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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

    リ ー   チ ヨ ー ン   ウ エ ン 博 士 ( 水 産 科 学 ) LeeChoonWeng

     学位論文題名

    Bacterial production and biomasslntheSubarCtiC COaStalWaterS _ theroleofbaCteriaintheCarbonCyCle .      (亜寒帯沿岸域における従属栄養バクテリアの生産量と      生物量に関する研究一炭素循環におけるその役 割)

学位論文内容の要旨

  海 洋にお ける 従属 栄養 バク テリ アは これ まで 分解 者と して 位置づ けら れて きた が ,近 年従属 栄養 バク テリ アは,単なる分解者ではなく,溶存有機物を利用するこ と によ る自ら の生 産量 がそ れを捕食する原生動物を介して高次栄養段階へとエネル ギ ー輸 送され るこ とか ら生 産者であるとの認識が深まり,この食物網は微生物食物 網 と呼 ばれて いる .本 研究 は,亜寒帯沿岸域である噴火湾においてこの従属栄養バ ク テリ アの現 存量 と生 産量 の時空間変化を測定することにより,亜寒帯生態系にお け る従 属栄養 バク テリ アの 生産者としての役割とその変動をもたらす要因について 明 らか にし, さら には 標泳 区生態系の炭素循環におけるパクテリア生産量の役割を 解 明 す る こ と を 目 的 と し た . 調 査 は 噴 火 湾 の 中 央 部Stn30く42°16.2'N, 140°36.0.E,水 深92m)に おい て,1998年3月 から1999年12月までおこなわれた.

バクテリア現存量とバクテリア生産量に影響を与える要因

  パクテリア現存量は2.6から9.1x10 5cells ml―1であり一年を通して変動が小さく 安 定 し て い た (1998年 お よ び1999年 :CV〓30% ;1999年の み;CV=20%) .こ の バクテ リア 現存 量の変動は植物プランクトンの生物量の指標になるク口ロフィル a (Chlめ 濃 度 の 変 動 (1998年 お よ び1999年 :CV〓180% ;1999年 の み :CV〓 130% ) や バ ク テ リ ア を 捕食 する 従属 栄養 性微 小鞭 毛虫(HNF)量の 変動(1999年:

CV=90% )と 比べ て小 さか った .バ クテ リア 生産 量は 放射 性同位 元素 でラ ベルし た チミジ ンの 取り 込み 速度 から 求め られ た. バク テリ ア生 産量は ,0.1〜22.9ルg Cl一 ̄d−1の範囲を変動し,3月に最高値,12月に最低値を示した.全期間を通して

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のバクテ リア生産 量の平均 値(土SE)は4.9土1.3ルgCl―1 d‑l'であった.また全水 柱で の そ の積 算 値は0.04〜0.79gCm―ldー1の範囲 を変動し た.バク テリアの 生産 量の 変 動(1999年:CV=100% ) はバ クテリア 現存量の それと比 ベ大きか った.バ クテ リ ア の成 長 速度 は0.001〜0.107h―1の範囲 を変動し ,平均値 (土SE)は0.026 土0.007 h‑l'で あった. バクテリ アの平均世 代交代時 間は1.6日で あった. また全 バク テ リア生 産に対す る付着バク テリアの 寄与率は16〜93%,平 均値(土SE)は54 土12%であった・

  全 調 査期間を 春季植物 プランクト ンブルー ムを挟ん だ前期(1999年2月から5月 ) と比 較 的 植物 ブ ラン ク ト ン現 存 量が 低くか つ一定し ている後 期(1999年6月か ら12 月) の2つの期 間に分け て,バクテ リア現存 量と生産 量に影響 を与える 要因につ い て考察し た.一般 にバクテ リア生産 は基礎生産 者である 植物プランクトンからの有 機物質に よって支 えられて いるため ,長期間の 比較にお いては,バクテリア生産量 とChla濃 度 の 間に は 良い 正 の 相関 関係 があるこ とが報告 されてい る.本研 究にお いて も , 両期 間 とも バ ク テリ ア 生産 量は,Chla濃度と正 の相関が 認められ た(前 期:R2= 0.24,n=ニ35,pく0.025;後期:R2〓 0.07,n‑ニ49,pく0.05).また懸濁 態有 機 炭素濃 度(POC)との間 にも正の相 関関係が 認められ た(前期 :R2〓 0.30,n

= 35,pく0.001;後期:R2: 0.09,=―42,pく0.025).パクテリアの成長速度は,

後期であ る夏季か ら秋季に かけて水 温と有意な 正の相関 を示したが(R2= 0.26,n‑

30,pく0.01), 前期 に お ける 相 関 は有 意 では な か った(R2: 0.01,nニニニ21, pくO.25),一方 で,バク テリア生産 量とHNF現存 量が有意 な正の相 関を示し たこ とから(前期:R2〓 0.18,n=ニ20,pく0.05;後期:R2: 0.20,n=ニ28,pく0.01), HNFが バ ク テリ ア を捕 食 し てい る こと が 示 唆さ れ た .ま た 後期 で は前期 に比べて HNF現 存 量 が低 か った . こ のこ と は, こ の 時期 最 大 量を 示 すマ イ クロお よびネッ ト 動 物 プ ラ ン ク ト ン に よ るHNFの 捕 食 の 影 響 を 反映 し て いた も のと 思 わ れる .   以 上 のこ と から バ ク テリ ア の 成長 速度及び 生産量は ,水温と 植物プラ ンクトン からの溶 存有機物 質の供給 に依存し て変動する が,バク テリア現存量についてはパ クテ リ ア を捕 食 する 従 属 栄養 性 微小 鞭 毛 虫(HNF)によ る 捕食 圧 に より比較 的一定 したパクテリア現存量が維持されていたと結論づけられた.

溶存酸素 の変化に 及ぽすパ クテリア呼 吸の寄与

  夏季の底 層水中で は,成層 化により表 層からの 溶存酸素 供給が弱 まり底層付近

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での 有機 物の 分解 に伴 い溶 存酸 素濃度は低下した.しかし、秋季に入ると鉛直混合 が始 まり ,津 軽暖 流水 も流 入す ることにより底層の溶存酸素濃度は増加した,夏季 にお ける 現場 の溶 存酸 素量 の変 化か ら算 出し た溶 存酸素 減少 速度は,1998年3月か ら8月 ま で の 底層(80m以深 )に おい て1.8土1.9 mmol 02 m‑2d―1(F〓39.1,df: 5,pく0.005)であり,1999年4月から7月までは13.6土1.2rrlTiol 02 111・2d―1(F= 139.6,df =3,pく0.01)で あっ た.一方,実験室内で試水を培養することにより見 積 も ら れ た パ ク テ リ ア 呼 吸量 (BR) は ,1999年4月 か ら7月 の10mに お い て0.6〜 9.3ルM02d―1の 範 囲 で あ り90mに お い て は0.8〜5.0ルM02d―1の 範 囲 で 変 動 し た .3月 か ら8月 ま で の80〜90m層 で の パ ク テ リ ア 呼 吸 量 の 積 算 値 は ,2500 Ifflriol 02 111―2 period―1で,同時期の酸素減少速度の積算値1100 rrirrciol02m・2 period‑lより も高 い値 を示 した .このことは夏季の底層における溶存酸素減少は,

パク テリ アの 呼吸 によ って 説明 されることが明らかとなった.また現場での低い溶 存酸素消費量は,拡散と移流による酸素供給の影響を反映しているものと思われた.

バ クテ リア の炭 素要 求量

  1999年 の 噴 火 湾 に お け る 水 柱 積 算 年 間パ ク テ リ ア 生 産量は140gCm―2yr一1で あ った .こ の値 は噴火湾で以前報告された基礎生産量の値よりも高い値を示してい た .そ のた めバ クテ リア生 産量 と基 礎生 産量 の比は1以上であり,噴火湾の炭素循 環 にお ける バク テリアと微生物食物網の重要性が示唆された.このバクテリア生産 量 は呼 吸に よる 炭素の損失を含んでいないため,培養により求めた呼吸量とパクテ リ ア 生 産 量 か ら バ ク テ リ ア 増 殖 効 率(BGE)を 算 出 し た . 水 深10mお よ び90mの BGEは そ れ ぞれ1.6〜17.2% ,1.4〜23.6% の範 囲を 変動 した ,BGEの平 均値 (士 SE)は10mに お い て8.4土2.0% ,90mに お い て8.1土3.3% で あ っ た . し か し こ の BGEの 値 は0.7ルm以 下 の 画分 から 得ら れた 値で ,遊 離バ クテリ ア( パク テリ オプ ラ ンク トン )の みを考慮しているが、バクテリア生産の平均54%が付着バクテリア に よ っ て 得 ら れ た 事 を 考慮 に入れ るとBGEは過 少評 価さ れ,こ れよ り算 出さ れる 従 属栄 養バ クテ リア 炭素要 求量(BCD)は ,逆 に過大評価となる可能性がある.そこ で 、 こ れ ま で 報 告 さ れ てい る海域 にお けるBGEの平 均値 の30% を用 いて 見積 もら れ た 噴 火 湾 に お け るBCDは ,470gCm−2yr―1で あ っ た. このBCDは 植物 プラ ンク ト ン の 総 基 礎 生 産 量(1999年 :340gCm‑2yrー1; 植 物 プ ランク トン の細 胞外 代謝 を50% と仮 定) の値を上回り,バクテリアが利用できる炭素の総量が植物プランク

1349 ‑

(4)

トンによる基礎生産によるものだとすると,本研究で得られたBCD を満たすには

不充分である.この不足分は河川から供給される陸起源のDOM と微生物食物網内

で循環しているDOM が担っていると推論された,

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学位 論文審査の要旨 主 査    教 授    松 永 勝 彦 副 査    教 授    角 皆 静 男 副 査    教 授    久 万 健 志 副査    助教授    簗田   満 副査    助教授    工藤   勲

     学位論文題名

    Bacterial production and biomasslntheSubarCtiC COaStalWaterS ‐ theroleofbaCteriaintheCarbonCyCle ‐      (亜寒帯沿岸域における従属栄養バクテリアの生産量と      生物 量に関する研究一炭素循環におけるその役割)

  本 研究 は, 亜寒 帯沿 岸域 であ る噴 火湾に おい て従 属栄 養バ クテリアの現存量と 生産 量の 時空 間変 化を 測定 する こと により ,亜 寒帯 生態 系に おける従属栄養バク テリ アの 生産 者と して の役 割と その 変動を もた らす 要因 につ いて明らかにし,さ らに は標 泳区 生態 系の 炭素 循環 にお けるパ クテ リア 生産 量の 役割を解明すること を 目 的 と し て行 われ た. 調査は 噴火 湾に おい て1998年3月か ら1999年12月 まで お こなわれた.

  パクテリア現存量は,2.6から9.1x10 5cells ml−1であり一年を通して変動が小さ く安 定し てい た. この 変動 は植 物プ ランク トン の生 物量 の指 標になるク口ロフイ ルa(Chlあ濃 度や バク テリ アを 捕食する従属栄養性微小鞭毛虫(HNF)量の変動と 比べ て小 さか った .放 射性 同位 元素 でラベ ルさ れた チミ ジン の取り込み速度から 求められたバクテリア生産量は,0.1〜22.9ルgCl−ld−1の範囲を変動し,3月に最 高値 ,12月に 最低 値を 示し た. バク テリア の生 産量 の変 動は パクテリア現存量の それ と比 ベ大 きか った .ま た全 バク テリア 生産 に対 する 付着 バクテリアの寄与率 は16〜93%で あっ た. 全調 査期 間を 春季植 物プ ラン クト ンプ ルームを挾んだ前期

(2月から5月)と比較的植物プランクトン現存量が低くかつ一定している後期(6月か ら12月) の2つ の期 間に 分け て, バクテリア現存量と生産量に影響を与える要因に

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ついて考察した,バクテリア生産量は,両期間ともChla濃度と正の相関が認めら れた.このことはバクテリア生産は基礎生産者である植物プランクトンからの有 機物質によって支えられていることが示唆された.パクテ1」ア生産量は,後期に 水温と有意な正の相関を示したが,前期においての相関は有意ではなかった.一 方で, パクテリア 生産量とHNF現存量が有意な正の相関を示したことから,HNF がバクテリアを捕食していることが示唆された.

  以上のことからパクテリアの成長速度及び生産量は,水温と植物プランクトン からの溶存有機物質の供給に依存して変動するが,バクテリア現存量については バクテリアを捕食する従属栄養性微小鞭毛虫(HNF)による捕食圧により比較的一 定 し た バ ク テ リ ア 現 存 量 が 維 持 さ れ て い た と 結 論 づ け ら れ た .   夏季の底層水中では,成層化により表層からの溶存酸素供給が弱まり底層付近 での有機物の分解に伴い溶存酸素濃度は低下した.実験室内で見積もられたバク テリア呼吸量(BR)の積算値は,2500rrvciol 02m−2period‑1`で,同時期の現場 の酸素減少速度の積算値1100 rrrrriol 02m―2period‑1よりも高い値を示した.この ことから夏季の底層における溶存酸素減少は,バクテリアの呼吸によって説明さ れることが明らかとなった・

  噴火湾における水柱積算年間バクテリア生産量は140gCmー2 yT‑l丶一であった.こ の値は同時に測定された基礎生産量(170gCm―2yt・1)の値に匹敵した.このこ とから噴火湾の炭素循環におけるバクテリアと微生物食物網の重要性が示唆され た.バクテリア呼吸量と生産量から算出されたバクテリア増殖効率(BGE)は、水深 10mおよび90mでそれぞれ1.6〜17.2%,1.4〜23.6%の範囲を変動した.BGEの平 均値(土SE)は10mにおいて8.4士2.0%、90mにおいて8.1土3.3%であった.この BGEの値は浮遊バクテリア(バクテリオプランク卜ン)のみを考慮しているが、バ クテリア生産の平均54%が付着バクテリアによって得られた事を考慮に入れると BGEは 過少評価さ れ,これより算出される従属栄養バクテリア炭素要求量(BCD) は,逆に過大評価となる可能性がある.そこで、これまで報告されているBGEの 平均値の30%を用いて見積もられた噴火湾におけるパクテリア炭素要求量(BCD)は,

470gCm一2 yr−1であった. この値は植 物プランク トンの総基礎生産量(340gC m−2yrー1;植物プランクトンの細胞外代謝を50%と仮定)の値を上回り,バクテリ アが利用できる炭素の総量が植物プランクトンによる基礎生産によるものだとす ると,本研究で得られたBCDを満たすには不充分である.この不足分は河川から

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供給される陸起源のDOM と微生物食物網内で循環しているDOM が担っていると 推論された.

    

よって、審査員一同は申請者が博士(水産科学)の学位を授与される資格の

あるものと判定した.

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