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肝細胞移植治療の実現に向けたドナー細胞採取ならびにレシピエント体内における移植細胞動態の解析に関する基礎的検討

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Title 肝細胞移植治療の実現に向けたドナー細胞採取ならびにレシピエント体内における移植細胞動態の解析に関する基礎 的検討( 本文(Fulltext) ) Author(s) 許, 懷哲 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 甲第401号 Issue Date 2013-09-24 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/47365 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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肝細胞移植治療の実現に向けたドナー細胞採取ならびにレシピエント 体内における移植細胞動態の解析に関する基礎的検討 2013 年 岐阜大学大学院連合獣医学研究科 (東京農工大学) 許懷哲

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目次 略号一覧………1 緒論………3 第一章 肝細胞分離における温虚血の影響と分離効率改善の試み……8 序文………8 材料および方法………9 結果………15 考察………21 小括………25 第二章 細胞ソースとしての心停止ドナー肝 -長時間温虚血肝組織 からの肝細胞分離における Citrate-phosphate-dextrose 加 Euro-Collins 液灌流の有効性-………26 序文………26 材料および方法………29 結果………37 考察………45 小括………48 第三章 ラット実験的非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルの病態評価

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-新たな肝細胞ソースとしての脂肪肝利用への実験系構築-…49 序文………49 材料および方法………51 結果………55 考察………66 小括………69 第四章 移植肝細胞の肝通過率の測定実験系の確立と検討………70 序文………70 材料および方法………72 結果………80 考察………86 小括………91 総括………92 謝辞………97 引用文献………98

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1 略号一覧 ADME:吸収,分布,代謝,排泄 ADMET:吸収,分布,代謝,排泄,毒性 ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ ATP:アデノシン三リン

CM free Hank’s 液:Ca2+,Mg2+ free-Hank’s 液

CPD 液:クエン酸,リン酸,ブドウ糖 DMEM:ダルベッコ変法イーグル最小必須培地 EC 液:ユーロコリンズ液 EGTA:グリコールエーテルジアミン四酢酸 ELISA:酵素結合免疫吸着法 ETK 液:ET-Kyoto 液

HEPES: 4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid HIT:ヘパリン起因性血栓症

ICG:インドシアニングリーン

NADPH:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 NALFD:非アルコール性脂肪肝

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2 SD:Sprague Dawley

STZ:Streptozotocin

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3 緒論 ヒト初代肝細胞は新薬開発(創薬),細胞治療,再生医療などに非常に 役立つことから,近年,需要が増している(21,53,68,69)。 創薬研究は,まず標的となる病態を定め,それに適したアッセイ系を もって候補化合物の探索(スクリーニング)を行うことに始まる。この 後,候補化合物に毒性や催奇形性などの不都合な性質がないかを調べ, 安全な薬を開発する。この中期段階で重要な段階が薬物動態試験である。 薬物動態とは吸収(absorption),分布(distribution),代謝(metabolism), 排泄(excretion)に関する薬力学的検討で ADME と称される[さらに毒性 (toxicity)を含め ADMET と呼称することもあり]。この時,問題となる のがそれぞれのステップにおける種差である。種差があるために重篤な 副作用が見逃され,ヒトに投与されて始めて障害性があることがわかっ たという例が過去にいくつもある。また重篤な障害の発生に至らずとも, 治験(ヒトに対する投与試験)段階でさまざまな問題が発覚し,薬とし て完成できなかったという例は多い。これを解決するために,ヒトの細 胞,特に肝細胞を用いて ADME を予測することが必ず行われるようになっ てきた。このように新薬開発では多くのヒト肝細胞が利用されている

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4 (60)。 肝不全の治療として,ヒトに対する肝細胞移植は 1967 年に米国コロラ ド大学の Ben Eiseman 教授によって開始された(18)。これは世界初の肝 臓移植のわずか 4 年後のことであった。その後,肝臓移植が著しい発展 を遂げた一方で,肝細胞移植の症例数はさほど伸びなかった。しかしな がら近年,再生医療の進歩とドナーの慢性的な不足に伴い,肝細胞移植 に対する関心が高まってきている。肝細胞移植には,幾つかのメリット がある。1)肝臓移植より侵襲性が低い,2)術式は肝臓移植より簡単, 3)複数回の移植が可能,4)凍結保存肝細胞も使用できる,5)1 ドナ ーに由来する肝細胞を複数レシピエントに移植が可能,6)複数ドナー からの細胞を混合して投与することもできる,7)ドナー肝のサイズや 形に拘らない,8)遠距離への運送が容易,9)他の細胞療法と併用可 能,などである。 このように肝細胞の需要はきわめて高いが,その利用において三つの 問題点がある。すなわち1)細胞ソースとしてのヒト肝臓の不足,2) 凍結保存による生細胞率と接着性の低下,3)長期間の培養や増殖が不 可能,が問題点としてあげられる(44)。特に,第一の点はヒト初代肝細 胞利用研究の大きな障害となっている。そもそも移植医療においてドナ

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5 ー肝は慢性的に不足しているため,臓器移植に適する肝臓から敢えて細 胞を得ることはしない。そこで,通常,肝細胞は移植には適さない肝臓, すなわち心停止後摘出肝あるいは高度脂肪肝から得ている。これらの移 植に適さない肝臓は細胞ソースとしてもよいとはいえないが,現状では ここにソースを見出さざるを得ない。特に,細胞移植のために必要な細 胞数は,前述の創薬研究に比べはるかに多い。また,終分化細胞ではな く幹細胞を利用する再生医療をねらう場合,幹細胞の存在比は圧倒的に 尐ないので多くの細胞を分離しなくてはならない点が課題である。本研 究は,このような移植不適合肝からいかにしてよい細胞を多数得るか探 ることを目的として行なった。 また,日本の臓器移植システムではさらに大きな制約が課されている。 それは,移植に適さないと判断された肝臓は研究に用いることができな いことである。日本における臓器提供の同意はあくまでも移植医療に限 定されており,医学的理由により移植に用いられない場合は焼却処分さ れる。従って,現状で正常肝細胞を得るためには,生体肝移植時の過大 ドナー肝の余剰部分を用いるか,心停止ドナーから肝組織を得る方法し かない。ただし,後者の方法は現状では行われていない。したがって, 前者の肝組織から細胞を得ることになるが,この時,問題となるのは,

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6 余剰部分の切除時に 40 分から 1 時間程度の温虚血時間を経ることである。 温虚血は肝細胞の分離効率を著しく低下させると考えられている。 肝臓の細胞分離は,既存の脈管系を利用してコラゲナーゼ液を灌流し, 結合組織を消化する方法(58)が一般的である。この方法は,肝組織細 切片を酵素液に懸濁する震盪法に比べ,得られる細胞の生細胞率,生細 胞数ともに優れる。しかし,温虚血を経た肝臓では脈管系,特に微小循 環における凝血,細胞内 ATP(アデノシン三リン酸)の減尐,膜イオンチ ャンネルの不活生化による細胞浮腫などが生じており(19,29,31,61), これらにより肝細胞分離効率は大きく影響を受けると考えられる。特に 微小循環内の凝血は肝細胞間の結合組織を消化する際の酵素の流れを阻 害し,消化効率を低下させる。そこで本研究では,通常の灌流液に加え, 抗凝固剤のヘパリンあるいは citrate-phosphate-dextrose 液を加えてみ た。また,細胞浮腫に対する対策として,臨床で移植用肝臓の保存に用 いられる Euro-Collins 液,ET-Kyoto 液,UW 液を用いて検討した。

次に,温虚血肝組織とともに細胞ドナーとなる可能性のある脂肪肝に ついて実験モデルを検討した。ここでは,近年病態が明らかにされ,患 者数が増している non-alcoholic steatohepatitis(NASH)の実験モデル を取り上げた。NASH の場合は,通常の脂肪肝と異なり,Ⅱ型糖尿病との

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7 密 接 な 関 連 が 議 論 さ れ て い る 。 こ の た め ラ ッ ト に 高 脂 肪 食 給 餌 と streptozotocin 投与を組み合わせる方法をとった。病態の評価は血清生 化学的データ,病理組織観察に加え,臨床で肝機能評価に使われる色素 剤,インドシアニングリーンの血中動態ならびに胆汁排泄の kinetics を 調べ,NASH の病態をよく再現していることを明らかにした。 また,肝細胞移植の臨床応用のために必須な,投与細胞の体内動態を 調べる実験系の確立を行った。この研究では,できるだけ生理的な条件 で移植肝細胞の肝通過を見ることに集中し,独自の系を組み立てた。 本研究はヒト初代肝細胞移植による細胞治療の前臨床研究として肝組 織からの細胞分離条件の改良と肝細胞移植治療の有効性と安全性を高め ることを目的として,ラットを用い肝細胞分離効率の向上,移植不適合 脂肪肝の実験系の確立,肝細胞移植治療における投与細胞の体内動態に 関する研究を行った。すなわち,肝細胞移植の実現に向けたドナー細胞 採取ならびにレシピエント体内における移植細胞動態の解析が可能な実 験系を組立て,細胞採取の効率化と移植条件の最適化を検討しそれぞれ の結果について考察を加えた。

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8 第一章 肝細胞分離における温虚血の影響と分離効率改善の試み 序文 肝臓の細胞分離は,脈管系を利用してコラゲナーゼ液を灌流し,結合 組織を消化する方法が一般的である。この方法は,肝組織細切片を酵素 液に懸濁する震盪法に比べ,得られる細胞の生細胞率,生細胞数ともに 優れている。しかし,温虚血を経た肝組織では脈管系における凝血が起 こることが報告されている(1,39)。また,細胞内 ATP の減尐,イオン のチャンネル不活化による細胞水腫などが起きることが知られている (19,29,31,61)。これらは分離肝細胞の生細胞率と生細胞数にも悪い 影響をおよぼすものと考えられる。特に凝血は微小循環の流れを低下さ せ,さらに肝組織を消化する酵素の反応効率を低下させるため,回収生 細胞数と生細胞率の低下につながると思われる。 そこで,温虚血後の肝組織の微小循環の改善を図るために,さまざま な初期灌流液を用い,なるべく多くの生肝細胞を分離する条件を検討し た。

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材料および方法 1)供試動物

供試動物には,specific pathogen-free の雄性 Sprague Dawley ラット (9 週齢,200 ~ 300 g)を用いた。本実験は国立成育医療研究センター 実験動物委員会の承認を受けて行なった(承認番号 第 2000-001 号, 第 2010-005 号)。動物は実験動物専用の飼育施設で,12 時間の昼夜サイ クルのもと,標準ラット飼料と水を十分に与えて飼育した。

2)試薬と溶液

灌流液として用いた Ca2+,Mg2+ free-Hank’s 液(CM free Hank’s 液)

はハンクス平衡塩試薬 1 L 用(H2387,Sigma-Aldrich Co. LLC. St. Louis, MO,USA),0.19 g EGTA(E4378-100G,Sigma-Aldrich Co. LLC. St. Louis, MO,USA),23.8 g HEPES(17546-34,ナカライテスク,東京,日本)を 1 L 弱の超純水に溶解し,濃水酸化ナトリウム溶液(10 mol/L)で pH を 7.2 に調整し,滅菌フィルター(8030-001,孔径 0.22 µm,旭硝子,東京, 日本)で滅菌後,室温で保存した。その他の灌流液として Euro-Collins 液(EC 液)はアイロム製薬より,ET-Kyoto 液(ETK 液)は大塚製薬より 購入した。EC 液は使用説明書に従い使用直前に,最終濃度が 3.5 %にな

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10 るようブドウ糖を添加した。 抗血液凝固剤としてヘパリン(1,000unit/mL,持田製薬,東京,日本) および citrate-phosphate-dextrose(CPD)液を用いた。CPD 液は 26.3 g クエン酸三ナトリウム二水和物(和光純薬,大阪,日本),2.99 g クエン 酸(和光純薬,大阪,日本),23.2 g D‐グルコース(和光純薬,大阪, 日本)と 2.51 g リン酸二水素ナトリウム(和光純薬,大阪,日本)を1 L の超純水に溶解し,滅菌フィルター(8030-001,旭硝子,東京,日本) で滅菌し,室温で保存した。これらの抗凝固剤を灌流液に添加する場合 は,ヘパリンは 2 unit/mL,CPD 液は 14 %となるようにした。 コナゲラーゼ溶解液はハンクス平衡塩 1 L 用(H2387,Sigma-Aldrich Co. LLC. St. Louis,MO,USA),0.56 g 塩化カルシウム(和光純薬,大阪, 日本),23.8 g HEPES(17546-34,ナカライテスク,東京,日本)を 1 L 弱の超純水に溶解し,水酸化ナトリウム(10 mol/L)で pH 値を 7.5 に調 整し,滅菌フィルター(8030-001,旭硝子,東京,日本)で滅菌後,室 温で保存した。

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11 コラゲナーゼ(肝細胞分離用,和光純薬,大阪,日本)は 100 mg/mL の濃度で生理的食塩水に溶解し,2 ~ 3 mL ずつ分注の上,- 30 ℃で冷 凍保存した。使用直前に解凍し,コラゲナーゼ溶解液に最終濃度で 1 mg/mL となるように加えた。 3)温虚血処理と術式 供試動物を非温虚血(対照)群 11 匹,温虚血 10 分間群 26 匹,温虚血 15 分間群 12 匹に分けた(表 1)。エンフルラン(Abbott Laboratories, Abbott Park,IL,USA)2 %麻酔下で腹部を正中切開し,門脈と肝動脈を 分離した。門脈にカニュレーション(22G,SR-OT2225C,テルモ,東京, 日本)した後,カニュレーション部位よりも遠位の門脈および肝動脈を 結紮し血行を遮断,温虚血処理を行った。10 分ないし 15 分間の温虚血処 理後,門脈に留置したカニューレを通じ,80 cm の静水圧をもって灌流液 を流した。非温虚血対照群は,門脈カニュレーションの後直ちに肝灌流 を行った。温虚血群では,灌流液として CM free Hank’s 液,ETK 液,又 は EC 液を用い,抗血液凝固剤のヘパリン又は CPD 液を加え,灌流を行っ た(表 1)。10 分をかけ室温の灌流液 100 mL を灌流後,38 ℃のコラゲナ ーゼ液 100 mL を 10 分間灌流した。コラゲナーゼ液で消化された肝臓を

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12 表 1 .各実験グループの条件

グループ 温虚血時間 (min) 灌流液a n 数

1(対照) 0 CM-free Hank’s 11

2 10 CM-free Hank’s 3

3 10 CM-free Hank’s + heparin 4

4 10 CM-free Hank’s + CPD 3 5 10 EC + heparin 5 6 10 EC + CPD 7 7 10 ETK + CPD 4 8 15 EC + heparin 3 9 15 EC + CPD 3 10 15 ETK + heparin 3 11 15 ETK + CPD 3

a) CM-free Hank’s; Ca2+, Mg2+ free Hank’s 液 , CPD; citrate

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13 注意深く切り離し,静かに滅菌ビーカーに移した。コラゲナーゼ灌流法 は基本的に Seglen の方法によった(58)。 消化された肝臓はビーカーに入れ 23 G 注射針(NN-2325R,テルモ,東 京,日本)で表面の漿膜を裂くように切り,4 ℃の DMEM(041-29775,和 光純薬,大阪,日本)50 mL を加え,適切な振動を与え,肝細胞を分離, 分散させた。分離肝細胞は滅菌ガーゼ(071116A,スズラン株式会社,名 古屋,日本)で濾過し,さらに 150 メッシュナイロン網(SN-91-1194, 三商商社,東京,日本)に通した。 3)生細胞数および生細胞率の測定 肝細胞懸濁液にトリパンブルー(15250-061,Life Technologies,Inc., Carlsbad,CA,USA)を最終濃度で 0.04 %となるように加え,血球計算盤 (C-Chip NI DHC-N01,デジタルバイオテクノロジー,ソウル,韓国)を 用い,顕微鏡下で形態学的に肝実質細胞である細胞を計数した。トリパ ンブルー排除法に従い,染色されていない細胞を生細胞,染色された細 胞を死細胞とし,下に示す計算によって生細胞数と生細胞率を求めた。

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14 生 細 胞 数 ( 個 )= 総生細胞数 ×106×2(希釈倍率)×50(懸濁液総量) 4 4)統計処理 統計ソフトウェア SPSS V.21(IBM,Armonk,NY,USA)を用い,分散分 析(ANOVA)の後,ボンフェローニの補正を行った。生細胞数および生細 胞率は mean ± SD にて表示した。P < 0.05 を統計学的に有意とした。 生細胞率(%)= 総生細胞数 ×100% (総生細胞数+総死細胞数)

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15 結果 1)肝細胞分離の生細胞数と生細胞率 温虚血をせず CM free Hank’s 液で灌流した肝臓(対照)からは 2.27 ± 0.53 × 108個の肝実質細胞が得られ,生細胞率は 81.5 ± 4.2 % (n = 11,表 2,グループ 1)だった。これに対し 10 分間温虚血処理を行った 肝臓を CM free Hank’s 液で灌流した場合,0.38 ± 0.17 × 108個の肝 実質細胞が得られ,対照群の 16.7 %に低下した(同,グループ 2)。この 時,CM free Hank’s 液にヘパリンを添加すると得られた生細胞数は 31.3 %と倍近くにまで上がった(グループ 3)。同条件の肝臓を CM free Hank’s 液に CPD 液を添加した液で灌流した場合は 8.4 %とさらに低下し た(グループ 4)。ところが,EC 液に CPD 液を添加した場合は,1.41 ± 0.50 × 108個の肝実質細胞が得られ,対照群の 62.1 %にまで向上した(グル ープ 6)。これは EC 液にヘパリンを添加した場合(35.2 %)の倍近くであ った(グループ 5)。ETK 液に CPD 液を添加した場合は,1.18 ± 0.24 × 108個(対照に対し 52.0 %)と EC 液ベースの時には及ばないものの,回 収率は高まった(グループ 7)。 次に 15 分間の温虚血処理を行った肝臓の場合,CPD 添加 EC 液で灌流す ると 1.37 ± 0.28 × 108個(対照に対し 60.4 %)

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16 表 2.各実験グループの生細胞数と生細胞率 グループ 灌流液a) 生細胞数 x 10-8 対照群(Group1) に対する% 生細胞率 (%) 1 CM-free Hank’s 2.27 ± 0.53 100.0 81.5 ± 4.15 2 CM-free Hank’s 0.38 ± 0.17 16.7 74.7 ± 2.91

3 CM-free Hank’s + heparin 0.71 ± 0.40 31.3 77.2 ± 2.37

4 CM-free Hank’s + CPD 0.19 ± 0.02 8.4 76.1 ± 0.86 5 EC + heparin 0.80 ± 0.27 35.2 82.4 ± 2.63 6 EC + CPD 1.41 ± 0.50 62.1 81.4 ± 2.13 7 ETK + CPD 1.18 ± 0.24 52.0 81.5 ± 4.59 8 EC + heparin 0.19 ± 0.07 8.4 75.7 ± 6.92 9 EC + CPD 1.37 ± 0.28 60.4 83.5 ± 4.19 10 ETK + heparin 0.16 ± 0.03 7.1 86.6 ± 2.45 11 ETK + CPD 0.81 ± 0.32 35.7 83.4 ± 6.63

a) CM-free Hank’s; Ca2+, Mg2+ free Hank’s 液 , CPD; citrate

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17 表 3.生細胞数の統計処理結果 VS 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 グループ 1 ― ** ** ** ** ** ** ** * ** ** 2 ** ― ** 3 ** ― 4 ** ― ** * 5 ** ― 6 ** ** ** ― ** ** 7 ** ― 8 ** ** ― * 9 * * * ― * 10 ** ** * ― 11 ** ― VS 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 多重比較のボンフェローニの補正を行い,P < 0.05 を統計学的に有意と した(*; P < 0.05,**; P < 0.01)。

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18 の肝実質細胞が得られ(グループ 9),10 分間温虚血処理の状況と同程度 の細胞を得ることができた。一方,ヘパリン加 EC 液では 0.19 ± 0.07 × 108個(対照の 8.4 %)に留まった。CPD 加 ETK 液では 0.81 ± 0.32 × 108 個(対照の 35.7 %)の肝実質細胞が得られたが(グループ 11),EC 液ベ ースの灌流液による効果に比べ低かった。ETK 液の場合,ヘパリンを添加 すると,0.16 ± 0.03 × 108個(対照の 7.1 %,グループ 10)と極めて 低い値を示した。有意差については,表 3 にまとめたように,温虚血を 経るとすべての群で生細胞数が有意に減尐したが,CPD 加 EC 液を用いた グループ 6 と 9 は,他の温虚血群に比べ,有意に回収率が高いことが分 かった。生細胞率については,各グループの平均,SD が 80.4 ± 3.8 %, 範囲は 74.7 ~ 86.6 %で,すべての群において特記すべき優务は認めな かった。唯一,グループ 2(10 分間温虚血,CM-free Hanks 灌流)とグル ープ 10(15 分間温虚血,ヘパリン加 ETK 液灌流)の間で,74.7 ± 2.91% と 86.6 ± 2.45%となり,有意差(P < 0.05)が生じた。 2)温虚血肝臓のマクロ所見 門脈と肝動脈を結紮した肝臓は,すぐに色が変わり,虚血処置の 15 分 間中を通して暗褐色を呈した(図 1A)。灌流液として ETK 液ベースでヘパ

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19 リンや CPD 液を添加した場合,灌流後の肝臓の色の改善はあまり見られ なかった(図 1B,1C)。しかし,前述のように得られた肝実質生細胞数の 点でヘパリン加 ETK 液灌流と CPD 加 ETK 液灌流を比較すると後者で大幅 な改善が認められた(表 2,グループ 10,11)。EC 液ベースの灌流液では, ヘパリン添加の場合,灌流後の肝臓は彌漫性に赤い斑点状のスポットが 残り,灌流効果の低下を認めた(図 1D)。ところが, CPD 加 EC 液の場合, 灌流した肝臓の色は極めて均一な黄褐色で,脱血が良好に行われている ことがわかった(図 1E)。前述のように,得られた肝実質生細胞数も多か った(表 2,グループ 9)。

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20 図 1.温虚血 15 分後の肝臓の灌流所見 15 分間の温虚血処置を施した肝臓の所見(A)。これに対しヘパリン加 ETK 液で灌流した場合(B),CPD 加 ETK 液で灌流した場合(C),ヘパリン 加 EC 液で灌流した場合(D),CPD 加 EC 液で灌流した場合(E)の所見。B と C は肉眼的には顕著な差異を認めなかったが,D と E は明らかな相違を 認め,CPD 加 EC 液による灌流は極めて良好な脱血効果を示した。

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21 考察 近年,移植に適した臓器は深刻な不足状態にあり,心停止ドナーの臓 器を移植に用いるための研究が数多く行われてきた。当然ながら血液循 環が止まると,凝固系が賦活化し,血栓の形成が開始する。また,酸素 をはじめとし,各種エネルギー源の供給が停止し,組織・細胞の退行性 変性が始まる。それ故,虚血,特に冷却がなされない状態での温虚血を 受けた場合は一部の腎臓以外は移植には不適とされる。このように臓器 移植に不適な心停止ドナー肝を利用し,細胞分離を行い,肝細胞移植の ドナー細胞を得ることは,新しい移植医療を確立する上で非常に有益な ことであるが,現在,わが国では移植を目的として摘出された臓器は研 究に利用することはできない。このため,正常な肝組織を得る唯一の方 法は生体肝移植時の過大ドナー肝からの余剰組織となる。この場合,余 剰組織の分離はドナー体内で行われることから,温虚血を経た組織とな る。今回得られた結果は,このような生体ドナー肝余剰部から細胞を得 る場合にも当てはまるものと考えられる。 肝細胞分離は,消化酵素のコラゲナーゼ液を門脈から肝臓に入れ,肝 臓の脈管系を利用する。この方法は,組織消化に優れており,生細胞数 や生細胞率も非灌流式法を使用した際よりも優れている(58)。しかし,

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22 この分離法は脈管系,特に微小循環の健常性が求められ,血液の残留や 微小血栓があると細胞収量が低下すると言われる。灌流による肝細胞分 離法では,Selen の原報以来,カリウム,マグネシウムを含まずキレータ ーの一種である EGTA を添加したハンクス平衡塩液を初期灌流に使用して いる(58)。しかし,本実験の温虚血肝の場合,CM free Hank’s 液によ る灌流では細胞収量が大きく低下した。これに抗凝固剤としてヘパリン あるいは CPD 液を添加しても満足できる結果は得られなかった。特に CPD 加 CM free Hank’s 液は酸性になり,そのことも肝細胞に悪影響を及ぼ した可能性が考えられた。 一方,細胞収量に比べ,得られた細胞の生細胞率は群間にそれほど大 きな相違は見られなかった。これについては,肝細胞分離を行う際に酵 素消化が効率的に行われるであろう脈管系が保たれている部分は生細胞 の割合も他の障害程度の重い部位よりは高く,結果として生細胞率には 収量ほどの相違が見られなかったのではないかと考察している。唯一, グループ 2(10 分間温虚血,CM-free Hanks 灌流)とグループ 10(15 分 間温虚血,ヘパリン加 ETK 液灌流)の間で,74.7 ± 2.91%と 86.6 ± 2.45% となり,有意差(P < 0.05)が生じた。が,後者においては生細胞回収率が極 めて低い(7.1%)ことから,これは何らかの理由で生細胞が enrich された結

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23 果によるもので,特にこの灌流液が肝細胞分離という目的において優れるもの ではないと考えられた。 本実験は,そもそも温虚血を経た肝組織からは通常の方法では,十分 な肝細胞が得られないことから,通常とは異なる改良を施した灌流液を 試すという実験系を組み立てたものである。温虚血肝に対し,三種類の 灌流液と二種類の抗凝固剤を組み合わせた結果,CPD 加 EC 液が温虚血肝 からの肝細胞分離に最も適した灌流液であることがわかった。EC 液は古 くから使用されている移植用臓器の保存液の一つであり,成分として 10 mmol/L のナトリウムと 115 mmol/L のカリウムを含む,いわゆる細胞内液 型の灌流液である。また,グルコース濃度が CM free Hank’s 液に比べ EC 液は 35 倍であることも異なる。同じく移植用臓器の保存に用いられる ETK 液は 100 mmol/L のナトリウムと 44 mmol/L のカリウムを含む細胞外 液型の灌流液であり,糖類としてトレハロースを含有する(11,46,76)。 一方,抗血液凝固剤については,CPD 液は輸血の保存液に使用され,抗 凝固機能はカルシウムキレート作用による。ヘパリンの抗凝固作用はア ンチトロンビンの作用を増強し,トロンビンの作用を抑制するものであ る。ヘパリンはキレート剤ではなく,多くの生体高分子に対するリガン ドとなり複雑な作用を示す(13)。そのため,ある種の条件下では血小板

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の凝集を引き起こし,heparin induced thrombosis(HIT,ヘパリン起因 性血栓症)と呼ばれる重篤な症状を生じる場合もある。本実験の温虚血 条件でもこういったヘパリンの副次的な作用が灌流に悪い影響を及ぼし た可能性が考えられた。 本実験で認められたように CPD 加 EC 液による灌流は,温虚血を経た肝 臓において肉眼的に微小循環の回復ともいえる効果を示し,コラゲナー ゼ消化法による肝細胞分離において生細胞数の増加をもたらした。また 生細胞率も他に比べて高かったことは,脈管系の改善ばかりでなく,ク エン酸が有する細胞エネルギー源としての役割も寄与しているかもしれ ない。一方,EC 液は細胞内液型の臓器保存液で細胞外環境を細胞内環境 と近づけることにより,細胞内浮腫の発生を防ぐ。今回の結果は,EC 液 と CPD 液がそれぞれ有する特徴が合わさることによって得られた効果で あろう。

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25 小括 10 分あるいは 15 分という比較的短時間の温虚血肝において,肝細胞分 離を行う際に用いる灌流液の脱血および肝細胞分離の効果を評価した。 古くから実験に用いられてきた平衡塩類溶液(CM free Hank’s 液),細 胞内液型臓器保存液(EC 液),細胞外液型臓器保存液(ETK 液)という 三種類の灌流液とへパリンと CPD 液という二種類の抗凝固剤を組み合わ せた結果,CPD 加 EC 液が温虚血肝からの肝細胞分離に最も適した灌流液 であることがわかった。酵素灌流法によって肝細胞分離を行う場合,酵 素消化の効率は灌流効率に大きく影響される。温虚血を経た肝組織の場 合,微小血栓の形成が酵素消化を阻害すると考えられる。その回復に CPD 液加 EC 液による灌流が有効であるものと考えられた。

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26 第二章 細胞ソースとしての心停止ドナー肝 -長時間温虚血肝組織からの肝細胞分離における Citrate-phosphate-dextrose 加 Euro-Collins 液灌流の有効性- 序文 ヒトの肝臓から分離した肝細胞は創薬研究,細胞治療研究などに不可 欠な細胞である(21,23,49,52,66)。しかしながら,わが国では移植 不適合臓器の研究転用が認められていない為,臨床研究用といえども, 別の細胞ソースが必要である。現状で利用可能な肝細胞ソースは手術摘 出肝組織あるいは心停止ドナー肝となる。いずれも長時間の温虚血を経 た組織であり(2,6,16),その点が,肝細胞分離に不利な条件となる(30, 50,69)。それ故,長時間の温虚血肝からの肝細胞分離に適応した条件の 検討はきわめて重要である。 肝組織に存在する脈管系を利用して,酵素液を反応させ,細胞間組織 を消化した,肝細胞を得る酵素灌流法では微小循環を含めた脈管系全体 が正常に保たれている必要がある(1,39)。温虚血を経た肝組織の場合, 微小血栓の形成が酵素消化を阻害する可能性がある。実際,臨床の手術 摘出肝から細胞を分離する際に,温虚血を経た肝組織では十分な酵素処

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27 理がなされず肝組織が崩れない,あるいは崩れても集塊状を呈し細胞が 個々に単離できていない場合がある。従って末梢循環の保護,回復効果 がある灌流液の使用が重要である。特に温虚血肝では大量の血液が組織 中に残留しており,それをいかに効率よく排出できるかが酵素的肝細胞 分離に重要であることが経験的に知られている。 第二章の実験結果より,温虚血肝の灌流に,Euro-Collins 液(EC 液) に citrate-phosphate-dextrose 液(CPD 液)を添加すると,その後の肝 細胞分離効率が上昇することが判明した。CPD 液のクエン酸はキレート作 用と,細胞エネルギー源という二つの要素があるため,奏功したのでは ないかと考察した。また,抗凝固剤であるへパリンの添加は細胞の収率 をむしろ悪化させた。これはヘパリンが有する生体高分子リガンドとし ての性質が微小循環の回復に対して負の効果をもたらしている可能性が 示唆された。一方,灌流液として使用した EC 液と ET-Kyoto(ETK 液)は 含有する Na+と Kの濃度から,それぞれ細胞内液型と細胞外液型に分類 される。前章の結果では,細胞内液型が初期灌流に優れることがわかっ た。これらの結果をふまえ,今回,臨床的肝切除で要する 30 分から 60 分の温虚血肝からの肝細胞分離効率の向上についてさらに詳細に検討す ることとした。すなわち,抗凝固剤として CPD とヘパリンを,ベースと

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28

なる灌流液として EC 液,ETK 液に加え,細胞外液型の改良 University of Wisconsin 液(改良 UW 液)を検討した。さらに,今まで経験的に知られ てきた脱血の良否と肝細胞分離効率について残留赤血球数との関係を定 量的に調べた。

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29

材料および方法 1)供試動物

供試動物には,specific pathogen-free 雄性 Sprague Dawley ラット(9 週齢,200 ~ 300 g)を用いた。本実験は国立成育医療研究センター実 験動物委員会の承認を受けて行なった(承認番号 第 2000-001 号,第 2010-005 号)。動物は実験動物専用の飼育施設で,12 時間の昼夜サイク ルのもと,標準ラット飼料と水を十分に与えて飼育した。

2)試薬と溶液

灌流液の Ca2+,Mg2+ free-Hank’s 液(CM free Hank’s 液)はハンク

ス平衡塩試薬 1 L 用(H2387,Sigma-Aldrich Co. LLC. St. Louis,MO, USA),0.19 g EGTA(E4378-100G,Sigma-Aldrich Co. LLC. St. Louis, MO,USA),23.8 g HEPES(17546-34,ナカライテスク,東京,日本)を 1 L 弱の超純水に溶解し,水酸化ナトリウム(10 mol/L)で pH を 7.2 に調 節し,滅菌フィルター(8030-001,孔径 0.22 µm,旭硝子,東京,日本) で滅菌後,室温で保存した。その他の灌流液として EC 液はアイロム製薬 より,ETK 液は大塚製薬より購入した。EC 液は使用説明書に従い使用直 前に,最終濃度が 3.5 %になるようブドウ糖を添加した。改良 UW 液は東 京薬科大学薬学部臨床薬理学教室の平野俊彥教授よりご提供頂いた。組

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30 成は次の表 4 に記した。 抗血液凝固剤としてヘパリン(1,000unit/mL,持田製薬,東京,日本) および CPD 液を用いた。CPD 液は 26.3 g クエン酸三ナトリウム二水和物 (和光純薬,大阪,日本),2.99 g クエン酸(和光純薬,大阪,日本), 23.2 g D‐グルコース(和光純薬,大阪,日本)と 2.51 g リン酸二水素 ナトリウム(和光純薬,大阪,日本)を1 L の超純水に溶解し,滅菌フ ィルター(8030-001,旭硝子,東京,日本)で滅菌し,室温で保存した。 これらの抗凝固剤を灌流液に添加する場合は,ヘパリンは 2 unit/mL,CPD 液は 14 %となるようにした。 コナゲラーゼ溶解液はハンクス平衡塩 1 L 用(H2387,Sigma-Aldrich Co. LLC. St. Louis,MO,USA),0.56 g 塩化カルシウム(和光純薬,大阪, 日本),23.8 g HEPES(17546-34,ナカライテスク,東京,日本)を 1 L 超純水に溶解し,水酸化ナトリウム(10 mol/L)で pH 値を 7.5 に調整し, 滅菌フィルター(8030-001,旭硝子,東京,日本)で滅菌後,室温で保 存した。

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31 表 4.改良 University of Wisconsin 液 1 L に含有する成分 成分 含量 グルコン酸ナトリウム 17.5 g リン酸二水素カリウム 3.4 g トレハロース 1.5 g グルタチオン 0.9 g アデノシン 1.3 g 4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid 4.7 g ペニシリン 400,000 U デキサメタゾン 16 mg 硫酸マグネシウム 1 g カフェイン 4 g ポリエチレングリコール 10 g グリシン 1 g

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32 コラゲナーゼ(肝細胞分離用,和光純薬,大阪,日本)は 100 mg/mL の濃度で生理的食塩水に溶解し,2 ~ 3 mL ずつ分注の上,- 30 ℃で冷 凍保存した。使用直前に解凍し,コラゲナーゼ溶解液に最終濃度で 1 mg/mL となるように加えた。 3)温虚血処理と術式 供試動物を非温虚血(対照)群 7 匹,温虚血 30 分間群 14 匹,温虚血 60 分間群 19 匹に分けた(表 5)。本実験では,気温の影響を除くため,

常に室温を 26 ℃に保って行った。イソフルラン(Mylan Inc., Canonsburg,

PA, USA) 1 ~ 2 %麻酔下で腹部を正中切開し,門脈と肝動脈を分離し た。門脈にカニュレーション(22G,SR-OT2225C,テルモ,東京,日本) した後,カニュレーション部位よりも遠位の門脈および肝動脈を結紮し 血行を遮断,温虚血処理を行った。30 分ないし 60 分間の温虚血処理後, 門脈に留置したカニューレを通じ,80 cm の静水圧をもって灌流液を流し た。非温虚血対照群は,門脈カニュレーションの後直ちに肝灌流を行っ た。灌流液として CM free Hank’s 液,EC 液または改良 UW 液を用い,抗 血液凝固剤のヘパリン又は CPD 液を加え,灌流を行った(表 5)。灌流を 始める際に,肝動脈および肝下部後大静脈を切り,脱血を行った。

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33 表 5.各実験グループの条件 グループ 温虚血時間 (min) 灌流液 a) n 数 1 0 CM-free Hank’s 7 2 30 CM-free Hank’s 3 3 30 EC 3 4 30 EC + heparin 3 5 30 EC + CPD 3 6 30 改良 UW + CPD 2 7 60 CM-free Hank’s 3 8 60 EC 3 9 60 EC + heparin 4 10 60 EC + CPD 5 11 60 改良 UW + CPD 4

a) CM-free Hank’s; Ca2+, Mg2+ free Hank’s 液, EC; Euro-Collins

液, CPD; citrate-phosphate-dextran 液. 改良 UW; 改良 University of Wisconsin 液.

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34 本実験では残留赤血球数を測定するためにドレーン側にもカニュレー ションを行った。開胸を行い,右心房から後大静脈にカニュレーション (18G,SR-OT1832C,テルモ,東京,日本)設置し,肝下部後大静脈を クランプした。室温(26 ℃)の灌流液 130 mL を 30 分をかけ灌流した。 次いで 38 ℃のコラゲナーゼ液 100 mL を 10 分間灌流した後,消化された 肝臓を注意深く切り離し,静かに滅菌ビーカーに移した。そして,肝臓 の重さを計測した。コラゲナーゼ灌流法は基本的に Seglen の方法によっ た(58)。 消化された肝臓はビーカーに入れ注射針(23G,NN-2325R,テルモ,東 京,日本)で肝表面の漿膜を裂くように切り,4 ℃の DMEM (041-29775, 和光純薬,大阪,日本)50 mL を加え,適切な振動を与え,肝細胞を分離, 分散させた。分離肝細胞は滅菌ガーゼ(071116A,スズラン株式会社,名 古屋,日本)で濾過し,さらに 150 メッシュナイロン網(SN-91-1194, 三商商社,東京,日本)を通した。 4)生細胞数及び生細胞率の測定

肝細胞懸濁液にトリパンブルー(15250-061,Life Technologies, Inc., Carlsbad, CA, USA)を最終濃度で 0.04 %となるように加え,血球計算

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35 盤(C-Chip NI DHC-N01,デジタルバイオテクノロジー,ソウル,韓国) を用い顕微鏡下で形態学的に肝実質細胞である細胞を計数した。トリパ ンブルー排除法に従い,染色されていない細胞を生細胞,染色された細 胞を死細胞とし,下に示す計算によって生細胞数と生細胞率を求めた。 生 細 胞 数 ( 個 )= 総生細胞数 ×106×2(希釈倍率)×50(懸濁液総量) 4 5)灌流液中の赤血球数の計測 コラゲナーゼ液に換える直前に,肝臓を通過し後大静脈から流れ出る 灌流液を約 1mL 採取し,血球計算盤(C-Chip NI DHC-N01,デジタルバイ オテクノロジー,ソウル,韓国)に載せ,四隅の大ブロック計算室内の 赤血球数を計測した。灌流終了時点の灌流液に残留した赤血球数は,以 下の計算式で計算した。 生細胞率(%)= 総生細胞数 ×100 % (総生細胞数+総死細胞数)

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36 赤血球数(cell/mL)= 総赤血球数 ×106 4 6)統計処理

統計ソフトウェア SPSS V.21 (IBM, Armonk, NY, USA)を用い,分 散分析(ANOVA)の後,多重比較のボンフェローニの補正を行った。生細 胞数および生細胞率 mean ± SD にて表示した。P < 0.05 を統計学的に有 意とした。

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37 結果 1)肝細胞分離の生細胞数と生細胞率 温虚血をせず CM free Hank’s 液で灌流した肝臓(対照,n = 7)から は 5.23 ± 0.88 × 108 個の肝実質細胞が得られ,生細胞率は 82.4 ± 2.0 % (表 6)だった。 30 分間温虚血処理を行った肝臓では,CM free Hank’s 液で灌流した 場合,0.75 ± 0.15 × 108 個の肝実質細胞が得られ,これは対照群の 14.3 %に過ぎなかった(n = 3,P < 0.05,表 6)。CM free Hank’s 液を EC 液に変更しても,生細胞数はあまり向上しなかった(1.10 ± 0.15 × 108 (n = 3)。EC 液にヘパリンを加えた場合も 0.88 ± 0.19 × 108 (n = 3)とむしろ低下した。ところが,EC 液に CPD 液を添加した場合,2.15 ± 0.38 × 108個(n = 3)の肝実質細胞(対照群の 41.1 %)が得られた (n = 3,表 6)。これは EC 液にヘパリン(2 U/mL)を添加した場合の 2.5 倍近くの値であった。CPD 加改良 UW 液の場合,2.02 ± 0.69 × 108個肝 実質細胞を得られた。すなわち,CPD 加 EC 液の場合は,CM free Hank’s 液,EC 液またはヘパリン加 EC 液より,生細胞数は有意に多く得られるこ とを認めた。生細胞率においては,この条件において各グループは対照 群より有意に低下した(P < 0.05,表 7)。

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38 表 6.各実験グループの生細胞数と生細胞率 グループ 灌流液a) 生細胞数 x 10-8 対照群(Group1) に対する% 生細胞率 (%) 1 CM-free Hank’s 5.23 ± 0.88 100.0 82.4 ± 2.00 2 CM-free Hank’s 0.75 ± 0.15 14.3 60.0 ± 3.37 3 EC 1.10 ± 0.15 21.0 67.8 ± 12.66 4 EC + heparin 0.88 ± 0.19 16.8 59.9 ± 10.18 5 EC + CPD 2.15 ± 0.38 41.1 71.4 ± 9.09 6 改良 UW + CPD 2.02 ± 0.69 38.6 70.3 ± 10.79 7 CM-free Hank’s 0.82 ± 0.20 15.7 50.2 ± 4.40 8 EC 0.45 ± 0.14 8.6 51.3 ± 15.20 9 EC + heparin 0.47 ± 0.25 9.0 43.8 ± 8.14 10 EC + CPD 1.63 ± 0.31 31.2 67.5 ± 10.23 11 改良 UW + CPD 1.49 ± 0.56 28.5 61.0 ± 7.70

a) CM-free Hank’s; Ca2+, Mg2+ free Hank’s 液,EC; Euro-Collins 液,

CPD; citrate-phosphate-dextran 液,改良 UW; 改良 University of Wisconsin 液。

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39 表 7.生細胞数の統計処理結果 VS 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 グループ 1 ― ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 2 ** ― * 3 ** ― 4 ** ― * 5 ** * * ― 6 ** ― 7 ** ― * 8 ** ― 9 ** ― * 10 ** * * ― 11 ** ― VS 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 多重比較のボンフェローニの補正を行い,P < 0.05 を統計学的に有意と した(*; P < 0.05,**; P < 0.01)。

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40 60 分間温虚血処理を行った場合,CM free Hank’s 液で灌流すると, 肝実質生細胞の収量は 0.82 ± 0.20 × 108個に減尐した(n = 3,P < 0.05, 表 6,7)。EC 液では 0.45 ± 0.14 × 108 個となり(n = 3),それにヘ パリンを添加しても 0.47 ± 0.25 × 108 個(n = 4)だったが,CPD 液 添加の場合は 1.63 ± 0.31 × 108個の肝実質細胞を得られた。CPD 加改 良 UW 液の場合,1.49 ± 0.56 × 108個の肝実質細胞を得られた。生細 胞率は,各グループとも有意に対照群より減尐した(P < 0.05,表 6,7)。 しかしながら CPD 加 EC 液の場合は,CM free Hank’s 液,またはヘパリ ン加 EC 液の場合よりも上昇していた(67.5 ± 10.2 % vs 50.2 ± 4.4 % または 43.8 ± 8.1 %,P < 0.05,表 6,7)。すなわち,CPD 加 EC 液の場 合は質のよい肝細胞を得られることを認めた。 2)温虚血処理肝の灌流後肝臓の肉眼所見 温虚血処理として門脈と肝動脈を結紮すると直後から暗褐色となり, その後 30 または 60 分間に渡り,暗褐色を維持した。 30 分間の温虚血後に CM free Hank’s 液,CPD 加 EC 液および CPD 加改 良 UW 液で灌流した肝臓は,他の灌流液を用いた場合よりよく脱血された いた。さらに,肉眼所見で CPD 加 EC 液のほうが肝浮腫の程度が軽かった

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41 (図 2A~E)。 60 分間の温虚血処理後では,CPD 加 EC 液によって灌流した肝臓が最も 脱血がよく,浮腫の程度も他のグループより軽かった(図 2F~J)。 3)灌流液中赤血球数と肝細胞収量との相関関係 灌流肝細胞分離を行い,グラム毎に得られた生細胞数を肝細胞収量と した。灌流終了時点の灌流液に残留した赤血球数と肝細胞収量は有意な 逆相関関係を示した(n = 29,P < 0.01,図 3)。

(46)

42

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43

図 2.温虚血 30 分間と 60 分間を経た肝臓を灌流した所見

灌流液 Ca2+ Mg2+ free Hank’s(A,F),Euro-Collins 液(EC 液)(B,

G),ヘパリン加 EC 液(C,H),CPD 加 EC 液(D,I),CPD 加改良 UW 液(E, J)。温虚血 30 分間処理した肝臓の中では,A,D および E は B と C より, よく脱血されていた。特に D は他の肝臓より浮腫も軽度だった。温虚血 60 分間を経た肝臓の中では,I は他の肝臓より脱血がよく浮腫も軽度だ った。

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44 図 3.灌流を行った肝臓で,灌流液に残留した赤血球濃度と肝細胞収量の 相関関係 非温虚血は青三角形,温虚血 30 分間は茶菱形,温虚血 60 分間は赤円 形。灌流終了時点の灌流液に残留した赤血球数と肝細胞収量は有意な逆 相関関係を示した。 Y = - 0.5265 ln(X) + 3.2449 R = - 0.8437 P < 0.01 0 1 2 3 4 0 1 10 100 1,000 H ep at o cy te × 10 -7 / g RBC × 10-4 / mL

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45 考察 本研究では,灌流した肝臓の所見と細胞分離した生細胞数により,ヘ パリンと比べ,CPD 液のほうが,より効果的に温虚血肝の末梢循環の回復 をもたらすであろうことがわかった。CPD 液は 1950 年代に開発され,輸 血用血液に加える抗血液凝固剤であり,血球の保存に優れている。作用 はカルシウムをキレートし血液凝固を阻止することによる(25, 29)。 ヘパリンは 1916 年に発見された多糖類で,作用はアンチトロンビンの作 用を増強し,トロンビンの作用を抑制することにより,血液凝固を防止 する。(25)。しかし,ヘパリンは酵素阻害,脂質結合,ウイルスエンベ ロープ蛋白との結合,および成長因子に対しても様々な作用を持ってい る(10)。それ故,ヘパリンは必ずしも抗凝固作用だけを強く有するもの ではない。図 2 のマクロ所見によると温虚血肝の初期灌流液にヘパリン を添加しても脱血効果を向上することはなく,むしろ 60 分温虚血では無 添加の EC 液灌流よりも悪くなったようにも見える(図 2,G vs H)。これ はヘパリンの持つ抗凝固以外の作用によることも考えられる。 本研究では,前章の結果に続き,EC 液に CPD 液を添加した灌流液は他 の液よりも,生細胞数の収率が優れており,60 分間の温虚血処理を行っ た後も,対照の 31.2%の生肝実質細胞を得ることができた。これに対し,

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46 EC 液単独の初期灌流では 8.6%,へパリン加 EC 液で 9.0%しか得ることが できなかった。肝灌流におけるクエン酸の有効性は Tamaki らも報告して いる(68)が,図らずも今回,細胞分離効率の面からもクエン酸の存在 が有利に働くことがわかった。 ここで,ベースとなる液について考えてみたい。EC 液は 10 mmol/L ナ トリウムと 115 mmol/L カリウムを含有する細胞内液型灌流液である(46)。 一方,改良 UW 液は細胞外液型である。興味深いことに,同じく CPD を加 えた改良 UW 液は,あまりよい灌流効果が見られなかった。クエン酸を細 胞内に運ぶ蛋白質は同時にナトリウムも運んでいる(47)。こうして流入 したクエン酸は,TCA サイクルの気質として細胞内 ATP および NADH の産 生に働く可能性がある。肝細胞分離の良否は,脱血の程度と相関すると 経験的に語られてきた。脈管系微小循環の健常性が保たれている肝臓で は,脱血も速やかに行われ,それに続く酵素消化も円滑に進むものと判 断される。今回のデータにより,灌流液に残留した赤血球数と酵素消化 に逆相関関係があることが定量的に示された。すなわち,灌流が十分に なされず,肝内に残留する赤血球が多いと,残留する血液成分も多いと 考えられ,それが妨害してコラゲナーゼ消化が効率的に行われないこと が考えられた。一方,このことは,残留した赤血球数,あるいはヘモグ

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47 ロビン量を見ることによって,その肝組織が細胞分離に適するか,ある いは肝臓移植に適するかも判断できる可能性がある。 本実験において CPD 加 EC 液による灌流は温虚血肝の微小循環の回復に 効果があると考えられた。そして,肝細胞分離では,コラゲナーゼによ る消化効率が向上し,生細胞数の上昇も認めた。今後,CPD 加 EC 液の灌 流は,移植可能限界付近のマージナルなドナー肝の初期灌流にも役立つ 可能性が考えられる。

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48 小括 30 分から 60 分という長時間温虚血肝臓を使用し,CM free Hank’s 液, EC 液,改良 UW 液と抗凝固剤である CPD 液とヘパリンを組み合わせ,肝細 胞分離効率の向上を目指した。その結果,CPD 加 EC 液による灌流はそれ に続くコラゲナーゼ灌流による肝細胞分離効率を高めることが明らかと なった。抗血液凝固剤のヘパリンと CPD 液を比べると,温虚血肝臓の微 小循環回復効果はヘパリンには認められなかった。一方,クエン酸を含 有する CPD 液は,きわめて優れた脱血効果を有し,生肝実質細胞の収量 増加に寄与した。脱血と肝細胞収量の関係は,赤血球数と肝細胞分離数 を比較し,統計的有意差をもって相関することが示された。残留赤血球 数は簡単かつ速やかな評価指標として,灌流の良否判定に役立つと考え られた。

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49 第三章 ラット実験的非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルの病態評価 -新たな肝細胞ソースとしての脂肪肝利用への実験系構築- 序文 非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis,NASH)は 1980 年に発表された比較的新らしい病態概念で,近年,生活習慣病とし て注目を集めている(56,75)。生活習慣や食習慣などの変化が,NASH の 発生率を高めていると考えられる。NASH は,アルコール摂取に起因しな い脂肪肝に始まり,肝炎および肝硬変を生じる非アルコール性脂肪肝病 (nonalcoholic fatty liver disease, NALFD)の一種である(40,41, 48,59,77)。NASH の原因は,a)インスリン抵抗性または肥満から生じ る脂肪肝,b)炎症,酸化ストレス,脂肪過酸化または炎症性サイトカイ ンによる肝炎の発生という two hit 仮説が有力である(14)。病理学的に は,バルーニング肝細胞変性,炎症細胞の多形核白血球浸入および血管 や細胞周囲の線維化(35,41,75)で定義される。しかしながら発症メ カニズムはまだ不明なことが多く,また治療法開発のためにも実験モデ ルのの確立が必要である。 今まで,さまざまな実験動物 NASH モデルが発表された(22,36)。作

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50 成方法は,遺伝的変異動物,高脂肪食またはメチオニンとコリン欠乏食 の給与などである(5,15,45,78)。しかし,重度の線維化を伴う進行 性の NASH モデルはまだ実現されていない。 streptozotocin(STZ)は,実験動物におけるⅠ型糖尿病モデルの作成 に有効な物質である。そのメカニズムは用量依存的に膵島を損傷するも のだが,経過とともにインスリン抵抗性のⅡ型糖尿病様病態も生じる(9, 32)。一方,高脂肪食摂餌でⅡ型糖尿病の作成に成功したという報告もあ る(4,54,62,67,77)。Ⅱ型糖尿病は NASH の強力な背景因子であるこ とから,STZ および高脂肪食を用い,ラットの NASH モデルを作成するこ ととした。本研究ではこうして作出した NASH モデルがヒトの NASH 病態 といかに類似性を有するかを調べ,本モデルが脂肪肝マージナルドナー からの移植用細胞採取の実験系として妥当かを検討した。

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材料および方法 1)供試動物

供試動物には,specific pathogen-free 妊娠 Sprague Dawley(SD)ラ ットを用いた。本実験は国立成育医療研究センター実験動物委員会の承 認を受けて行なった(承認番号 第 2011-005 号)。動物は実験動物専用 の飼育施設で,12 時間の昼夜サイクルのもと,標準ラット飼料と水を十 分に与えて飼育した。 2)試薬と餌食 STZ はシグマアルドリッチ(S0130-500MG,Sigma-Aldrich Co. LLC. St. Louis,MO,USA)から購入した。Indocyanine green(ICG,インドシア ニングリーン)は第一三共ヘルスケア株式会社(東京,日本)から購入 した。高脂肪食は Research Diets 社(D12492,New Brunswick,NJ,USA) から購入した。この高脂肪食は 60 %のカロリーが脂肪由来である。

3)NASH ラットの作成

妊娠 SD ラットに妊娠 16 日目から,分娩後哺乳期の 4 週まで,高脂肪 食を摂餌させ,適切な水を提供した。出産後 2 日齢の新生仔背部皮下に

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52 STZ(180,200,256 mg/kg)を投与し,4 週齢まで哺乳させ,離乳後に, 前述の高脂肪食を摂餌させた。 4)ラットの疾患状態の推定 STZ を投与後の生存率,体重,血糖値,血中アラニンアミノトランスフ ェラーゼ(ALT),血中ヒアルロン酸を計測した。血液 150 µL を尾静脈 から採血し,1,000 G で 5 分間,遠心を行い,血清を採集した。血糖値 および ALT は,自動分析機(DRI-CHEM 3500i,富士フイルム,東京,日 本)で計測した。ヒアルロン酸は,ELISA キット(三菱化学メディエン ス株式会社,東京,日本)で計測した。 5)胆汁排泄機能の評価. 供試動物(12-16 週齢)をイソフルラン(Mylan,Canonsburg,USA)1 ~ 2 %で麻酔し,心拍数は心電図(M1166A,Model 66S,アジレント・テク ノロジーズ,Santa Clara,CA,USA)で計測した。腹部を正中切開後に, 後大静脈を分離した。麻酔の深度を調節し,心拍数を 180–220 beat/min に維持した。心拍数が安定した後に,ブランクの血液(400 µL)を採取 し,次いで 250 µg/kg の ICG を後大静脈に注射した。そして,1,2.5,5,

(57)

53 10 及び 15 分後の血液 400 µL を後大静脈から採取した。血液は室温で十 分に凝固させた後,小型微量遠心機(PMC-060,株式会社トミー精工,東 京,日本)で遠心し,血清を分離した。 胆汁採取は,供試動物(12-16 週齢)をイソフルラン 1 ~ 2 %の麻酔 下で深度を調節し心拍数を 180–220 beat/min に維持しながら腹部正中切 開を行った。胆管にカニュレーション(24 G,SR-FF2419,テルモ,東京, 日本)後,ブランクの胆汁を採取した。次いで 250 µg/kg の ICG(概ね 200g のラットで 100µL)を後大静脈に注射した後,15 分後までは 2.5 分 刻みで(0~2.5 分,2.5~5 分,5~7.5 分,7.5~10 分,10~12.5 分,12.5 ~15),15 分以降 30 分までは 5 分間,30 分以降 60 分までは 10 分間に排 泄される胆汁を分取した。胆汁量は微量天秤(AL204,メトラー・トレド 株式会社,東京,日本)で計測した。

血清および胆汁の ICG 濃度には,分光光度計(DU 640,Beckman Coulter Inc.,Brea,CA,USA)にて 805 nm における吸光度を計測した。ICG の濃 度を以下の計算式で計算した(37)。 ICG 濃度(µg/mL)= OD at 805nm ×106 204,000 204,000;ICG のモル吸光係数

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54 6)組織学的検討 20 %中性フォルマリンで組織を固定し,薄切後,マッソン・トリクロ ーム染色を行った。 7)統計処理 統計ソフトウェア SPSS V.21(IBM,Armonk,NY,USA)を用い,統計処 理法分散分析(ANOVA)を行い,Fisher’s LSD 法で検定した。各値は mean ± SD にて表示した。P < 0.05 を統計学的に有意とした。

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55 結果 1)生存率および体重 STZ を投与後に一部の新生仔は死亡したが,離乳後においては,残りの 新生仔は生存した。生存率は STZ 180 mg/kg 投与で 25.7 %(44/127),200 mg/kg 投与で 22.4 %(57/197),256 mg/kg 投与で 19.4 %(7/29)であっ た(表 8)。生存に性差があり,雄の生存個体が尐ない傾向が見られた。 体重に関しては,2 日齢の NASH ラットの体重は,正常 SD ラットより 26.3 % 重かった(8.3 ± 0.5 g vs 6.6 ± 0.7 g,P < 0.01)が,8 から 12 週 齢の NASH ラットの体重は正常 SD ラットより約 20 %前後軽かった(P < 0.01, 図 4,なお,次項の血液生化学値で雄の方が NASH 病態を強く示すことが 分かり,雄に注目して実験を進めた。そのため図 4 のデータは雄のみに なっている。)。 2)血液生化学値 血糖値は,NASH ラットは有意に正常 SD ラットより高かった(382 ± 117 mg/dL vs 164 ± 21 mg/dL,P < 0.01,表 9)。NASH ラットは糖尿病に伴 う多尿も認めた。 ALT も,NASH ラットは正常 SD ラットより,有意に高かった(61.7 ± 32.4 IU/L vs 36.2 ± 7.8 IU/L,P < 0.05,表 9)。

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56 ヒアルロン酸も,NASH ラットは有意に高かった(71.5 ± 45.7 mg/dL vs 19.6 ± 6.2 mg/dL,P < 0.01,表 9)。 表 8.streptozotocin(STZ) の投薬後 4 週齢時非アルコール性脂肪肝炎 (NASH)ラットの生存率 STZ 注射量a) 180 mg/kg 200 mg/kg 256 mg/kg 生存率 25.7 % 22.4 % 19.4 % 生存/死亡b) 44/127 57/197 7/29 a) 2 日齢に皮下注射. b) 哺乳時期の生存数と死亡数.

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57 表 9.NASH ラット 12 週齢時の血液生化学値 Group Glucose Alanine aminotransferase Hyaluronic acid (n) (mg/dL) (IU/L) (mg/dL) Control (12)a) 164 ± 21 36.2 ± 7.8 19.6 ± 6.2 NASH (15) 382 ± 117**b) 61.7 ± 32.4* 71.5 ± 45.7** Male (8) 349 ± 138** 71.0 ± 32.9* 92.0 ± 53.9** Female (7) 419 ± 83** 51.1 ± 30.6 48.1 ± 16.8** a) 12 週齢時の正常 Sprague Dawley(SD)ラット(雄 8 匹と雌 4 匹)。 正 常ラットにおいて性別による有意差は認めなかった。 b) Fisher’s PLSD 検定を行い,3 項目すべてにおいて正常 SD ラット (control)と NASH の間に有意差(*; P < 0.05,**; P < 0.01)を認 めた。ただし NASH 群の雄雌間には有意差はなかった。

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58

図 4.8 週齢から 12 週齢時のラットの体重変化

NASH ラットは赤実線(n = 8,雄)で,正常 Sprague Dawley ラット は青破線(n = 8,雄)で表示した。各点は mean ± SD で表示,有 意差の標示は P < 0.01。NASH ラットには,2 日齢時に 200 mg/kg の STZ を投与し,高脂肪食を与えた。なお,出生直後(2 日齢)の体重 は NASH ラット 8.3 ± 0.5 g(n = 146),正常 SD ラット 6.6 ± 0.7 g,(n = 12)で,NASH ラットのほうが 26.3 %重かった(P < 0.01)。

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59 NASH ラットの雄と雌に関しては,上記項目において有意差が見られな かった(表 9)。しかしながら雄では上記 3 項目とも正常群と有意差があ ったが,雌の場合は ALT では有意差がなかった。 3)病理所見 肉眼所見では,NASH ラットの肝臓は色調が若干白く,典型的な脂肪肝, 肝硬変的様相を呈していた(図 5A-C)。表面は網目状のパターンを示し, 線維化や偽小葉の存在を示した。写真は 200 mg/kgSTZ 投薬群で,肝硬変 は軽度から重度を示した。図 5B のような中度肝硬変の肝臓が多く見られ た。 組織所見では Brunt のいうバルーニング変性を認め(図 5D),脂肪変性 も認めた(図 5D,6E)。門脈域で炎症性細胞浸潤を認めた(図 5E)。重度 の血管周囲線維化および細胞周囲線維化が観察され,偽小葉を示した(図 5E,F)。 4)胆汁排泄能 NASH ラットでは ICG の血中消失の遅延も起こり,半減期は対照群 2.72 ± 0.72 分に対し NASH 群 5.04 ± 2.14 分であった(n = 6, P < 0.05, 図 6)。ICG 血中消失率も対照群 13.8 %/min に対し,NASH 群 25.5 %/min と延長を認めた。以上より胆汁輸送において NASH ラットには障害が発生

(64)

60 していることが判明した。 胆汁中への排泄についても図 7A に示すように ICG 濃度は,NASH モデル ラットでは正常 SD ラットより低下していた。胆汁量は正常 SD ラットの 8.09 ± 0.98 mg/min に対し,NASH モデルラットは,4.32 ± 0.83 に減 尐し,胆汁の産生量自体も低下していた(P < 0.05,図 7B)。

(65)

61

図 5.非アルコール性脂肪肝炎(NASH)ラット肝の肉眼所見および組織像 NASH ラット肝の肉眼所見(A-C)および病理組織学的所見(D-F)。こ こに示すすべての NASH ラットは 200 mg/kg Streptozotocin 投与で 高脂肪食を摂食させ,8 週齢時に検体を採取したもの。肉眼所見では

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62 軽度(A),中等度(B),重度(C)の肝硬変を示したものを取り上げ た。病理組織所見では,バルーニング変性(黒矢印,D),大泡脂肪 変性(白矢印,D),炎症細胞の浸入(黒矢頭,E,F),血管周囲線維 化および細胞周囲線維化(白矢頭,E と F)を示した。染色はマッソ ントリクローム染色を行った。C;中心静脈,P;門脈,C の bar;1 cm, F の bar;25 µm。

(67)

63 図 6.時間における血清中 ICG 濃度 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)ラットは赤実線(n = 6)で,正常 Sprague Dawley(SD)ラットは青破線(n = 6)で表示した。SD 値は バーで表し,標示は統計により有意差(P < 0.05)を認めた。ICG の 半減期は,スロープで計算し,NASH ラットは正常 SD ラットより有意 な遅延を認めた(5.04 ± 2.1 min vs 2.72 ± 0.7 min; P < 0.05)。

(68)

64

図 7.非アルコール性脂肪肝炎(NASH)ラットおよび正常 Sprague Dawley (SD)ラットの,時間における胆汁中 ICG 濃度および胆汁排出量

(69)

65 値(n = 5),青破線は正常 SD ラットの平均値(n = 3)を表した。(A) には,赤四角形,赤円形,赤三角形,赤ダイヤモンド形は各 NASH ラ ットを表した(n = 5)。青四角枠,青円形枠,青三角形枠は各正常 SD ラットを表した(n = 3)。NASH ラットの ICG 濃度増加の平均値は 比較的遅かった。(B)では,NASH ラットの胆汁排出平均値は正常 SD ラットより,有意な減尐を認めた(4.32 ± 0.83 mg/min vs 7.66 ± 1.05 mg/min; P < 0.01)。

(70)

66 考察 本研究において作出された NASH モデルラットは,ヒトの NASH 症例で 観察された臨床状態のほぼ全ての病態を示した(35,41,72,75)。ラッ トで観察されたこれらの病態がインスリン抵抗性に誘導されたか否かは 判明できないが,有意に増加した血糖値は,糖尿病の指標であった。肝 細胞損傷のマーカーとした ALT および線維化指標のヒアルロン酸の動態 と病理組織学的所見から,このラットモデルは NASH 病態をよく再現して いると考えられた(5)。 NASH モデルラットの ALT の上昇は,薬剤性あるいは肝切除による肝障 害モデルほどは顕著ではなかった。これは,肝障害が徐々に進行してい るためと思われる。一方,ヒアルロン酸の上昇と病理組織学的に線維化 の亢進が確認された。我々のグループの研究によるとこのモデルでは脂 質過酸化の指標となるマロンジアルデヒド(malondialdehyde)の上昇が あり,酸化ストレスの進行が示唆された(20)。 今回の研究では統計学的な有意差は見られなかったものの,雌よりも 雄の方で NASH が若干進行しているように思われた。雄では血糖値,ALT, ヒアルロン酸すべてが正常ラットに対し有意に高かったが,雌の ALT 上 昇は有意ではなかったことから脂肪肝炎という見地からは雄の方がモデ

(71)

67 ルとして適切と考えられた。臨床的には,エストロゲン依存の遺伝子の 違いで男性は NAFLD と NASH の発生率が高いと報告されており,本研究で も同様な機序が働いたものと考えている(3,17,55)。さらにインスリ ンに対する感受性に性差関連の報告もある(71)。例数を増すことによっ てさらに性差が明らかになる可能性は高く,本 NASH モデルは性差の観点 からも興味深い実験系となる可能性が示唆された。 胆汁輸送に関する実験では,予備実験時のばらつきを克服するため心 拍数を 180–220 beat/min に維持することとし,良好な再現性を得られる ようになった。この値はラットの正常心拍数(260–400 beat/min)より 若干低いが,正常 SD ラットおよび NASH ラットともに 60 分間に及ぶ実験 の間呼吸は安定し,検体を採取することができた。ヒトおよびイヌを対 象とした研究で,呼気終末陽圧は血流への影響があること,イソフルラ ン麻酔下で心拍出量が減尐することが報告されている(73,74)。従って 今回の場合も心拍数を一定にしたことが実験結果の安定につながったも のと考えられた。 胆汁中 ICG の上昇パターンには NASH ラットで遅延が見られた。ピーク 到達時間は,NASH ラットでは約 30 分と正常 SD ラットに比べ,12 分の遅 れが見られた(図 7A)。ヒトの報告は尐ないが,胆嚢切除患者の平均値

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68 120 min(n = 2)であり,今回のデータの方が早かった(12)。胆汁中の ICG 排出の遅延および胆汁分泌の減尐は,肝の輸送機能障害のあることも よく示すものであった。 本実験の NASH ラットモデルは STZ の投薬および高脂肪食の摂食により, 人の NASH 病態を再現し,ほぼ NASH 病態すべての特徴を示した。また, 本モデルは,STZ 投与と高脂肪食という 2 つの因子で誘導することから NASH の発症仮説である "2 ヒット説"に従い,そのメカニズムを解明する よいモデルであると考えられた。そして,臓器移植のマージナルドナー 肝の利用に関する研究に役立つことが期待される。今後,NASH 肝からの 細胞分離における適切な灌流液の研究に結びつけたいと考えている。

表 1 .各実験グループの条件

参照

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