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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 印    俊 教

     学位論文題名

Studies on molecular analysis of the tuberization     1npotatO ( S 〇 励 銘 銘 0 銘 f 勿 ろ ぞ ケ 勿 S 銘絖 L .)

     (ジャガイモの塊茎形成に関する分子生物学的研究)

学位論文内容の要旨

  ジ ャガ イモ の塊 茎形 成 を解 明す るため、RAPD (Random Amplified Polymorphic DNA) 法を用い、栽培されている主なナス科植 物とジャガイモとの系統的関係の解析と、ディフ ァレンシヤルディスプレイ(Differential display)法を用い、塊茎形成に関わっている遺 伝子のク口ーニングを試み、その遺伝子 の発現を解析した。

RAPD分析

  ナ ス科 植物 の系 統的 関 係の 解析 は葉 緑体DNAの制 限 酵素 分析 や塩 基配列分析とRFLP分 析などにより行なわれているが、RAPD法 を用いた解析もいくっか報告されている。本研究 ではRAPD法の 応用 性及 び 、栽 培さ れて いる ナス科植物と、ジャガイモとの系統的関係を 調べることにより、ジャガイモの進化過 程においての塊茎形成能の位置づけや、有用分子 マーカーの同定を行なった。

  材 料 はSolanum属 、Lycoperゞ´ con属、Capsicum属、Nicotiana属の 計4属 のナ ス科 植物を用いた。40個の10塩基ランダムプ ライマ―についてRAPD分析を行い、その中で再現 性よ く明 瞭な & tuberosumだ けに 特異 的な6個 のバ ン ドを 同定 する ことができた。これ らの& tuberosumに特異的なRAPDマーカ ーは、ジャガイモの塊茎形成と分子進化での有用 な分子マーカーになりうることが期待さ れる。

  27個の プラ イマ ーでRAPD分析を行い、近縁結合法であるNeighbor−Joining Programを 用い 、系 統樹 の分 析を 行 った 。そ の結 果、 塊茎を形成する&tuberosum0栽培品種である メークイン、ツニカ、男爵イモの間では 予想どおり密接な近縁関係にあることが確認され た。また、ジャガイモの栽培品種の原種 として認められているssp. andigenaが共通の祖先 で あ る と 認 めら れた 。塊 茎形 成能 が欠 けて いる &etuberosumの 場合 はLycopersicon属 と塊 茎を 形成 する & tuberosumと の中 間的 な位置関係に置いてあるが、より近縁関係に あ る こ と を 示し てい る。  し かし 、ジ ャガ イモ と同 じSo lanum属で ある 長岡 長ナ スは Lycopersicon属のミニ卜マ卜、現在の栽 培品種の原種として考えられているベベ卜マ卜に 近縁関係が認められた。現在までいくっ かのナス科植物の系統的関係の解析がされている が、ナス侮me´ ongena)を材料として用 いたデータは未だになぃのでジャガイモ、ナス、

卜マ卜の問での系統的関係を解明するの に有効なデータである。またジャガイモ、ナス、

卜マ卜の間では共通の祖先から別れて別 々の進化の道を歩み、その過程でジャガイモは熱 帯高冷地で塊茎を形成する能カを獲得し たと考えられる。

ディファレンシャ ルディスプレイによる分析

    最近PCR(Polymerase Chain Reaction)を用い、cDNAライブラリーの構築なしに発現す

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る遺伝子の検出や単離ができるディファレンシャルディスプレイ(Differential display) 法が 考案 され た。本研究ではこの方法を用い、塊 茎特異的な発現を見せる約110個のDNA 断片を得ることができた。その中で新たにジャガイモの貯蔵器官である塊茎に組織特異的 な発現する6個のcDNAクロー ンを単離できた。これらの遺伝子のホモロジー検索を行った 結果、遺伝子の機能は不明であるが卜マ卜の果実特異的に発現する2A11遺伝子と高い相同 性を示した。  また、これらの遺伝子はジャガイモの匐枝から塊茎に発現が見られるぱか りで なく 、開 花した花器の子房(ovary)果実(fruit)にも発現が見られた。特に果実では 塊茎の2倍以上の発現量を示 した。

    これらの理由から新たに単離した遺伝子をジャガイ モ果実塊茎特異多重遺伝子(PFT 遺伝子)と名付けた。対照実験区として主な塊茎貯蔵タンバク質のプローブを用いて遺伝 子発現を試みた結果、卜リプシン・インヒビター(trypsin inhibitor)は雄ずぃ(stamen) で塊 茎の2. 倍以上の 発現が、カテプシン・インヒビター(cathepsinDinhibitor)は花器 の全組織器官で発現が見られた。これら貯蔵タンパク質は今まで自然環境下では塊茎特異 的な発現をすることで知られていたが、花の器官や果実でも塊茎と同等な発現をすること が初 めて 確か めら れた 。  また 、PFT遺伝子をプ ローブとし、ジャガイモの果実を果肉 (sarcocarp)、種子(seed)、 胎座(placenta)の三つの組織にわけて、その発現を調べた結 果、PFT遺伝子は果肉と胎座 で強く発現することを発見し、カテプシン・インヒビターは 果肉だけで、プ口テアーゼ・インヒビターII (proteinase inhibitorII)は胎座で比較的 多く発現していた。

    最 近 ジ ャ ガ イ モ か ら 単 離 さ れ たPFT遺伝 子の 相同 ク口 ンで あ るGM7の 機能 がMCPI (MetallocarboxypeptldaseInhibitor)として提案されていた。このMCPIは傷害によルジャ ガイモの葉身で大量に誘導されることが知られているの で、PFT遺伝子のス卜レス及ぴホ ルモンに対する誘導を調べたが、PFT遺伝子は傷害及びABA,lO名Sucrose、Me−JA等に対 し、まったく反応を示さなかった。この結果により、PFT遺伝子がMCPIであることに対し ては疑問があり、今後、この遺伝子の機能を明らかにすることが期待される。また、ジャ ガ イ モ の 果 実 と 塊 茎 で のPFT遺 伝 子 発 現 の 定 量 化 を 行 う た め 、PFT6cDNAク口 ーン の mRNAをinvitroで 合 成 し 、 こ れ を 標 品 と し て 定 量 し た 結 果 、 果 実 で は 全mRNA量 の 約2%、塊茎では約1%を占めた。

    PFT遺伝子の転写開始点 を決定するため、プライマー伸長(primerextension)分析を 行っ た結 果、 卜マ 卜の2Anク ロン より3塩 基短いAから転写が開始されており、ジャガイ モの果実と塊茎での転写開始点の差は見られなかった。また、染色体クローン(PGF2)の 転写 部位 をPFTcDNAク ローン6個と塩基配列を比較 してみたが、l00Xの相同性を示すもの はなっかた。この染色体ク口ーンが疑似遺伝子である可能性が考えられ、特異性のあるプ ライマーを合成し、RT−PCR分析を行った結果、塊茎では増幅されなかったが、果実では増 幅バンドが検出されたので、PGF2クロンは果実特異的に発現する遺伝子であることが確認 された。RT―PCR産物の塩基配列をPGF2の転写部位と比較した結果、PGF2とlooX一致した。

塊茎より作製したcDNAライブラリーのスクリーニングでこのPGF2クローンが分離できなか ったのはその組織特異性に起因すると考えられた。今後 、PFT遺伝子の塊茎発現を制御す るプ口モーターを単離することにより、組織特異性を制御するシス・エレメン卜の同定や 外来遺伝子のプ口モーターとしての利用が期待される。

(3)

学 位 論 文 審査 の 要 旨 主 査    教 授    喜久 田嘉郎 副 査    教 授    生 越    明 副 査    教 授    上 田 一 郎

     学位論文題名

Studies on molecular analysis of the tuberization     1npotatO (S 〇励刀勿0 髭カりろ¢ダ〇S 銘ケ髭L .)

     (ジャガイモの塊茎形成に関する分子生物学的研究)

    本 論 文 は4章 で 構 成 さ れ 、 表7、 図28、 引 用 文 献189、 総 頁 数112の 英 文 論 文 である。別に参考論文5編が添えられている。

    現 在栽培さ れてい る主なナ ス科植 物のうち ジャガ イモのみ が塊茎を地下に形成する 重 要 な 寒冷 地 の 資源 植 物 であ る 。ジ ャガイ モの塊茎 形成を 解明する 目的のた め、RAPD (Random Amplified Polymorphic DNA)法を用 い、栽 培されて いる主 なナス科 植物11種 と ジャガイ モとの系統的関係の解析と、ディファレンシャルディスプレイ(Dif ferential display)法 を用い、塊茎形成に関わっている遺伝子のクローニングを試み、その遺伝子の 発現を解析している。

1. ナ ス科 植 物 の系 統 的 関係 の 解 析は葉 緑体DNAの制限酵 素分析 や塩基配 列分析 とRFLP 分 析などに より行なわれているが、RAPD法を用いた解析もいくっか報告されている.本研 究 ではRAPD法の 応用性 及び、栽 培され てIヽるナス科植物と、ジャガイモとの系統的関係 を 調べるこ とにより、ジャガイモの塊茎形成能の位置づけや、有用分子マーカーの検索を 行なった。

  材 料はSolcV7UHl属、Lyco.oersicon属、Capsicum属、Nicot icV7a属の計4属のナス科 植 物を用い た。40個の10塩基ランダムプライマーについてRAPD分析を行い、その中で再現 性 よ く 明瞭 な &tuberosumだ け に 特異的 な6個 のバンド を同定 すること ができ た。さら に、近縁結合法であるNeighbor―Joining ProgramをJ11いて系統樹の作成を行った。その結 果、塊茎を形成する&tubero.ゴ uma)栽培品種であるメークイン、ツニカ、男爵イモの間で は 予想どお り密接な近縁関係にあること、またアンディゲーナ種は共通の祖先であること が 認 め られた。 塊茎形 成能が欠 けている & etuberosumはLycopersicon属 と塊茎を 形成 す る& tuberosumと の中間的 な位置 関係に置 いてあ るが、よ り近縁関係にあることを示 し た。  しか し、ジャガイモと同じェ5'olanum属である長岡ナスは現在の栽培品種の原種 と 考えられ ているべべ卜マ卜に近縁関係が認められた。現在までいくっかのナス科植物の 系 統的関係 の解析 がされて いるが、 ナス侮melongena)を材料 として用いたデータは未だ に ない。ま たジャガイモ、ナス、卜マ卜の間では共通の祖先から別れて別々の進化の道を

(4)

歩 み、ジャ ガイモは 熱帯高冷 地で塊茎 を形成する能カを獲得したと考えられる。

2.遺伝子の検出や単離ができるディファレンシャルディスプレイ法を用いて塊茎特異的 発現を見せる約110個のDNA断片を得ることができた。その中で新たにジャガイモの塊茎 に組織特異的発現をする6個のcDNAク口ーンを単離し、遺伝子のホモ口ジー検索を行った 結果、遺伝子の機能は不明であるが卜マ卜の果実特異的に発現する2A11遺伝子と高い相同 性を示した。また、これらの遺伝子(ジャガイモ果実塊茎特異遺伝子PFT)はジャガイモ の匐枝から塊茎に発現が見られるばかりでなく、開花した花の子房、果実にも発現が見ら れた。特に果実では塊茎の2倍以上の発現量を示した。

  対照実験区として主な塊茎貯蔵タンパク質のプローブを用いて遺伝子発現を試みた結果 卜リプシン・インヒビターは雄蕊で塊茎の2倍以上の発現が、カテプシン・インヒビター は花の全器官で発現が見られた。これら貯蔵タンバク質は今まで自然環境下では塊茎特異 的な発現をすることで知られていたが、花の器官や果実でも塊茎と同様な発現をすること が初めて確かめられた。

    ストレス及びホルモンに対するPFTの誘導を調べたが、PFT遺伝子は傷害及びァブシ ジン酸、10%スーク口ース、ジャスモン酸、等に対し、まったく反応を示さなかった。こ の結果により、この遺伝子の生理機能を明らかにすることが期待される。また、ジャガイ モの果実と塊茎でのPFT遺伝子発現を定量した結果、果実では全mRNA量の約2%、塊 茎では約1%を占めた。

    また、染色体クローン(PGF2)の転写部位をPFT cDNAクローン6個と塩基配列を比較し てみたが、100%の相同性を示すものはなっかた。  PFT遺伝子の塊茎と果実の発現を制御 するプロモーターを単離することにより、組織特異性を制御するシス・エレメン卜の同定 や外来遺伝子のプロモーターとしての利用が期待される。

    よって審査員一同は、印俊教が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有 するものと認めた。

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参照

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