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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

     博士 (農 学) 潘 学 位 論 文 題 名

ルーメン内飼料片への微生物付着および 微生物由来の繊維質分解酵素活性に影響する要因

学位論文内容の要旨

  反芻家畜は、咀嚼、反芻活動およびルーメンに共生している徽生物の発酵をとお して粗飼料(主に繊維貫)を分解利用している。しかし、反芻家畜によって摂取され た繊維質へのルーメン微生物の付着、その徽生物のもっている繊維質分解酵素の 発現がどのような要因の影響を受けているかに関しては十分に解明されていない。

それで本論文では、飼料片へのルーメン微生物の付着とそれに由来する繊維質分 解酵素の活性との関連、これらが飼料片の物理的性状および栄養素(特に、窒素 源)供給によってどのような影響を受けるかを検討したものであり、その内容の要旨 は以下のとおりである。

1.飼料片に付着する微生物量と繊維質分解酵素活性の動態

  種々の粒度の飼料片における付着細菌およびプロ卜ゾアの量とそれに由来する 繊維質分解酵素活性の経時的変化を検討し、飼料片に付着する細菌量はプロ卜ゾ ア量より多く、また、飼料給与後の早い時間では、飼料片に付着する細菌およびプ ロトゾアの量は増加するが、徽生物由来の繊維質分解酵素の全活性(飼料片重量 あたり)および比活性(徹生物タンパク質あたり)は低く、活性の最大値は遅い時間 に観察され、徹生物量と酵素活性の発現とは同調していないとことを見出した。粒 度 別飼 料片 に付着 する 微生 物由 来の 繊維貫分解酵素の活性は、飼料給与後の早 い 時間 帯では小さい粒度の方に、遅い時間帯では分解可能なNDFを多く含有して い る大 飼料 片の方 に高 い値 が観 察さ れ、繊維貫分解酵素活性は飼料片の物理的 および化学的な特性、ルーメン内pH、付着する徽生物の増殖ステージなどが影響 することが示唆された。

2.飼 料片 に付着 する 徽生 物量 およ び繊 維質 分解 酵素 活性 に及ほす咀嚼の影響   徹生 物付 着お よび 繊維 質分 解酵素活性は給与する飼料片の粒度によって影響 を受けることが観察され、飼料片粒度に影響する反芻家畜の咀嚼が飼料片への繊 維 質分 解菌 の付 着お よび 繊維 貫分解酵素の活性に与える影響を検討するために ニつのin  situ実験を行った。実験1では、オーチャードグラス乾草の茎を10cmと 2cmの長さに切断および粗粉砕した後、食道カニューレを装着した去勢牛に給与 し、採食時の食塊を採取した。咀嚼されたこれらの3種類の食塊と2cmに切断した

(2)

茎(対照区)をメン羊のルーメン内でin situ培養し、咀嚼を受けた茎、特に、10cm長 に切断 後咀嚼を受 けた食塊に付着する徽生物由来の繊維質分解酵素活性が高く、

NDF分解速 度が速く、なた、lag timeが短く、NDF消失率が高かった。また、採食 時に咀 嚼された乾 草の茎を再粉砕し、反芻時の食塊を模擬した結果、反芻時の咀 嚼も繊維質分解を促進することが観察された。食塊の粒度分布、表面積、結晶度の 分析およびin situ培養した結果から、採食時および反芻時の咀嚼は飼料片の粒度 を減少し、表面積を拡大し、それによって、真菌およびルーメン内での主要な繊維 質分解菌であるFsuccznogenesの付着が多くなり、繊維質分解、特に、キシラナー ゼ活性が高くなり,ニ゛懺維質分解を促進することを示唆した。実験2では、粗粉砕した 茎、咀嚼した茎、咀嚼後再粉砕した食塊およびァルカリ処理した茎をi situ培養し、

繊維質分解に対する咀嚼とアルカリ処理の効果を比較し、咀嚼した茎、特に、再粉 砕した 茎は、飼料 片の表面 積の拡大 によって 真菌およびFsuccinogenesの付着を 促し、繊維質分解酵素の活性(特に、xylanase)を促進させ、一方、アルカリ処理は 脱リグ ニン化をと おして飼料片への繊維質分解菌の付着を促進し、繊維質分解率 を向上させた。これらの結果から、咀嚼やアルカリ処理などによる飼料片の破損は ルーメ ン内微生物 に付着空間を作り、植物細胞内への微生物の侵入、付着を容易 にし、また、繊維質構成成分によって、付着する徽生物相および発現酵素を調節す ることによって繊維貫分解を促進させることが示唆された。

3.徹 生 物 量お よ び 微生 物 由来 の 繊 維質 分 解酵 素 活性 に及ぼす 窒素供給 の影響   飼料片 中の繊維 質分解1ま 飼料片の 特性と微生物の分解活動によって影響を受 けることが示唆された。そのため徽生物の分解活動を最大限に発揮させるために必 要である栄養素のひとつである窒素源として尿素をルーメンカニューレ装着去勢牛 に注入(140g/day)し、ルーメン背嚢および腹嚢部の内容物を採取し、飼料片に付 着およ ぴ液相に浮遊する微生物に由来する繊維質分解酵素の活性を検討した。ル ーメン 内容液中 のNH3‑N濃度は 尿素注入 によって4.8から13.7mg/dlに増加し、飼 料採食 後のpHの低 下は緩和 された。 対照期で は飼料給 与後の繊維 質分解酵素の 活性1ま12時間まで低下したが、尿素注入期には低下が観察されなかった。また、

液相浮 遊微生物 は飼料片 に付着す る微生物 よルアン モニア‑Nに対 する反応は早 く、酵素活性の増加程度も大きく、一方、飼料片に付着する徹生物の反応は鈍く、

酵素活 性の増加程度も小さかった。この結果から、液相浮遊微生物は飼料片に付 着する徹生物より、窒素源として、ルーメン内アンモニアに依存することが明らかと なり、 窒素不足が繊維質分解を制限する要因のひとつであることが示唆された。

  以上 の結果から、液相浮遊微生物より飼料片に付着する微生物の量および酵素 活性が高く、特に、プロトゾアより細菌畳が多く、飼料片に付着する細菌は繊維質分 解に重要な役割を担うことが示唆された。粗飼料の特性、咀嚼活動、窒素補給が飼 料、動物および微生物の観点から繊維質消化に影響する大きな要因として存在し、

これ らの要因 は飼料側、微生物側あるいは双方に働きかけ、飼料片への微生物付 着お よび酵素 活性に影響することにより繊維質消化を左右することが明確にされ た。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 助教授

田中 大久保 小林

学 位 論 文 題 名

桂一 正彦 泰男

ルーメン内飼料片への微生物付着および 微生物由来の繊維質分解酵素活性に影響する要因

  本 論 文 は 、 図15、 表13、 引 用 文 献174を 含 み 、5章 か ら な る 総 頁 数107の 和 文 論文 であ る。 別に 参考 論文6編が 添え られ てい る。

  反 芻 家 畜 は 、咀 嚼、 反芻 活動 およ びル ーメ ンに 共 生し てい る微 生物 の発 酵を とお して 粗飼 料( 主に 繊維 質) を分 解利 用 して いる。しかし、反芻家畜によって摂取さ れ た 繊 維 質 へ の ル ー メ ン 微 生 物 の 付 着 、 そ の 微 生 物 の も っ て い る 繊 維 質分 解酵 素の 発 現 が ど の よ うな 要因 の影 響を 受け てい るか に関 し ては 十分 に解 明さ れて いな い。

そ れ で 本 論 文 で は 、 飼 料 片 へ の ル ー メ ン 微 生 物 の 付 着 と そ れ に 由 来 する 繊維 質分 解 酵 素 の 活 性 と の 関 連 、 こ れ ら が 飼 料 片 の 物 理 的 性 状 お よ び 栄 養 素 (特 に、 窒素 源) 供給 によ って どの よう な影 響を 受 げる かを検討したものであり、その研究成果 は 以下 のと 韜り であ る。

1. 飼料 片に 付 着す る微 生物 量は 細菌 の方 がプ ロト ゾア より 多く 、また、飼料給与後   の 早 い 時 間 に 飼 料 片 に 付 着 す る 微 生 物 量 は 増 加 す る が 、 微 生 物 由 来 の 繊 維 質   分 解酵 素の 全活 性( 飼料 片重 量あ たり )および比活性(微生物タンパク質あたり)

  は 低 く 、 活 性 の 最 大 値 は 遅 い 時 間 に 観 察 さ れ 、 微 生 物 量 と 酵素 活性 の発 現 とは   同 調し てい ない とこ とを 見出 した 。

2. 粒 度 別 飼 料 片 に 付 着 す る 微 生 物 由 来 の 繊 維 質 分 解 酵 素 の 活 性 は 、 飼 料 給 与 後   の 早 い 時 間 で は 小 さ い 粒 度 の 方 に 、 遅 い 時 間 で は 分 解 可 能 なNDFを 多 く 含 有 し   て い る 大 飼 料 片 の 方 に 高 い 値 が 観 察 さ れ 、 繊 維 質 分 解 酵 素 活性 は飼 料片 の 物理   的 お よ び 化 学 的 な 特 性 、 ル ー メ ン 内pH、 付 着 す る 微 生 物 の 増殖 ステ ージ な どが   影 響す るこ とが 示唆 され た。

3. オ ー チ ャ ー ド グ ラ ス 乾 草 の 茎 を10cmと2cniの 長さ に切 断お よび 粗粉 砕し た 後、

  食 道 カニ ュー レを 装 着し た去 勢牛 に給 与し 、採 食時 の食 塊を カニ ュー レか ら 採取   し 、 咀嚼 され たこ れ らの3種 類の 食塊 と2cmに切 断し た茎 (対 照区 )を メン 羊 のル

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  ーメン内でin situ培養すると、咀嚼を受けた茎、特に、10cm長に切断後咀嚼を受   けた 食塊 に付 着す る微 生物 由来 の繊 維質 分解酵 素活 性が 高く 、NDF分解速度   が速く、その結果NDF消失率が高かった。また、採食時に咀嚼された乾草の茎を   再粉砕し、反芻時の食塊を模擬した結果、反芻時の咀嚼も繊維質分解を促進す   ることが観察され、採食時およぴ反芻時の咀嚼は飼料片の粒度を減少し、表面積   を拡大し、それによって、真菌およぴルーメン内での主要な繊維質分解菌である   F succinogenesの付着が増加し、繊維質分解、特に、キシラナーゼ活性が高くな   り、繊維質分解を促進することを示唆した。

4,粗粉砕した茎、咀嚼した茎、咀嚼後再粉砕した食塊およぴアルカリ処理した茎を   in situ培養し、繊維質分解に対する咀嚼とアルカリ処理の効果を比較し、咀嚼し   た茎 、特 に、 再粉 砕し た茎 は、 飼料 片の 表面積 の拡 大に よづ て真 菌およぴF   succinogenesの付着を促し、繊維質分解酵素の活性(特に、xylanase)を促進させ   た。一方、アルカリ処理は脱リグニン化をとおして飼料片への繊維質分解菌の付   着を促進し、繊維質分解率を向上させた。これらの結果から、咀嚼やアルカリ処理   などによる飼料片の破損はルーメン内微生物に付着空間を作り、植物細胞内への   微生物の侵入、付着を容易にし、また、繊維質構成成分によって、付着する微生   物相および発現酵素を調節することによって繊維質分解を促進させることが示唆   された。

5.微生物の繊維質分解活動を最大限に発揮させるために必要である栄養素のひと   つである窒素源として尿素をルーメンカニューレ装着去勢牛に注入(140g/day)す   ると 、ル ーメン内容液中のNH3‑N濃度が増加し、飼料採食後のpHの低下は緩和   され、飼料給与後の繊維質分解酵素の活性の低下が観察されなかった。また、液   相浮遊微生物は飼料片に付着する微生物よルアンモニア‐Nに対する反応は早く、

  酵素活性の増加程度も大きかった。一方、飼料片に付着する微、生物の反応は鈍   く、酵素活性の増加程度も小さかった。この結果から、液相浮遊微生物は飼料片   に付着する微生物より、窒素源として、ルーメン内アンモニアに依存することが明   らかとなり、窒素不足が繊維質分解を制限する要因のひとつであることが示唆され   た。

  以上のように、本論文は反芻家畜のルーメン内では液相浮遊微生物より飼料片に 付着する微生物の量および酵素活性が高く、特に、プロトゾアより細菌量が多く、飼 料片に付着する細菌は繊維質分解に重要な役割を担うことが示唆され、粗飼料の特 性、咀嚼活動、窒素補給がルーメン内微生物による繊維質消化に大きな影響を与え ている要因であることを明らかにした。この成果は、反芻家畜の主要な飼料成分であ る繊維質の消化の改善に寄与する基礎的な知見を提供するものであり、学術的にも 高く評価される。

  よって審査員一同は、潘軍が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと認めた。

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