1 はじめに X 線応力測定法の 1 つである sin2𝜓法は,測定対象が等方均質であること,平面応力状態 であること,深さ方向に急激な応力勾配が無いことを前提とした測定理論である 1).鉄鋼製 の機械部品の X 線応力測定では,溶接部の測定などを除けば材料の等方均質性が問題とな ることは少ない.しかしながら,圧延等によって集合組織が発達しやすい材料や粗大結晶 粒を形成しやすい材料は等方均質でないことがあり,0 次元や一次元検出器方式の X 線応力 測定装置では回折 X 線を得ることが困難な場合もある.一方,二次元検出器方式では上記 のような材料の場合でも,斑点状あるいは不均一な環状の回折 X 線が取得できる. 二次元検出器方式の X 線応力測定法には,平ら 2)が提案し,その後イメージングプレー トの適用 3) ,4) 5) ,6) ,7)が図られてきた cosα 法,He ら 8)が提案した 2D 法がある.Miyazaki ら 9), 10). は cosα 法をフーリエ級数で表し,X 線回折環が不完全な場合でも応力測定が可能となる. フーリエ解析法を提案した.それぞれの測定理論の詳細は前章で述べたとおりである. Miyazaki らは鋼に対してフーリエ解析法を適用し,その有効性を確認している.また, 藤本ら 11)によって,フーリエ解析法と cosα 法で得られる平面応力成分の応力値は等価であ ることが確かめられている.一方,本研究ではアルミニウム合金に対するフーリエ解析法 の適用可能性を検討した.アルミニウム合金は実用金属材料として広範囲に使用されてお り,新幹線車両や航空機などの大型構造物や,自動車ボディへの適用も進んでいる.これ ら構造物の強度評価をする際には使用時に作用する応力のほか,残留応力も考慮に入れな ければならない.X 線応力測定法は非破壊・非接触で残留応力を測定できる手法だが,アル ミニウム合金は粗大結晶粒や集合組織が発生しやすく,また構造物の狭隘部を測定する際 には X 線回折環全周が取得できないといった問題が発生しうる.本章では,上記のような 測定対象に対してフーリエ解析法を適用した場合に得られる応力値の妥当性を検証するこ とを目的として,粗大結晶粒および集合組織を有するアルミニウム合金の平板に対してフ ーリエ解析法を適用した結果を述べる. 28.

(33) 3.2 実験 3.2.1 試験片 フーリエ解析法で得られる応力値の妥当性を確かめるために四点曲げ試験を実施した. 試験片は市販の圧延材から放電加工で 140×20×3 mm の短冊形状に切り出した.試験片表 面には放電加工によって熱影響層が生じるため,X 線照射部(試験片の中央部)周囲の 8 mm 四方には深さ 100 μm の電解研磨を施し,その中央に X 線を照射した.さらに,X 線照射部 の裏側にひずみゲージを貼り付けてひずみ測定を行った.四点曲げ試験では試験片の表面 と裏面に絶対値の等しい曲げ応力が作用するため,ひずみゲージで測定されるひずみとヤ ング率から求めた機械的応力と X 線測定で得られる応力値を比較することができる. 供試材にはアルミニウム合金 A2017P-F 材を使用した.A2017 は Cu を 3.5~4.5 %,Mn を 0.4~1.0 %,Mg を 0.4~0.8 %含むアルミニウム合金であり,時効によって機械的性質を向 上させることもできるが,今回は特に熱処理はせず,受入材で試験片を作製した. 図 3.1 に試験片切り出し前の材料の組織写真を示す.腐食はフッ化水素酸,塩酸,硝酸の 混合水溶液で行った.図 3.1 より,結晶粒が細長く展伸されている様子が見てとれる.回折 X 線の検出に二次元検出器を用いる場合,X 線照射領域内に 250 個以上の結晶粒が存在すれ ば sin2𝜓法による応力測定が可能である 12)とされており,後述する X 線測定条件から概算し た sin2𝜓法が適用可能な最大結晶粒径は約 150 μm となるが,本材料は結晶粒の大きさ(長 手方向の長さ)が 200 μm 程度となっていることがわかる.図 3.2 は電子線後方散乱回折 (Electron Back Scattered Diffraction , EBSD)で得られた IPF(Inverse Pole Figure)マップで, <111>方位が試料面法線方向に向いた結晶粒が多いことがわかる.以上より,sin2𝜓法での 応力測定は困難であることが推測できる.. 29.

(34) 100μm. 図 3.1 試験片の断面組織写真 Y. Y. Z. X. EBSD observation area. 111. X. Specimen. 001. 101. IPF map. 図 3.2 EBSD で得られた IPF マップ. 3.2.2 X 線測定条件 X 線回折環の取得にはパルステック工業株式会社製の μ-X360 を使用した.本装置は二次 元 X 線検出器のひとつであるイメージングプレートを使用しており,X 線回折環を全周に わたって取得することが可能である.詳細な測定条件を表 3.1 に示す.なお,前章で述べた ように,X 線応力測定で使用する弾性定数は結晶学的に計算される値であり,機械的な弾性 定数とは区別される.今回は Kröner モデル 13)から計算した値を用いた.また,X 線的弾性 定数は回折面によっても異なる.以下では,(hkl)回折面の X 線的ヤング率を Ex(hkl),X 線的 ポアソン比を νx (hkl)と表す.本研究の測定においては,(311)回折では Ex(311)=69.3 GPa, 30.

(35) νx (311) =0.348,(222)回折では Ex (222)=72.5 GPa,νx (222)=0.341 を用いた.なお,弾性定数の計算 に使用した単結晶の弾性スティフネス 14)は表 3.2 に示す通りである.. 表 3.1 X 線測定条件. Characteristic X-ray. Cr-Kα. Diffraction (hkl). Al (311) , (222). Kβ filter. None. Tube condition. 30kV, 1mA. X-ray irradiation diameter, mm. 2. Incident angle ψ0, deg. 25. Exposure time, s. 40. 表 3.2 アルミニウム単結晶の弾性スティフネス. c11. c12. c44. 106.78. 60.74. 28.21 Unit : GPa. 3.2.3 四点曲げ試験 上述の試験片を四点曲げ用の冶具に設置し,負荷を与えながら X 線を照射した.冶具の 模式図を図 3.3 に示す.外側スパンの間隔は 120 mm,内側スパンの間隔は 60 mm である. 冶具中央のねじを回転すると内側スパンが上昇し,試験片に曲げ負荷が加わる構造である. 時効していない A2017 の 0.2 %耐力は約 70 MPa15)だが,70 MPa の曲げ負荷を加えると試験 片とスパンの接触部で塑性変形が生じる可能性があるので,負荷は最大で 45 MPa とした. なお,負荷応力計算時に用いる機械的ヤング率 Em は 71.6GPa15)とした.. 31.

(36) Outer span. Specimen. 56. Inner span. Unload. Load. 95. 60. 120. Load screw 140. 70 (Unit : mm). 図 3.3 四点曲げ試験機の模式図. 3.2.4 測定精度の改善 Miyazaki ら 16)によると,斑点状の X 線回折環にフーリエ解析法を適用したときの応力測 定精度は In-plane averaging によって改善可能である.In-plane averaging とは,X 線の照射位 置を移動して都度測定し,情報を得る領域を拡大することで応力測定精度を向上させる手 法である.本研究では,アルミ合金に対しても In-plane averaging が有効であるかを確認し た.試料は上述の四点曲げ試験と同じものを使用した.In-plane averaging を適用する際の X 線照射位置番号を図 3.4 に示す.試料表面の 8×8 mm の電解研磨面を 2 mm 間隔で 9 点測定 し,前節までと同じ手順でフーリエ解析法による応力解析を行った.. 32.

(37) 20. 140. Y. t3. Electropolished Area : 8×8mm Depth : 100μm. X. Specimen Enlarged. ③ ⑥⑨ ② ⑤⑧ ① ④⑦. X. 2. 8. Y. 2 (Unit : mm). 8. 図 3.4 In-plane averaging を適用する際の X 線照射位置. 6. 3.3 実験結果および考察 3.3.1 X 線回折環 図 3.5 に無負荷時の X 線回折環を示す.また,図 3.6 に X 線回折環の中心角 α に対する回 折強度の変化(回折強度分布)を示す.図 3.5 において,内側の X 線回折環は(222)回折, 外側の X 線回折環は(311)回折のものである.図 3.5 および図 3.6 から,(222)回折の X 線回 折環は α=30, 340 deg 付近にのみ回折斑点が確認できる.それに対して(311)回折の X 線回折 環は α=0,130,230 deg 付近に回折斑点があるほか,環状の回折線も確認できる.しかし, いずれの X 線回折環も回折強度の変動が大きく, sin2𝜓法による応力測定が適さない結晶粒 の状態となっていることがわかる.特に(222)回折では α=60~300deg の範囲で 5×104 以下の 回折強度しか得られておらず,この領域ではピーク決定精度が悪化することが推測される. 参考として 45 MPa 負荷時(σapp.= 45 MPa)の sin2𝜓法での測定例を図 3.7 に示す.応力計算 に使用する 2θ-sin2𝜓線図が波打っているため,正確な応力値が得られないことがわかる. 33.

(38) α. α = 0 deg. 90 deg 270 deg. 180 deg 図 3.5 無負荷時の X 線回折環. 1×10 1.E+066 Diffraction intensity, I (a.u.). (311) (311) ave.. 8×10 8.E+055. (222) (222) ave.. 6.E+055 6×10 4.E+055 4×10. 2.E+055 2×10. 0 0.E+00 0. 60. 120 180 240 300 Central angle of diffraction ring, α(deg). 図 3.6 X 線回折環の中心角 α に対する回折強度 I の分布. 34. 360.

(39) Diffraction angle 2θ , (deg). 138.8 138.7. 138.6 138.5 138.4 138.3 0. 0.1. 図 3.7. 0.2. 0.3 sin2. 0.4. 0.5. 0.6. 2θ - sin2𝜓線図の例(σapp. = 45MPa). 3.3.2 四点曲げ試験 図 3.8 に四点曲げ試験の最大負荷時(σapp.=45 MPa)の a1-cosα 線図を示す.X 線の照射位置 は図 3.4 中の⑤の位置である.X 線回折環の斑点化の影響で線図の直線性が悪化しており, 特に(222)回折で顕著である. 次に,種々の負荷応力を与えたときの負荷応力と X 線応力の関係を図 3.9 に示す.エラー バーは cosα 法で得られた応力値に対するものである.図 3.9 (a)は(311)回折を用いた結果, 図 3.9 (b)は(222)回折を用いた結果である.得られた応力値は(311)回折, (222)回折ともに cosα 法とフーリエ解析法でほぼ等しくなり,フーリエ解析法で得られた値と負荷応力の決 定係数(R2 値)は(311)回折で 0.964,(222)回折で 0.905 であった.以上より,フーリエ解析 法は粗大結晶粒および集合組織を有する本アルミ合金に対しても適用可能で,cosα 法とほ ぼ同じ応力値が得られることがわかった.. 35.

(40) 0.0001 0 0. 0.2. 0.4. 0.6. 0.8. 1. -0.0001. a1. -0.0002 -0.0003 -0.0004 -0.0005 -0.0006. (311) (222). -0.0007. cosα 図 3.8. 最大負荷時(σapp.=45 MPa)の a1-cosα 線図. Stress measured by X-ray , σX-ray (MPa). 70 60 50 40 30 Fourier. 20. cosα. 10 0. 0. 10. 20 30 Applied stress , σapp.(MPa) (a) (311)回折. 36. 40. 50.

(41) Stress measured by X-ray , σX-ray (MPa). 90 80 70 60 50 40 30 20 Fourier. 10. cosα. 0. -10 0. 10. 20 30 Applied stress , σapp.(MPa). 40. 50. (b) (222)回折 図 3.9 図 3.4 の⑤の測定点における四点曲げ負荷応力(σapp.) と X 線で測定した応力(σX-ray) の関係. 3.3.3 In-plane averaging による測定精度の改善 図 3.10 はフーリエ解析法で応力計算を行い,かつ In-plane averaging を適用した四点曲げ 試験結果である.決定係数は(311)回折で 0.9976,(222)回折で 0.9942 となり,より相関性の 良好な値が得られることがわかる.(311)回折と(222)回折で約 10MPa の差があるのは,結晶 の弾性異方性. 17). によって圧延時の残留応力に異方性が生じたためであると考えられ,無負. 荷時に測定された応力値を各負荷での応力値から差し引けば両者はほぼ一致する. 図 3.4 のそれぞれの測定点で得られた応力値は測定位置によってばらつきがあり,無負荷 時と最大負荷時には図 3.11 のような値が各測定位置で得られた.アルミニウム合金を圧延 加工すると,圧延表面から内部にかけて加工硬化の度合いに差が生じること. 18). ており,これが局所的な応力値のばらつきの原因の一つであると考えられる. 37. が報告され.

(42) 図 3.12 は In-plane averaging で用いる測定点数と,負荷応力(σapp.)とフーリエ解析法で得ら れた応力(σFourier)の決定係数の関係である.図 3.12 より,(311)回折の場合は測定点数を 5 点 以上, (222)回折の場合は 9 点以上とすれば十分な信頼性向上効果が得られることがわかる. したがって,効率良く高精度に応力を測定するためには適切な測定点数を選択する必要が あると言える.また,平均化の範囲を十分に大きく取れば(311)回折と(222)回折から得られ る応力値の信頼性は同等になることがわかる.このことは,X 線照射径の拡大や入射 X 線 の揺動,試料の回転揺動のような手段をとらずに,X 線の照射位置を平面移動し測定点数を 多くすることで粗大結晶粒を有する材料の巨視的な応力が測定可能であることを示唆して いる.ただし,X 線照射領域内に存在する結晶粒の数によって平均化に必要な測定点数は変 化するため,熱処理や製造方法が異なる材料に対して本方法を適用する場合には,その都 度,結晶粒径と応力測定精度の関係を把握しておかなければならないと言える.. Stress measured by X-ray , σX-ray (MPa). 70 311 diffraction y = 0.9912x + 16.851 R² = 0.9976. 60 50. 40 30. 222 diffraction y = 1.0064x + 6.4033 R² = 0.9924. 20 10 0 0. 図 3.10. 10. 20 30 Applied stress , σapp. (MPa). 40. 50. In-plane averaging を適用した場合の四点曲げ負荷応力(σapp.)と X 線で測定した 応力(σX-ray)の関係 38.

(43) Measured stress by Fourier analysis , σFourier (MPa). 80 70 60 50 40 30 20 10. 0 -10. ①. ②. ③. ④. ⑤. ⑥. ⑦. ⑧ 0MPa. -20. ⑨ 45MPa. Measured stress by Fourier analysis , σFourier (MPa). (a) (311)回折. 80. 70 60 50 40 30 20 10 0 -10. ①. ②. ③. ④. ⑤. ⑥. ⑦. ⑧ 0MPa. -20. ⑨ 45MPa. (b) (222)回折 図 3.11 フーリエ解析法で得られた各測定点での応力値 (横軸は図 3.4 の X 線照射位置番号). 39.

(44) Coefficient of determination between σFourier and σapp., R2. 1. 0.98. 0.96. 0.94 (311) diffraction 0.92. (222) diffraction. 0.9 1. 3 5 7 Averaged points of X-ray irradiation. 9. 図 3.12 σFourier と σapp.の間の決定係数 R2 と In-plane averaging に使用する測定点数の関係. 3.3 おわりに 3 章では,アルミニウム合金 A2017 から作製した試験片を四点曲げ試験に供し,フーリエ 解析法と cosα 法で応力解析をし,それぞれの方法で得られる応力値の妥当性を検討した. その結果,以下の知見が得られた.. 1) 粗大結晶粒および集合組織を有するアルミニウム合金に対してもフーリエ解析法は cosα 法とほぼ等しい応力値が得られる. 2) 測定精度の改善効果は一定以上の平均化点数で飽和するため,作業効率を考慮した測 定点数を選択する必要がある. 3) 応力解析に使用する回折面によって In-plane averaging による応力測定精度の向上効果 が異なる.. 40.

(45) 3 章の参考文献 1) I. C. Noyan,Residual stress -Measurement by Diffraction and Interpretation-,Springer,1987 2) 平 修二,田中 啓介,山崎 利春,細束 X 線応力測定の一方法とその疲労き裂伝ぱ問題 への応用,材料,1978,vol. 27,No. 294,p. 251-256 3) 吉岡 靖夫,大谷 真一,新開 毅,イメージングプレートの細束 X 線解析への適用,非 破壊検査,1990,vol. 39,No. 8,p.666-671 4) 佐々木 敏彦,広瀬 幸雄,二次元的 X 線検出器イメージングプレートを用いた全平面 応力成分の単一入射 X 線応力測定,材料,1995,vol. 44,No. 504,p.1138-1143 5) 佐々木 敏彦,広瀬 幸雄,イメージングプレートによる二次元検出回折像を用いた X 線三軸応力解析,日本機械学会論文集(A 編),1995,vol. 61,No. 590,p.180-187 6) 丸山 洋一,宮崎 利行,佐々木 敏彦,イメージングプレートを用い cosα 法に適した X 線応力測定装置の開発と検証,材料,2015,vol. 64,No. 7,p. 560-566 7) 佐々木 敏彦,廣瀬 幸雄,安川 昇一,イメージングプレートを用いた粗大結晶粒材料 の X 線マクロ応力測定,日本機械学会論文集(A 編),1997,vol. 63,No.607,p.533-541 8) B. B. He,U. Preckwinkel,K. L. Smith,Advantages of using 2D detectors for residual stress measurements,Advances in X-ray analysis,1998,vol. 42,p. 429-438 9) T. Miyazaki & T. Sasaki,X-ray stress measurement eith two-dimensional detector based on Fourier analysis,Int. J. Mater. Res (formerly Z. Metallkd.),2015,vol. 109,No. 9,p.922-927 10)T. Miyazaki & T. Sasaki,X-ray stress measurement from an imperfect Debye-Scherrer ring,Int. J. Mater. Res (formerly Z. Metallkd.),2015,vol. 106,No. 3,p.237-241 11)藤本 洋平,宮崎 利行,佐々木敏彦:デバイリングのフーリエ解析による鉄鋼材料の X 線応力測定,材料,2015, Vol. 64, No. 7,p.567-572 12)富永 真,秋庭 義明,二次元 X 線検出器による応力測定精度に及ぼす測定条件の影響, 材料,2014,vol. 63,No. 7,p.521-526. 41.

(46) 13)田中 啓介,秋庭 義明,鈴木 賢二,残留応力の X 線評価-基礎と応用-,養賢堂,2006, p. 282-285 14)G. N. Kamm & G. A. Alers,Low‐Temperature Elastic Moduli of Aluminum,Journal of Applied Physics,1964,vol. 35,No. 327,pp.327-330 15)日本アルミニウム協会 ,アルミニウムハンドブック 第 7 版,日本アルミニウム協会, 2007,p.43 16)T. Miyazaki,Y. Fujimoto & T. Sasaki,Improvement in X-ray stress measurement using Debye-Scherrer rings by in-plane averaging, Journal of Applied Crystallography,2016,vol. 49, p.241-249 17)本間 和男,細川 智生,有間 淳一,常永 寿伸,X 線応力測定法に関する二,三の問題 (I),材料,1969,vol. 18,No. 195,p.1053-1059 18)中山 栄浩,鷹合 徹也,5083 アルミニウム合金における冷間圧延時の残留応力と低温 衝撃吸収エネルギー,軽金属,1990,vol. 40,No. 8,p.599-605. 42.

(47) 4章 軸受鋼の X 線応力測定 4.1 はじめに 機械部品等に金属材料を使用する場合には,機械的特性を向上させる目的で熱処理を施 すことが多い.転がり軸受の場合は,耐摩耗性や硬さ,疲労強度などを向上させるために 焼入を施す.また,焼入したままでは靭性に乏しいため,焼戻を適宜行うのが一般的であ る 1).転がり軸受に用いられる一般的な材料として,高炭素クロム軸受鋼がある.これは, 炭素量約 1%の鋼で,日本工業規格(JIS)では SUJ 材として規定されている 2).SUJ 材には, SUJ2,SUJ3,SUJ4,SUJ5 の 4 種があるが,本章で扱うのは最も広く使用されている SUJ2 である.SUJ2 を標準的な条件で焼入焼戻すると,その組織はマルテンサイト,オーステナ イト(残留オーステナイト),炭化物の三相となる.マルテンサイト中には不均一ひずみが 多く存在するため,X 線回折環のピークの広がり(以降,半価幅)は大きくなる 3).また, 複数の相が存在する場合は各相の間で微視的な応力(ミクロ応力)が生じることがある 4). X 線で測定される応力はあくまで相単位での応力であるので,巨視的な応力(部材全体に加 わる応力)と一致しないことが懸念される.藤本ら 5)は JIS S45C,Miyazaki ら 6)は JIS SK65 に対してフーリエ解析法を適用し,その妥当性を検討しているが,本研究では供試材を焼 入焼戻した SUJ2 とし,マルテンサイトの影響で半価幅が広く,かつ残留オーステナイトや 炭化物が存在している材料に対してもフーリエ解析法および cosα 法が適用可能であるかを 検討した.. 4.2 実験 4.2.1 試験片 3 章と同様に,フーリエ解析法で得られる応力値の妥当性を確かめるために四点曲げ試験 を実施した.供試材には SUJ2 を使用した.化学成分を表 4.1 に示す.試験片の作製手順を 以下に示す. まず,𝜙65mm の丸棒材から 150×25×15mm の直方体を切り出し,熱処理を施した.熱 43.

参照

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